今年も、ダム湖のルアーフィッシングのシーズンが終焉を迎えました。今年は残雪が異様に少なかったためか、南東北のダム湖では概ね釣果に乏しかった様です。そのため、寂しい思いをされた方も多いと聞いていますが、皆さんは、如何だったでしょうか。私自身の今期のダム湖の釣りの結果は、早期に比較的大物に恵まれはしましたが、全般に尾数がとても少なく、特に後半戦は「忍耐の釣り」であった様に思います。ダム湖の釣りのレポートの最後は、5月末から6月末までの釣行について、まとめてお伝えしています。(写真下:ダム湖畔に鮮やかなヤシオツツジ) 【5月23日(土)】 「大物=水温×餌の量÷釣り人の数」という図式を、今年は今更ながらに嫌と言うほと思い知らされました。この日訪れたダム湖は、今年新たにターゲットにした釣り場ですが、雑誌などで非常に有名な釣り場を上流部に擁しており、源流部での釣り人の絶えない釣り場です。有名なあまり、その名前に魅せられて足繁く通ってしまいましたが、釣果の見られたのは2回だけ。大物は間違いなく入っているのですが、なにせ魚影が薄く、なかなか良い思いをさせて貰えません。しかも標高がとても高いため、この日もインレット付近の水温は5.5℃と低く、最盛期にはまだ少し早い状況でした。
案の定、この日、入渓して釣れるのはウグイばかりで、イワナの姿は皆無でした。やはり源流部で魚が必要以上に釣られてしまうと、その下流部のダム湖や堰堤プールでも魚影が見られなくなってしまうのは間違いない様であり、予想通りと言えばその通りでした。そういえば、このダム湖の源流部も、釣り人が増え過ぎたのか、最近は雑誌などで紹介されるのを見かけ無くなってきています。有名に成り過ぎると、どんなに険しく苦労の多い釣り場でも、釣り人が増え過ぎ、やがて荒廃は免れない様です。そして、その下のダム湖も含めて、水系全体が没落してゆくのです。 【5月24日(日)】
翌日は新潟からBuuさんがやってきました。付近のダム湖は梅雨の豪雨に備えて大きく水位を下げてきており、この日のこのダム湖の水位は、満水時よりも20m近く低下していました。しかしこのダム湖ではこの時期の水位が最も大物の狙える楽しい時期でもあり、欠かさず出漁することにしています。恐らくこのダム湖では今年最後のボートによる出漁となるだろうと考えられ、2人とも気合が入っていました。が、しかし、この日は早朝から異様に寒く、朝5時から釣り始めたにも関わらず反応はサッパリで、たまに掛かるのはウグイばかりの寂しい状況でした。
寒さと不漁に2人ともメゲて来た11時ころ、日が差し始めて付近が暖かくなり、ブヨやカゲロウが飛びはじめました。大物と言うのはこういったタイミングに動き出すのは判っていますが、それを証明するかの様に上写真の48cmが飛び出してきてくれました。今年14尾目の大物でした。朝一番から、もう何度もルアーを通している場所だったのですが、早朝はこのイワナ君、何をしていたのでしょう。目の前を美味しそうなミノーが通り過ぎても、寒くて動けなかったのでしょうか。地合いが合えば、ご覧の様にミノーを丸呑みする程の食欲を見せる様ですね。この日はワカサギを意識して、写真下中央の様なワカサギカラーのWiseMinnow50FSに、鉛の錘を約1gほど貼り付けたものでした。
48cmが出た後もちょっとしたドラマがありました。私がインレット直下の大岩のぶつかりをトローリングで流していると、ゴツンとヒットがありましたがすぐに抵抗が無くなってしまいました。見るとミノーのフックに半分ほど身の溶けた20cmほどのウグイ(写真を取り損ね残念)が掛かっていました。どうやら大物の口から消化中の獲物だけを取り上げてしまった様子です。ところが、その直後に同じ場所にミノーを投げ込んだBuuさんに強烈なヒットがあり、一瞬でラインを切られてしまったのです。超大物が潜んでいた様子なのですが、残念ながらその獲物の気配はその後消えてしまいました。そして、この出来事は後に別のお話へと展開して行く事になります。
