山形渓遊会の07年納竿釣行を行いました。今年は大物の釣果にも恵まれ、まずまずのシーズンではなかったかと考えています。毎年シーズンの最後は、山の恵みに感謝しながら渓を歩き、お魚さんたちに別れを告げる儀式でもあります。最後はもう釣果などどうでもよく、ひたすら渓を歩きながら過ぎ去る季節を惜しむばかりとなってしまいます。普段は殆どイワナをキープしない私ですが、最後だけはいつもより少しだけ盛大にイワナ料理を楽しみ、今シーズンの幕を下ろさせて頂きました。 【9月29日(土)】 山形渓遊会では、毎年、納竿釣行などと言うものは行っていないのですが、今年は朝日氏が宇都宮からやってこられ、急遽、納竿釣行と言うことになりました。メンバーは山形渓遊会会長の渡邊、佐谷名人、宇都宮の朝日氏、そして私K++の4人。今回は急な話であり最後までどこの渓に入るか迷いましたが、シーズン最後と言うこともあって、山形市の近くのちょっとした源流に日帰りで入ることにしました。目的は釣りよりもむしろキャンプなのです。
この渓は古い林道が脇にありますが、非常な悪路のためあまり車で奥まで行くことはできません。人が入りやすい渓のため、まずは林道を1時間程度も歩き上流部から入渓することにしました。入渓点付近の渓は開けていてとても気持ち良いのですが、流石にこのあたりの渓は人が多いらしく、ご覧の様に釣り人の足跡だらけ。これではあまり釣果は期待できそうもありませんが、でもま、シーズンのラスト釣行はそれで良いのです。去り行く季節を惜しみながら、お魚さんたちにお別れを告げる儀式なのですから。
入渓地点の浅瀬で私がパイロットでミノーを投げると、7寸ほどのイワナが追いかけてきて期待させてくれましたが、しかし案の定、その後はルアーを投げても餌を流しても、さっぱりイワナの姿が見えません。それになぜか異様に寒いのです。どうも季節外れの寒波が入っているらしく、昨日までの暖かさがウソの様な朝でした。そのためか、どうやら水温急低下による低活性の状態になっている様子で、ルアーには殆ど反応がありません。たまたま浅瀬の暖かいところにいたイワナだけが私のミノーに反応した様子でした。
こういった日は餌釣りの天下となりますが、驚いたことに朝日氏の釣った1尾目は、淵脇の小さな巻き込みに餌を投入し、そのまま1分ほども待っていてやっとヒットが出ると言う有様。これじゃルアーはお手上げですね。恐らくイワナたちはそこかしこにいたのでしょうが、どうやら岩陰や深い淵の底でジッと動かずに寝ていたのではないかと思われました。それでも日が高くなり水温が上がり始めると、やがて餌釣りにポツポツとヒットが出始め、小型ではありますが、それなりに源流の釣りらしくなってきました。
そして10時を回ったころ、ようやく私のロッドにもイワナがヒットしてくれました。日の当るちょっとした浅瀬の脇にDコンタクト50Sを投入すると、どこからともなくゆらゆらとイワナが追いかけてきて、足元でパクリとミノーを咥えてくれました。まぁ、シーズンも最後ですので釣果は問いませんが、何も釣れないとさすがに寂しいものがある訳でして、とりあえずの1尾に大喜びでした。これであとはのんびりと歩けます。見上げると、山の高いところでは既に紅葉が始まっているのか、山頂のすぐ下のあたりがぼんやりとワインレッドに見えました。
夜はお決まりの宴会です。前週までの異様に暑い日は過ぎ去り、この日の夜はキャンプには最適の状況でした。暑くもなく寒くもなく、また、アブや蚊も殆どおらず、空には輝く星空です。会長さんから「最後は派手にイワナパーティーでもやるぺぇ」とのことで、今回だけは渓遊会の掟破りで、25cmくらいまでのイワナを一人ニ尾づつキープしていました。前々週に某山小屋に入った会長は、プロの料理人さんのイワナ料理に魅せられたらしく、この日はわざわざ天ぷら鍋まで新調していて、なぜかやる気満々でした。
まぁ、そのお陰で下の様な沢山の種類のイワナ料理に舌鼓を打つことが出来た訳ですが、それにしてもこの豪華な料理の数々はどうでしょう、いずれも下界では楽しむことのできないものばかりであり、まるでここは山中の高級レストランの様なもの。今シーズン最後の夜を飾るには相応しいものでした。もちろんこんな時はたらふく喰って呑み過ぎて、翌朝は起きれるはずもありません。いやいや、呑むのが目的でやって来た訳ですから、これで良いのです。もう釣果はどうでも良いのです。山さえ歩ければ。
【9月30日(日)】
そして翌朝は予想通りにのんびりし過ぎました。目覚めはとうに太陽の高く上がってしまった8時ころ。ゆっくりと朝食をとった後、そのまま帰ってしまうには時間はたっぷりありますし、昨夕から気になっていたすぐ近くの小沢に入ってみました。しかし、どうやらこの沢には魚影は無い様子で、1時間ほど遡上してみましたが、全くの釣果無し。なんだかあっけなく最終日は終わってしまいましたが、それでも全員なんとなく満足して、来期もまた会うことを約束し、お別れしました。
さて、私は自宅まで小一時間ほどの距離でしたので、午後からはもう少しだけ秋の山を楽しんでいます。この日は今シーズン最後の日とあって、どこへ行っても釣り人ばかりでお魚さんなどお目にかかれそうもありません。誰も来ない所でのんびりと、そして悠々と自然を楽しめる場所といえば、やはりフローターの上でしょうか。気が付けば、ホームの堰堤へと車を走らせていました。多くの堰堤では夏の渇水でプールが消失し干上がってしまうのですが、この時期、秋雨である程度水量が戻っていて、プールがまた復活していることも多いのです。
ただ、この時期は渓魚たちの産卵の季節です。多くの渓魚たちは上流へと遡上を済ませていて、水系の最下流部にあたる堰堤プールには、産卵活動に参加しない25cm程度までのおチビちゃんしかいないのです。大物は決して望めないことは判っていますが、最後はまぁ、そんなおチビちゃんたちと戯れるのも良し、と言う訳です。ほんの2時間ほどで6尾ほどのチビイワナ君がお相手をしてくれましたが、雄大な山を眺めながら秋の空気に包まれながら、悠々とした時間を過ごせたのはなによりも代え難い幸せでした。
そして、ちょっと休憩にと浅瀬にフローターを横付けし、タバコを吸っていた時でした。物陰を好むのでしょうか、見るとフローターの下には実に沢山のイワナの稚魚たちが群れ泳いでいました。釣り人たちはやがて来る白い季節をタイムスリップするかの様に町に戻ってゆく訳ですが、渓に住む彼らは、過酷な季節の中でも確実に成長を続け、次の世代となって我々を楽しませてくれるのでしょう。その小さな命に未来への希望を見ながら、また来年もきっとここへやってくることを渓魚たちに約束し、帰路へとつきました。 【今回使用のタックル】 KenCraft SuperTroutSpecial60LT(Telesco.PackRod)(Stream)、Wellner 8ft TroutRod(Pond)、Shimano SensiLite MG2500、Kureha SeagerAce1号(6lb)、D-contact50/ヤマメ/TS/緑、SuperSinkingMinnow50S/緑、他 |