単独釣行レポート

堰堤プールの釣り09 (5月2日-6月7日)


今年も堰堤プールのルアーフィッシングが最盛期を迎えています。2〜3年前からダム湖の釣りが忙しくなり、加えて堰堤プールでの釣果があまり芳しく無いことも手伝って、この釣りに出かける回数が大幅に減りつつあります。今年もダム湖の釣りの合間を縫う様な形で、あちこちの堰堤プールへと足を運んでいますが、当初の予想通りに釣果の方はあまり芳しくありません。しかしそれにしても、一体なぜ堰堤での釣果が年々落ちて行くのでしょうか? そんなことを考えつつ、このレポートを書いています。

注:釣り場の特定を防ぐため、風景画像に大幅な修正を加えるか、同イメージの別の場所の写真を使用しています。ご了承下さい。


【5月2日(土)】

今年の連休は先にレポートした通り、もっぱらダム湖のルアーフィッシングに没頭していました。しかし、2回だけですが、堰堤プールへも足を運んでいます。今年は異様に残雪が少なく、堰堤プールの釣りも早期から始まり、いつもより相当に早く終わってしまうのではないかと考えられ、釣果はそれほど期待できないにせよ、半日程度の短い釣行で様子だけは見に行っていたものです。この日は昨年見つけた某ダム湖のすぐ近くの堰堤プールで、2時間ほどの余った時間を利用して釣りに入っています。季節はようやく春本番を迎えたばかりの頃であったため、桜やヤシオツツジが満開で、景色だけは最高でした。

下流部では赤ヤシオが咲き始めた山では桜が満開雪代で溢れている堰堤プール

昨年夏に見つけたこの堰堤プールですが、堰堤自体が建設されて間も無いことから、まだプールが小さく水深もあまりありません。しかし初春から初夏まで、安定してプールが少しでも残っていれば魚たちは間違いなく入ってきている筈であり、あまり期待もせず入渓してみました。プールは浅いのですが、ゴウゴウと流れる雪代で溢れ返っていて、かなり濁っており、これはもう煙幕理論の出番でしかありません。流心へもミノーを投入し探ってみましたが反応は全くなく、プール脇のブッシュ周りから下の3尾が飛び出してくれました。ただ、型はいまいちで、魚影も薄く、まぁ、予想通りと言えばその通りでした。

魚影は薄く、型もいまいちインレット部には魚影が見えないこの日の釣果、最大33cm

【5月5日(火)】

5日は新潟の仲間と下越のダム湖に入渓していましたが、午前中のダム湖の釣りが最悪で、仕方なくこの日の午後は近くの堰堤プールへ向かったと言う訳です。この堰堤プールは源流部の標高がそれほど高くなく、比較的早い時期から雪代が消えてしまうため、例年であれば5月中旬ころまでが釣期となっています。しかし、現場に到着して驚いたことは、既に雪代が消えかけていて、プールの底に沈む流木などがうっすらと見え始めていたことです。現場に到着した時間は午後3時ころでしたが、のんびりとフローターの用意をして、夕マズメの一時を狙うことにしました。

新緑の堰堤プールは美しいチビも多いが魚影はそこそこ魚達は非常に良く太っていた

16時ころから釣り始めましたが、透明度が高く、最初は全くアタリすらなく時間が経過して行きます。そして、17時近くになり、周囲がうっすらと暗く成り始めたころ、写真上中央のおチビちゃんがヒットしてきました。その後はプールの周辺部の茂みの下など、あちこちからイワナが飛び出してきてくれ、型はいまいちですが、十分に楽しめます。そして、暗くなってきてそろそろ切りあげるかと思い始めた17時半ころ、プールの最深部となる堰堤のコンクリートの真下へ投げ込んだWiseMinnow50FSヤマメに、根掛かりの様なアタリが出てくれました。まるで相撲取りの様に丸々と太った43cmは、この堰堤ではこれまでに釣れた最大サイズでした。

