毎年、春から初夏にかけてはダム湖や堰堤プールの釣りに没頭していますが、8月に入るとイワナ達の大移動に合わせるかの様に、源流の釣りが始まります。しかし、昨年もそうでしたが、今年も土日に雨模様の続く8月に難儀させられました。加えて、お盆休みも季節外れの豪雨となり、惨憺たる結果となってしまいました。ただそんな中でも、8月末になってようやく源流らしい釣りも可能になってきました。今シーズンも残すところあと1ヵ月となりましたが、シーズンの最後まで、素晴らしい季節を思いっきり楽しんでみたいと思っています。
【8月13日・青森県下北半島】 お盆休みの釣りは雨で散々でしたが、軽く報告だけはさせて頂きたいと思います。ただ、報告と言っても、思った様な釣果も殆ど無く、正直、温泉巡りに終始する毎日でした。お盆休みは8月8日から16日までの9連休でしたが、前半は雨で戦意喪失し、自宅でゴロゴロと過ごしてしまいました。しかし「これではイカン!」と、思い立ち、後半になってから、軽く遠征のつもりで北へと向かいました。高速で一気に北上した先は青森県の下北半島。初日13日の早朝には、とあるアメマスで有名な渓に立っていました。しかし、予想通りにこの地も川はどこも濁流で、そんな中でも唯一釣れたアメマスが下写真の32cmでした。
【8月14日・青森県下北半島】 翌日も同地の別の渓に繰り出していますが、13日早朝に相当な集中豪雨があちこちで見られた様で、やはりどの川もミルクカフェの様な強烈な泥濁り。仕方なくあちこちの温泉に繰り出しては時間を潰してしまいました。南東北と違って、下北半島は熊の被害が多く報告されている地であり、あまり奥へは入れないのですが、それでも一応、小さな沢の源流部へ少しだけ入ってみてはいます。そして、アブの猛攻と戦いながら竿を振ってはみましたが、しかし、釣れたのは写真下のようなおチビちゃんが数尾だけ。アブの痒みを癒すため、またまた温泉を目指してしまう有り様でした。
【8月15日・秋田県北地方】
更に翌日は大きく移動して、秋田県の県北地方まで下がっています。この渓は秋田県に赴任中に良く訪れた懐かしの渓であり、付近に遠征した時は必ず訪れる渓なのです。漁協さんの放流がしっかり行われていて非常に良く釣れる渓なのですが、あいにくここも泥濁りに加えて渓畔に立てない程の水量でした。仕方なく透明度の上がるのが早い支流の源流部へと車を走らせましたが、ここで見たのは下写真(中央・左)の様な壮絶な風景でした。まだ青々とした葉の付いた大木が、大水で上流部から流され横倒しになっていました。渓畔の至る所に薙ぎ倒された草木が見られ、歩くのには楽でしたが、魚も流されてしまったのか、さっぱり反応が見られませんでした。
【8月23日・山形県】
お盆を過ぎると、土日にも晴れ間が見える様に気候が変化してきた様です。この週は、今年春から攻め続けているダム湖の上流部をまたまたしつこく攻めています。ダム湖からイワナがどんな具合に源流へと遡上するのかを探るのが目的でした。北海道のアメマスでは8月中旬に遡上が始まり、翌年1月ころまでダラダラと長い時間をかけて遡上を続けるそうですが、ダム湖のイワナの場合は?、という訳です。7月最終週にこのダム湖の上流部へ入渓した時は40cmオーバーが1尾だけまだ釣れましたが、今回は水温も上がっていて、インレットでも17度もあり、ウグイ天国になっていました。残念ながらイワナの魚影は皆無で、ゴルジュ帯の淵をフローターを使って3つほど釣り上がってみましたが、久々にボ*ズを喰らってしまいました。
【8月29日(土)・山形県】
さて、お盆から処暑までは上記の様に散々な釣りばかりでしたが、今回のレポートの本編は実はここからです。8月最終週になり、渓遊会の宇都宮・朝日さんから連絡が入り、県内のとある源流を攻めたいとのこと。そろそろ本格的な源流が恋しくなっていた私としては、2つ返事で同行を決めてしまいました。しかし、どうやら土日に降っていた雨は少しズレて早めに降った様で、金曜日の夜半は集中豪雨の様な土砂降りの雨でした。ただ、この時期は山に残雪も無く、源流部であれば雨さえ止めばすぐに透明度が上がってくるものです。6時ころ朝日さんと落ち合いましたが、1時間ほど様子を見てから、釣りを開始しました。
この渓流は結構人が多いところなのですが、濁りが出ればルアーには最適です。透明度1〜2m程度のちょうど良い濁りになった8時ころからポツポツとイワナが釣れ始めました。ところで、朝日さんはルアーフィッシングの経験が全く無かったのですが、私と同行することになったため、ルアーに初挑戦されました。餌を持っていると餌釣りに流れてしまうからと、わざと餌を買わずに釣り場にやってこられた程で、そうとうな気合いが入っていました。ただ、初めてのルアーはそう簡単なものではありません。残念ながら、この日の午前中は小さなイワナが2尾ヒットしただけで終わってしまいました。
