今年前半のダム湖の釣りは、あまりお天気に恵まれず、釣果もイマイチの、ちょっと変なシーズンでした。しかし、シーズン終盤は産卵のため遡上するワカサギを狙った大イワナがインレット付近の狭い範囲に結集する季節となり、岸からもボートからも手軽に大イワナを狙える、1年で最もエキサイティングな季節となります。不調にもメゲず、5月に入っても毎週の様に下越や県内のダム湖へと足を運び、そして、なんとか満足の行く釣果にも恵まれ、今年のダム湖のシーズンは終焉を迎えようとしています。 【5月10日(土)】 4月中旬から5月のゴールデンウィークまでのダム湖は不調そのものでした。型も小さく数も出ないのです。その理由は未だに良く判りませんが、昨年の渇水で源流部の大物が大量に釣られてしまったのか、或いは我々が毎週の様にルアーを投げ続けスレてしまったのか、とにかく釣れませんでした。しかしそれでもメゲずにダム湖へは以後も毎週欠かさず通い続けています。なぜなら、南東北の5月は、産卵の為に遡上を開始したワカサギを狙って大イワナたちがインレットの狭い範囲に集中する、1年で最もルアーフィッシングのエキサイティングな季節となるからです。トラウトルアーフィッシャーたちは、この時期を逃すことはできないのです。
10日はのんびりと午後からいつもの下越のダム湖へ入りました。この日は新潟の仲間たちの都合が悪く、単独釣行でした。ただ、この週はまだダム湖は満水で、しかもインレット付近の水温は6℃と、ワカサギの遡上には少し早い状態でした。インレット直下の水温が8℃前後にならないと、本格的な遡上は始まらないと考えています。それでもGWの頃に比べると、イワナたちは相当な数、インレット付近までやってきている筈です。こんな状況の時は、川の水がダム湖の温かい水の下にもぐり込む辺り(我々はここを「前線」と呼んでいます)の少し下流側が狙い目となります。そんな場所をハンドトローリングで攻め、夕暮れに上写真の42cmをゲット。この日はこの1尾だけでした。
【5月11日(日)】 翌朝は4時過ぎには新潟の仲間たちがやってきました。おなじみのBuuさん、風玉さん、もっくんの3人です。一目散にインレットの下流1km程度のところまでボートで移動し、そこからインレットへ向かってハンドトローリングやキャスティングでポイントを探ります。4人でルアーを投げ続けますが、なかなか釣れません。唯一釣れたのはなぜか私だけで、前線付近で来たラッキーな43cmにインレットまで来て釣れた28cmほどの2尾。もっくんには強烈なアタリがあり、大イワナ・・・と思ったら大きなウグイでした。実はこの時期のインレットは、ウグイがウジャウジャなのですね。
しかし今年、このダム湖はやはり不調です。インレットで相当粘りましたがノーバイト。その後帰り道にインレットから1kmほどの地点でBuuさんに37cmがヒットしただけでした。この日はお天気もまずまずで、水温急低下があった訳でもなく、条件的には申し分なかった様なのですが、4人で3尾だけという貧果には参りました。結局この日は午後からの釣りをあきらめ、全員で全く別の堰堤プールの釣りへと走ってしまいました。今年、このダム湖での釣行はこれが最後となりましたが、それ以後もなぜか大物は出ていない様です。
【5月17日(土)】 翌週からは下越のダム湖に見切りを付け、県内のダム湖へ出漁しています。この週は5月も中旬となり、いよいよワカサギたちの遡上・産卵の時期を迎えようとしていました。遡上準備のワカサギたちの泳層は比較的浅く、インレット付近の水深も浅いため、岸からもボートからも、比較的手軽に大物を狙える様になると言う訳です。ただ、県内のダム湖は下越よりも水温が低く、この日はまだインレット直下で6℃台と、今年はほんの少し遡上のタイミングが遅い様でした。それでも先週の下越のダム湖と同様に、インレットの少し下流部には、相当数のイワナたちが集まっているハズ。大物は十分に狙えます。
この日は新潟の仲間に代わって、昨年入渓した時にお会いした天童市の齋藤さんが来られていました。私は午後からボートで繰り出しましたが、岸からのキャスティングで午前中から頑張っておられた齋藤さんとしばしの情報交換です。残念ながら朝からの釣果はイマイチだった様ですが、大型のイワナのトレースを何度か確認していて、大物たちが間違いなく目の前を泳いでいることを伺えました。しばらくの情報交換の後、私がボートで岸から離れたほんの僅か後でした。齋藤さんのロッドがなにやら大きく曲がっています。いやはや、目の前で47cmの大物を釣り上げられてしまい、いやがおうでも気持ちが高ぶってしまいます。
