北海道遠征釣行2010前編

ミヤベイワナとオショロコマ (9月26日・10月1日)


今年も北海道に遠征してきました。釣り目的の北海道は今回で4回目ですが、今年は退職後のあり余る時間を利用して、当初は約1ヵ月の長期滞在を予定していました。しかし、途中で大きく体調を崩してしまい、2週間足らずで撤退を余儀なくさせられてしまいました。当初の予定のイトウ・サケ・ニジマスの釣りは出来ずじまいでしたが、レポートでは、前篇に「ミヤベイワナとオショロコマ」、後編に「道東のアメマス」の2回に分けてお届けします。ミヤベイワナは私にとって未知のイワナであり、時間に余裕の出来た今回、初めて挑戦してみました。

注:釣り場の特定を防ぐため、風景画像に大幅な修正を加えるか、同イメージの別の場所の写真を使用しています。ご了承下さい。


【9月26日(日)オショロコマ】

警戒心の少なさから誰にでも簡単に釣れてしまうこのオショロコマは、型も小さく釣り味も乏しいためか、地元の人には殆ど相手にされていない渓魚の様です。しかし、本州では管理釣り場も含めて絶対に釣れないイワナ属であり、根っからのイワナ釣り師を自負する私にとっては、北海道を訪れた時には必ず1度は釣っておきたい魚なのです。9月下旬ともなると、オショロコマ達は産卵を控えていて最源流部へと遡上しており、普通の渓流には殆ど見られません。しかし、最源流部はヒグマの棲家であり、釣り人は簡単には近づけません。

知床の渓にも東北と同じ様な堰堤プールが建設されているインレットには沢山の魚影が見られた

そのため、堰堤や滝の下などの下流部にある遡上止めを狙うのが普通ですが、今回は真っ先にそういった釣り場を選びました。この日は体調がすぐれず、知床半島を半ば観光目的で訪れていましたが、付近の山岳地帯には本州と同じ様な砂防堰堤が幾つか建設されていて、上写真の様な堰堤プールも少なからず存在する様です。この釣り場は車道から近く、クマの心配も少ない上、この堰堤プールのすぐ上にも遡上止めがあり、下のプールで大きく育ったオショロコマがすぐ上の遡上止め直下で釣れるのではないかと考え入渓してみました。

ここでの最大は22cm、これでもこの辺りでは大型だ源流部は平たんで険しくない
18〜20cmが殆どの魚体別の渓にも入ってみたが同サイズのオショロコマは豊富だった

この予想は半ば的中しました。インレット付近の緩い流れには魚影が豊富で、小一時間にわたって多数のウブな可愛いオショロコマ達と遊んでもらうことができました。彼らは警戒心が薄く、何度でもミノーを追いかけてきては、最後には喰いついてしまうのです。インレットだけで8尾のオショロコマがヒットしましたが、ただ、残念ながら型は小さく、この釣り場では22cmが最大でした。恐らく堰堤のプール内には大型のオショロコマも生息しているのではないかと思われるのですが、顔を出してはくれませんでした。次回訪れる時には、フローターを繰り出して最深部を攻めてみては面白いのでは、と思いました。

この鮮やかな赤い斑点を見たくて入渓してしまうヒグマの恐怖がオショロコマを守っている様だ

知床半島をぐるりと一周し、途中で別の渓にも入ってみましたが、こちらでもサイズは20cmくらいまでの小型ばかり。それでも、上写真の様なドリーバーデンの鮮やかな赤い斑点模様を見ることができ、十分に満足して竿を収めました。しかしなんですね、道路からすぐ近くの渓を選んで入渓してはいるのですが、付近には藪や茂みが沢山あり、ちょっとした物音にもヒグマを連想してしまい、ビクビクしながらの釣りは健康に良くありませんね。体調を崩していたのを、更に悪くしてしまった様です。でもま、このヒグマの恐怖が魚たちを守っているのも事実であり、仕方ありません。

