クラブ釣行レポート

天空の潜水艦 (山形渓遊会秋:9月14-17日)


山形渓遊会の秋の例会に参加してきました。今回選んだ釣り場は、数年前にも訪れたことのある懐かしい源流ですが、季節外れの猛暑にバテてしまい、行き帰りの道のりは正に地獄でした。しかしそれでも遥か源流部には、イワナ達の桃源郷が広がっていて、我が友には期待通りの大物が飛びだしてくれました。今回は有給まで取得し、3泊4日のゆったりとした日程を、人里離れた山奥の小屋で、思う存分楽しませて頂きました。

注:釣り場の特定を防ぐため、風景画像に大幅な修正を加えるか、同イメージの別の場所の写真を使用しています。ご了承下さい。


【9月14日(金)】

今年9月20日に当サイトも10周年を迎えました。と同時に、山形渓遊会も10周年を迎えようとしています。記念行事は特に考えてはいませんでしたが、まぁ有給でも取って思いっきりのんびりしようじゃないかと言うことで、今回の秋の例会は14日から17日まで、初めての3泊4日という長期間の源流釣行に挑みました。この源流は数年前にも訪れたことのある懐かしい渓であり、前回は雨と強行軍でロクに釣りも出来ずに退散してきましたが、今回こそはのんびりと、そして大物を、と意気込んででかけました。

延々とゴルジュの続く峪黙々とブナの林を歩く、下越地方のブナ林はとりわけ美しい

今回の参加者は、おなじみの渡邊山形渓遊会会長と佐谷名人、それに私K++の3人でした。東京の朝日氏は所用で×、郡山の佐々木氏もお仕事、そして福島市のS氏は「今回こそ何が何でも参加するぞ!」と意気込んでおられた様なのですが、腰痛がまだ全快せず直前になって整形外科の先生からドクターストップ。まぁ3泊4日ともなればお互い都合の付く人は限られてしまいますので仕方ありませんね。2日目からは渓遊会メンバーではありませんが、おなじみの新潟の風玉さんも遅れて参加の予定で、都合4人の源流釣行でした。

それにしても暑い 終盤は疲労困憊

しかしそれにしても今年の季節は異様ですね。9月の中旬だと言うのに、里の気温は未だに30℃を超える日が続いていて、この日も早朝からうだる様な暑さでした。健脚の人であれば通常は登山道を徒歩4時間半程度で山小屋まで行けるはずの行程なのですが、今回はなんと6時間も掛かってしまいました。途中あまりの暑さにバテてしまい、思わぬ休憩の回数の多さに我ながら呆れ果ててしまうほど。比較的水場の多い行程でしたが、補給した水分が一瞬で湧き出る汗に変わってしまい、参りました。いきなり出鼻を挫かれました。

夕刻の僅かな時間も逃さず 魚止めの滝を釣る渡邊会長

疲労困憊でしたが、やはりそこは釣り師のサガですね。山小屋に到着するやいなや、皆さん竿を持って飛びだして行きました。さすがに何時間も歩きでないと来れない山奥ですし、さぞかしイワナがうじゃうじゃ・・・と思っていたのですが、そうは問屋が卸してくれません。結構な釣り人が入っている様で、釣れたのはちょっとした魚止めとなっている滝の手前200mほどだけで、私のDコンに出てくれたのは写真上中央のおチビちゃんが1尾だけ。会長には尺近い獲物が餌釣りで出てくれた様ですが、まぁ、山小屋の近くはこんなもんでしょう。

ツリフネソウアキノキリンソウサラシナショウマ
山小屋は快適そのもの峪の夜は宴会に限る会長は手の込んだ料理

3泊4日を山奥のテントで過ごすのは、豪雨の心配などもあってちょっと勇気が要りますが、こんな山小屋(写真は実在のものとは異なります)なら快適です。もちろん電気も水道もありませんが、ローソクと懐中電灯の光で十分明るいですし、近くには冷たい沢水が流れていて、ビールを冷やしたり飲料水を確保したりと、なんら支障はありません。会長さんはあれこれと食材を持ち込み、カレーライスや手の込んだ煮物を作っていましたが、しかしなんですね、ジャガイモや玉ネギ・缶ビールと、よくもまぁ6時間も担いで来たもんです。老体の私にはとても無理です。

調理済アルファ米と乾燥スープ類お決まりのイワナ塩焼き佐谷名人

私はと言えば、もっぱら軽くて日持ちのする調理済アルファ米と乾燥スープ類、それにペットボトルに入れたウィスキーで宴会を楽しむ事にしています。アルファ米と言えば、昔は「まずい米」の代表でしたが、最近は技術も進んでいて、非常に美味しくなっています。お湯を入れて15分ほどでホカホカのピラフや炊込みご飯が楽しめるだけでなく、朝起きた時にお湯を入れてチャックを閉めてザックに入れておけば、お昼ご飯にもなるというスグレモノ。数社から発売されていて、個人的な好みではありますが、私は、ピラフ・ドライカレー(うまい)>おこわ類・炊込ご飯>おかゆ・白飯>乾燥でんぷん(まずい)の順でお薦めします。

