例年、5月にはダム湖の釣りの最盛期を迎えます。ここ数年、5月末から始まるダム湖以外では思った様な釣果が得られず、悔しい思いをしていましたが、今年は新しいダム湖を開拓し、仲間とともにまずまずの釣果を上げています。一方で、従来の銘ダム湖でも単独で釣行を繰り返し、魚影の復活がないかの確認の作業も行っています。過去10年の我々のダム湖の釣りを振り返ってみると、イワナなどの冷水性の渓魚達が置かれている厳しい状況が垣間見られる様な気がしてなりません。 【5月16日(火)】 今回のレポートでは、まずは過去に良く釣れていたダムについて、この10年ほどの釣果をまとめ、その変化を分析してみたいと思います。新しく開拓中のダム湖のその後の釣果については、後半に記述しています。さて、従来のダム湖についても4月中旬ころから何度か訪れていますが、この日も山形県のとあるダム湖を訪問し、試し釣りをしています。このダム湖は折しも満水の絶好の釣りのタイミングでしたが早朝の岸からの2時間ほどの釣りでは、やはり魚影は全く見られませんでした。ただ、岸辺には釣り人らしき足跡が複数残されていて、誰かが私と同じようにルアーを投げて釣っていた様です。
この様な足跡は昨年まで見た記憶が無く、今回は釣れなかったものの、他の釣り師には釣果が出始めているのかも知れません。その後はこのダム湖の源流部を1時間ほどだけ歩いて釣ってみましたが、渓は雪代で溢れていて、水温も5℃程度と低く、ルアーでは渓魚の反応はイマイチでした。しかしそんな状況でも、上流から小さなミノーを流し込み誘う釣り方で、なんとか2尾の小さなイワナを釣り上げることが出来ました。このダム湖の源流部にはイワナが間違い無く棲息している事が確認でき、今後の推移を期待して竿を納めました。
【5月17日(水)】 翌日は少し移動して、別のダム湖を訪問しています。このダム湖は10年以上前に大型のイワナが良く釣れていたのですが、雑誌に載るなどして釣り人が激増し、釣れなくなっていました。ただ、4年ほど前には魚影が復活してきて再び釣れる様になったのですが、13年7月の大水害の後はまた魚影が消えてしまっていました。そして、この3年間は釣果が見られなかったのですが、今回訪問して、再度魚影の復活が確認できました。この日はフローターを出してインレット付近の500mほどを釣ってみました。下流部ではほとんど何の反応もありませんでしたが、インレット直下の激流の中で僅かに反応が見られました。
雪代で溢れる本流からゴウゴウとインレットに流れ込む激流の中から飛び出して来たのは、魚種が良く判らない41pの渓魚でした。サクラマスと良く似ていますが、濃い明瞭な斑点が体側に多数見られるため、サクラマスではなさそうです。ニジマスのスモルト(銀化)の様にも見えますが、その特徴である尾ビレや背ビレの先端部の斑点が見られません。何かのF1の様にも見えますが、取り敢えずはダム湖でスモルト化したニジマスではなかろうかと考えています。そして、他にも同ポイントで尺ちょっとのイワナと同サイズのイワナのバラシがあり、魚影は僅かながらも復活している様でした。
【5月18日(木)】 翌日は更に移動してまた別のダム湖を釣っています。ここも10年ほど前には超大物に湧いた銘ダム湖でしたが、この数年はロクな釣果が無く、特にこの3年は全く魚影が消えてしまっていました。この日は取り敢えず様子見で、インレット近くの岸辺からの釣りを1時間ほど試みています。このポイントは、10年以上前には50pを超えるイワナを含む良型が多数釣られていて、特に5月中旬のこの時期は、インレット付近に集まるワカサギを狙って大型のイワナが目の前でボイルを繰り返し、それはそれは豪快な釣りが楽しめたものです。しかし、その面影は今は全くありません。
【5月19日(金)】 翌日は同じダム湖で久しぶりにボートを繰り出し、徹底的に釣って見る事にしました。お天気は最高で、青空に新緑が輝き、その美しく雄大な風景は10年前と全く変わりなく素晴らしいものでした。そして、早朝7時から釣りを開始し、6時間もの時間をかけて、インレットから下流部数キロまでの区間を隈なく探ってみましたが、しかし反応は全くありませんでした。ただ、インレット付近には10年前と同様に多数のワカサギと鯉の泳ぐ姿が見られ、渓魚たちの餌には何ら不足は無いのではないかと思われました。この状況下で渓魚が見られないのは、全く不思議でなりません。
