2011年の渓流釣りシーズンがようやく開幕しました。今年は季節の移り変わりが3週間程度も遅く、4月の2週目に入ってようやくダム湖の結氷も融けたばかり。くわえて、東日本大震災の影響で自粛ムードが漂い、また、たび重なる余震や原発事故のニュースで委縮してしまい、スタートが大幅に遅れてしまいました。大震災で「釣りなどご法度」などとお考えのかたもおられるかも知れませんが、過度な自粛と生活の委縮は本物の不景気を招き、被災地を更なる窮地に追い込みかねません。非被災の我々が出来るだけ早く平常に戻る事も必要と考え、これまで通りのレポートを綴りたいと思います。 大震災の影響は山形にも多少は押し寄せました。市内の建物の被害は皆無に近い状況でしたが、3月11日の本震後の1日間と4月7日の余震後の数時間は、山形市内も停電し、普段から山で使い慣れている非常用電源が役に立つという皮肉な状況でした。また、3月一杯くらいまでは、ガソリンとインスタント食品類が不足して、車の利用を著しく制限されてしまいました。しかし4月に入り、燃料や多くの食料品は平常に戻っています。なのに、なぜか観光地の客足は大幅に低下していて、例えば山形蔵王の温泉街・スキー場では前年比80%ダウン(客数1/5)と悲鳴をあげている様です。
その原因は、震災の自粛ムードだけではなさそうです。たび重なる強い余震と原発事故のニュースが人々の気持ちを委縮させてしまい、外へ出る活力を奪ってしまっています。加えて放射能に対する風評が追い打ちをかけています。チェルノブイリや他の疫学調査から言えることは、高濃度の放射性ヨウ素が5歳未満の幼児の甲状腺腫を増加させること以外は、今騒がれている程度の放射能では、何ら健康上の問題を引き起こす事など無いと言うことです。釣りでも他の遊びでも、或いはボランティアでも構いません。お金と体力に余裕のある方は、ぜひ東北に来て下さい。そして、東北の産品をたっぷりと購入し、食べて下さい。それが復興の手助けになるのです。(4月15日)
【4月9日(土)】 さて、今年は残雪が多く、下越地方のダム湖の結氷が融けたのは4月6日〜13日頃と、季節の推移が昨年より3週間ほども遅い様です。ただ、この状況はこれでも平年並みで、ここ数年は暖冬で結氷の融けるのが異様に早かっただけの様です。9日は午前中に山形市を出発し、のんびりと付近の野草花や風景の写真を撮影しながら某ダム湖へと移動しました。例年のことですが、初釣りは残雪で道路が塞がれ、車でダム湖畔まで入ることができません。仕方なく40分ほど歩いてポイントに入るのですが、行動範囲が狭い範囲に限られてしまい、大した釣りは出来ないのです。
この日はどんよりと曇っていて、釣り場付近はまだ残雪に埋もれていました。ポイントに到着したのは土曜午後3時半ころでしたが、他に釣り人の姿は皆無でした。幸いにも風は殆ど無く、靄に包まれたダム湖の風景は数ヵ月ぶりに見る大自然の造形であり、見ているだけで幸福な気持ちになってきます。そして、キーンと冷える空気の中で一人キャスティングを繰り返していると、やがて小さなアメマス君がお相手をしてくれました。ヒットルアーはWiseMinnow50FSチャート。今シーズンの初物としては小さな尺ちょうどの獲物でしたが、久しぶりの魚の感触に十分に満足できました。
その後36pのアメマスを追加(WiseMinnow50FSサビ鮎)したところまでは良かったのですが、最後にちょっとしたアクシデントがありました。根掛かりにロッドを煽ると、あっさりとバットから折れてしまったのです。実はこのロッド、昨年9月に北海道で同じ所を折っていて、応急手当で継いで使っていたものです。そもそもこのロッドは、98年の釣り大会で賞品として頂いたものであり、もう12年以上も使い続けていて、そろそろ引退の時期だったのでしょう。その後は新潟市内まで移動し、ロッドを新調せざるを得ないハメになってしまいました。
【4月10日(日)】
翌朝は前日とは違って良いお天気の暖かい日でした。風も無く、ダム湖畔の景色も最高です。新潟のBuuさんとは実に10ヶ月ぶりのミニオフでしたが、普段から連絡を取り合っているせいか、久しぶりの感じがしません。この日も30分ほどの雪上歩行でポイントを目指しましたが、湖畔の道路は雪崩でズタズタになっていて、難儀させられました。日頃の運動不足を思い知らされます。そして、8時前にはポイントに到着しキャスティングを開始しましたが、昨日と違って反応がありません。晴天で明るい上に透明度は昨日以上に高く、どうも魚からこちらが丸見えの様子です。
仕方なく、普段はあまり使わない比重の非常に高いスプーン(Noby'sBlueBottomTracer7gGoldヤマメ)の遠投をすることで、9時ころになってようやく37cmのアメマスをゲット。遠くて深い所にいる魚は警戒心も薄いため、なんとかヒットしてくれた様です。そのしばらく後にBuuさんにもヒットがありましたが、残念ながらバラし。魚はそこかしこに泳いでいる様なのですが、透明度の高さと明るさで、すぐにスレてしまう様なのです。そして、それ以後は反応がパッタリと途絶えてしまいました。しかし、歩きでこのポイントまで来ているため、夕方までその場で粘る以外はありません。
お昼はラーメンとコーヒーで暖を取りながら、久しぶりの再会に話が弾んでいるうちに、あっと言う間に午後の地合いがやってきました。こういうお天気の良い日は、夜明け後1時間から午前10時ころまでと、午後3時から5時ころまでの時間帯に活性が高くなるものです。そして3時半頃、まずはアメマスのトレースを確認。4時ころになって今度は私の投げたDダイレクト鮎に尺前後のアメマスのヒットがありましたが、残念ながらこれまたバラし。そして4時半ころ、満を持してBuuさんのロッドが大きく曲がりました。Buuさんの今シーズンの初物は、本日一番の39cmのまずまずのサイズ。大満足の様子でした。
震災でどうなることかと思われた2011年シーズンですが、こうしてなんとか無事にダム湖の釣りは始ってくれた様です。例年、シーズン初は上記レポートの様な小さめのアメマスが中心になります。しかし、今年は4月2週目以降に非常に暖かい日が続いており、強い雪代で源流部からのイワナの大物が効率よく流下してくれ、4月の後半からはそういった大物が釣れ始めるのではないかと大いに期待しています。 さて、今年は季節の移り変わりがとても遅かったのですが、その分、暖かくなると一気に春の花たちが咲き乱れ始めています。被災地の人たちの心の中にも、そんな春の早く訪れることを心から祈りながら、引き続きレポートを綴って行きたいと考えています。
【今回使用のタックル】 Wellner 8ft TroutRod(9日)、AlphaTackle LakeMarquis80H(10日) Shimano BiomasterC2000、PE0.8号+Kureha GrandMax1.5号 WiseMinnow50FSサビ鮎/チャート(5.2g)、D-Direct鮎、Noby'sBlueBottomTracer7gGoldヤマメ、他 |