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ミニオフレポート
ダム湖から源流へ(6月1-8日)
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例年6月の声を聞くとダム湖の釣りの季節もほぼ終了し、堰堤プールや源流釣りのシーズンを迎えます。しかしながら、今年は少しパターンを変え、堰堤プールの釣りと平行して、その後もダム湖の大物を狙い続けています。雪代が落ち着き透明度が上がると、ダム湖のインレット付近に集中していた大イワナたちは姿を消してしまいますが、では、彼らは一体どこへ行ってしまうのでしょう。そんな謎を解きたくて、ダム湖の上流部を釣り歩いてみました。そこには、これまで見たことの無い様な超大物が遊弋していました。
注:釣り場の特定を防ぐため、風景画像に大幅な修正を加えるか、同イメージの別の場所の写真を使用しています。ご了承下さい。
【6月1日(日)】
毎年6月を迎えると、雪代も落ち着きを見せ始め、ダム湖に注ぐ渓の水も透明度を一気に上げてくるものです。インレット付近に集まっていたワカサギを狙って集中していた大イワナたちも、透明度の高さと水温の上昇にともなって、急速に釣れなくなってきます。ダム湖では既に水温も十数度まで上がっており、この日は朝一番からフローターの出番となりました。インレット付近は急峻な崖となっているダム湖が多く、やはり入渓は困難ですが、フローターがあれば沢などの比較的斜度の緩やかな場所を選び入渓し、インレット付近を攻めることが可能です。ボートでも良いのですが、この時期は水位が大きく低下していて、ボートを出せる場所が殆ど無くなってしまうのです。
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20m以上も大きく減水したダム湖 | 水温も上がってフローターの出番 | 鉛を貼り付けた深場用ミノー |
そろそろ釣れなくなっているかと想像していましたが、今年は5月の平均気温が異様に低く、まだダム湖の釣りの季節は完全には終わってはいない様でした。この時期は透明度も高くなり、深い場所を探らないとなかなかヒットに繋がりません。写真上右の様な、厚さ1mmの鉛を貼り付けたDensMinnow50やDコンタクト50Sでゆっくりと底ギリギリをトレースします。Dens Minnowは尾部のフックを普通の3本錨鉤に取り替えることで、あのSuper Sinking Minnowとほぼ同じ泳ぎをしてくれる様です。早朝6時ころから11時ころまで頑張りましたが、今年一番のサイズの2尾の釣果が見られ、まずは満足の行く結果となってくれました。
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インレットで来た47cmと45.5cm | 47cm/45cmと私 | インレット上流部の流れ |
この日は餌釣り師が2人、朝一番からダム上流の源流に入っていましたが、ロクに釣れなかったらしく、早々に渓を降りてきていました。実はインレットの上流部1kmほどは、ウグイの天国となっていて、餌釣りでは真っ先にウグイがヒットしてしまうのです。加えて透明度が高いため、餌釣りでは近寄り過ぎなければならず、大イワナの存在すら気が付かないでしょう。この時期はインレットから少し上流部にダムの魚たちが入り込んでいて、数は少ないのですが、大物を狙えることが判っています。時間はもうお昼近かったのですが、透明度の高い渓では釣れなくても魚影の確認だけはできるだろうと、あまり期待もせずに入渓してみました。
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インレット上流の流れで来た41cm | 実はウグイの天国でもある | かなり上流部で来たチビイワナ |
しかし驚きました。お昼過ぎの真昼間だと言うのに、インレットから3つ目の淵で、写真上左の41cmがヒットしてきたのです。その後も上流部へ1kmほど歩く間に、ルアーを見切られてヒットには繋がりませんでしたが、4尾の大イワナの魚影が見られたのです。しかも、その1尾は50cmクラスの大物で、ダム湖にいた大物たちが相当数、この辺りを泳いでいるだろうことを確認できました。ただ、1kmほど遡行すると渓相がやや変化し、どうやらダム湖の満水時には、このあたりがインレットになっていた様子。その更に上流では小さなイワナが1尾ヒットしただけで、大物の魚影だけでなく、ウグイの魚影までも見えなくなってしまいました。
【6月7日(土)】
50cmクラスの大物の魚影を見てしまった私は、翌週も出かけないと気が済まなくなっていました。大物はまだ薄暗い時間帯から釣らなければヒットの可能性が低いことを考え、早朝3時半過ぎには前週と同じ釣り場に立っていました。うっすらと明るくなり始めた4時ころ遡行を開始。そして30分程経ったころ、そのドラマはやってきました。透明度がかなり高いため、淵の脇に立って釣ってもウグイ以外は何も釣れません。幸いにもこの渓には大岩が多く、点在する岩と岩の間を縫うように隠れながらの釣りです。4つ目の淵のかなり手前の大岩の影から、目の前のごく緩い流れの上流側に15mほどルアーを投げ込み、沈めてからゆっくりとストップ&ゴーを繰り返していると、そいつは姿を現しました。
