今年もそろそろ堰堤プールの釣りが終焉を迎えそうです。今年は残雪が少なく、どの堰堤プールも渇水で早々と水温が上がり、或いは干上がってしまいました。それでも最後は例年のごとく、イワナたちがプールの狭い範囲に集結し、尺オーバーの入れ食いを堪能させて頂きました。一部の堰堤プールではまだ水量が有り、釣りの可能な釣り場も存在する様ですが、そろそろ今シーズンの堰堤プールのルアーフィッシングの季節も、残りあと僅かの様です。季節はいよいよ夏、イワナたちは今、母なる源流へと急いでいます。 【6月13日(土)】 今年は残雪が異様に少なく、ダム湖の釣りも2週間ほど早く終焉を迎えてしまいました。これは堰堤プールの釣りでも同様で、私の良く出かける幾つかの堰堤プールでは、6月初旬から大きく水位を低下しはじめ、終盤が近いことを知らせていました。堰堤上のプールの多くは、堰堤のコンクリートに空けられた直径1mほどの穴に土砂や流木が詰まることで出来上がりますが、多くの場合、完全には穴が詰まっておらず、水が流れ出ています。そのため、雪代の豊富な時期にはプール底から1段あるいは2段上の穴の付近まで水位が保たれますが、夏が近づき源流部からの水量が減ってくると、穴から流れ出る水量と拮抗しはじめ、徐々に水位が下がってくるものなのです。そして、真夏になると多くのプールは干上がって消失してしまうのです。
さて、この日13日は、午前中にダム湖でひとしきりの釣りを楽しみ、午後からは2つの堰堤プールの下見に来ていました。翌14日(日)に、遠来の友人と釣りをする約束をしており、直前の状況を確かめておく必要があったためです。2つの堰堤プールは例年より水位の低下が早いものの、まだプールは消失しておらず、釣りは十分に可能で、1つ目の堰堤では36cmまでのそこそこの釣果が見られました。2つ目の堰堤は時間が無く、水位を確かめただけでしたが、こちらもほど良い水位の様で、翌日の釣果は十分に期待できました。 【6月14日(日)】 翌日は早朝から友人たちがやってきました。福島県の浜通りからSさんとAさんです。2人ともルアー釣りの経験は浅く、堰堤プールでの釣りは全く初めての様子で、ここはなんとしても釣らせてあげたいものです。
早朝はとある源流部を餌とルアーで釣りましたが、尺までのそこそこのサイズが程良く釣れ、お昼近くから先の2つの堰堤プールを攻めました。ただ、1つ目の堰堤プールに到着して、少々がっかりしました。水位が昨日より更に下がっていて、ほとんど干上がる寸前なのです。これではイワナたちはプールには留まっておられません。残った僅かな深みをルアーで探りましたが釣果は無く、仕方なくSさんには餌釣りでも狙って頂きましたが、やはり釣果は有りません。唯一ヒットのあったのはAさんの方で、恐らく35cm前後のまずまずの型の様でしたが、ルアーロッドに慣れていないせいか、惜しくもバラされてしまいました。うーーむ、残念!
2つ目の堰堤プールは、到着してみると逆に水位2mと、やや深すぎて釣りに難儀しました。穴から適度に水の流れている堰堤では、水位は最後にはゼロになりプールは干上がってしまいます。しかしその過程で、プール自体の大きさもどんどんと小さくなって行き、干上がる直前には長さ数十mほどの浅い小さなプールになってしまう時期があるのです。実はこの時、これまでプール全体に生息していた多くのイワナたちは、小さくなってゆくプールに寄せ集められる格好となり、非常に魚影の濃い釣り堀りの様な状態が生まれるのです。その時期は堰堤により大きく異なりますが、通常、6月中旬から7月中旬の間に、ほんの2週間ほどだけに見られます。
そんな時期に友人たちを連れて来たかったのですが、その最適な時期を見定めることは至難の業であり、2つ目の堰堤プールでは1〜2週間ほど時期が早かった様子。それでもボートを繰り出し釣り始めるとしっかりと釣果がみられ、まずは私のロッドに尺前後が2尾ヒット。Sさんは堰堤プールでのルアーフィッシングは初めての経験とのことでしたが、何事にも一生懸命で真摯な性格の方であり、私の横で釣り方をしっかりとマスターされた様子でした。その結果、Sさんの初めての堰堤プールでの釣果は、36cmと30.5cmの2尾と、これは全くお見事でした。
【6月27日(日)】
さて、1週間開けて6月最終週にも上記と同じ堰堤プールに入渓しています。14日はまだ水位がやや高く釣り辛かったのですが、この週はプールが干上がる寸前になっていて、水位は1m足らず。プールの大きさも満水時の数分の一になっていて、プール内に広く生息していたイワナ達は、プールの一番深い場所となっている堰堤のコンクリートの際から十数mの範囲に集結していました。ただ、プールは水位の低下とともにインレットに溜まったヘドロが流されてくるため、かなり濁っています。そのため、早朝や夕方はむしろ釣り辛く、昼間の明るい時間帯に釣果が多くみられるものです。
