今年の秋はとにかく源流へと足を運びました。9月に入りシーズンの最後を惜しむかの様に土日ごとに釣行に出かけています。本当はこんな風に一括してのレポートを書くのは本意ではありませんが、なにせ仕事が忙しく、毎回のレポートを書くヒマがありません。9月16日から30日までの6回の釣行を全てまとめてレポート致します。そして今秋は、非常に良く釣れる渓とほとんど魚影の見られない渓と、極端な差が見られる季節でした。釣果のその差は一体、どこにあるのでしょうか。 (北海道遠征レポート(3)は、後日の掲載となります。) 【9月16日】 今シーズンは初夏のころまで、どこの源流に入っても魚影はすこぶる豊富でした。しかし、8月後半から源流部への釣行を繰り返すうち、渓によって、魚影の濃さに極端な差が有ることに気が付きます。その魚影の違いのナゾを解きながら、終盤の釣りを楽しみました。9月16日は3連休の初日。ほんとは新潟の風玉さんと徒歩6時間もかかる某山小屋まで遠征し、タップリの源流を楽しむ予定でしたが、前週から私の体調が思わしくなく、置賜地方のお手軽渓流(写真下)になってしまいました。
しかしこの渓ではご覧の様な強い濁りが入っていて、全く魚影が見られません。どうやら上流部で大きな崖崩れか山抜けがあったらしく、著しい土砂の堆積で渓相が一変していました。川虫が全くと言ってよいほど見られず、これでは魚影は保てません。ずっと下流部でかろうじて1尾だけイワナがヒットしてくれましたが、この日はそれでおしまい。夜は偶然キャンプ場で出会った、同じ業界人の東京の釣り人と、釣り談義・業界談義に花を咲かせてしまいました。 【9月17日】
上記の渓が期待できないことから、翌朝はのんびりと起き出し、思い切って大きく移動して新潟県下越地方の源流へと足を伸ばしました。しかし余りにものんびりし過ぎたためか、釣り場に到着したのはもうお昼ころ。温泉に入ったりして時間を調整し、午後からの入渓でした。こちらは濁りも無くいかにも釣れそうな気配でしたが、ここでも魚影は極端に薄く、かろうじて風玉さんのミノーに尺イワナが1尾だけヒット。他に20cm以下のチビイワナのトレースが数度見られましたが、結局、最後まで私のロッドが曲がることはありませんでした。
折角の3連休なのに、前半の2日をほとんど釣果の無いに近い状況で過ごした私は、かなりフラストレーションが溜まっていました。夜は再び風玉さんとキャンプでしたが、少しばかりBBQの材料を豪華にし、2夜目の夜を楽しみます。キャンプ場はブナ林の広がるスペースでしたが、他に利用客は誰もおらず、大好きなJazzのナンバーをカーステレオで大音量に鳴らすと、ブナの森にはね返ったメロディーが実に幻想的に響き渡り、素晴らしい野外コンサートの如く私達を楽しませてくれました。しかし、ブナとJazzは良くマッチしますね。新しい発見でもありました。
【9月18日】 さて、翌朝はもう一人新潟からBuuさんが合流です。3人で昨日の源流の別の沢に入渓すると、予想通りにこちらもサッパリと魚影が見えません。これで3連休の2日半がほとんど魚影無しで終わってしまった訳ですが、ここで作戦の練り直しです。風玉さんがオススメの某堰堤の下・・・魚道は無く、中流域の魚止めになっている堰堤の下が狙い目かも知れません。9月2日に入渓した某源流(Report:山形渓遊会・秋-最後の桃源郷)でも、中流部には全くと言って良いほど魚影が見られなかったにも関わらず、魚止めには極端に魚影の濃い状態が見られました。
どうやら今年は気候が異常で、イワナ達の遡上が例年より早くから始まってしまっている様子なのです。そのため、中流部に居たイワナたちは、早くから魚止めの直下まで移動を完了してしまっている様に見えます。ならば中流域の魚止めとなる様な堰堤の下であれば、逆に豊富な魚影に出会えるのではないか? そんな期待をして、再び思い切って大きく移動しました。なにせ朝一番に釣れない渓に入ってしまったため、太陽は既に高く上がってしまっています。某堰堤の下流部へ入渓した時点で既に午前9時半を回っていて、これではたして釣れるのか? 3連休最後のバクチです。