まだ水温は少し低めとは言うものの、気の早いワカサギたちはインレットに既にやってきていて、イワナもそこそこ釣れるものです。ただ、この時期の本当の大物たちは、ダムの幅が最初に急に広くなった付近=急な流れが急激に緩い流れに変るところに定位している様で、インレット直下は釣り易いのですがやや小型が中心になる様です。今シーズン不調の私は、型など気にしている余裕がありません。とにかく1尾釣りたい一心で、ひとりボートでインレットへと向かいました。ここ数日間、雨の降らなかったせいか、インレットは流れも穏やかで、うまい具合に環流地帯も脇にあり、絶好のポイントを独り占めしてさせて頂きました。Dコンタクト50S鮎を手前から遠投すると、すぐに反応があり、一発で43cmがヒットしてきました。
少しづつボートをインレットに近づけながらミノーを投げ続けますが、足元まで40cmクラスのイワナが追いかけては来るのですが、これがなかなかヒットに繋がりません。イワナのトレースは全部で5尾みられましたが、全てが40cm前後の型揃い?で、まるでこちらが遊ばれている様な気分でした。インレット直下ではイワナたちは大岩の下など、渓流での釣りとほぼ同じところに魚たちが定位していて、警戒心もそれなりに高くなる様です。まだ時間が早く明る過ぎて警戒心をあおってしまったのかも知れません。少しして41cmを追加したものの、この場ではこの2尾でおしまい。それでも今年の下越のダム湖よりは数段濃い魚影に、明日の朝の釣果を期待して、この日の釣りを終えました。
【5月18日(日)】 翌朝ももちろん同じ釣り場に入っています。まだ薄暗い中ボートを繰り出すと、お天気は快晴で良いのですが、放射冷却のせいか、あたりは異様に寒く冷気が身に染みます。5時過ぎにはインレット付近に到着。この日も齋藤さんが来られるとのことでしたが、まだ姿は見えません。ひとりインレットに直行し、期待してミノーを遠投しましたが、・・・これがさっぱり釣れません。昨夕の魚たちは一体どこへ行ってしまったのでしょう。小一時間ばかり釣った後、飽きて流れ込みのすぐ脇でウグイのチョウチン釣りをしていると、底付近でググッというアタリがあり、40cmクラスのイワナがヒットしましたが、残念ながら水面でバレてしまいました。どうやらイワナたちは寒くてまだ底で寝ている様でした。
休憩のため一旦下流部へ移動すると、齋藤さんが来られていて、岸からのキャスティングで頑張っておられましたが、朝からはまだ釣果が無かったとのこと。時間はこの時8時を回っていて、朝の冷気も和らぎ、ポカポカとした暖かい空気が流れ始めていました。そうなのです、人がフッと温かみを感じるその時が、実はイワナ釣りの絶好の時合いとなることが多いのです。そろそろイワナたちも目を醒ましていることでしょう。今度は齋藤さんにもボートに乗って頂き、2人でもう一度インレットを狙うことにしました。この付近はU字型に落ち込んだ非常に険しい地形であり、インレットへはボートが無いと入渓は全く不可能なのです。
この時合いの予想は的中しました。2人でインレットのすぐ下の岩場に上陸し、ルアーを投げると、早朝には全く反応の見られなかったポイントで、まずは泣き尺のイワナがヒット。その後、インレット付近の沈み岩の下にミノーを投入することで、40cm足らずのイワナがヒットしてきましたが、鉤外れのバラシ。次に来たのは上左写真の36cmですが、これはご覧の様な見事なメタボイワナで、良く引いてくれました。その後更にもう1尾40cm程のイワナがヒットしましたが、またまた鉤外れ。どうも使い古しのDコンであったため、フックのポイントが甘くなっていた様でした。加えて土曜に散々ルアーを投げていて、イワナたちもそれなりにスレていて喰いが浅い様でした。それでもそこそこの釣果を見てまずは満足の1日でした。
【5月24日(土)】 翌週も齋藤さんとはミニオフの約束でした。ボートで現場に到着してみると、齋藤さんの親戚のかた(齋藤Yさん)も一緒で、2人で並んで頑張っておられました。齋藤さんはこの時点で既に43cmをゲット。ただ残念ながら写真はありません。Yさんは相当な腕の持ち主らしく、県内だけでなくあちこちの源流やダム湖に出没されている様子。おまけに野草花や山菜の趣味も相当な様子で、まるで私の趣味と瓜二つ。思わず釣りや山談義に花が咲いてしまいました。本当は齋藤さんと2人でボートフィッシングの予定でしたが、私のボートは2人乗りであり、インレット付近は結構な急流もあって3人はとても無理。お二人にはそのまま岸からのキャスティングに徹してもらうことに。
