北海道遠征釣行2010の後編は、道東のアメマスについてお伝えします。これまでは休暇が短く、3〜4日程度しか時間の取れなかった道東のアメマス釣りですが、今回は10日間に渡ってじっくりと構えて釣ることができ、これまでの釣りでは判らなかった事実が幾つか判明しています。超大型のアメマスの釣り方も大よそ理解できる様になり、今回で4回目の道東のアメマス釣りは、これまで以上に格闘の世界でした。前半はおなじみの風玉さんとのミニオフとなり、実に楽しい北海道を満喫できました。
上の表は今回の北海道遠征の行程表です。当初は10月12日まで宗谷地方のイトウ釣りを予定していましたが、途中で大きく体調を壊してしまい、10月1日の然別湖のミヤベイワナを最後に撤退しています。そのため、結果的に、全体の行程の大部分を道東のアメマスに費やすことになってしまったと言う訳です。日数は実に10日間に及びます。そして前半の5日間は、水戸の風玉さんとのミニオフでもありました。やはり一人で釣っているよりは、気心の知れた友人と一緒に話しながら釣る方が断然楽しいものです。
さて、風玉さんにとっては、北海道での釣りは初めての様でした。東北のダム湖や渓流で何度もイワナ釣りにご一緒している訳ですが、やはり北海道でのアメマスのサイズとパワーには相当驚かれた様です。1尾目は30cmほどのアメマスでしたが、2尾目からは40cmを越えるアメマスが次々とヒット。東北では40cmを越えるイワナなど、相当な腕前の持ち主でさえ年に数尾しか釣れないサイズですが、ここではより大型のアメマスが日に何尾も釣れてしまいます。しかも、そのパワーは同じサイズの東北のイワナの何倍もあり、格闘の世界に圧倒されてしまいます。
初日はオマケで風玉さんにはカラフトマス(ピンクサーモン)もヒット。カラフトは産卵中であり殆ど口を使わないのですが、目の前にルアーが来ると、邪魔者扱いをして反射的に口で追い払おうとするため、稀に口にフッキングして釣れてしまいます。もちろん河川内禁漁の魚ですので、記念写真を撮影して即リリースしてやりました。途中、地元のルアーマンにあれこれと教えて頂き、ついでにタックルボックスの中を見せて頂きました。どうやら北海道の人にもDコンタクトは人気の様で、Dコン63を中心に6〜8cmのミノーが沢山用意されていました。カラーも概ねチャート系が多く、ブルーピンクや緑系をルアーローテーションに入れている様でした。
ところで、この時期、道東の複数の河川でアメマスは釣れるのですが、以前から、80cmを越える様な超大型のアメマスを釣るにはどうしたら良いのか、良く判っていませんでした。しかし今回、少しだけですが超大型のアメマスの集まるポイントについて、或る程度の確信を得ることができた様に思います。河川内のアメマス釣りにおいては「瀬の鉄則」は絶対であり、早瀬を横切る様にミノーを泳がせて釣る点はこれまでと全く変わりません。しかし、同じ様に見える瀬でも超大型アメマスの集まる瀬とそうでもない瀬がある様なのです。その違いについて考えてみます。
下図は私なりに考えた超大型アメマスの定位し易いポイントの一つです。なにせ北海道の釣りの経験がまだまだ浅いため、この考え方が正しいかどうかは全く判りませんので、一つの参考として見て頂ければ幸いです。また、この考え方は、9月初から末ころまでのサケ類の産卵の時期だけにしか当てはまりません。図は見ての通り、考え方は簡単です。サケ類の産卵床の下流で、流れてくるサケの卵を捕食するため、超大型のアメマスたちが並んで待っているのではないかと言うことです。こういった瀬を良く観察すると、アメマス達がまるで鮎の岩ハミをするかの様に、魚体をギラリと光らせながら川底の何かを食べているのが何度も見られます。