【過去10年のダム湖の釣果の推移】 さて、ここで過去10年間のダム湖の釣果について振り返ってみたいと思います。表1は、比較的釣行回数の多かった7つのダム湖について、10年前からの釣行回数と筆者が釣り上げた渓魚の数をサイズ別に表にしたものです。枠内の表記は左から、その年の釣行回数・40p以上尾数・30-40p尾数・30p未満尾数となっています。表2は表1のデータを独自の方法で点数化したものです。過去の調査で、渓魚は10cm大きくなる毎に釣れる確率が1/10に減ると言う結果が出ていることから、40p以上1尾を100点、30-40p1尾を10点、尺未満1尾を1点として合計し、釣行回数で割って、釣行1回あたりの点数を算出しました。 表2の大まかな見方としては、例えばダム湖Fでは2013年以降200点以上の点数が続いていることから、釣行に行くたびに40p以上の大物が平均的に2尾程度は釣れている事が読み取れます。セルの色は緑色ほど釣果が良く、赤はその年の釣行全てにおいて釣果が無かったことを示しています。そして、14年に1つのダム湖を除いて、突如、ダム湖から渓魚たちが消えている事も良く判ると思います。その後3年を経過し、一部のダム湖では魚影が復活しつつ有り、一部においては今でも魚影の見られない状況が続いていると言う訳です。 この2014年の不漁の原因は良く判りませんが、南東北では2013年7月に甚大な被害を出した豪雨災害があり、渓魚にも大きな影響が有ったのではないかと考えています。他にも個別に一時的に不漁となっているダム湖が見られますが、釣り場が雑誌に掲載された事や、一部の餌釣り師による源流部での乱獲が原因ではないかと考えています。好調なダム湖FやGでも、地元の釣り師たちの情報では「4〜5年前と比べると全然釣れなくなった」とのことで、全体として、やはり渓魚は確実に減少している様です。根本には地球温暖化が原因として存在すると考えられ、渓魚たちが置かれている厳しい状況が伺え、残念でなりません。
【5月14日(日)】 さて、釣れないレポートはこのあたりにしておいて、ここからは新しく開拓中のダム湖についてレポートします。単独ではあちこちのダム湖の試釣などに出かけていますが、日曜だけは新潟の仲間たちと一緒に良く釣れるダム湖で釣る様にしています。このダム湖はGW期間中も仲間たちと釣行を繰り返し、まずまずの結果を出していますが、この日も新潟のBuuさん・もっくんと共に早朝7時から出漁しました。やはりインレット近くの緩い流れのあるポイントが良く釣れるため、まずはトローリングをしながらインレット方面へと向かいます。この日は前日に雨が降っていて、やや濁りが強く苦戦させられました。
7時半頃、トローリングでまず私に尺イワナが、その後8時半頃にはBuuさんにも尺イワナがヒット。ただ、インレット下流部に到着したものの、最初は反応が見られません。どうも雨で水温が急激に下がったせいか、魚の活性がイマイチの様でした。ここで私には秘策がありました。GW中も活性の低い日はそうでしたが、深さ4〜6mほどの底でイワナ達は待機していて、表層近くでミノーを泳がせてもイワナ達はなかなかヒットして来ないのです。そのため、この日はピンテイルという20gもある重い海釣り用のミノーを用意していました。
インレット付近は通常、砂地であることが多いため、根掛かりを恐れずに底ギリギリをピンテイルでトレースすると、まずは9時半頃に2尾目の尺イワナがヒット。続いて小さなサクラマスもヒット。そして、10時頃になって、同じ様な緩い流れのポイントで、なんと51pもある良く太った大イワナがヒットしてきました。その後はスレた様子だったため、今度は鉄板バイブという、これまた海釣りで使う26gもあるバイブレーションを投入し、イワナ37pと巨大なウグイをヒット。実はこの間、Buuさんともっくんは通常のディープダイバーを使って釣っていましたが、魚信は全くありませんでした。非常に重いミノーで底ギリギリを攻めた私の作戦勝ちでした。