そして13時ころになって浅場に上陸してミノーを投げていると、もう一つのドラマがありました。Buuさんが目の前のごく浅い淵にミノーを投げていると、ミノーにアタックしてくる魚影が見えたとのこと。何度か同じコースにミノーを投げていると、確かに魚影が見えますが、ただ、私にはウグイにしか見えません。Buuさんが散々ミノーを流し反応が無くなったところで、既に獲物を得て気合の薄れていた私は「ウグイでも釣ってみるか」と遊び半分でミノーを投げ込んだところ、すぐにヒットがあり、あれま・・・44cmが釣れてしまいました。今年15尾目の大物です。恐らく最初にアタックしてきたのはこのイワナであり、Buuさんには悪いことをしてしまいました。
ところで、仲間うちで「キモン」と呼んでいる現象を以前お話した事があります。一度「キモン」の仲になると、数か月の間は、その人と釣りに行くとなぜか釣れなくなる現象を言いますが、どうも今年のBuuさんは私と相性が悪い様です。Buuさんと一緒の時に、なぜか私だけは良く釣れるのですが、Buuさんにはヒットがまるで無いのですね。んーーー、今年のBuuさんと私は、一方向性のキモンなのでしょうかねぇ。私はBuuさんに感謝しなければいけないのかも知れません。さて、午後4時ころにはこの釣り場を引き揚げましたが、この日はこのダム湖のイワナ釣りの最盛期でもあり、帰り道の岸辺には数人のルアーマンが頑張っていて、何尾かの釣果が見られていた様子でした。
【6月6日(日)】
2週後になって、先に述べた超有名なダム湖に再び挑戦しています。前回は水温がまだ低く反応も無かったのですが、そろそろインレットでの釣りに適した水温になっているのではないか、と考え再挑戦してみたものです。しかし、朝5時に入渓し、インレット付近の水温を測ると6.5℃と予想よりはやや低く、少々がっかりさせられました。加えて天候は小雨模様で寒く、これではイワナたちも寝ているに違いありません。思った通り、早朝、たまにミノーにヒットするのは20〜30cmもある巨大なウグイばかり。標高の違いにより、ダム湖の適水温も1ヶ月以上もズレが生じることが判ります。
ただ8時を過ぎるころからお天気がやや回復し、青空も見えてきました。同時に水温も上昇し、7℃台をキープする様になってきました。魚影の非常に薄いダム湖ですが、丹念に探るとイワナのトレースが見られる様になり、とある支流の合流点の角で、久々のヒットがありました。しかし38cmとサイズはいまいちで、これでは全く物足りません。ただ、このイワナ君、非常に美しい・・・まるでサファイアの輝きの様な、見事な尾ビレを持っていました。餌や水質によってイワナの体色は大きく変化するものですが、こんな綺麗なブルーはこれまで経験がありません。生命の神秘には驚かされました。
そして11時ころになると水温も上昇し8℃台をキープする様になり、虫が飛び交い始めました。既にほぼ全てのポイントにミノーを投げ込んでいた訳ですが、急に活性が上がったのか、早朝に全く反応の無かったポイントから上写真の大イワナがゆっくりとミノーを追い掛けてきて、足元1mほどの距離でミノーに喰らい付いてきました。すわ50UPかと思われましたが、しかしこのイワナ君、何度測定しても49.5〜49.7cmしかありません。泣き50に泣かされたと言う訳です。一応、記録は49cmとすることになりましたが、このサイズは今年2番目であり、今年16尾目の大物でもあり、満足のうちにお昼ごろロッドを納めました。 【6月13日(土)】
さて、6月に入ると多くのダム湖は梅雨の洪水に備えて減水を完了します。上写真2枚(左・中央)を見比べて頂ければ良く判ると思いますが、今までダム湖であった場所が渓流に変化し、そこに居残った大イワナを狙う釣りが可能になってきます。この日はそんな釣りを期待して勇んで夜明け直後から入渓しましたが、残念ながら昨夜来の雨のせいか、本流の水量が多すぎて遡行不可能な状態でした。仕方無く、インレット付近の岩場の周りを釣ってお茶を濁してしまいました。減水直後はまだ殆ど釣り人が入っておらず、ちょっとしたポイントから小さなイワナたちが飛び出してくるもので、この日は尺までのチビばかり4尾だけの釣果でした。無理をすれば遡行出来なくもなかったのですが、私の様な老体にはまぁ、無理は禁物です。
