単独釣行レポート

阿武隈の釣り (9月9日)


数年ぶりに阿武隈山系の渓流へと繰り出してみました。2日前に台風が通過した渓流は、適度な濁りと増水で、ルアーフィッシングには最高の条件でした。阿武隈では大物は望めないという先入観があったのですが、この数年の釣りブームの後退で魚影は十分に回復している様です。思わぬ尺イワナも飛びだしてきて、その非常に美しい渓相と相まって、懐かしい渓を思う存分楽しませて頂きました。

注:釣り場の特定を防ぐため、風景画像に大幅な修正を加えるか、同イメージの別の場所の写真を使用しています。ご了承下さい。


【9月9日(日)】

私は福島県いわき市に単身赴任をしていますが、例年であれば9月の休日はほぼ間違いなく山形の実家へと戻り、付近の渓流・源流を攻めることにしています。しかし、この週だけは例外でした。9月7日の金曜に、伊豆半島付近に上陸した大型台風が東北地方を縦断し、各地で風と豪雨の被害をもたらしていました。福島市から山形市を直撃した台風は、山形県内の河川に集中豪雨をもたらし、この週ばかりは釣りになりそうもありません。仕方なくいわき市に留まっていた訳ですが、日曜には釣りの虫がうずき出し、結局は阿武隈山地で竿を振っていた、と言う訳です。

林道には台風の傷跡が増水の阿武隈の渓あっさり出てきた1尾

阿武隈山地とは、福島県内の国道4号線(福島市・郡山市)と6号線(相馬市・いわき市)に挟まれた山塊を指し、1200m以下の低山が非常に広い範囲に広がっていて、独特の水系を作り出しています。高い山が少ないため、開発が進んでいて相当な山奥まで道路が広がっている上に、関東圏から比較的近く、釣り人が入りやすいのも特徴です。そのせいか、阿武隈の渓魚たちは釣り切られやすく、あまり大物が釣れた経験がありません。いわき市に在住していながら、足が向かなかったのはこのあたりに原因がありました。

下流部は開けているだが、魚影は薄い 

しかし阿武隈の渓流のもう一つの特徴は、その渓相が非常に奇麗なことです。転勤を重ねながら関西・関東・東北を釣り歩いた私ですが、渓相の美しさでこの阿武隈山系に勝るところは無いのではないかと考えています。実は数年前に、二本松市の親友「大」さんに案内され、この地を訪問しているのですが、大型魚は出ないものの、その渓の美しさに魅せられ、何度も足を運んだ経験があります。しかし、いわき市に転勤してからはなぜか出かけることも無く、今回の阿武隈入渓は、6〜7年ぶりの久しいものでした。

7寸ほどのヤマメ阿武隈の渓は美しい 

この日は、すっかり日の高くなった10時ころ、某渓流に到着しました。台風通過2日目と言うことで、林道には冠水した跡が至る所に見られ、渓自体も非常に多い水量で歩きに難儀しました。しかし豪雨後の適度な濁りと多い水量は、実はルアーフィッシングには最高の条件となります。さして期待もせずに入渓した最下流部の淵では、あっさりと25cmほどのイワナが飛びだしてくれ、幸先良く釣りはスタートしてくれました。ただ、下流部は水量も多く渡渉が不可能な上、幸先の良さとは裏腹に、魚影はそれほど濃くはありません。

  中流部では飽きない程度に釣れる
美形ヤマメが楽しませてくれる阿武隈の渓は護岸も多い 

仕方なく少しづつ上流部へ移動しながら釣り続けた訳ですが、町並みのある中流部では、7〜8寸のイワナとヤマメがポツリポツリと釣れ出し、まずは一安心です。どうやらこの地方では、漁業組合によるイワナ・ヤマメの放流がしっかりと行われている様子であり、それほど魚影は濃くはありませんが、8寸程度までの獲物が満遍なく河川内に泳いでいる様です。ただ河川規模が小さいためか、あっと言う間に源流部までやって来てしまい、川の流れが見るみる細くなってしまいました。山が低いため、これは仕方ありません。

オタカラコウノアザミキンミズヒキ

そして、午後3時ころからのゴールデンタイムは、前日の夜にしたためておいた或る作戦を実行しました。この時期は堰堤下の溜まりを狙うのが最も効率が良く大物も出やすいのですが、実は前夜にGoogleEarth(グーグルアース)を利用して堰堤の場所と堰堤下の溜まりの様子をチェックしておいたのです。グーグルアースは無料のソフトウエアをダウンロードすることで、全世界の航空写真を様々なスケールで眺めることの出来る無料のサービスです。

この日のイワナの最大は尺ちょっとこの時期は堰堤下が狙い目
29cmも追加して 

ただ、都市部など人口過密地での写真の解像度は、人の歩く姿が判るほどに非常に高いのですが、残念ながら多くの山間部は解像度が低く、堰堤までは見えない場合も多いものです。しかしながら幸いにも、この日入渓した地区は高解像度の写真が用意されていて、上空700m程度まで拡大して渓をサーチして行くと、堰堤の存在や溜まりの様子、水の落ち具合までが確認できます。(注:地区によっては春先や冬の写真となっていて、現在の状況を推測しなければなりません。)こうやって釣れそうな堰堤を幾つか探し出しておいて、この日、地図にマークしておいた地点を、点々と釣り歩いたと言う訳です。


そしてこの作戦は大成功でした。道路を走っていても堰堤の存在が必ず見つかる訳ではありませんし、探すためには低速で車を移動せねばならず時間が掛かってしまいますが、あらかじめ釣れそうな堰堤だけを見つけておいて移動するのであれば時間の無駄もありません。ほんの3時間ほどで4つの堰堤を攻めましたが、いずれも適度な濁りでルアーには無敵の状態であり、最初の堰堤では尺ちょっとのイワナを筆頭に29cm26cmなど6尾の釣果。他の堰堤でも同様で、超大物こそ出ないものの、十分に満足できる結果となってくれました。

キバナアキギリヤマハハコツリフネソウ
ヤマメは7〜8寸クラスが多い  

この日最後に訪れた堰堤は、町並みからほんの500mほど山間部に入った所にありました。恐らく多くの釣り人が今年何度も攻め続け、相当なプレッシャーの高い釣り場になっているに違いありません。しかし、こんな釣り場でも、非常に狡猾な魚たちは生き残っているものなのですね。最後の最後にこの堰堤で飛び出してきたのは、写真下の25cmと、このあたりではまずまずの大きさのヤマメでした。このところの釣りブームの後退で、どうやら阿武隈の魚影も回復している様子であり、場所とタイミングさえ選べば、まだまだ十分に楽しめそうだと確信し、帰路に着きました。

この日のヤマメの最大25cm 

【今回使用のタックル】
Wellner 8ft TroutRod、Shimano SensiLite MG2500、Kureha SeagerAce1号(6lb)、D-contact50/63S/鮎/ヤマメ/TS/緑、SuperSinkingMinnow50S/緑、他