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朝一番に来た53cm 全く素晴らしい魚体だ | 53cmと私 |
ほんの5mほどの目の前で、ミノーにガブリと噛み付く大物の姿がはっきりと見えました。すかさず合わせを入れるとしっかりとフッキングしてくれ、魚体が水中でウネウネとモガき始めるその姿は、とてつもなく大きなものに見えました。流れは緩く足場はゆるやかな砂のカケアガリになっています。ラインはフロロカーボンの1.2号8ポンドであり、ネット無しでも十分にランディングは可能です。ジリジリと鳴るドラグを少し締め込み、砂場の上に魚をズリ上げるのは、そう難しいことではありませんでした。濡れた砂の上に横たわった大物は53cm。破裂しそうな心臓をかろうじて抑えながら、そのあまりにも見事な魚体に、しばしの間、見入ってしまうのでした。
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やや鼻曲がりの精悍な面構え | リリースすると元気に去って行った | こんな緩い流れで獲物を狙っている |
ちなみにこの53cmは、流れの中で釣ったイワナの自己記録(北海道のアメマスを除く)となるサイズでしたが、それにしてもクリアな流れの中で大物を釣り上げるその難しさを、今更ながらに痛感しました。他よりも警戒心の強いゆえにこれほどまでの大物に育つことができた個体であり、少しでも人影を見られてしまってはまるで釣りになりません。大物は強い流れの泡の下などには居らず、むしろ淵尻の流れの緩やかな見通しの利く場所に定位していて、遠くから歩いてくる人影を真っ先に見つけられてしまうでしょう。加えて、ミノーを引く距離もダム湖とは比べ物にならない程に短く、ほんの少しでもルアーに不審な動きを見つけてられてしまうと、全く相手にすらしてくれないのです。
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非常なテクニックを要求される | 2尾目は48cmのアメマス | ガッチリとDコンを咥えていた |
前週に見た50cmクラスは別の離れた淵であり、恐らくこの淵にはこの大物が潜んでいた筈なのですが、その時はまるでウグイしかいなかった様な気配でした。ほんの1kmほどの区間にも関わらず、彼らは姿を現さないだけで、実は大物が何尾も潜んでいるのではないかとも思われました。その後は更に上流へと釣り上がりましたが、大物のトレースが2尾見られたもののヒットには繋がりません。満水時のインレット付近の少し下流部まで来たところで2尾目の獲物48cmのアメマスがヒットしたのを最後に、その後は大物の気配もウグイの姿もやはり見えなくなってしまいました。
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リリース直後の48cm | こんな流れに大物が点々と | インレット付近にはワカサギが一杯 |
源流の釣りは7時には切り上げ、その後はフローターをダム湖のインレットに浮かべ、前週と同じように止水の釣りを試みています。しかしこの日はお天気が良く、しかも透明度が高いこともあってか、魚影は全く見られませんでした。ただ、インレット脇の淀みには、写真上右の様な10cm程度のワカサギが数百尾単位で群れていて、まだ完全には産卵は終わっていない様子でした。そのため、天候や水況さえ良ければ、ダム湖内でもまだ大物を狙えた可能性は有ったのかも知れません。
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ウスバシロチョウ(アゲハの仲間) | ミズタビラコ | ウマノアシガタ |
【6月8日(日)】
翌日は53cmの釣果を聞いた新潟のBuuさんともっくんがこの釣り場にやってきました。電話で「昨日の朝、たたきまくったばかりだから、釣れる可能性はかなり低いですよ」と説明したのですが、「新潟の某大物ダム湖もさっぱりで、行くところが無い」とのこと。急遽ミニオフになったという訳です。朝一番に入渓するために、お二人は新潟を夜中の1時に出てこられたとのこと・・・うーん、これで釣れなかったら、あまりにも申し訳ない訳ですが、まぁ、お魚さんが相手のことですから、運を天に任せるしかありません。
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透明度の高い流れを釣るBuuさん | こんなに離れて投げても見切られる | 快晴、あまり条件は良くない |