ただしこの場合、すぐ下流部に深くて大きな淵が無いと超大型は定位しない様です。深い淵の底で休憩した後、卵を漁りに瀬に出てくる様なのです。つまり、多数の産卵床→早瀬→深い淵の3つが並んでいる事が条件の様です。とりわけサケ類の産卵床の存在が重要であり、産卵床を見つけ出すことが大型に巡り合える可能性を高くしてくれそうです。産卵床は深さ30〜40cmの緩い流れの広々とした所に多く存在し、お天気の良い日には、遠くからサケやカラフトたちがバシャバシャと水しぶきを上げて活動しているのが見えます。その下流に早瀬が見えれば、しめたもの・・・と言う訳です。
加えてもう一点、大型が釣れるための非常に大きな条件は、水量と濁りです。今回、風玉さんと2人で通った釣り場は、上記の条件を満たすポイントであり、増水時には結構な入れ食いを楽しめました。ただ、アメマスは「雨の鱒」の通りで、増水するといとも簡単に釣れてしまいますが、逆に渇水して透明度が高くなると、同じポイントでもさっぱり釣れなくなってしまいます。淵に遊泳するアメマスがまるで釣れないのも、透明度上昇とともに瀬でも釣れなくなるのも、やはりアメマスは本州のイワナと同じで、人影を1度でも見てしまうと警戒してルアーを追わなくなるからなのですね。この適度な警戒心が、アメマス釣りをより面白くしている様です。
翌日は買い物と摩周・阿寒方面の観光に当てました。実は前日に65cmまでのアメマスを釣り上げていますが、その時、私は大事なロッド2本(ウエダ・Wellner)を折ってしまいました。最初はウエダのロッドを使用していましたが、巨大なアメマスの扱いが良く判っておらず、強引に引っ張ったのが原因でした。Wellnerはその代わりに取りだしたのですが、細すぎてこれまたすぐに折れてしまいました。そのため、釧路の釣り具店「ランカーズクシロ」を訪問し、竿を新調する羽目になってしまったと言う訳です。しかし、アメマスをバカにしてはいけませんね、サクラマスロッドでも太刀打ち出来ない個体が稀にいるのです。シーバス用のロッドが適当な様です。
さて、翌朝もまたまた同じ釣り場へと向かいました。なにせ条件の整っているポイントはそう多くはなく、確実に目の前に80cmクラスが泳いでいるのが見えるのですから、他へ行く余裕は生まれません。ただ、ここでは釣り始めてすぐにとんでもない出来事がありました。前日に新調したばかりのロッド(MajorCraft)にDコン63をセットして・・・4〜5投したら、アレ?ミノーにゴミが着いちゃった・・・と思ったら、え?、折れた穂先がブラ下がっていたのです。どうやら不良品に当たってしまったらしく、ガックリでした。(ロッドは後ほど無償交換して頂きました。) しかし、この立て続けに折れたロッドは、どうも今回の旅行の不運を暗示していた様です。その後、体調がどんどん悪くなって行くことに・・・
さて、もう一点、奇妙な事実もありました。この4日間ほど風玉さんと同行していたのですが、私には60cmオーバーも何尾かヒット、50p台は相当な数になっていましたが、なぜか風玉さんには40p台しか釣れなかったのです。泣き50pは数尾出ていましたが、4日目にしてようやく53cmが釣れた程度。加えて、私の場合は全体の半数近くがスレ掛りによるものでしたが、風玉さんにはスレ掛りが殆ど無かったのです。この違いは数日後になって判ったのですが、激しいトゥィッチをミノーに加えるとスレが多くなる様なのです。風玉さんもトゥィッチを掛けてはおられたのですが、私よりかなりおとなしかったのが、2人の釣果の差ではなかったかと思えました。
ちなみに、私自身はかなり激しいトゥィッチを多用するクセがあります。アメマスは捕食するのが下手クソな様で、左右に激しく大きく動くミノーにうまく喰い付くことができず、追いかけて来る途中でスレ掛りしてしまう様なのです。純然たる?スレであれば、大抵は背中や尾鰭上部に掛かるのですが、私の場合、顔や腹部・胸鰭の下部などに多く掛かっていて、ルアーを追いかけて来ていることが伺えました。後日になってこの差に気付き、試しに棒引きに近い釣り方に変更してみると、確かにスレ掛りは一気に減りました。ただし、ヒット数も大幅にへってしまい、なおかつ型も小さくなってしまいました。どちらの釣り方が良いのか、難しいところです。でもま、風玉さんにとっては、この53cmは過去最大のイワナ属とのことで、自己記録の更新、おめでとうございます。