ツルリンドウノコンギクブナの根本を覆うコケ類

【9月15日(土)】

2日目はいよいよ本命の日です。金曜から有給を取ったのには訳がありました。歩いて数時間を要する場所にあることから、土曜の午前中はまだ誰もここまでは来れません。釣り場はほぼ我々の独占状態となる訳です。当然ですが、付近一帯で最も可能性の高い釣り場へと直行です。山小屋から更に奥へと2時間ほど歩き、この水系の最も源流部へと足を踏み入れました。入渓地点はまだ開けていて広々としていますが、ここで私がパイロットで魚影を確かめます。ちょっとした淵にDコンを投入すると、2投目で写真下右の25cmほどのイワナがヒットしてきました。幸先良しです。

軽装でブナ林を進む まずはDコンで25cmクラスが

ただこの日は、なぜか餌釣りに反応が良くありませんでした。私がルアーで釣り上げたのをみて早速、会長と佐谷名人が餌を流しますが、さっぱり反応が見られません。5〜6回も餌を流してまるで反応の無かったポイントに私がDコンを投げ込むと、1投目でイワナがヒットしてくると言う有様です。これを見た我が会長さんは、ちゃっかりとルアー釣りに変更。これが後ほどの幸運を運んでくるとは、この時点ではまだ誰も気が付いていませんでした。ちなみに佐谷名人はルアーを持って来ておらず、餌釣りで最後まで通すハメに。

なぜか餌釣りには反応が悪いちゃっかり会長もルアー竿に水温上昇とともに餌にも反応が出た

日が高くなって水温が上昇するとやがて餌釣りにも反応が出始めましたが、しかし型の良いのはルアーばかりでした。そして2時間も釣り上がるころ、いよいよ核心部へと到着です。辺りは巨大な岩盤に囲まれた幽谷となり、魚止め滝の大きな瀑音が聞こえてきます。魚止めの滝では、この日まだ良型の釣れていない佐谷名人に1投目を譲ります。会長は後ろで待機。私はもうすっかり写真班で、長い間ロッドを振っていません。魚止め下のプールで佐谷名人が粘ること5分ほど、やっと釣れてきたのは9寸ほどのごく普通のイワナでした。

深い峪滝壷の1尾目は9寸ほど会長のルアー竿が大きく曲がる

そしてこの直後にドラマが待ち構えていました。瀑布を撮影しようと私が対岸に回ったとき、自分の番を待ちわびていた渡邊会長がDコン50S鮎をプールに投入しました。あれだけ餌で粘った直後にも関わらず、なんと1投目で根掛かり・・・いや、大物がヒットし、会長のロッドが曲がったままになってしまったのです。格闘すること数分でやがて姿を現したのは、下写真の丸々と太ったイワナ44cm。潜水艦と呼ぶにはやや小ぶりですが、こんな源頭近くにこんな大物が泳いでいたとは、正直驚きました。それは「天空の(小型)潜水艦」でした。

「天空の(小型)潜水艦」  イワナ44cm

しかしこの大イワナ、良く見ると斑点がかなり大きく顔も幼いものがあります。ちなみに、餌の変化か単なる保護色かは判りませんが、イワナは渓流に入って1ヶ月程度で尾びれなどにオレンジの鮮やかな色が付く様です。実はこの水系のずっと下流部には大きなダム湖があり、どうやらそこで巨大化したイワナが十数kmほども遡上してきた様なのです。普通、渓流には途中に大きな滝や堰堤が有り、魚達は行き止まりとなりますが、幸いにもこの水系には大きな滝も堰堤もありません。雪代の納まりかけたまだ水量の多いころ、こんなところまで遡り詰めてきたのでしょうか。

渡邊会長と44cmDコン鮎を丸呑みしていた続いて34cmも

人の多くなった源流釣りの世界でこの様な大物が釣れるのは、今では下流部に堰堤プールかダム湖の存在がない限り、難しくなってきている様ですね。会長さんにはその後もこのプールで34cmがヒットし、どうやら今日は会長Dayの様です。会長曰く「44cmのイワナを追いかけて同サイズの(恐らくメスの)イワナが後方に見えた。そいつを釣ったら?」と言うのですが、まぁねぇ、人の顔をまともに見られてしまったんでは幾ら源流のウブなイワナと言えども、釣れるはずはありませんよね。私も負けじとルアーを投げましたが、時既に遅し、結局、ここでは私には何も釣れませんでした。

キバナアキギリヤマトリカブト非常に珍しい白いツリフネソウ
次の源流ではイワナの桃源郷が待ち構えていた我慢しきれずに私も

時間がまだ早かったため、その後はもう一つの魚止めを目指して移動しています。この源流でも魚止め滝の300mほど下流部からは殆ど入れ食い状態になってきて、先行する2人は良型を釣りまくりです。いったい何尾のイワナが釣れたんでしょうか、数え切れないほどでした。渓遊会の釣行では、私はもっぱら写真班であり、殆どのポイントを他に譲って後を歩くことが多いものです。この時点で私はパイロットで釣ったイワナ3尾と、2人の釣った後ろでヒットさせたチビが数尾だけ。44cmを見せられ、良型イワナ連発をも見せられると、さすがに私も我慢ができなくなってきました。