この釣り場のキャンプサイト近くには小さな沢が有り、ちょっとした堰堤が作られています。午前中の釣りを切り上げ、キャンプサイトの広場に戻って来ると、朝は泥濁りで手も付けられなかったその沢が、ちょうど良い濁りに落ち着いており、この堰堤下も狙わない手はありません。キャンプサイトのすぐ横であり、普段は入れ替わり立ち替わり人が竿を振っているところなのですが、それでも狡猾なイワナは釣られずに生き残って大きく育つものなのですね。濁りが手伝ってくれ、33cmもある立派な源流イワナが釣れてしまい、驚かされました。午後はこれで釣りを止め、久々のキャンプを昼過ぎから楽しみました。蚊がまだ少し残ってはいるもののアブなどはおらず快適な日でした。
いつもより相当早い時間からビールを呑み始めましたが、実は釣りよりもこのキャンプがやりたくて山へ来た様なものでして、このまったりとした時間が堪らないのです。ところで最近は、キャンプサイトでも音楽を楽しむ様にしています。車をキャンプサイトから少し離れたところに置き、ドアを開けてカーステレオでJazzを流します。こうすると、ブナの森に音がうまく反響して、まるでコンサートホールに身を置いている様な気分を味わうことができるのですね。結構な大音量でも使用電力は僅かの様で、数時間も鳴らしっぱなしにしておいても、バッテリが上がった事は一度も有りません。ちなみにブナの森には、Keith Jarret、Chick CoreaのAkoustic Band、The Great Jazz Trioなど、小気味なアドリブのピアノジャズが良く似合う様です。
【8月30日(日)】 翌日曜日はすっかり天候も回復し、絶好の釣り日和でした。この日は3組ほどの釣り人が朝6時ころからやってきましたが、キャンプで前夜から入っている我々に一番乗りの権利があると言うものです。朝食もそそくさと済ませ、お目当ての本流へと入りました。ただ、一気に濁りの出た日の直後は、山では濁りの原因となる泥が洗い流されて、逆に透明度が上がり過ぎることが有るものです。この日もそういった日となったらしく、渓に降り立ってみるとビックリする様なジンクリアでした。これではルアーフィッシングには厳しく、練習中の朝日さんには残念ながらとても手ごわい日となってしまいました。
この渓の途中には、大物の潜んでいるゴルジュ帯の淵が幾つかあるのですが、いかんせん透明度が高く、イワナが追いかけてくるのが見えてもなかなか喰いついてはくれません。この日は朝日さんの練習に付き合う形で、私自身は彼の後ろを歩きながら竿抜けしたポイントを時おり拾い釣りする形でした。途中、朝日さんのロッドに35cmほどの良型がヒットしたのですが、まだルアー釣りに慣れていないせいか、合わせが足りず、途中で惜しくも大バラシ。あの1尾が釣れていれば彼も大満足で帰路に付けたハズだったんですが・・・うーーん、そうはうまくはいかないものなんですよねぇ・・・。
その後も朝日さんのルアーには40cm近い大物のトレースが見られたそうなのですが、遠くからウネウネと追いかけてきたものの、ミノーには結局は喰いつかず、足元まで来てUターンしてしまったとのこと。前日の様な濁りが有れば恐らくヒットしていたのでは?、と思われましたが、とても残念でした。ただ、35cmクラスのヒットに40cm近い大物のトレースと、餌ではなかなか巡り合えない様な良型が、ルアーでは比較的簡単に見られることが判った様であり、期待した釣果は見られなかったにもかかわらず「今日は凄く面白かったですよ!」とのご機嫌な返事を頂けました。どうやらルアーフィッシングの虜がまた一人、生まれてしまった様ですねぇ。
さて、今シーズンも残りあと1ヵ月足らずとなってしまいましたが、9月は遡上を繰り返した魚たちが堰堤や滝などの魚止めの下に集まる季節であり、最後の大物のチャンスでもあります。そしてこの時期、季節は物悲しくはありますが、秋空はどこまでも高く、悪天候もあまりありません。残り僅かとなったこの素晴らしい季節を、心惜しみながらではありますが、最後の最後まで楽しんでみたいと思っています。この日、午後からは快晴となり、非常に綺麗に澄み切った青空の下には、早くも紅葉の始まった遠い山のくれないの色が、絶妙のコントラストを見せていました。
【今回使用のタックル】 Wellner 8ft TroutRod、Shimano BiomasterC2000、Kureha SeagerAce1.2号(9lb)、 WiseMinnow50FSヤマメ/緑(5.2g)、D-contact50/鮎/緑(4.5g)、BuffetMute50FS鮎(5.5g)、他 |