ところで、この日は趣向を変えて、いつものポイントへテーブルなどを持ちこみ、コーヒータイムと昼食で楽しみました。上写真は、ポイントとなっている瀬と、川の隅に出来た水溜まりの間の中州状の所にテーブルを広げているところですが、これが本州では考えられない様な超贅沢?な場所でした。実は水溜まりには20〜30cmのオスのアメマスが多数群れで泳いでいて、椅子に腰かけながら小さなミノーを投げ込めば、簡単に釣れてしまうのです。そして、反対側の瀬には巨大なアメマスがジャンプしています。うーーん、道東のこのポテンシャルの高さには、ただただ驚くばかりですね。
翌日も非常に良いお天気になり、気分はすこぶる良いのですが、渇水がひどくなって流石に釣れなくなってきました。いつものポイントにも入りましたが、釣果は小物だけ。前日夜に釣り人の集まる居酒屋で、河口の湖で釣れているとの情報を得ていた我々は、試しに移動してみることにしました。風玉さんは新しく買ったフローターの進水式の目的もあり、河口湖での釣りはうってつけでした。増水時に一気に遡上するアメマスやサケの類は、渇水するとどうやら河口の湖に待機している様で、この日は湖のあちこちで大物が大ジャンプをする姿が見られました。
しかし、この河口の大物たちはルアーでは難しいですね。フライマンばかりで、誰もルアーを投げていなかったのですが、1投目で68cmの丸々と太ったアメマスがミノーを丸呑みにしてヒットしてきました。こりゃイケるかなと思ったのですが、2投目はスレで同じサイズのアメマスがヒット。あとは何度ルアーを投げ込んでも全く反応が無くなってしまいました。東北のイワナと同じで最初の2〜3投が勝負であり、あとは見向きもされなくなってしまう様です。対岸に陣取っていた風玉さんにもヒットがあり、70cm近い大物だったのですが、手前まできて惜しくもバレてしまいました。記録更新のチャンスだったのに、残念でした。
ちなみに、河口では沢山のフライマンたちが頑張っていました。チャート系のエッグか、ナチュラルな茶系のニンフやマラブーを使っている人が多かったのですが、スレずにあちこちで何尾もヒットし続けていました。ただ「大物は大きな餌で釣れ」の格言通りに、フライが小さいためか全体として型は小さく、40cm前後のアメマスが殆どの様でした。その後も2人でしばらくはルアーを投げ続けましたが、魚影の割にはアタリは殆ど何もなく、オマケで大きなシロザケ(チャムサーモン)がスレでヒットしてきただけでした。
さて、その後は体調の不良と異様な渇水で釣りにならず、しばらくは道東のアメマスを狙うことはありませんでした。そして、9月28日になり待望の大雨が降りましたが、当日は雨が降り過ぎて、午前中になんとか釣りになったものの、午後からは泥濁りで撤退。実を言うとこの日はニジマス狙いでいつもの川の隣の川へ出向いたのですが、釣れるのはやはりアメマスばかり。64cmまではヒットしたのですが、残念ながらニジマスは1尾も顔を出してはくれませんでした。アメマスやイワナは、かなり濁っていても平気でルアーに喰いついて来ますが、ニジマスやヤマメは早々に物影に隠れてしまいます。この日もそんな状況ではなかったかと想像しています。
そして、翌朝には再び大物の大チャンスが待ち受けていました。アメマス釣りの予定は残り2日だけであり、なんとしても80cmクラスを釣りたかった私にとって、この日はラストチャンスでもありました。いつもの本流のポイントは、さすがに濁りが強過ぎたため、少し上流に流れ込む支流の1本を選び入渓しました。ここでも濁りはかなり強かったのですが、なんとか釣りになるギリギリの範囲でした。普段は緩い淵になっているポイントが、この日は増水で瀬の様に波が立っていて、しかも透明度は低く、ミノーを投げるといとも簡単に魚たちがヒットしてきました。まるで夢心地の朝でした。
