北海道遠征レポート

北海道遠征釣行09前篇 アメマス(9月20-22日)


3年ぶりに北海道へ行ってきました。北の大地はいつ訪れても雄大で開放的であり、しかも地元の人たちの心の広さにも感激するばかりでした。今回は主に大型のアメマスとイトウを狙って海を渡りましたが、その模様を2回に分けてお送りします。前篇は、今回の最大の目的であった大型のアメマス釣りの模様です。9月の道東のアメマス釣りは、残念ながら目標にはおよびはしませんでしたが、それでも本州では到底味わうことの出来ない、正に格闘の世界が待ち受けていました。(後編ではイトウ・オショロコマ・サケを取り上げます)
(北海道での釣行には経験が浅く、以下の文中には誤解や思い違いが有る可能性があります。その場合にはどうぞご指摘下さい。)


注:釣り場の特定を防ぐため、風景画像に大幅な修正を加えるか、同イメージの別の場所の写真を使用しています。ご了承下さい。


【9月20日(日)】

根っからのイワナ釣り師を自負する私にとって、大型のアメマスは一番の憧れの魚なのです。過去に2度、10月と8月に釣行目的で北海道を訪れていますが、本命の大型アメマスは9月中旬ころがベストシーズンとのことであり、思った様な釣果を上げずじまいに終わっています。ただ、9月は仕事が忙しく、簡単に休暇の取れない私は半ば諦めていました。しかし今年はなんとシルバーウィークなるものが存在し、2日の有給休暇を追加すればベストシーズンに9連休が手に入るという大チャンスがやってきたと言う訳です。これはもう、何が何でも海を渡るしかありません。

北海道での健闘を! 会長と乾杯道東の夜明け、夏なお暗く寒いダブルハンドでアメマスを狙う釣り人

今回も八戸から苫小牧へ渡るフェリーのルートを選びました。19日土曜の昼の便で北海道入りし、少し我慢をして運転すれば未明には道東の目的地に到着すると言う訳です。しかし、同じ様なことを考えている人は大勢いるものですね。我が山形渓遊会の渡邊会長さんも同じでした。行きと帰りのフェリーは全く同じ船を選びましたが、あれれ、会長さんの目的は釣りよりも登山の様でして、意見が全く合いません。まぁ、お互いに好き勝手にやりたい訳でして、最初は一緒に釣りの話もありましたが、最終的にはフェリー以外は全くの別行動になってしまいました。それでも行きの船の中では、お互いの健闘を祈って、盛大に?乾杯だけはやりましたとサ。

橋の上から見ると人・人・人しかしそれにしても釣り人が多い有名ポイントは人だかり

20日未明には現場に到着し、早朝に目覚めてまずは驚かされました。道東のアメマス釣りもすっかり1つのジャンルとして定着しているらしく、しかもシルバーウィークの2日目の日曜とあってか、目的地の渓は釣り人で埋め尽くされていたのです。幾つかの橋の上から川を覗き込むと、どこも軽く10人程度の人が河原に立っているのが見えるのです。これには参りました。元来、大勢の中で場所を争いながら釣るのが大嫌いな私は、1日目は最源流部の人の少ない場所へ入渓してしまいました。しかしこれは大失敗でした。源流部では小さなイワナやヤマメが幾らでも釣れるのですが、残念ながら大型のアメマスは殆ど姿を見ることができなかったのです。

人影のない源流部・・・これは失敗カラフトが源流部まで遡上していた小さなイワナは幾らでも釣れる

午前中は最源流部を攻めましたが、チビばかりでお話にもなりません。仕方なく諦めて、午後3時ころからは少し下流へと下り、人の見えるのを覚悟で中流部を釣りましたが、これがまたうまく行きません。釣り人が散々通りまくった後では、流石のアメマスもスレているのか、魚影は見えるのですがアタリがサッパリ無いのです。非常に焦りました。後半はイトウ釣りの予定を立てており、貴重な3日のうち、早くも1日目をアメマスの釣果無しで終わってしまったのですから。ただ、釣り場を良く観察すると、例によって直径50cmほどの「生簀」が作られていたりして、時間と釣り場を選べばそれなりの釣果は見込めそうでした。

時おりヤマメも出る中流部へ移動したが、人は多い2日前の大雨後には良く釣れた様だ
エゾオオヤマハコベアザミの仲間ハナニガナ

【9月21日(月)】

初日の失敗ですが、実を言うと久しぶりの北海道で浮き立っていた私は、4年前の北海道釣行の出来事をすっかり忘れていたのですね。20日の夜は某所でビールを呑みながら、PC内の記録を基に4年前の釣行をじっくりと思い出すことにしました。そうなのです、前回もアメマスたちは河口から中流部にかけての「瀬」でしか釣果はみられませんでした。淵の魚たちは恋の季節に入っていて、餌やルアーには見向きもしてくれなかったのです。ただ、9月は活性もまだ高く、4年前の10月の様に、瀬での魚影が極端に薄いと言うことは無いそうなのです。2日目は瀬狙いで中流部を攻める作戦に変更し、これは一応の成果を収めることになりました。

