単独釣行レポート

大雨の変わった贈り物(7月21日・8月4日)


今年の梅雨の豪雨は、東北地方に大きな被害をもたらしました。中でも7月中旬に山形県を襲った集中豪雨は凄まじく、大井沢では観測史上最も高い「日降水量」を記録したほどです。そして、2年前に「大雨の贈り物」と言うレポートをお届けしたのを覚えておられるでしょうか? 深く長いゴルジュ帯に守られていた大イワナ達が、集中豪雨で下流へ流され、下流部の遡上止めの下に集まる事があるのです。そんな大イワナ達を一気に釣り上げる言う内容のレポートでした。今回の豪雨でも・・・、と柳の下の泥鰌(ドジョウ)を求めて再び下越地方へと車を走らせましたが、そこに待っていたのは、ちょっと変わった贈り物でした。

注:釣り場の特定を防ぐため、風景画像に大幅な修正を加えるか、同イメージの別の場所の写真を使用しています。ご了承下さい。


山形・下越の13年7月豪雨時の雨量  50mm以上はピンク100mm以上はで表示

上図に今年の山形・下越での豪雨の記録を載せてみました。関東・甲信越では、例年より15日も早い7月6日に早々と梅雨明けが宣言され、東北の梅雨明けも例年よりかなり早いものと期待していました。しかしその直後、梅雨末期の豪雨は今年に限って東北に牙をむき始めたのです。特に7月18日の豪雨は、西川町大井沢で日降水量の記録を更新する212mmを記録し、大きな被害をもたらしました。もちろん、被害の出ている様な場所で釣りをする事は絶対に許されるものではありませんし、そもそも、氾濫を起こした様な場所では、魚たちも壊滅的な被害を受けていて、釣りには全くなりません。

ヤマユリママコノシリヌグイ夏の花、ツユクサ

【7月21日(日)】

ただ、山間部の集中豪雨は源流やゴルジュ帯の中にいた魚たちを下流部へと押し流してくれます。この時期は水温が高く、流された魚たちはすぐに源流を目指して遡上を始めるため、普段は見られない様な大物が下流部の遡上止めの付近で集中して釣れることがあります。特に下越地方には、高根・三面川から始まり、実川・奥川に至るまで、長大な深いゴルジュを擁する渓流が沢山あり、普段は釣り師の手の届かない場所にいた大イワナたちが、下流部の滝の下などで釣れる場合があるのです。こういったチャンスは、年に1度有るか無いかなのですが、そんなバクチの様な釣りを求めて、豪雨の2日後に、車を南へと走らせたのでした。

滝下は近づけないほどの激流透明度は15cm程度の泥濁りブッシュ下を探ってみるも反応無し

しかし、釣り場に到着してみると実にガッカリでした。下越の殆どの観測ポイントでは、山形県内ほどの降雨は無かった様なのですが、下越から月山方面に雨雲が通り過ぎたらしく、山間部では想像以上の豪雨が有った様なのです。釣り場となるポイントは幾つかあるのですが、どの川を覗いてみても水量は凄まじく、2日経っても強い濁りが取れておらず、全く釣りになる状態ではありませんでした。 実は20日の土曜に下越入りをしていましたが、どこも手の付けられない様な状況であり、とある源流部の堰堤の釣りを試み、1日置いて21日にも様子を見てみましたが、上写真の如く、やはり全く釣りにはならない状況でした。

マツヨイグサ雨蛙もウバユリで一休みヤマアジサイ

【8月4日(日)】

その後も山形・下越では何度かの豪雨があり、2週間空けたこの日にも、下越地方を訪れています。8月に入ったこの時期は、ダム湖も堰堤の釣りも終わってしまっていて、渇水で大物も望めません。しかも老体の私には酷暑とアブの猛攻には耐えられず、最近はこの時期に釣りに出かけることはほとんど有りません。しかし今年は前日の8月3日にようやく梅雨明け宣言が発表され、未だにどこの川も増水したままでした。しかも、梅雨明け直後でアブはまだ出ていません。そのため、ヒマに任せてブラリと家を飛び出してきたのでした。

