南東北の多くの堰堤プールでの釣りは、毎年、梅雨空けとともに終焉を迎えます。豊富な雪代により流下してきたイワナたちは、梅雨明け後の渇水と水温の急上昇を受け、一気に源流へと遡上を開始するからです。当初の予想に反し、今年は平年より12日も早く、7月11日に梅雨が空けてしまいました。県内の堰堤プールでも、早々に水温の上昇を招いていて、既に大物たちは源流を目指し、遡上を開始している様です。今年はダム湖でも堰堤プールでも、大物の数が異様に少ない現象がみられていましたが、状況は最後の最後に少しだけ好転し、何尾かの大物がお相手をしてくれました。(長文ご注意下さい。)
【6月19日(日)】 我々の仲間内では、今年は尺以下の小物は比較的良く釣れているのですが、ダム湖の釣りでも堰堤プールの釣りでも全体に型が小さく、大物の釣果が極端に少なくなっています。昨年までの私の平均的な釣果を見ると、40cmを超える大物の数は6月初には10尾を超えているのですが、今年はまだ3尾だけ。なんとも寂しい結果となっています。しかし、堰堤プールの釣りの終盤は最後の大物のチャンスであり、挽回を期待して、この日も新潟のBuuさんと下越の釣り場へと繰り出しました。
この釣り場は比較的標高が高く、この時期でも水温が低くて大物が期待できる釣り場なのですが、ジンクリアの場合が多く、神経質な釣りを要求されることが多い堰堤プールです。しかし、今年は中〜小型のイワナ達がどこの釣り場でも良く釣れていて、この堰堤プールでも、釣り始めから快調に釣れてくれました。こういった透明度の高い堰堤プールでは、強く濁った雪代が定期的に入って来ないため、煙幕理論は通用しません。透明度の高いプール内では、魚たちは自由に泳ぎまわれるため、餌を最も多く効率的に楽に確保できる場所に多くのイワナ達が集まり、最良のポイントになります。
それは大抵の場合、上流からプール内へ流入してくる水の流れが緩くなり、止まりかけるあたりの底がそのポイントになります。その地点は、風が無ければ上流からのゴミが浮いて溜まっていたりして、すぐに判別が付くものです。そういった場所では、上流から流れてきた土砂でカケアガリが形成されていて、魚たちが流れてくる餌を待ち構えている様です。そういった所にヘビーシンキングミノーやディープダイバーを投入し、底まで沈めた後、底ギリギリをゆっくりとトリッキーにリーリングしてくれば、イワナ達をヒットさせることが出来ます。但し、透明度が高いためスレ易く、ルアーを頻繁に交換したり、ルアーの動き方を変えるなどの対策が必要です。
この日は早朝5時前から釣り始めて、すぐにBuuさんに38cmがヒット。次々とイワナがヒットし始め、「こりゃイケるかな!」と期待しましたが、あとが続きません。しばらくして私にも37cmまではヒットがありましたが、やはり全体に型は小さく、尺以下のおチビちゃんが半分以上を占めていました。9時過ぎには釣り場は完全にスレてしまい、反応が無くなりました。昼食と昼寝を挟んで午後2時過ぎから再び夕方まで粘り、最終的にはこの日は2人とも6尾づつの釣果。しかし、数は出たものの、最後まで大物は姿を現してはくれませんでした。
【6月26日(日)】 翌週も同じ堰堤プールへと足を運んでいます。Buuさんは夏に仕事が忙しくなるらしく、そろそろ日曜も返上の超多忙モードに突入した模様で、この日は私の単独釣行となりました。3日前の木曜から南東北には梅雨前線が居座り、この地にも大雨を降らせていました。前日の土曜夕方に現地入りしたものの、濁りが強く釣りになりませんでした。この釣り場はジンクリアなことが多く、こんなに強く濁りが入ることは稀で、透明度が上がると大釣りのチャンスがやって来るはずです。釣り場のすぐ横で車中キャンプでしたが、幸いにも夜間はそれほど雨は降らず、翌朝起きてみると、絶好の透明度となっていて、大いに期待できました。
フローターを担いで、勇んで釣り場へと降りて行きましたが、しかし、早朝に釣れたのはなぜかおチビちゃんが1尾だけ。実はこういった事はこれまでも何度か経験していて、時間を空けると大釣りになる可能性が高いのです。非常に強い濁りのため、イワナ達は周辺のワンドの奥など、流れが少なく安全な場所に逃げ込んでいた筈なのですが、そういった周辺まで透明度の高い水が回って行くのに時間が掛るため、魚たちはまだ活動を開始していないのでしょう。やがてプール全体の透明度が上がってくると、イワナ達は餌を求めて動き出すと言う訳です。しかも、大雨の後で腹ペコです。迷わずルアーに喰いついてきます。