知床の自然はまだまだ豊かだ羅臼から知床峠を越えウトロ側へ北海道らしい白樺の森が続く
ナギナタコウジュノミノフスマエゾヤマトリカブト

【10月1日(金)ミヤベイワナ】

ミヤベイワナもオショロコマと並んで、本州では絶対に釣ることのできないイワナ属であり、かねてより一度は釣ってみたい魚として、私の記憶の隅に存在していました。ただ、これまでは仕事の関係で夏休みか9月の連休以外は北海道には来れず、手の付けようのない魚でした。なぜなら、ミヤベイワナは絶滅危惧U類VU、かつ北海道の天然記念物に指定されており、6・7月と10月の年2回の調査釣行以外には、釣りは全面的に禁止されていたからです。今回、退職により時間的な余裕ができ、初めて挑戦してみることになったと言う訳です。
[ ミヤベイワナの特別解禁について、詳しくは「グレートフィッシング in 然別湖 (北海道ツーリズム協会)」をご参照下さい。 ]

特別解禁のための特設ボート乗り場既に紅葉が始まっていたまずは25cmほどのサクラマス

ミヤベイワナは、北海道の然別湖にのみ生息するサケ科イワナ属の淡水魚で、オショロコマの亜種とされています。魚の名前は、最初に発見した北海道大学教授:宮部金吾にちなんだもの。太古の昔、火山活動によって然別湖が出来た時、オショロコマが湖に陸封され、プランクトンを主食とした独自の進化を遂げたものと考えられています。そのため、鰓耙(さいは)の数がオショロコマより多いことが特徴となっている様です。

大型魚では魚食性も十分に残っていて、ルアーやフライでも普通に釣れる魚です。ただ、オショロコマの近縁種であり、警戒心はイワナ・ヤマメほどは強くは無く、比較的釣り易い魚の様です。ミヤベイワナは定位性が強いらしく、釣れる場所により体色に変化が見られます。沖合で釣れるものは背中が青っぽく、岸から数十m付近で釣れるものは緑っぽく、岸辺近くで釣れるものは茶色い様です。それぞれ、ブルーバック、グリーンバック、ブラウンバックと呼び、その美しさから「湖の宝石」と例えられている様です。

Bottom Tracer 7g Gold/Pinkにヒットしたミヤベイワナ35cm口の形がオショロコマとは異なる

この日は秋の特別解禁(セカンドステージ:10月1〜12日)の初日であり、快晴の非常に気持ちの良い日でした。しかも付近には既に紅葉が始まっていて、素晴らしい景色が広がっていました。基本的にボートでの釣りになりますが、私は体調がすぐれなかったため、ボート乗り場のすぐ近くにボートを浮かべ、ほぼ同じ所で釣りました。しかし魚影はすこぶる濃く、小型の重いスプーンを沈めて釣ると、すぐに小型のサクラマス(銀化ヤマメ)が釣れてきました。3尾目には25cmほどのミヤベイワナらしき獲物が掛りましたが、ランディングネットを使わなかったため、空中で自然リリース。4尾目には、上写真の35cmのブラウンバックが無事釣れてくれました。

その後は小型のサクラマスばかり・・・然別湖畔温泉ホテル快晴の湖畔の景色は素晴らしい

ただ、すぐに釣れたため、幾らでも釣れるのではないかと思い込み、写真は上の2枚だけしか撮影しなかったのが失敗でした。その後も少し沖合でグリーンバックらしき獲物がヒットしましたが、こちらも惜しくも空中リリース。また、1尾だけ40近いニジマスがヒットし、ロッドが折れんばかりに曲がりましたが、こちらはボートのオールに巻きついて逃走して行きました。結局、釣れたミヤベイワナは上記の1尾だけ、他は全てサクラマスばかりという、ちょっと寂しい結果ではありました。でもま、然別湖の魚影の濃さと風景の美しさは、他ではなかなか味わえない魅力があり、十分に満足して釣りを終えました。

北海道の冬は早い 帰路の高山では、早くも紅葉が真っ盛りを迎えていた(10月12日)

北海道遠征釣行2010は、後編「道東のアメマス」へと続きます。

【今回使用のタックル】
Wellner 8ft TroutRod、Shimano BiomasterC2000、PE0.8号+KurehaSeagerAce1.2号、
Noby'sBlue BottomTracer7gGoldPink/Goldヤマメ、D-Contact50S鮎、D-Direct50鮎、他