この日は午後15時ころから入渓しましたが、予想通りに堰堤のコンクリートの真下には、数多くのイワナたちが泳いでいて、ルアーを投げると即座にヒットがあり、ほぼ入れ食い状態でした。そして、ほんの2時間ほどの間でしたが、最大39cmを筆頭に、39,37,36,36,35,33,33,32,31,31,30,30cmと尺上12尾の大漁でした。ただそれでも、昨年・一昨年とは違って、全体に型は小さく、数も少なめなことが非常に気になりました。前回の堰堤プールの釣りのレポートでも触れた通り、昨年に源流部で良く釣れた噂が流れ、昨年夏から現在まで、堰堤の源流部には大量の釣り人が入っていて、かなりの数のイワナたちが持ち帰られたと考えられるのです。
【6月28日(日)】 そして翌日はこの堰堤の源流部へ少しだけ足を踏み入れています。源流部でのイワナの魚影の濃さを確認するためでした。しかし驚いたのは、インレット付近の砂地の河原には、昨年春までは殆ど見られなかった釣り人の足跡が、異様なほどに多数見られたことです。これでは源流のイワナも釣り切られ、堰堤のイワナの数も同様に激減しても当然ではないかと思われました。ただ、そんな状況にも関わらず、インレットからすぐ上の流れには、尺物をはじめ結構な数のイワナが見られ、恐らくたった今、堰堤のプールからイワナたちが遡上を開始し始めているのではないかと考えられました。
夕方は再びこの堰堤プールにフローターを浮かべ釣っていますが、魚影は昨日と全く変わらず豊富であり、やはり1時間少々で、39,36,36,35,34,32,32,31,30cmの尺上9尾の入れ食い状態でした。まだまだ釣れる状況ではありましたが、釣り過ぎることは結局はイワナの虐殺に繋がってしまうことから、魚影を確認できた時点で竿を納めました。ただ、昨年・一昨年と違って、この日も最大は39cmと、残念ながら大物の姿は見られません。恐らく、源流部での釣り人の急増は、来年度には更に状況を悪化させているだろうことを想像でき、この堰堤プールも入れ食いを楽しめるのは今年が最後ではないかとさえ思えました。
【7月5日(日)】 そして、更に翌週にもこの堰堤プールの魚影を調べるために入渓しています。ただ、この日は最初から釣果は期待していませんでした。その理由は、前週に既に水位は1m以下となっていて、この地では24日から30日までの間、全く雨が降っていなかったため、恐らく29日(月)か30日(火)にはプールが完全に干上がってしまっていたのではないかと想像できたからです。プールが干上がって何日か経過すると、流石にイワナたちはその場には留まることは不可能になるらしく、その後に大雨が降ると、最後まで残っていたイワナたちも一斉に源流部に向かって遡上を開始してしまう様なのです。つまり、ボウズ覚悟の調査釣行だったと言う訳です。
そしてこの予想は全く当たっていました。木曜から土曜にかけては30mm程度の雨が降り、堰堤のプールは水深1mほどに復活していて、見た目は前週と何ら変わりのない風景でしたが、魚影は全くのゼロでした。いくら付近を探っても、1尾のイワナも姿を表すことはありませんでした。お昼ごろ、インレットで休憩をしていると、朝一番で源流部へ入った餌釣り師2人が降りてきましたが、聞くとやはり上流部では40cmクラスを含む多数のイワナの釣果があったとのこと。堰堤のイワナたちは早い渇水を迎え、この数日のうちに大移動を開始し、源流部でも釣り人たちを楽しませてくれていたに違い無いのです。
このレポートを書いている時点(7月14日)でも、まだ渇水せずに干上がってはいない堰堤プールも存在しますが、そこに棲むイワナたちも、プールの高温化と産卵の準備のため、まもなく大挙して源流を目指し始めることでしょう。そして彼らの一生で最も輝く瞬間である産卵活動を遥か源流部で終え、冬から春にかけ、またこの堰堤プールへと舞い戻ってくるのです。どうかそれまで生き残ってくれ、彼らの子孫とともに、またこの地で会えることを心から願うばかりです。 【今回使用のタックル】 Wellner 8ft TroutRod、Shimano BiomasterC2000、Kureha SeagerAce1.2号(9lb)、 BuffetMute50FS鮎(5.5g)、WiseMinnow50FS若鮎/ヤマメ(5.2g)、D-contact50/鮎(4.5g)、他 |