この釣り場はフローターが無いと殆ど釣りにならず、他の釣り人がやって来ても安心なため、早朝は1時間ほど釣っただけで、車に戻って二度寝を決め込みました。3時間ほどグッスリと寝た後の11時過ぎ、釣りを再開すると今度はすぐにヒットの連続となりました。ただ、なぜか全体に型は小さく、大物はまだ活動していない様子。透明度が上がるにつれ、あちこちから順次に避難していた魚たちが出てくるため、焦らずにそのまま釣り続けます。そして12半頃、これまでより明らかに引きの強い魚がヒット。今年4尾めの大物41cmでした。しかし、この見事なプロポーションと斑点の細かさはどうでしょう。今年一番印象に残る獲物になりそうです。
大物を掛けた後はさすがにスレてきたため、昼食にしました。しかし、食事中になにやら暗雲が・・・15時頃から釣りを再開しましたが、すぐにバケツをひっくり返した様な豪雨になってしまいました。堰堤のプールは増水しても流される心配はまず有りませんし、道路のすぐ横でいつでも逃げられるため、増水にも安全度は高いのですが、さすがにここまで降られるとメゲてきます。しかし、こういう時に限って良く釣れるものなんですねぇ。まさしく入れ食いの1投1尾なのです。ただ、1時間ほどで泥濁りの水が入ってきて、16時ころには撤退となりました。結局この日は、ほとんど全てが最後の2時間ほどの釣果で、全部で13尾、尺上5尾でした。
【6月29日(水)】 最近は「晴釣雨株」の生活ですが、この日は梅雨の合間の良いお天気となったため、前場の値幅の少なさに飽きあきして、午後から釣りに出かけてしまいました。時間が限られているため、自宅から1時間ほどの堰堤プールを選びましたが、ここはいつもジンクリアで釣り辛く、これまであまり入渓したことのない釣り場でした。ただ、前日までの5日間ほどは大雨が続いていたため、この日は雨後の大釣り期待で入渓してみたという訳です。しかし、15時過ぎに現場に到着して少々ガッカリしました。いつも通りに全くのジンクリアで、道路からプールの底が丸見えなのです。
それでも仕方なく16時ころ釣り始めましたが、長雨後のためかジンクリアにも関わらず反応は良く、すぐに魚のトレースが見られました。ジンクリアな釣り場では、インレットからの流れが止まる辺りに一番のポイントがあると前述しましたが、この日は風が無く、ゴミが帯状に浮いていて(「前線」と呼んでいる)、その底が最高のポイントであろうことがすぐに判別できました。真っ先にその近くまで移動し、深さ4mほどの底ぎりぎりをDダイレクトでトレースすると、すぐに26cmのヤマメがヒット。続いて32cmイワナがヒット。しかし、クリアなためすぐにスレたのか、このポイントではこの2尾でアタリが遠のきます。
その後は、更に奥へと移動し、小さな沢の流入点の近くでヤマメを追加、そのまま1時間ほど付近を探りましたが、小さなヤマメのトレースがあるもののヒットせず。そして、かなり薄暗くなった17時半ころ、再び前線のポイントへ戻り、Dダイレクトで底を探ると、やっと主が動き出してくれました。この堰堤プールでは初の大物43cmでした。そしてインレット方面へ移動しながらミノーを投げ続けると、最後にはインレットの近くで、尺ヤマメ32cmを追加。結局この日は2時間ほどの釣りにも関わらず、イワナ4尾、ヤマメ3尾の大漁でした。いくらジンクリアであっても、やはり長雨の後は、絶好のチャンスであることは間違いない様です。
【7月2(土)〜3日(日)・9日(土)】 翌週の2日は最上地方の堰堤プールに出かけましたが、金曜夜の豪雨による強烈な濁りで全く釣りになりませんでした。その日は現地で車中泊でしたが、翌3日も濁りは全く取れず、やはり釣りには程遠い状態。仕方なく、付近の渓流でチビヤマメを釣ってお茶を濁してしまいました。その翌週も木・金・土曜と雨の連続でした。9日は再び最上地方の堰堤プールにリベンジに出かけましたが、やはり前夜の豪雨で濁りが強く、お手上げの状態。それでもこの日はインレットから遥か離れた濁りの少し落ち着いた場所でなんとか尺イワナをゲット。しかし、水温は既に19℃にもなっていて、この堰堤プールでの釣りが終焉を迎えていることを示していました。