私のこの日の一番は33cm魚止めの滝下流部では尺オーバーが連続してヒット

魚止め間近になり、私にも幾つかポイントを譲ってもらい釣りまくりです。しかし驚いたのは、これだけ奥までやってくるとイワナも本当にウブですね。写真上左の33cmは、Dコン50Sヤマメを5回も足元まで追いかけてきた後、立ち位置を変えて投げた6投目にあっさりとヒットしてしまいました。他にも泳いでいるイワナを見ながらミノーでちょうちん釣りをしたりと、釣堀よりも簡単に釣れてしまいます。そして最後の魚止めの滝壺では、3人に尺前後が7尾連続してヒット。全員十分に満足して、山小屋への帰路につきました。

ヤマハッカオトギリソウスナゴケが美しい
2日目の宴会は5人、この日は風玉さん(左から2番目)が加わった

【9月16日(日)】

ほどよい水量の本流を遡行する幸先良く風玉さんに9寸クラスがしかしあとが続かない

さて、3日目は会長と佐谷名人は更に別の沢へと繰り出して行きましたが、残念ながらその時の写真はありません。入り口に大きな滝のある沢らしく超大物こそ出ませんでしたが、前日と同じ様に魚止め滝下流部では入れ食いが見られ最大は32cmだったそうで、大満足だったようです。一方私は前日午後から入山してこられた新潟の風玉さんと釣ることにしました。前日にすっかり満足していた私は、もう奥地まで歩く元気がありません。加えて風玉さんも昨日の猛暑行軍が体に堪えた様で、体力温存のために、山小屋の横の本流を軽く攻めることにしました。

私のDコンに来た尺ちょうど 愛くるしい源流のイワナ

しかしここでちょっと気になることがありました。今シーズンはなぜか風玉さんと同行するとちっとも釣れないのです。仲間内では「キモン」と呼んでいますが、特定の人と一緒に釣ると、まるで釣れなくなる現象です。正に今、風玉さんと私はキモンの仲だったのですね。本流へ入渓してすぐに風玉さんに9寸クラスがヒットし、私にもジャスト尺がヒットし、幸先は良かったのですが、後が続きません。一度「キモン」の3文字が頭をよぎると、もう何をやってもダメダメダメ・・・不思議な現象ですが、本当に釣れなくなってしまうものなのですねぇ、これが。

既に秋の気配の漂う渓最後は泳ぎで突破するも連続するゴルジュに阻まれ撤退

この日も異様に暑い日で、途中、コルジュを泳いで突破し、恐らく人の殆ど入っていないだろう区間も攻めてみましたが、それでもサッパリ釣れません。一体どうなっているんでしょう? 3時間ほどであっさりと釣りを止め、小屋に戻ってしまいました。ただ、不思議にも、同日夕方に全く同じ区間を私一人で釣ってみたところ、ほんの2時間ほどでしたが、なんと9尾ものイワナがヒットしてきました。これには我ながらビックリしました。この日は山小屋のお客さんのお一人にプロの料理人さんがおられたため、頼まれて大きめのイワナ5尾だけをキープし、山小屋に持ち帰りました。

ミズヒキイワショウブミヤマダイモンジソウ
イワナの天ぷら刺 身骨 酒骨センベイイワナのイクラ醤油漬

さて、宴会も最後の日です。この日の泊り客は13人と多くなり、かなり賑やかでした。それほど大きくもないイワナ5尾でしたが、プロの手にかかるとさすがに違いますね。あっという間に上写真の様な数々の料理に早変わりしました。いくらアルファ米の食品が美味しくなったとは言え、やはりこういった生の料理には全く敵うはずがありません。泊り客全員で十分に堪能させて頂きました。最後の日を惜しみながら、私も骨酒などをついつい呑みすぎてしまい、すっかり出来上がってしまいました。山の宴会は本当に止められませんね。

山小屋の生活に他人は居ない 

しかしなんですね、山小屋の住人さんたちは皆さんすぐに仲が良くなり、酒の勢いも手伝っておしゃべりが弾みます。前夜から来ていた風玉さんもすっかり料理人さんと仲良くなってしまい、夜遅くまで杯を酌み交わしておられた様です。翌日は連休最後の日、釣りはせずにまた長い道のりを歩いて帰るだけです。さて、今シーズンもあと1回の週末を残すのみとなりました。最後の最後はのんびりと、そして大自然を悠々と楽しみながら、シーズンを終わりたいと思っています。

オヤマリンドウ ヤマハハコ

【9月17日(月)】

帰路も酷暑の道のりだったしかし、ブナ林は疲れを癒してくれる

【今回使用のタックル】
KenCraft SuperTroutSpecial60LT(Telesco.PackRod)、Shimano SensiLite MG2500、Kureha SeagerAce1号(6lb)、D-contact50/ヤマメ/TS/緑、SuperSinkingMinnow50S/緑、他