2日目は中流部へ入渓50cm前後がポツポツ釣れるしかしスレ掛りも多い

この日はまだ薄暗いうちに中流部の河原に立っていました。流れの緩い淵ではなく、有る程度の流れのある瀬と瀬尻・淵尻だけを狙いました。魚影はそこそこ見られ、4年前には殆ど釣れなかった50cmオーバーのアメマスが時おりヒットしてきます。ただ、前回の経験からフックを大き目の頑丈なものに取り換えていたためか、やけにスレ掛りが多いのが気になりました。ミノーからフックが大きく垂れ下がっていて、魚の上をミノーが通過すると簡単にスレで掛ってしまうのです。しかし大海原で育ったアメマスたちには想像を絶するスピードとパワーがあり、細い小さなフックではひとたまりも無いのですから仕方がありません。

3尾目の50オーバーは58cm取り敢えず写真を撮ったが・・・1尾釣るとフックはボロボロ

3尾目には58cmのまずまずの型が出ましたが、かなり明るくなっても50cmオーバーのアメマスがコンスタントにヒットして来るのには驚きました。人影さえ無ければ9月の瀬のアメマスたちはそれほど用心深くもなくミノーを咥えてくれる様なのです。東北の渓では全く考えられない様な、夢心地でした。ただこの日は油断してフロロの2号にWiseMinnow50FSやD-Directを多様していて、見事にミノーごと持って行かれる様な出来事にも出会いました。どうやら60cmを超えると、そのパワーに2号のフロロでは太刀打ち出来ない様なのですね。重くてあまり使いたくは無かったのですが、途中からはサクラマスロッド+PE2号+Dコン63に取り換えました。

精悍な顔のアメマス60cmにもなるとフロロ2号では太刀打ち出来なくなってくる
シルバーウィークは終日お天気に恵まれた  北海道らしい風景に心が和む

さて、少し話は変わりますが、地元の釣り師の話ではこれでも今年はアメマスの魚影がかなり薄かった様なのです。確かに4年前に訪れた時には、淵という淵には大型のアメマスたちが黒くなる程に群れていて、その魚影の濃さには全く驚かされました。しかし今回は群れを見ることが殆ど無く、しかも群れが有っても魚の数が少ないのです。9月のため、まだ遡上の途中であり、これから4年前の様な状況がだんだんと出来上がって行くのかも知れませんが、少々ガッカリでした。ただそれでも、魚影は十分に濃く、釣りを楽しむには満足できるレベルでした。東北のイワナの様に、魚影を探しながら釣るのでは無く、必ずそこに魚がいることを確信しながら釣りが楽しめるのです。アメマスの全く見えないポイントは最源流部以外にはありませんでした。

次々に50cmオーバーが出るアメマスの群れはこれでも少ない相変わらずスレ掛りが多い
こんな強い流れがポイント尺足らずはこの1尾だけだった50cm前後が普通のサイズになった

午後からは再び人の多く通り過ぎた中流部のポイントを狙いましたが、それでも流れの強い瀬を狙えばそこそこヤル気のあるアメマスがいることも判りました。初日は「瀬の鉄則」を忘れていて、緩い淵ばかりを狙っていたのです。しかも、たった今人が通り過ぎたばかりでも、流れの強い場所であれば、ほんの数分もすれば同じ場所でアメマスはヒットしてきます。これはどういうことなのでしょうね。海で人影を全く見ずに育ってきた彼らは、恐らく遡上開始後の数日で中流部までやってくるため、人を覚えないのでしょうか? 或いは、すぐに迎える恋の場面に夢中になっていて、人影などさして気にならないのでしょうか? いずれにせよ、東北の気難しいイワナたちとは、これは全く別の釣り方で臨まないといけない様です。

この日掛ったアメマスは10尾スレで来たカラフト(ピンクサーモン)55cm 強烈に引いた 即リリース
キオン白いゲンノショウコヤマトリカブト

【9月22日(火)】

さて、22日はアメマス釣りの最終日でした。実は目標は80cmオーバーのアメマスだったのですが、前日までにはまだ61cmまでしか釣れていません。前夜には釣り人達が集まる居酒屋で呑みながら、多数の情報を仕入れていましたが、どうも80cmなどという大型は、チョイと北海道にやってきた人間には無理ではないかと思えていました。中には1日で70cmオーバーを4尾も釣った幸運の釣り人もいた様ですが、殆どの人は私と同程度のサイズを数尾釣っているだけなのです。数ではむしろ私の方が多いくらいであり、目標のサイズの魚は、余程の幸運に恵まれるか、あるいはもっと長時間に渡って粘らない限り、夢のまた夢の様でした。