この日の最大は、小錦イワナ43cmリリースの直後

【5月30日(土)】

しかし、堰堤プールの釣りも大型が出たのは5月連休が最後でした。5月はその後もダム湖の釣りに没頭していて、再び堰堤プールに入渓したのは3週間以上も後のことでした。この日は往年の銘堰堤であった2つの堰堤プールに入っています。しかし、この2つの釣り場も2〜3年前から急激に魚影が薄くなり、かっての姿は今は全くありません。今回も殆ど諦め気味で念のためにと入渓しましたが、予想は全く当たっていました。2つとも、数時間の釣行時間にも関わらず、魚影が全く無いのです。昨年はそれでもまだおチビちゃんが僅かに釣れていたものですが、今年は魚の影も形も見当たりませんでした。源流部には豊かな雪代の流れがあり、魚がいない筈はないのですが、見当たらないのです。

あの堰堤は今年も釣れない景色はどこまでも美しいが・・・ホームの堰堤プールも・・・

この日2つ目に入ったかつてのホームグランドの堰堤には、この釣り場で数年前からなじみとなっている餌釣り師も来ていましたが、ボートを繰り出して餌釣りを以ってしても、この日は朝一番から夕方17時ころまで、一度のアタリすらなかった様です。ルアーでも餌でも全く反応が無いことは、もはやこのプールには魚が生息していないのではないかと考えるのが妥当の様に思います。10年ほど前まで、あれほどまでに沢山いたイワナたちは、一体どこへ行ってしまったのでしょう。同じ現象はこの堰堤プールの源流部でも起きているのではないかと想像できますが、そういえば、雑誌や仲間からの情報でも、最近はこの水系での釣果について話を聞くことは、全くありませんでした。

新緑の非常に美しい風景とは裏腹に、往年の銘堰堤プールも今は見る影がない

【5月31日(日)】

さて、山形市から近い堰堤プールは、上記の様にどの釣り場もことごとく釣れなくなってきているのが現状ですが、山形市から遠い場所にある釣り場では、釣れる釣り場がまだ存在する様です。この日訪れた堰堤プールは、2年ほど前に見つけた釣り場で、昨年は相当な良い思いをさせて頂きました。ただ、山形市からは異様に遠く、また険しい道のりが待っているため、そう簡単に頻繁に釣り場に入ることができないのが悩みです。高速を利用して、やっとたどり着いたこの釣り場ですが、今年は残雪が非常に少なかったため、既に水位の低下が始まっていました。例年であれば6月2週目くらいから入渓する釣り場ですが、5月末のこの日でも、十分に釣りが可能でした。

昨年は大物が爆釣だった堰堤時期が早く、水深がやや深すぎるようやく出た32cm

ただ、釣り始めて少々ガッカリさせられました。型が小さく、魚影も昨年と比べると随分と薄かったのです。午後から4時間ほど頑張った結果は、下写真の中〜小型10尾と、その後に出た2尾の計12尾。最大はようやく32cmであり、昨年の大物爆釣はどこへやら・・・。そして良く見ると、源流入口付近の河原には、異様なほどの数の足跡がひしめいていました。そういえば、昨年はこの源流部で大物ラッシュが見られたそうで、相当な数の源流釣り師が入渓していた様なのです。その余波は今年も早期から見られ、この沢山の足跡を残していったものと想像できました。源流へは水量が多く、まだ入渓は困難ですが、昨年夏の段階で既に多くのイワナ達が釣り切られ、プールの魚影も薄くなってしまっていたのではないかと考えられました。