この日は前週の教訓から、温かくなってきそうな7時過ぎの遅い出漁でした。ただ、インレットでは前週と違って水量が非常に多く、まるで釣りになりません。仕方なくお二人の釣っておられたポイントに戻りお喋りをしながらルアーを投げていると、底付近でラッキーにもヒットがあり42cmをゲット。続いてYさんにもヒットがありましたが、残念ながらバラシ。もう時合いも過ぎてダメかなと思い始めた10時過ぎ、私が岸からボートを離れ、対岸へ移動した直後でした。Yさんが足元のライズにすかさずミノーを投げ込むと、待望のヒットです。これが大物でした。慌ててボートをYさんの所に走らせると、そこには51cmの見事な獲物が横たわっていました。Yさん、最後に見せてくれますなぁ。
それにしてもこの51cm、源流育ちの惚れ惚れとする素晴らしい魚体です。私はこんなイワナを釣りたくて釣りをしているのですが、今回は見事にやられてしまいました。実はこのYさん、タダ者ではありませんで、バルサミノーや手作りロッドを手掛ける言わば釣りのプロ。本業の傍らに以下の様なお店もやっておられるとか、興味のある方は一度ご連絡されてみては如何でしょうか。 バルサミノービルダー「夢工房」 齋藤安正 氏 : バルサミノー注文販売、本波幸一自作ロッド注文販売、さくらんぼ・米・販売 (天童市、пF023-655-2876)
さて、この日は曇りでしたが、流石に11時を過ぎると魚影もパッタリと見えなくなり、しばらくは休憩タイムです。お昼を食べ、ぐだぐだとお喋りをしていると時間の経つのも早いもの。15時ころ、午後の釣りを再開しました。そして、その直後に私にちょっとしたドラマがやってきてくれました。再び一人でインレットに向かい、流れが緩やかになる辺りで、目立たないSSミノー緑で底ギリギリを流していました。ガツンと強いアタリが出て、まずは45cmの今年一番の良型を難なくゲット。しかし、この後が問題でした。まさかすぐに続いてヒットは無いだろうとタカをくくっていたのですが、5分後にはまるで岩に根ガカリでもした様な強烈なアタリが来て、ドラグがジリジリと唸り始めたのです。軽く50cmを超える、この辺りのダム湖では超大物でした。
しかし・・・いつもなら後で写真を撮影するために大物は一旦大きな網に入れておくのですが、先のYさんの51cmを入れる袋が無かったため、その網をお貸ししていました。仕方なく、先の45cmをタモ網に入れて水面ギリギリになる様にボートに縛り付けておいたのです。つまりタモ網は使えません。ラインは1.2号およそ8ポンドであり、普通ならラインをもって抜き上げは可能です。しかし釣りの神様はそう簡単には微笑んではくれませんでした。ラインをゆっくりと引き上げ、魚がボートのヘリの真上辺りに来たとき、渾身の力を振り絞って魚が大暴れ。げげーーー、痛恨のライン切れ。大物はボートを一蹴りして水中へと消えて行きました。50cmクラスの大バラシに加え、なべちゃんさんに頂いた貴重なSSミノー緑まで魚の口の中・・・涙が出そうになりました。
でもま、今年も50cmクラスの大物と格闘ができたことは、それだけで十分に感謝すべきでしょう。今度来た時には、きっと釣り上げてやりますから。 Yさんはもう大満足でしたので、その後は齋藤さんにボートに乗って頂き、2人で再びインレットを攻め、彼は41cmを追加。3人で40cmオーバー4尾、50cmオーバー1尾と同バラシ1尾。まずは大満足の一日でした。 さて、ダム湖も大きく水位を下げ、ワカサギの遡上も5月の末あたりが限界となりそうです。今年も大いに楽しませて頂いた複数のダム湖に感謝をしつつ、今年のダム湖の釣りのレポートを終えることにしたいと思います。 【今回使用のタックル】 Zehpyr Boat ZR-220MH、MinnKota RT40S(28in)、Voyager 105A、Hondex HE-57C、 Wellner 8ft TroutRod、Shimano SensiLite MG2500、Kureha SeagerAce1.2号(8lb)、 D-contact50/63S/鮎/ヤマメ、WeightedSuperSinkingMinnow緑、他 |