底石が所々に見える程よい濁り透明度は1m程度かしかし、イワナの反応は無い

ただ、この地域の今年最大の豪雨は7月18日であり、下流部へ落ちてきているだろう大イワナたちも、この2週間の間に、既に多くは釣り切られているはずです。ほとんど期待の持てない状況ではありましたが、それでも1つ目のポイントに立ってみると、程よい笹濁りで水温・水量ともに最適の状態でした。こういった濁った状況下では、大物は脇のブッシュの下や流れに沈んだ大石の脇に潜んでいるものです。そんな場所に狙いを付けながら、Dコンタクト63鮎(腹部に赤マジックでラインを引いたもの)を投入し続けましたが、これが全く反応がありません。やはり釣り切られてしまっているのでしょうか。

Dコン63鮎の腹部を赤に着色こんな強い流れの中でヒット・・・今頃、しかも、なぜこんな上流部に??

諦め気味に下流側へと歩を進め、上写真の様な非常に強い流れの向こう側にミノーを投入。3回ほどトゥィッチを加えると、ガッと強烈なアタリがようやく出てくれました。ただ、魚の引きは非常に強く、激流にも関わらずラインは上流側へ走ってゆきます。不思議に思いながらも何とかやり取りし、近くに寄って来た魚を見てビックリ仰天してしまいました。54cmの銀ピカのサクラマスだったのです。なぜなら、ここは下越です。山形県内であれば、この時期まだサクラマスを釣る事は許されていますが、新潟県では釣ってはいけない魚なのです。ただ、それでも釣れてしまったのは仕方ありません。大急ぎで写真を撮影し、すぐにそのままリリースしました。

ミノーをガッチリと咥えたサクラマス54cm 写真撮影後、即リリースしたサクラマス54cmと私
その後はチビヤマメがスレてきた付近をしつこく探ったが・・・小さなヤマメがヒットしたのみ

しかしそれにしても不思議です。この釣り場は海からは数十キロも離れた山岳地帯の谷底なのです。途中には幾つかの堰堤もあり、まさかこんな所でサクラマスが釣れるとは思いもしませんでした。加えて、サクラマスの釣期はせいぜい6月一杯であり、この時期に銀ピカのサクラマスが釣れることなど、まず有り得ないでしょう。謎だらけの1尾なのでした。そして、その後は更に下流部を探ってみましたが、イワナの反応はやはり皆無であり、小さなヤマメが2尾、スレたりヒットしたりして釣れただけでした。本来は大イワナを求めてこの地にやってきた訳ですが、思いもよらない成り行きに、唖然としてしまいました。

オトギリソウトリアシショウマヒヨドリバナ

【8月4日(日)午後】

さて、今回の本題はここまでですが、あまりにも本文が短いため、もう一つだけオマケの話題を書いておくことに致しましょう。上記の様な釣りは午前中のひと時に限られるため、午後からは2008年にオープンしたという私のまだ知らない管理釣り場へと足を運んでいます。この管釣りの情報は近隣の管理釣り場案内のページにすでに掲載していますので、よろしければご覧下さい。

五頭(ごず)フィッシングパーク 大き目の池が一つだけ管理棟は冷暖房も利いていて、休憩もできる

ただ、最近の管釣りで思うことは、初心者や子供でも確実に釣れる様にと、25cm前後の小型のニジマスを大量に放流していて、ベテランの釣り師には些か物足りなくなってしまったという事です。この五頭FPも然りで、大きな魚も泳いでいるのが見えるのですが、適当なフライを投入すると真っ先に小さなニジマスが喰い付いてきて、小物の入れ食いになってしまい、すぐに飽きてしまいました。現在のところ、蔵王・白河・裏磐梯のフォレストスプリングスが大型魚を大量に放流していて、そのためか、入客数も他の管釣りとは段違いに多くなっていて、寡占化が進んでいる様なのです。やはり養魚場の経営する管釣りには勝てないのでしょうか。

カタバミオカトラノオキンミズヒキ
リリース直前のサクラマス 真夏の大雨のちょっと変わった贈り物だった

【今回使用のタックル】
Ueda TroutPluggingSpinGS902H、SensiLiteMG2500、PE2号+シーガーエース1.7号
D-Contact63S/鮎(赤腹改)/Gチャート、他