この日の釣果、最大32cm、全12尾リリースの瞬間

ではなぜ、源流釣り師たちがこの釣り場に集まってきたのでしょうか。一つは、昨年6月に何人かの源流釣り師にプール脇で出会っていますが、「40cmオーバーを何尾もルアーで掛けた」と初対面の私に軽々と話しており、釣り師と言うのは自慢したいのが常であり、恐らくそんな情報がアッと言う間に口コミで釣り師たちに伝わってしまったのでしょう。或いはもう一つ考えられる理由は、私のこのHPです。いくら写真を加工してごまかしても、知っている人には場所が判ってしまう様であり、プールでの釣果は源流でのその後の釣果を示すことから、源流の釣り師を集めてしまった可能性があります。

源流部は激流で遡行は不可能その後も尺前後のイワナがDダイレクトに出たチビ

【6月7日(日)】

そしてもう一点、今年の異常な積雪の少なさにもその原因が考えられます。翌週も懲りずに遠路をはるばると同じ堰堤プールへと足を運んでいますが、しかし驚いたのは、6月2週目にして、堰堤プールの水位が大幅に低下していた事です。昨年は6月の最終週でも最深部で2mの水深が残っていましたが、今年は2週目でほぼ同じ水位にまで低下していました。やはり残雪の少なさは相当なもので、これでは3週間程度も早く堰堤プールが渇水で干上がってしまう可能性があります。一方で少ない残雪は雪代を少なくするため、大物の源流部からの流下を少なくしてしまっている可能性が非常に高いのです。短い釣期と少ない雪代のダブルパンチで、今年の堰堤プールは釣れそうも無いと言う訳です。

型もいまいち、数も少ない午後の4時間でようやく10尾景色はそろそろ夏の気配だ

ちなみに、下表は07年から09年の山形の降水量・積雪を示しています。ご覧のように、大物の流下に関係すると思われる3月から5月末までの降水量と降水回数は、07年から今年まで、あまり変化はありません。むしろ08年の方が降水量・回数ともに少なく、昨年の爆釣の理由には全く成りません。しかし積雪深は明らかに09年で少なく、平年の60%程度しかありませんでした。07年に同堰堤を見つけ、何度か釣った時にも、08年の釣果には遠く及ばない結果でした。こんなことからも、残雪の量こそが大物の流下に大きく影響するのではないかと、最近では考えています。

09年の初春の降水量と降水回数は平年並みだが、積雪は平年の60%程度と異様に少ない

しかし・・・それにしても理解しがたい現象が一つだけ残ります。それは先ほど示した、かつてのホームグランドの堰堤での状況です。源流釣り師たちがいくら魚を釣ったとしても、また、堰堤プールでいくら餌釣り師たちが釣ったとしても、ほんの3〜4年で、全く魚影の無い状態にまで成るのでしょうか? イワナと言う魚の繁殖力は非常に旺盛です。しかし、何年も連続して、源流で釣り、堰堤プールで釣り切ると、1尾の魚も生息しない渓流が出来上がってしまうのでしょうか? 本当の理由は私にも判りませんが、いずれにせよ、一度釣り師たちが集まり始めてしまうと、ダメージは計り知れない程大きく、水系全体が破壊されてしまう事は有り得る様です。

この日の最大はやっと34cmインレットの泥がプールを濁らせる水位低下は2週間以上も早かった

さて、今年の堰堤プールの釣りの釣期は短そうですが、それでもまだ、あと1ヶ月程度は楽しめそうです(6月11日現在)。あまり釣果は期待できそうもありませんが、それでもあの爆釣を夢見て、又出かけてしまうのです。しかし堰堤プールを巡る状況は年々非常に厳しくなってきており、こんな釣りがあと何年続けられるのか、心配になってしまいます。私の健康が続く限り、あと何年かは南東北の堰堤プールのルアーフィッシングの状況を見守って行きたいと思っています。

【今回使用のタックル】
Wellner 8ft TroutRod、Shimano BiomasterC2000、Kureha SeagerAce1.2号(9lb)、
BuffetMute50FS鮎(5.5g)、WiseMinnow50FS若鮎/ヤマメ(5.2g)、D-contact50/鮎(4.5g)、他