【7月10日(日)】 翌日は濁りの少ない釣り場を求めて、前週の平日に訪れたジンクリアの堰堤プールへと方向を転換しました。多少の雨では濁らないこの釣り場のことを考えて、この日は夜明け前の3時半には現場に到着し、薄暗くなり始める4時ころ、戦闘開始です。堰堤プールの釣りでは、フローターを漕ぎだす前に岸辺から何投かルアーを投げて、入渓地点付近にいる魚をまず釣ってしまうのですが、あれれ、2投目でガツンと強いアタリがあり、下写真の42cmがあっさりと釣れてしまいました。今シーズン6尾目の大物でした。
こりゃイケるかなと、勇んでフローターを漕ぎだし、前週に一番良く釣れたポイントまで移動しながらルアーを投げまくりましたが・・・反応はありません。良く見ると、透明度は前週よりも遥かに高くなっていて、どうやらこの地ではそれほどの雨は降らなかった様子。日が上がってきて明るくなってくると、あれま、4m以上も深さのある底の様子が丸見えで、これじゃ釣れる筈はありませんね。2回ほどチビイワナらしき魚のトレースが見られたものの、9時過ぎまでしつこくキャスティングとリーリングを繰り返すも、その後は全く何も釣れませんでした。
【7月17日(日)】 ところで、梅雨明けの平年値は、南東北では7月の23日ですが、今年は平年よりかなり早く、11日に梅雨空けが宣言されてしまいました。昨年は6月初から異様な猛暑が始まり、しかも極端な小雪とカラ梅雨であったため、早々に水温が上昇してしまったためか、1ヵ月近くも早く堰堤プールの魚影が見られなくなってしまいました。しかし、今年は残雪が非常に多かった分、水温は低めに保たれていた様で、7月の中旬まではなんとか堰堤プールの魚影が保たれてくれた様です。しかし、梅雨が完全に空けてしまった今、さすがに水量も減り、水温も急上昇して、イワナたちは源流への遡上を開始し始めている様です。
梅雨明け後も何度かの夕立ちが有り、まだ渓の水量はかろうじて保たれてはいる様でしたが、この週が今年最後の堰堤プールの釣りになるだろう事を覚悟して、この日は再び下越方面へ車を走らせました。気温は連日30℃を超えていて、この時期でもまだ水温の低い堰堤のプールはこの釣り場以外には無いと考えたからです。釣り場に到着すると、渓畔には鮮やかなピンクの下野草(シモツケソウ)が咲き乱れていて、すでにこの地が夏の盛りであることを示していました。早朝の水温は15℃と、ギリギリの状態。朝4時過ぎから9時ころまで粘りましたが、イワナ32cmを頭に4尾の釣果。大物は既に源流に向かっている様でした。
そして、午後からは悪あがきをして、同じ下越地方の別の堰堤プールへと転戦しています。こちらも水温は18℃と限界を超えていて、大物はもう居そうにもありません。それでもフローターを漕ぎだして釣り始めると、3投目で上写真の非常に綺麗な尺ちょうどのイワナがヒット。しかし、釣れたのはこの1尾だけで、その後は何の反応もなく、1時間ほど粘った後、2011年の堰堤プールの釣りを終えました。
さて、昨年は6月中旬には魚影の見られなくなってしまった堰堤プールの釣りでしたが、今年は7月中旬まではなんとか楽しませて頂きました。今年はダム湖でも堰堤プールでも大型が少なく、小型ばかりが良く釣れていたのですが、最後の最後に少しだけ大物にも巡り合えることができました。温暖化による水温上昇と河川環境の悪化に加え、釣り人の増加で年々釣れなくなっている堰堤プールの釣りですが、来年以降は、さて、一体どの様になるのでしょうか。あと何年この釣りを続けられるか、この6月に還暦になった私には不安も有りますが、もう少しの間、頑張ってみたいと思っています。 【今回使用のタックル】 AlphaTackle LakeMarquis80H、Shimano BiomasterC2000/SensiLiteMG2500、 PE0.8号+Kureha SeagarAce1.2号、D-Direct鮎、D-Contact50S鮎、WiseMinnow50FS鮎、DENS50ヤマメ、他 |