単独釣行レポート

07年夏休み釣行レポート(8月11-19日)


夏休みを東北各地の渓と山で楽しんできました。今夏は異常に気温が高く、例年に見られないほどのアブの猛攻に合い散々でしたが、それでも昔懐かしい渓では、渓魚たちが遠来の釣り人に優しくお相手をしてくれました。この時期、大物こそ望めませんが、渓は輝きに満ちていて、夏本番を思い存分満喫させて頂きました。なお、今回のレポートでは、夏休みの1週間分をまとめてお送りしており、文章に比して写真が多くなっています。ご了承下さい。また、野草花の写真は、8月11・12日の大深山登山時の高山植物です。

注:釣り場の特定を防ぐため、風景画像に大幅な修正を加えるか、同イメージの別の場所の写真を使用しています。ご了承下さい。


ワレモコウとトウゲブキソバナミヤマアキノキリンソウと岩手山

カミさん:「今年も夏休み、北海道行くの?」
K++: 「ん、今年は行くつもり無いよ。」
カミさん:「えぇ〜〜〜〜〜〜!」

今年の私の夏休みはこんな会話から始まりました。夫婦生活も30年近くになると、夏休みは留守にしていた方が家庭の平和に寄与できる様です。ま、子供は部活やそれぞれの予定がしっかり入っていますし、カミさんは仕事でそれほど休めないしで、仕方ない面もあるのですが、それにしても、「えぇ〜〜〜〜〜〜!」は無いでしょうに。それでもま、1週間を自由に釣りで過ごせる身分には、素直に感謝しなければいけないでしょうね。
カミ様、ありがとうございます。

【壮大な源流釣行のはずが・・・】

ブナ林の中を歩くタチギボウシの高層湿原大深山荘

さて、お盆休みの前半は、山形渓遊会の会長さんと、壮大な源流釣行の計画を立てていました。某山小屋を2つ経由して、とある源流部に下り、源流のイワナ三昧・・・のはずでした。10日金曜に仕事が終わった私は、一旦、山形の自宅を経由して、その日のうちに岩手県北の松川温泉まで来ていました(500km!)。しかし待ち合わせ時間の朝5時になっても会長さんはちっとも現れず、8時過ぎにやって来た会長さんの口からは「・・・・・で、明日中に帰らないといけないかも」と衝撃のお言葉。なんでも山小屋からも携帯の電波が届くので、今日は取りあえず一つ目の山小屋まで行くべ・・・と言うことに。

渡邊会長バージニアの女学生さんと三石山荘と湿原

山小屋は快適でした。最近はどこの避難小屋も新しく建て代えられてきていて、この小屋もまだ木の匂いがするくらいに真新しく奇麗でした。もちろん電気も水道もありませんが、気分は山頂の豪華ホテルの様なもの。この日のお客さんは我々二人に埼玉からの男性とアメリカはバージニアから来たという女学生さんが一人。山小屋というのは、皆が酒を酌み交わしたりして仲良くなってしまうんですが、なぜか翌日はこの女学生さんと1日の行動を共にすることに。まぁ、なんとなく楽しい登山にはなってくれたんですが、そう、会長さんは明日帰らないといけないハメに。ザックをメチャ重くしているこの釣り道具を、いったいどうしてくれるんだい、オイ!

小畚(こもっこ)岳から三石岳を望む、後方は岩手山
タケシマランの実モミジカラマツタチギボウシ

【アメマスの小渓】

せっかく岩手県北まで足を伸ばしたのですから、翌日からはその昔釣り歩いた懐かしの渓を一人で釣り歩いてみることにしました。私の仕事は転勤が多く、今から25年も前に実は秋田県を担当していて、秋田・岩手・青森の県境付近を釣り歩いていたのです。また、時折は北へと足を伸ばし、当時まだ釣り人の少なかった下北半島や津軽半島の釣りを楽しんでいました。思いはもっと北へ。昔と違って高速道路も発達していて、この日は一気に北上し、翌朝は下北半島の付け根付近にある、とあるアメマスで有名な渓に来ていました。