明らかに釣られた跡のある魚体地元の釣り人と情報交換こんな「ガンガン瀬」が最高のポイント

そんな思いを抱きながら、この日は更に下流部の、非常に人の多いポイントを選びました。人が通り過ぎても、少し時間をおいて釣り方さえ工夫すれば、十分に釣りになることがこの日までに判っていたからです。水量の非常に多い本流に薄暗い時間から入りましたが、既に100mほど離れた所には数人の釣り人が暗闇の中に蠢いており、暫くすると、そのうちの一人が何のためらいもなく私の横を通り過ぎて行きました。さすがに人が釣っているその場所には竿を出さないのがルールの様ですが、上下のポイントには自由に動き回って入っても構わないルールになっている様でした。これも東北では全く考えられない面食らう出来事なのですが、「処変わればルールも変わる」であり、通り過ぎる釣り人に笑顔で挨拶を交わすしかありません。

地元の人にも50cmクラスが河原は広々として流れは緩いこの日も相変わらずスレ掛りが多い

この日は本流の釣り場を転々としましたが、どこも人で一杯の割には、時間帯と釣り方とポイントさえ間違わなければどこでも釣れました。やはり真昼間の明る過ぎる時間帯はあまり釣れません。釣り方は本州のイワナと基本的に同じで、人影が見えない様に斜め下流から遠投すれば良いだけです。ポイントは強い流れの瀬の中で、特に瀬頭に多くの大物が待機している様でした。本流の瀬の中を移動中のアメマスたちは遡上を開始したばかりであり、まだ人の脅威を覚えていないのでしょう。しかも瀬では波で人影が良く見えないはずです。一方で、淵のアメマスは恋に夢中になっていて喰い気が無いだけでなく、水面が穏やかな分、人影も丸見えのはずです。そんなことがこの釣りを難しくしていて、「瀬の鉄則」が生まれているのではないかと思われました。

丸々と太った60cm  良く引いたこの日の最大は64cm  これでも大物とは言わない

さて、この日の最大サイズは、もうお昼近くになってヒットしてきました。ただそれでも64cmであり、4年前の66cmにすら及びませんでした。せめて70cmクラスは釣りたかったのですが、まぁ、今回も釣りの神様は少ししか微笑んではくれなかったのだろうと、諦めるしかありません。しかもこの日13尾もの獲物と出会ってはいますが、そのうち5尾?がスレ掛りしてきたものでした。例年よりかなり魚影が薄いとのことでしたが、それでも本州では到底考えられない様な魚影の濃さであることは変わりなく、少し沈めてミノーを引いてくると、アメマスたちの背中や尾にいとも簡単に掛ってしまうのでした。次回以降は、太軸のシングルフックを鉤を上向きにして取り付けるなど、工夫が必要と感じました。

この日掛ってきたアメマスは・・・全部で13尾にのぼるが・・・半数近くがスレ掛りだった

ただ、このスレ掛りですが、別の問題点も浮かび上がってきます。実を言うとスレで掛ったアメマスの引きは、サケ釣り以上に実に強烈かつスリリングで、それなりに楽しい?時間を作ってくれてしまう様なのです。そのためか今回は、ジグに大きなフックを取り付けてスレ専門でアメマスを狙う釣り人に何人か出会いました。彼らは通常の釣り人よりも遅い時間にやって来て、大きな群れを作っている淵の前でアメマスたちを次々と掛けて遊んでいました。それもほとんど1日中同じところで、延々と日が傾くまでスレ掛けを続けていて、見ると何度も鉤に掛けられボロボロになっている個体も見られました。

ミツモトソウアメリカオニアザミセイタカアワダチソウ

自分で釣っておいて、またスレでも掛けておいて、こんな事を言うのもおこがましいのですが、今回の魚影の薄くなった状況と異様な釣り人の多さ、またスレ狙い専門師の出現などをあれこれ考えるにつけ、この地のアメマス釣り場も、そう遠く無い日には東北のあちこちで見られた様な何も釣れない過去の釣り場を作り出してしまうのではないかと危惧されてなりません。アメマスはサケやカラフトマスの様に産業としての価値を認められておらず、放流事業も法的規制もありません。スレであろうが投網を使おうが、1年中何でもやりたい放題の無法地帯でもあるのです。早急に手を打つ必要性を強く感じながら、少し寂しい思いで釣り場を後にしたのでした。

北海道釣行記は、「北海道遠征釣行09後編、イトウ・サケ・オショロコマ」に続きます。

【今回使用のタックル】
ウエダTroutPluggingSpinGS902H+シマノAERLEX3000C+PE30lb+ショックリーダー20lb、
Wellner 8ft TroutRod+Shimano BiomasterC2000+Kureha SeagerAce2号、
D-Contact63/アユ/緑/チャート、D-Direct50/アユ、WiseMinnow50FSヤマメ/緑(5.2g)、他