しかし釣り始めてすぐにその予想が的中していることに気がつきました。ミノーで大遠投を試みてもらいましたが、まるで反応が無いのです。あっと言う間に満水時のインレット付近に到着しましたが、3人ともウグイ以外の釣果無しです。ただ、途中でもっくんのミノーを追いかけてくる40cmクラスのイワナをBuuさんと私が目撃しており、やはり前日に釣ったためスレて反応していない様子でした。気が収まらないため、更に上流へと4つほどの淵を釣り上がりましたが、大物の気配はやはり無く、小型のイワナのトレースが見られる様になりました。仕方なく、最後にBuuさんに25cmほどのニジマスが1尾ヒットしたところで引き返すことにしました。
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上流部で来たニジマスとBuuさん | もっくんはなぜかウグイ連発 | こんなウグイがウジャウジャ |
大物の場合は慢性的に餌を取っている訳ではなく、ある時間帯に突然活性の上がることもあるため、念のため帰り道も3人で釣り下がっています。これは一応正解で、一度釣ったポイントにも関わらず、私に35cmのアメマスがヒット。かなり明るくなっていたため、Dコンタクト50S鮎を油性マジックで緑に塗りつぶしたミノーに反応したものです。そして更に釣り下がり、入渓地点から200mほどの地点まで戻ってきた時、同じDコン緑をあきらめ気味に淵に投げ込むと、驚きの出来事がありました。もっくんと私の目の前に、50cmはゆうに超える(60cm近かったかも)巨大なイワナが姿を現したのです。
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遠投で頑張るもっくん | 9時ころにやっと釣れた1尾 | アメマス35cm |
残念ながらすぐに深みに消えて行ってしまいましたが、まだまだ相当数の大物が付近を泳いでいることが伺えました。結局お二人には大物は釣れてくれなかった訳ですが、それでもまぁ滅多に見れない巨大イワナの姿を目撃できたことで、なんとなく満足して帰り道に着きました。しかしなぜ彼ら大物たちはインレットから1kmほどの付近に多く存在していたのでしょうか。これまでもダム湖や堰堤プールのイワナが水温上昇とともに普通に遡上しているだけとは考えられない状況を何度か経験していましたが、今回の3回の釣行で、確信を得た様な気がします。私の考える6月のダム湖の釣りの構図はこうです。
1.南東北の殆どのダム湖は5月ゴールデンウィークのころに満水となるが、その後、梅雨の洪水に備え、
6月初にかけて10〜30mも大きく水位を下げる。それに伴いインレットは上流部から下流部へと移動する。
2.ワカサギの産卵時期は5月中旬から末ころであり、ダムの減水と時を同じくしてインレットにワカサギが
集まり始める。そのワカサギを狙って大イワナたちがインレット付近の比較的浅い所に集まる様になる。
3.イワナたちの多くは、水位が低下して川になってもそのまま同じ場所に留まり続ける。つまり、満水時の
インレットから減水完了時のインレットの間のごく短い区間に、大物が点々と生息する状況が生まれる。
4.その後の何度かの大雨による増水時に、闘争力の強い個体は産卵準備のために源流部へ遡上する。
闘争力の弱い個体は再びダム湖へと降海し、より大型のアメマスへと成長してゆくと考えられる。
北海道のアメマスや堰堤プールのイワナも、7〜8月の大雨の増水が遡上のトリガーとなっている。
5.ただ、ウグイもダム湖には多く存在し、同様にこの区間の一大勢力となっていて、餌釣りには厳しい。
また、ルアー釣りにおいても、透明度の高さと着き場の特異性から、高度な釣りの技術を要求される。
6.堰堤プールでは人為的な水位の低下が無く、降雨により水位が上下し、インレットも盛んに移動する。
また、水位の変化は通常0〜4m程度と少なく、インレット上部に大物が残る現象はあまり起こらない。
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渓相抜群・天気最高だが釣れない | Buuさんに来た普通のイワナ | もう渓はすっかり夏の様相だ |
不調のうちに始まった今年のダム湖ですが、終盤になって上記の釣りを開拓することで、今年は40cmオーバーを15尾、最大53cmと、過去最高の釣果を記録するまでになっています。我々はこれまで、6月の声とともに「ダム湖の釣りは終了」と考え、釣り場を堰堤プールや渓流・源流にシフトしていました。しかしどうやら梅雨の大雨のころまで、最も大型の渓魚を狙える素晴らしいフィールドを、うすうす気が付きながら見逃していた様です。上記の釣りの構図は、東北の他の多くのダム湖でそのまま当てはまるものであり、この考え方に基づき釣り上げられた超大物のお話を、あちこちから聞けることを楽しみにしています。
【今回使用のタックル】
CreekCompany The Original U-Boat、Wellner 8ft TroutRod、Shimano SensiLite MG2500、
Kureha SeagerAce1.2号(8lb)、(Weighted)D-contact50/63S/鮎、WeightedDensMinnow50若鮎/緑、他
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