今年も堰堤プールの釣りが始まっています。昨年は猛暑と小雪で不調だったこの釣りですが、今シーズンは逆に遅れ気味の季節と多い残雪のお陰か、6月中旬まではまずまず好調に推移しています。ただ、ダム湖の釣りと同様に、堰堤プールにおいても、全体として型は小さく、また大〜中型(尺〜40pオーバー)の数も少なくなっている様です。一方で、どこの堰堤プールでも小型のイワナ(尺以下)の数は豊富であり、尾数だけは例年を上回っている点がダム湖とは異なっている様です。今シーズンの堰堤プールの釣りを、前半と後半に分け、レポートします。 【5月14日(土)】 あれ?っと思われた方もおられるかも知れませんが、そうです、この日は山形渓遊会の春季釣行の日でした。水量が多く、しかも寒くて釣りにならず、午前中の早い時間に源流の釣りを切り上げ、お昼ころにはテンバへと戻っていた我々でしたが、しかし、どうも私は納得がいかず、夕方の宴会までの時間を利用して、近くの堰堤プールでフローターを浮かべて釣っていたのでした。今年初めての堰堤の釣りでしたが、ほんの1時間足らずの釣りの割には非常に良く釣れてくれ、38,35,32,29cmの4尾の釣果が見られました。ただ、この釣り場は、過去には40pオーバーの出ていた堰堤プールであり、サイズは例年より小さめでした。
【5月15日(日)】 翌日も渓遊会で午前中は近くの源流に入りましたが、またまた不発。私は早めに切り上げて車の中で昼寝を決め込んでいましたが、前日の私の釣果を見た渡辺会長さんは、ちゃっかりと件の堰堤でルアーを投げていました。なんでも、スローシンキングのミノーを遠投し、1分間放置してから巻き取り始めると、ググっとアタリが出たそうです。ジンクリアの堰堤プールだったため、ミノーを底まで完全に沈めてからリーリングしたのが成功の要因だった様です。しかしこの38cm、普段は餌釣りの会長さんにしてみれば超大物です。釣れた瞬間は40pオーバーかと大喜びしたそうですが、残念でした。
この日はお昼ころには渓遊会の解散となりましたが、山形への帰り道、まだたっぷりと時間があったため、私は更に別の堰堤プールへと転戦しています。こちらの堰堤プールは、昨年は小雪で釣期を逃してしまいましたが、2年前には40pオーバーも出ていて、大物の期待をして入渓しました。しかし、1時間半ほどで釣れたのは、31,30,28,27,27cmと、短い時間の割には数は出たものの、小型ばかり。非常にがっかりしてしまいました。時間的にも快晴の日の夕まずめの最高の地合いであり、大型がいれば釣れたハズなのですが、やはりダム湖と同様に、源頭の標高の低いこの堰堤プールでは、小型ばかりになっていた様です。
【5月29日(日)】
翌々週は早朝からBuuさんと某ダム湖へと出漁しましたが、ダム湖の釣りも終盤の様で、釣果はさっぱりでした。同じダム湖で夕方まで粘っても釣れないだろうと、2人で近くの堰堤プールへと転戦しました。ここも40p前後の大型のイワナの実績があり、期待して入渓したのですが、残念ながら釣果は25〜27cmのおチビちゃんが3尾だけ。Buuさんにも同サイズのイワナがヒットしましたが、どうも中〜大型の気配は全くありません。Buuさんも私も、この日は朝からロクな釣果が無く、全くの消化不良。仕方なく、普段は滅多にやらない堰堤の下の落ち込みへ移動し、お茶を濁してしまいました。
まだ5月末とあって、堰堤の直下には大型は入り込んではいないと考えられるのですが、小さなイワナであれば相当数がいるものです。暗い釣り場のため、Dコン50Sのチャートを投げ、少し沈めてリーリングしてくるとすぐに反応があり、25p前後のおチビちゃんが次々とヒットしてきました。Buuさんも同サイズのおチビちゃんとしばし戯れ、なんとか消化不良を紛らわすことが出来た様でした。ちなみに、上下の写真を見比べて頂ければすぐに判りますが、堰堤のプールは川と比べると格段に栄養が豊富なんですね。魚の太さが全く違います。
【6月3日(金)】 6月に入ると気温も急上昇し、初夏らしいお天気が続きました。この日は午後の空いた時間に、自宅近くの堰堤の釣り場を幾つか探索しています。10年以上前は、自宅から1時間以内の堰堤の釣り場で随分と良い思いをさせて頂いたのですが、最近は釣り人も増え、さっぱり釣れなくなっています。加えて、山形県では右下写真の様な堰堤のスリット化が進んでおり、良い釣り場が少しづつ姿を消しつつあります。右下の写真は大井沢地区の見附川にかかる大堰堤で、10年ほど前は尺オーバーのイワナが束になって釣れていましたが、昨年、スリットが入りました。もっとも、数年前から釣り人が激増し、ここ数年はさっぱり釣れなくなっていました。
ところでこの堰堤のスリット化ですが、一体何のためにやっているのでしょう? 殆どの堰堤で、スリットは中途半端に中ほどまで切り込まれるだけで、魚たちは堰堤を遡上できる様になる訳ではありません。たまに魚道が追加設置される事もありますが、殆どの場合、すぐに土砂等で埋まり機能を発揮していません。春に源流から流下してきた魚たちは、プールが有ればそこに溜まり、夏には再び遡上して産卵活動に備えるのですが、スリット化後は堰堤の下へ落ちてしまい、源流部へは戻れなくなってしまいます。その結果、下流部で餌釣り師たちに簡単に釣り切られてしまい、魚影はどんどん減ってしまうだけなのです。