北海道を思わせるゆったりとした流れの下北の渓しかしチビヤマメが少々のみ

流石にこのあたりまで北上すると、渓相は北海道を思い出させるゆったりとした独特の風景に代わります。ここはアメマスで非常に有名な渓ですが、いかんせんまだ8月の中旬であり、アメマスの遡上が始まったばかりのころ。渓を丹念に探りましたが、35cm程度のアメマスの姿を下流部に2尾だけは発見したものの、残念ながら釣果には繋がりませんでした。釣れるのはご覧の様なチビヤマメばかりで、加えてアブの猛攻がなんとも激しく、のんびりと釣りをしている気分ではないのです。地元の人曰く「こんなにアブが大量に発生したのは今まで見たことがない」そうで、下北半島でも連日30℃を軽く越える日が続いていて、釣り人はお呼びではなかった様です。

チングルマの実ハクサンフウロミヤマダイモンジソウ

【下北半島の小渓】

小型のイワナが少々非常に奇麗な渓相なのだが・・・小型のヤマメも

下北半島では昔懐かしい渓を訪れています。ここも25年ほど前に釣り歩いたことがあり、当時は釣り人など皆無に近く、上流部ではイワナやヤマメの非常な入れ食いを楽しめた思い出がありました。下北らしい大岩の配された豪快な渓相は今でも全く変わらず美しいのですが、いかんせん、渓魚の姿が見当たりません。まぁ、25年も経てば状況は大きく変わっていて当たり前なのですが、ここまで釣れないと首を傾げたくなってしまいます。大雨の2日後の非常に条件の良い状態を2時間以上も歩いて、釣れてきたのは20cmちょっとくらいのイワナ2尾にヤマメが2尾だけ。観光化の波は渓魚たちも苦しめている様です。

  下北特有の大岩の奇麗な渓
ウメバチソウミヤマリンドウトウゲブキと岩手山

【カラフトマスの渓】

なぜか40cmのニジマスが・・・雨後の増水で活性は高いニジマス41cm

少々がっかりしながら林道を降りてくると、町並みが現れるあたりでなにやら地元の人たちが大きなルアーを投げて釣りをしているのが見えました。良くみるとカラフトマス(ピンクサーモン)のセッパリが数尾、ゆらゆらと泳いでいて、どうやら産卵直前のマスを釣ろうとしている様です。さすが下北半島ですね。風景だけでなく魚も北海道にかなり近い様です。マスたちは大きな淵の淵尻付近の緩やかな流れの浅瀬に産卵床を作る性質らしく、釣り人が何度もルアーを投げますが、微動だにせず産卵床作りに励んでいました。しかし、この魚、釣ってよいのでしょうか?

 やはりチビヤマメのみセッパリのカラフトマス50cm

ここは相当な有名ポイントらしく、良く見ると付近にはアユ釣り・ヤマメ釣りの人もいて、オマケに漁業組合の監視人の人もいます。お盆のため、遠来の釣り人にアンケートをお願いして回っていたらしく、私も書かせて頂きましたが、ついでに色々と話を聞いてみました。カラフトマスについては8月1日から禁漁になり、この時期釣ってはいけない魚なのですが、漁協さん曰く「(昔と違って)カラフトマスなんて今は相手にしてないから、幾ら釣ってもいいよ。持って帰ってもいいから」・・・監視人さんがこんな事言っていいでしょうかねぇ、全く驚きました。それでもま、アユやヤマメと一緒に釣れてしまうため、リリースすれば問題はなさそうでした。

産卵床に群れるカラフトマス達Dコン63Sに来たカラフトマス55cmカラフトマスと私

本当は産卵直前のマスなど釣りたくもないのですが、ま、貴重な経験とばかりに私もマネをして釣ってみました。釣りと言っても餌としてルアーを投げるのではなく、産卵床を奪い合っている魚たちの目の前を何度も大きなミノーを泳がせることで、邪魔物扱いをして口にミノーを咥えるのを待つ釣りです。真昼間でも何十回とミノーを投げることで、遂には釣れてしまいます。日に何度も同じ魚が釣れてしまうと言うのですから、マスたちも可愛そうなものですね。ただ、釣り上げた後にリリースしてやると、元の産卵床にゆっくりと戻って行き、また産卵行動に入って行く姿は、なんともけな気で、2尾釣ったところで私はこの釣りを止めてしまいました。

