単独釣行レポート

堰堤のスーパー岩魚 99年8月1日



堰堤プールの釣りと言えば雪代の豊富な4〜6月までがトップシーズンとなります。しかし最近になり、場所とタイミングを選べば一年中釣りが可能である事が判ってきました。今年に入ってから同じ堰堤に毎週の様に通いつめ、水位と濁りによる魚の付き場や捕食活動の関係を調査した結果です。例年だと7月初には終えている堰堤プールの釣りですが、今年はまだ釣れています。恐らく9月末の禁漁直前まで、釣れ続けると予想しています。猛暑の中、いつもの堰堤プールで、本当にパワフルな真夏の岩魚の引きを味わう事が出来ました。




本当の事を言うとこの日最初に訪れた堰堤は、先にフローターオフで紹介した新潟の穴場でした。しかしホームページに盛んに取り上げたせいか、朝一番で入ったにも関わらず魚影が殆ど見られません。釣れたのは写真の30cmほどのイワナを含め2尾だけの、非常に寂しい結果でした。

雑誌に「堰堤プールの釣り」を紹介し、このホームページでも釣り方や写真を掲載し続けた結果、実を言うと多くの堰堤ではさっぱり釣れなくなってしまいました。県内だけではなく福島や宮城でも、堰堤でルアーマンの姿を多く見る様になったのは、私にとって、とても嬉しい事です。 しかし、副作用も当然有る様で、ある程度は仕方の無い事かとあきらめてはいます。今回取り上げたこの堰堤も、1年ほどで魚がいなくなってしまうのでしょうか? とても寂しい気持ちがします。なぜ小さな魚まで全部殺さなければならないんでしょうか? 本当は釣れる堰堤などどこにでも有るのに、なぜ特定の釣り場に集中しなければならないのでしょうか?



新潟では3時間ほど釣っただけで、早々に諦めました。実は置賜地区に以前から目を付けていた堰堤が数個有ったため、その調査を兼ねて付近を見て回ることにしました。上の写真は置賜地区では良く見られるブナ林です。見事なこのブナの林が、付近の渓流を温存していました。


梅雨明けから1週間たったこの日、気温は山荘付近でも30℃を越える猛暑でしたが、渓流は水量豊富で、すこぶる元気でした。付近の渓流を散策したり、昼寝をしたりして夕方までとても楽しい時間を過ごす事ができました。また堰堤の状況も確かめる事ができ、今後の楽しみが残りました。




さて本題の釣りですが、昼間は非常に暑くて明るいため、午後4時頃から釣りを再開する事にしました。透明度の高いこの時期は、釣り人やラインが丸見えのため、明るい昼間は全く釣りにならないのです。目を付けていた堰堤の一つを選び、夕方の2〜3時間だけを釣る事にしました。


この時期の堰堤釣りの要点は次の様になると考えています。

1.春などに釣れる堰堤は渇水さえしなければ夏〜秋でも釣れると考えています。ただ、小型の魚を中心に、やはり遡上してしまう割合が高くなるのか、魚の数自体は盛期と比べるとかなり少なくなってしまう様です。しかし大量に餌を消費する大物は水の少ない源流部などでは生きてゆけないらしく、プール内に残留している様です。このため、大き目のルアーを多用します。

2.魚の付く場所は雪代期となんら変わりなく、「増水時に最後まで透明度が高く残る場所」で「水中に木立など障害物がある場所」です。ただ、透明度が高い場合はバックウォーター部にも中型の魚が沢山集まる様です。

3.狙い目はやはり夕立などで濁りが入った後です。極端に透明度が高い場合は、朝夕のほんの短い時間帯以外は釣れてはくれません。少しでも濁りが残っていれば、かなり確立が上がります。堰堤では夕立などで一旦濁りが入ると、意外なほど長時間にわたって濁りが残り続けます。

4.上の写真の様に堰堤の水位は梅雨明けと同時に激減しており、プールの面積が雪代期に比べて小さくなっている場合が多く、ポイントの見定めは逆に楽になります。魚からはどこからでもルアーが丸見えのはずですが、意外にも魚の定位するすぐ近くにルアーを落とさないとバイトしてこない様です。非常に離れた所からピンポイントに狙わなければなりません。このため、やはりフローターは必需品となります。

5.透明度が高く、昼間の明るい時間帯は釣りになりません。通常は朝3時間、夕方2時間が勝負。薄暗い時間帯でも、普段より遠投をする必要が有り、そのため、細目のラインに大きめのルアーを直結して最低でも30m以上は投げる事ができるようにします。今回は0.8号のフロロカーボンラインに切り替え、ルアーは一回り大きなサイズ(65〜70mm)を使用しました。

6.それでも春〜初夏に掛けての釣りと比べると格段に難しく、釣れる確立は大幅に落ちます。ツゥィッチングもさまざまなパターンを用い、ルアーも比較的頻繁に交換します。ただ、大物が主体となり、また非常に肥えた魚体が多くなるため、一度ヒットさせるとそのパワーとアクティブさに圧倒され病み付きになること請け合いです。


夕方4時過ぎにフローターを浮かべ、最初にバックウォーター部でヒットしたのは写真左の尺ちょうど位の岩魚でした。尻尾に絶妙にスレ掛りしており、ヒットした瞬間は「やった!40cmオーバー!!」と大喜びをしてしまいましたが、寄せてきて姿を見た瞬間、がっかりしてしまいました。

2尾目に釣れたのは、上写真右の39cmのパワフルな岩魚でした。これ以外にも37、36、30cmと2時間ほどで尺上を4尾ヒットさせることができましたが、ついに40cm上はヒットしてくれませんでした。間違いなくもっと大物が居る筈なのですが、この時期は大物を掛けるのが難しいのです。しかし今年は40cmオーバーの大物が釣れません。例年ですと年に3〜4尾は40cmオーバーを釣り上げているのですが、今年は村山地区の堰堤での41cm1尾のみです。ただ、逆に35〜40cmクラスは例年よりも遥かに沢山釣れています。

それにしてもこの時期の堰堤の岩魚はパワフルですね。ごらんの様に丸々と太っていて、どれもヒットした瞬間はヤマメかと思いました。フローターの周りをぐるぐると回りながら、思いっ切りドラグを引き出していってくれます。普通の渓流ではまずお目に掛かれない、正に「スーパー岩魚」でした。


最後に、フライフィッシングをされる人に興味の有る写真をお届けしましょう。このところちっとも魚をキープすることも無く、オフなどで岩魚の冷凍のストックを消費してばかりでしたので、久し振りに燻製用に3尾の岩魚をキープさせて頂きました。これらの岩魚の胃の内容物を調べたところ、いずれも3〜4cmもある大きな虫だけを、しかもたっぷりと食べていました。夏の堰堤は意外にも餌が豊富であり「スーパー岩魚」と呼ぶにふさわしい魚体を育んでいる様です。そして私にとって今「堰堤プールのルアー釣り」は「季節の釣り」では無くなりつつ有ります。


【今回使用したタックルなど】ミッチェルTroutia730ft、シマノBioMasterXT1000、呉羽シーガーエース0.8号(4lb)、ルアー:AthleteMinnow70S・55S/アユ・ヤマメ、WavyMinnow65S・50S/ヤマメ・アユ・ホワイト、LwisCreek70SP/ヤマメ・ハヤ、SugarMinnow80SP/ハヤ、自作Kルアー6cm緑、他