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内水面(河川・湖沼)釣りフォーラム 参加報告



今年も「釣りフォーラム」が開催されました。今年は山形県内水面漁業協同組合連合会の主催で、内水面全般に渡る内容とし、開催されました。「釣れない」「魚がいない」と言われ続けている昨今の釣り場環境を何とかしようと、漁協と行政機関の関係者、及び釣り人が集まり、話会いの場を継続致します。放流事業、ゴミ問題、釣り人のマナーなど、解決しなければならない問題は山積しています。今回も一釣り人として参加してきましたので、内容をレポートします。なお、以下のレポートは私個人の感想を述べているものであり、フォーラムの総意ではない事をご了承下さい。



「内水面(河川・湖沼)釣りフォーラム」

1.日時・場所           終了しました

  日  時:平成14年11月17日(日)      13:00時〜16:00時

  会  場:山形国際交流プラザ「ビッグウイング」   入場無料
      山形県山形市平久保100番地

  主  催:山形県内水面漁業協同組合連合会      問合せ:0236-41-2407

久し振りに快晴に恵まれた会場の「ビッグウイング」
高橋 内水面漁連会長会場の大会議室

2.プログラム

1.基調講演  「望ましい釣り場を構築するには」   中村 智幸   水産学博士 中央水産研究所主任研究官

  要旨 ・イワナ、ヤマメの種川として枝沢を保全する。

 イワナ、ヤマメには、枝沢に遡上して産卵する性質がある。特にイワナではその傾向が強い。また、枝沢は稚魚にとって安全な生息場所でもある。つまり、イワナ、ヤマメにとって枝沢は「種川(たねかわ)」なのである。このことから、流量の少ない枝沢であっても、年間を通じて水が流れているのであれば種川として保全する必要があるといえる。枝沢を種川として機能させるためには、本流からの魚の遡上を阻害するような堰堤やダムを建設しないようにする必要がある。また、枝沢に既に作られた堰堤やダムが有る場合は、魚道を付設して魚が上流まで遡上できるようにすることも重要である。やむをえず枝沢に新たに堰堤やダムを建設する場合には、本流との合流点からなるべく距離を置いて建設し、その枝沢の持つ種川としての価値を失わせないようにする。

 一方、本流についても、すでに建設された堰堤やダムには、魚道を付設して下流に生息する魚が上流の枝沢まで遡上できる様にする。また、本流に新たに堰堤やダムを建設する場合は、枝沢との合流点の上流に建設して、下流に生息する魚がその枝沢を遡上できる様にする。魚道を付設できないような堰堤やダムの下流には、人口産卵場を造成するという方法もある。

 ただし、堰堤やダムを作らない、魚道を付設すると言ったことは、一個人としてはできない。しかし、釣り人にできることとして禁漁がある。枝沢に生息する魚は釣らずにそっとしておくのも繁殖保護の一つの方法である。

・釣り場としての河川の使い分け(ゾーニング)

 今後は釣りを楽しむとともに、放流された養殖魚と交雑していない地付きの魚(=在来個体群)を保護し、その川独自の遺伝子を残して行くことも漁協や遊漁者の責任であると考えられる。その方法の一つとして、河川の使い分け(ゾーニング)がある。

地付きの魚が生息する川は「在来個体群保護エリア」として、全面的に禁漁にしたり、禁漁にしないまでも禁漁期間を長くする、持ち帰ってよい魚の数を定める(=尾数制限)、釣って持ち帰らない(=キャッチアンドリリース)、一日に入れる釣り人の数を定める(=人数制限)等の規制を設ける必要がある。

 すでに養殖魚が放流され、地付きの魚との交雑が進んだと思われる川は「遊漁エリア」として釣り人に広く利用してもらう。必ず魚が釣れるというのが理想で、養殖魚の放流を重点的に行う。ここでは、生息環境が比較的良好で、産卵ができたり、稚魚が育成できるようであれば、発眼卵や稚魚の放流を行い、より天然に近いきれいな魚が釣れるようにする。産卵や稚魚の成育の困難な川では成魚放流を行い、ヒレの先が丸かったりして姿かたちは悪いけれど、とりあえず魚は釣れるという釣り堀的な利用をすることになる。
2.パネルディスカッション

  コーディネーター
       吉野 智雄   県環境保全審議員
  パネラー
       中村 智幸   水産学博士
       今野  亘   県水産室長
       押野 和治   県河川課長
       斎藤 金也   山形県渓流協議会会長
       寒河江 芳美  一般遊漁者
       高橋 安則   県内水面漁連会長
       島軒 治夫   県南漁協組合長
       及び、会場参加者
司会の吉野氏パネルディスカッションの風景