実際、小国町や西川町の複数の堰堤では、スリットの入った翌年から、その上流部での釣果がガックリと落ち、型も極端に小さくなってしまいました。また、新たに建設中の堰堤でも、スリットの下部に大きな遮蔽物をわざわざ作ったり、段差を大きく設けたりして、魚への配慮など何も見られません。私の見る限りでは、魚の遡上が確保されている堰堤は、下越胎内の頼母木(たもぎ)川や銅山川中流に数年前に出来たスリット堰堤くらいで、他は何をか言わんやです。国交省では十年ほど前に「自然に配慮」した河川工事へシフトした筈なのですが、現実には自然への配慮など何も考えられていないのが現状なのです。 【6月11日(土)】
さて、翌週はまたまた新潟のBuuさんと日曜にミニオフの約束をしていました。土曜は昼過ぎに山形を出発し、夕方17時ころ、久しぶりの下越の堰堤プールへとやってきました。夕方にルアーを投げまくると、翌朝はスレて釣れなくなってしまうため、別の釣り場でロッドを出す予定でしたが、増水と工事で釣りにならず、結局、この堰堤でルアーを少しだけ投げてみることにしました。しかし、これが思わぬ結果となってしまったのです。すぐにおチビちゃんが2尾釣れ、そろそろ切り上げようかと思いながら軽く投げたDダイレクトに、あれま、今シーズン最大の46pの大イワナがヒットしてしまいました。30分足らずの出来ごとでした。
【6月12日(日)】 そして、翌朝は朝4時過ぎにBuuさんがやってきました。前日に大物を釣ってしまった私は、この日は最初からポイントを全てBuuさんに譲り、遠慮しながら釣るハメになってしまいました。しかし、こういう時に限って良く釣れるものなんですよね。Buuさんにまず38p、続いて36pが2尾と、立て続けに良型を釣られてしまいました。私も31pを釣りましたが、Buuさんはすかさず37pを追加。その後もBuuさんは釣りまくり。私もなんとか36pを釣って面目だけは保ちました。午後からも追い上げて、なんとか2人とも10尾づつの釣果となりましたが、なぜか私は小型が中心で、この日はすっかり「Buuさん'sDay」となってしまいました。
さて、今年はダム湖の釣りでも大型が不漁で、小型が中心となっていました。その原因として「昨夏の猛暑で標高の低い源流では大型のイワナが死滅したのではないか?」という推論を立てました。このレポートでもお気づきかと思いますが、残念ながら、その傾向は堰堤プールの釣りでも同様の様です。この日入った堰堤のプールは、実は標高2000m級の山を源頭とする標高の高い水系であり、夏でも水温が非常に低く、猛暑の影響が比較的少なかったのではないかと思われました。しかしながら、他の堰堤プールは源頭の標高が低く、大型は皆無、中型も少なく、チビばかりが幅を利かせていた様なのです。
【6月15日(水)】
ところで、昨年6月に退職し今はフリーの身となっている私ですが、最近は「晴耕雨読」ならぬ、「晴釣雨株」の生活になりつつあります。梅雨には珍しくこの日は非常に良いお天気になり、しかも株式相場も安定していたため、急遽、気になっていた堰堤まで足を伸ばしてしまいました。この堰堤は昨シーズンの猛暑の影響を最も強く受けた釣り場であり、去年は殆ど何も釣れませんでした。その理由として、水温が早くから上昇したため魚たちが遡上を早めてしまったのではないかと考えていました。そのため、残雪が多くなれば魚影は復活してくれるのではないか? と推察していたのです。
案の定、ここではほんの3時間ほどの釣りで、37,36,31,28,25cmがヒットしてくれ、魚影の復活している様子を確認することができました。しかし、過去の記録と比べてみると、この日の釣果は明らかに型は小さく、また、数も少なくなっている様に思われました。この堰堤も、やはり2000m級の標高の高い源頭を持っていますが、途中に落差の大きい堰堤を沢山擁しているため、大物たちは中流域で産卵を余儀なくされているに違い無く、猛暑の影響がより強く出たのではないかと思われました。 さて、5月一杯は季節が2〜3週間も遅れて推移していましたが、6月に入ると太平洋高気圧の勢力が急激に増し、逆に季節は早く推移し始めている様にすら思えます。今年もまた猛暑の気配がする中、堰堤プールの釣りの後半戦は、一体どの様になるのでしょうか。東北の梅雨明けの平年値は7月23日ですが、今年はどうやら早めに梅雨が明けてしまいそうな気配です。梅雨が明ければ各地の堰堤プールも干上がってしまい、堰堤の釣りもあと2週間ほどが勝負となりそうです。それまで、もう少しだけ堰堤の釣りを楽しみながら、イワナ達を見つめ続けてゆきたいと思っています。 【今回使用のタックル】 AlphaTackle LakeMarquis80H、Shimano BiomasterC2000/SensiLiteMG2500、 PE0.8号+Kureha SeagarAce1.2号、D-Direct鮎、D-Contact50S鮎、WiseMinnow50FS鮎、DENS50ヤマメ、他 |