【6月20日(土)】 しかし、この居残り組のイワナ釣りは、渓流では普通釣れない大型が狙えるため非常に魅力的で、翌週も土曜早朝から同じ釣り場へと出かけています。朝4時ころのまだあたりが薄暗い中、釣り場に到着すると、ダム上流の流れは穏やかになり、遡行は十分可能になっていました。ただ、釣り場の近くの駐車スペースには、地元の人の車が一台停車していて、何か嫌な予感が・・・。まぁ、餌釣り師であればダム上流のウグイ天国の渓では手も足も出ない筈ですしと、タカを括って釣り始めました。餌釣り師が釣った後でも、ルアーであれば十分に大型が狙えるものなのです。
ただ、釣り始めてすぐにおかしいな・・・と気づきました。チビしか出てこないのです。しかも、釣り人はすぐ上流にいるらしく、足跡がまだ湿っています。仕方なく早足で釣り上って行くと1時間ほどで先行者に追い付いてしまいました。予想通りにその釣り師はルアーマンで、しかも見事な魚体の48cmを釣り上げていました。ルアーの後でルアーを投げても、これは大抵の場合、釣れないのですね。ただ、同じルアーマンどうしですから、すぐに仲良くなってしまうのも常。あれこれ情報を交換し、そこよりも上流部の手付かずのポイントを譲って頂きました(ありがとう!)。彼は48cmを釣り上げて十分に満足らしく、意気揚々と引き上げて行きました。
その後は上流部を釣らせて頂きましたが、残念ながら満水時のインレットとなる場所はすぐそこで、ポイントとなる大淵は2つしかありません。それでも、誰も手を付けていないポイントでは反応がすこぶる良く、尺まででしたが、4尾のイワナを釣り上げることはできました。ただ、大型の姿は見られず、どうも昨年と比べると魚影も薄く型も小さい様子。今年このダム湖ではボートでも盛んに釣っていますが、昨年と比べると魚影が薄く、やはり残雪の少なさが影響していたのでしょうか、居残り組の釣りにおいても同様の状況の様でした。
【6月21日(日)】 そして今シーズン最後のダム湖の釣りは、その翌日の夕方でした。日曜朝はのんびりと自宅で過ごし、釣り人が落ち着き居なくなったであろう日曜の午後に同じダム湖の上流に入渓しました。前日の釣果で大型は数が少ないであろうことを概ね予想していましたので、最後はもうのんびりと、ダム湖とその上流の雰囲気を楽しむのが目的でした。釣り場に到着すると予想通りに入渓者は皆無で、ただただのんびりと私一人で釣りは楽しめそうです。釣り始めたのはもう夕方の17時近くでしたが、まずは尺にちょっと届かないイワナ君がお相手をしてくれました。
そして2つ目の淵に背を低くして近づき・・・ここはダム湖がまだ減水中の時(5月24日)、私が消化中のウグイを掛け、Buuさんがラインを引きちぎられたポイントであり、超大物が潜んでいる可能性が非常に高かったのです・・・淵の遥か後方から、WiseMinnow50FSヤマメの大遠投を試みました。淵の一番深いところにミノーを着水させ、6秒3mほど沈ませた後、やおらミノーを泳がせ始めました。そして2回ほどトゥィッチを掛けたところでいきなり強烈なアタリがあり、超大物を掛けたかと思いきや、いきなりとてつもない力でロッドが絞め込まれ、ドラグが唸り始めました。
10分以上も格闘した挙句に上がってきたのは、いやはや、超大物イワナのつもりが63cmもある黄金のコイでした。しかしまぁ、淵の底で黄色い魚体が見えた瞬間は、ガックリと気が抜けてしまい萎えてしまいました。最後の最後は、ちょっと笑えるお話ではありましたが、こうやって今年のダム湖のルアーフィッシングのシーズンも終焉を迎えました。魚影の薄さと大型の少なさには悩まされましたが、今年も十分な大物に出会え、多くの仲間と良い釣りが出来たことに感謝しつつ、09年のダム湖の釣りのレポートを終えたいと思います。 【今回使用のタックル】 Wellner 8ft TroutRod、Shimano BiomasterC2000、Kureha SeagerAce1.2号(9lb)、 BuffetMute50FS鮎(5.5g)、WiseMinnow50FS若鮎/ヤマメ(5.2g)、D-contact50/鮎(4.5g)、他 |