以下はK++の個人的な意見・感想です。

今回のフォーラムは、内水面漁連の主催であり、来年度に漁業権が更新される前に各関係団体からの意見を聴取することが最大の目的であった様です。しかしこれまでとは異なり、一般の参加者をも認めたオープンなフォーラムの場で広く意見を募る漁連・県の姿勢は、他にもあまり例が見られないものであり、高く評価させて頂きたい。ただ、参加者の大部分が漁協関係の人たちであったこと、しかも参加者は約60名ほどと少なかったことは、非常に残念でした。県や漁協に対して釣り人としての意見を述べる事のできる数少ない機会にも関わらず、釣り人の感心が低いのは寂しい限りです。やはり有名人を呼ばないと釣り人は集まらないのでしょうか?

中村水産学博士の基調講演では、釣り人にとっても非常に興味深い内容が沢山含まれていました。禁漁後に魚影が回復するまでに3年必要なこと、種川である枝沢を釣ってしまうことが如何に危険なことであるか、堰堤やダムが渓魚の産卵に如何に妨げになっているか、渓魚の遺伝子が沢ごとに全て異なっていること、などなど。特に、近い将来に釣りとは関係ない民衆が「釣り人と漁協が貴重な遺伝子を破壊し続けてきた」ことに対する非難を開始する可能性が高いことなど、耳に痛い内容も多く有りました。

パネルディスカッションでは、パネラーの意見を順番に聞くに留まってしまい、残念ながら活発な意見交換という状態ではありませんでした。今回初めて県の河川課からも参加があり、どういった発言が見られるのか非常に興味がありましたが、「釣り人の意見も含めて各方面の意見を積極的に取り入れながら河川改修などを行ってゆきたい」ゆえの意見があり、非常に心強い思いがしました。釣り人代表の寒河江氏からの「これまで県水産室や漁連との円卓会議などを開催し意見交換を行ってきているが、河川課にもお願いしたい」ゆえの意見に対しても前向きであり、今回のフォーラムの最大の収穫ではなかったかと考えられました。

魚の行く手を阻む堰堤、魚道は水が流れていない 水の無い魚道(梅花皮沢)

さて、中村博士の発表の中でも砂防堰堤やダムには魚道を付設するべきであると述べられていましたが、実際にはその効果はどうなのでしょうか? 多くの魚道が砂やゴミで埋まってしまい役に立たなくなっている姿を良く目にします。また、魚道は有っても水量の関係で堰堤の下部に魚が溜まり、魚が上流へ行く前に釣り師にゴッソリと釣り上げられてしまう光景も良く目にします。魚たちが抵抗なく上下流を行き来するための、より効果的な方法は他にないのでしょうか? その答えはスリット堰堤にあると私は考えています。

では実際のスリット堰堤の状況はどうなっているのでしょうか? 根子川(大井沢)の最源流部に00年に完成した巨大なスリット堰堤も一見効果的かと思われるのですが、残念ながらその堰堤の真下に大きな箱(高さ4m程度で魚はそのままでは登れない)が作られていて、そのプールにはゴミだらけで役に立たない魚道が付けられています。また、玉川(小国町)の梅花皮山荘の上部の既設の堰堤には、昨年(01年)になり幅2m程度のスリットが切り込まれました。しかしスリットの深さは堰堤の上から1/3程度しかなく、魚の行き来は到底有り得ません。それどころか、この堰堤の上部にあった大きなプールが消滅したことで、その堰堤から飯豊山荘までの区間で殆ど魚影が見られなくなってしまいました。堰堤プールが魚を守り魚影を保つ役割をしていたのですが、それが無くなったことで簡単に釣り切られてしまった様なのです。

魚道が空しい巨大スリット堰堤(根子川) 中途半端に切られたスリット(玉川)

一体、何のためのスリット堰堤なのでしょうか? 形だけ「自然に優し」そうなだけの工事に見えて仕方がありません。そして最近、私は、玉川(小国町)の梅花皮山荘の下部に見られる様な「メガネ堰堤」がその理想の姿ではないかと考える様になってきています。一見、橋の様に見えるこの堰堤は、上下の流れが全く抵抗が無く平面で繋がっていて、流れに対する介入が殆ど見られないのです。また今後、既設の堰堤にスリットを入れる場合にも、土砂の排せつに工費がかさみますが、上下の川床が平面で繋がる様な位置までスリットを入れて頂ける様に願っています。(私は、本当は上記の意見を河川課および会場の皆さんに訴えたかったのですが、残念ながら一般参加者の意見を述べる時間が非常に短く、叶えられることが無かったのが非常に残念でした。)

一見、橋の様に見えるメガネ堰堤(玉川) 魚が自由に移動できるスリット(横川大石沢)