そしてもう11時ころになり、釣りの神様が少しだけ微笑んでくれました。何気なく瀬尻に投げ込んだミノーに強烈な反応が出て、やがて大物が瀬から淵へと大暴れをし始めました。強靭な太軸のフックに取り換えたDコンタクト72Sチャートは、ガッチリと大物の口に咥えられていて、なだらかな斜面の砂利の浜へは、比較的簡単にランディングすることができました。73cmと、この地では称賛を受けるほどのサイズではありませんでしたが、イワナ属として自己記録を更新するサイズであり、十分に満足の行くものがありました。
その後もこの日は終日アメマスのご機嫌が良く、他にも69cmなど大物を含め、全部で22尾の大漁でした。やはりアメマスは「雨の鱒」ですね。雨後の1〜2日がチャンスであり、渇水時は他の釣り物に時間を充てる方が得策の様です。さて、最後になりましたが、ここで今回得た情報を元に、超大型アメマスの釣り方についてまとめておきたいと思います。 1.釣期 ・遡上開始(8月後半の大雨の後)から9月秋分の頃まで。カラフトマスやサケの産卵時期が良い釣りにつながる。 ・大雨の翌日〜翌々日の増水時がチャンス。かなり強く濁っていてもアメマスは平気でルアーに喰いついてくる。 逆に強い渇水時は、瀬においてもアメマスのヒットは激減する。他の釣り物にシフトした方が無難。 2.タックル ・ロッドは、シーバス用かサーモンロッドが最適。サクラマス用でもスレ掛りするとロッドを折られてしまう事がある。 ・ラインは、PE2号に20lb程度のショックリーダーをFSノットかFGノットで結束し使用。簡易結びはNG。 ・ミノーは、Dコンタクト63Sが最適。増水時は72Sも可。フックが細いため、太軸の頑強なものに取り換える。 カラーはチャートを基本に、ピンク系・鮎・青系など、幾つかを揃えておき、ルアーローテーションを行う。
3.ポイント ・サケ類の産卵床が沢山見られ、その下流側に幅の広い荒瀬があり、更にその下流に深い淵が存在すること。 本流の水量の多い所に上記のポイントは存在する。サケ類の産卵床は下流部の緩い流れの中に多い。 ・魚が待機する河口にも良いポイントが出来るが、最初の2〜3投が勝負となり、増水時以外は釣りにならない。 また、源流部の淵に産卵準備中の多数のアメマスの定位が見えるが、見えるアメマスはまず絶対に釣れない。 4.釣り方 ・上記の瀬に直角〜斜め上流に向け、ミノーを流す(瀬の鉄則)。強いトゥィッチはスレ掛りを多くしてしまう。 しかしながら、ミノーは派手な動きの方がアメマスたちを引き寄せる効果が高い様だ。 ・リールのドラグは緩めに設定しておく。強いドラグは、フックを伸ばされるか、ロッドの破損につながる。 どんなに頑強なフックに取り換えても、超大物がスレ掛りするとフックは伸ばされるため、ドラグ調整で対処する。
そして最終日の9月30日は、本流の濁りもちょうど良く水量も豊富であり、最高の条件でした。そのため、勇んでいつもの大物のポイントへと入渓しましたが、しかし、なぜかこの日はさっぱりアタリがありません。上流側の淵で64cmをヒットさせたものの、いつもの瀬では全くのオデコだったのです。良くみると、あれだけ沢山いたカラフトマスたちの姿が見えません。加えて、脇の水溜りに見えた沢山のオスの小アメマスたちまでもが全く見られなくなっていました。恐らくカラフトマスの産卵が終わり、同時にアメマスたちも産卵のために上流部へと大移動したのではないかと思われました。
北海道遠征釣行2010はこれで終了です。長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。 【今回使用のタックル】 MajorCraft TROUTINO TT902H、Ueda TroutPluggingSpinGS902H、DaiwaSeabassRod12ft、 Wellner 8ft TroutRod、シマノAERLEX3000C+PE2号+ショックリーダー20lb、 D-Contact63Sチャート/鮎/Goldチャート/BluePink、D-Contact72Sチャート/鮎、D-Direct50鮎、他 |