ダム湖のインレット直下は流れがきつく、水温急降下で活性が低くなるとイワナ達は素早く泳ぐことができずに、少し下流部の緩い流れの底に陣取って餌を待っている様なのです。そして、その後は気温が上がって来たためか、11時過ぎにはもっくんに尺サクラマスがヒット。12時頃にはBuuさんに良型イワナの魚信がありましたが、これは惜しくもバラシ。ただ、12時を過ぎると明るくなり過ぎたためか、渓魚の反応はパッタリと途絶えてしまいました。なおこの日は、福島からもルアーマンが来ていましたが、残念ながら釣果は無かった様でした。この時期の寒波を伴う雨後は、渓魚の活性が大きく下がり、難しくなる様です。
【5月21日(日)】 翌週日曜も同じメンバーで同じダム湖へと繰り出しています。この日は6時半に出漁し、やはりトローリングをしながらインレット下流部のポイントへと向かいました。この日もまずは私のロッドに下写真の45pのサクラマスがヒット。この魚は非常に良く太っていて、ランディングに手こずらされました。そして、最近になって思うのですが、どうもこの所のハンドトローリングでの釣果は、Buuさん・もっくんに比べて、私の方が断然に良い様に思います。何が彼らと私とで違うのかと言うと、それは船外機の違いくらいしかありません。Buuさんのカヤックはエレキで静かですが、私のボートは大きな音と振動のするエンジン船外機で、これが魚を呼び寄せているのではないかと思えるのです。
例えば奥只見湖の様に、頻繁にエンジン船外機が往来している様なダム湖では、魚たちも音を覚えていて釣果は落ちるのかも知れませんが、釣り人の少ないダム湖では、魚たちは船外機の音を知らないため、興味を示して魚が寄ってくるのではないかと思えるのです。別のダム湖でも、エレキで釣っていて全く反応が無いのに、エンジン船外機に取り換えた途端にイワナがバタバタと釣れた事があります。また、エンジンを止めて係留しながら釣っていても反応が無いのに、根掛かりしたためエンジンを掛けてポイントに近づいてルアーを回収した直後に、すぐに良型イワナが釣れた来た事もあります。無垢な魚たちはエンジン音が好きなんでしょうか。
さて、その後はインレットから1km以上も下流部でもっくんに尺イワナがヒット。9時前には狙いのポイントに到着し、再びもっくんに今度はイワナ41pがヒット。私もBuuさんもこのポイントではヒットがありませんでしたが、少し移動して、大きな岩の脇の10mも深く掘れたポイントで、重たいShoresHevyMinnow19gをボートの真下に落とし込み、ちょんちょんと誘っていると41pのイワナがヒットしてきました。大きなダム湖のインレット下流部は、案外深いのです。活性が高ければ魚たちは浮いてきますが、そうでなければ、重くて良く沈むミノーでないとなかなか釣れてくれないんですね。
その後、私には同様のポイントでイワナ29pを追加。しかし、この時点でお昼近くになり、良いお天気のためか、反応が途絶えてしまいました。のんびりと休憩と昼寝を挟んで、次に釣り始めたのは15時頃。その後もなぜか私のロッドにサクラマス38pがヒット。実はこの時点でBuuさんだけに釣果がありませんでしたが、ただそれでも、Buuさんは最後の最後に意地を見せてくれました。帰り道にトローリングしながら、イワナ39.5cmをヒット。なんとか全員に良型の釣果が見られ、一安心でした。さて、この様に盛期のダム湖の釣りはまずまずの成果を納めていますが、今後はトローリングを主体としたダム湖の釣りが、まだまだ続きます。
【今回使用のタックル】 ShimanoCarddiffNX/S72L、StradicC3000、SunlineCastawayPE30lb(2号)+SeaguarGrandmaxFX2.5号、 Sukari60Deep/イブキ/OB鮎/Aマリン/赤金、PinTail(70mm20g)赤金、ShoresHeavyMinnow65plus(19g)SunGoldOrangeBerry、鉄板Vib(26g)GoldGreen、他 |