ノアザミミズギクサワギキョウ

【下北の観光地】

しかしこの夏は異様に暑かったですね。あまりの暑さに参ってしまい、途中、滅多にやらない観光に走ってしまいました。エアコンの効いた車を運転しているだけなら流石に下北は快適です。温泉と美味しい食べ物でも食べて、鋭気を養わないと続きません。しかし一歩車から出るとアブの猛攻と「モアッ」と来る熱風。うーーん、あまりの暑さに写真下の薬研温泉カッパの湯も、冷めずに熱くて入浴できない状態でした。渓畔の露天の温泉のため、アブの舞う中、温泉に浸かれないのは地獄の沙汰でした。

薬研(やげん)温泉 カッパの湯霊山 恐山大間で見つけた楽しい風景
トゲブキの実ツバメオモトの実ゴゼンタチバナの実

【往年の尺ヤマメの渓】

連休の後半は徐々に南下し、昔懐かしい岩手・秋田・青森県境の渓を釣っています。下写真の渓は、今から20数年前に、今は亡き白石勝彦氏が「大ヤマメの世界」で「全国有望大ヤマメ釣り場」の最初に紹介した有名な渓です。私自身もそのころ何度もこの渓に入り、尺オーバーのヤマメを数知れず釣っていました。しかし、やはり20年以上もの時の流れは、この地でも変化を止めることを許してはおらず、釣れてくるのは25cm程度までの小型ばかり。良く見ると、かっては見られなかった新しい堰堤も増えていて、乱開発の波を止めることは誰にもできない様でした。

尺ヤマメの渓は今・・・  
ニッコウキスゲツルリンドウヒヨドリバナとアゲハ

【往年の尺イワナの渓】

トラックの走るすぐ下の渓天然物と間違う程の美形イワナ懐かしい渓の風景

連休の最後には、当時私の最も頻繁に通っていた、とある渓を訪れています。この川には水力発電所が数箇所設置されており、電力会社からの補助金で当時から大量の渓魚が放流されていて、魚影が濃いことで有名でした。これまで幾つかの懐かしい渓を訪れ、大きく変化し貧果に驚かされ続けていた私には、この渓での釣果は溜飲が下がる思いでした。上左写真の様に、すぐ横を大型トラックがバンバン走っている様な川であり、人もとても多いのですが、放流物のイワナやヤマメではあるものの、たった一箇所でもこの様な状態が20年以上も保たれていたことに、安堵の念を隠せませんでした。

朝・夕の一時で釣れた数多くのイワナ・ヤマメ

この日は朝4時間、夕方2時間ほどを釣りましたが、25cm前後のイワナ・ヤマメが全部で30尾程の釣果と、こんなに数多くの渓魚を釣り上げたのは、本当に久しぶりでした。しかも最近は養魚の技術がとても向上しているらしく、放流物とはとても思えない非常に奇麗なイワナ・ヤマメ達には驚かされました。ただ、釣っていて少々不思議な出来事もありました。明らかに入渓しやすい橋の下や小道のある付近は良く釣れるのですが、しばらく釣り上がって行くと魚影がピタリと消えるのです。そのまま釣り上がると、やがてまた魚影が現れ、次の入渓点付近では入れ食いに近くなるのです。

ヤマメも非常に奇麗だったオオハンゴンソウの渓ヤマメは27cmが最大

つまり、放流し易い場所=入渓点付近だけ渓魚が残っていて、どうやら魚が渓全体に散らばる前にどんどんと釣り上げられてしまう様なのです。釣り人と漁協の放流のイタチゴッコが常時繰り広げられている様子であり、漁業組合さんの大変なご苦労が推測されました。

さて、長い夏休みも終了し、渓流釣りもいよいよ秋の佳境の季節へと移って行きます。今年はもうしばらくの間、暑い日が続きそうですが、アブも徐々に減り水量も増えて、確実に渓の状態は良くなっていきます。あと1ヶ月と少々、07年の渓流釣りのシーズンを思いっきり楽しんで見たいと思っています。

サンカヨウの実アカモノの実オヤマリンドウ

【今回使用のタックル】
Wellner 8ft TroutRod、Shimano SensiLite MG2500、Kureha SeagerAce1号(6lb)、D-contact50/63S/鮎/ヤマメ/TS/緑、SuperSinkingMinnow50S/緑、他