しかし憂慮の必要はありませんでした。予想通りに入渓点から少し上流で、まずはBuuさんのロッドが曲がります。風玉さんにも尺前後の獲物がヒットしましたが、残念ながらバラシ。ついで私のミノーにもトレースがしっかりと見られ、小さなイワナがヒット。どうやら魚影はかなり濃い様です。ただ、釣り場は堰堤の100mほどの下流部であり、小さな淵を4つほど釣ると、すぐに堰堤下のプールに到着してしまいました。ここでちょっとしたドラマがやってきます。
堰堤下は幅20mほど長さ40mほどのプールになっていて、深さも2〜3mはありそうな状況でしたが、ここは正に天然の釣堀でした。3人で代わるがわるルアーを投入し続けましたが、あっと言うまに10尾以上のイワナがヒット。この日の最大は風玉さんの30cmで、私も中型ではありましたが、このプールだけで5尾のイワナをゲットしてしまいました。やはりイワナ達は早期から魚止めに終結している様であり、このプールだけで恐らく数十尾のイワナが群れていたのではないかと想像できました。 その後、入渓点から更に下流部の魚影が気になり、釣り下っています。ただ、300mほども下ると強烈なゴルジュ帯が控えていて、遡行が困難になってしまいました。魚影は下流部でも見られるものの、やはり堰堤直下から下流へ移動するにつれて急速に魚影が薄くなって行く様であり、これ以上に下流部へ移動しても、もはや期待は出来ないものと判断し、無理をしてゴルジュ帯を下るのを止めてしまいました。しかしなんですね、これまで源流にはトンと縁のなかったBuuさんが、ヘツリをしてまでゴルジュ下りに挑戦とは・・・来年からが楽しみです。Buuさん、来秋は3人で某山小屋でっせ。
【9月23日】 翌週も良いお天気に恵まれ、残り少ないシーズンを惜しむ様に楽しんでいます。前週までの経験から、この日はいきなり魚止めとなる様な堰堤の直下を狙う作戦に出ました。狙い目は、下流部数キロに渡って堰堤が無く、水の流れも安定していて、しかも人の入りづらい釣り場です。長年同じエリアで釣りをしていると、そんな釣り場は幾つか既に頭にインプットされていて、迷うことなく目的地に向かっていました。今回入った渓は、道路からは大きく離れていて下部には簡単には入渓できませんが、どこの堰堤にもその工事をした時の古い道路跡が残っているのが普通であり、そんな道を探して徒歩で下ると、堰堤直下に簡単に入渓できます。
そしてこの堰堤の下では、奇跡的とも言える大物がお相手をしてくれました。釣れた時間はなんと真昼間の12時50分。しかもお天気は真っ青な快晴で、ドピーカンの非常に明るい状況下です。水量はごく普通で透明度は非常に高く、よくもまぁ、こんなヤツが出てきてくれたものだと感心してしまいました。他にも25cm前後のイワナ君が数尾お相手をしてくれましたが、その下流部には魚影はほとんど確認できず、やはりここでも魚止めの直下に多数のイワナが集結している様子が伺えました。例年、この時期は堰堤直下が狙い目ではあるのですが、今年はその傾向が特に強い様に感じます。
午後からは、大きく移動して別の堰堤下を狙いましたが、ここでも状況は全く同じで、堰堤下で出た34cmの他、数尾のイワナがヒットしてきました。それにしてもこういった釣り方は疲れます。なにせ、車で移動しては、たった一箇所のポイントしかない堰堤の下だけを狙うのです。運転の時間と歩く時間がほとんどで、釣り場に到着したかと思うと、30分もしないうちにまた長い坂道を戻る訳です。疲れました。しかしこの時期はこんな釣り方でもしないと大物は望めず、仕方ありません。
【9月24日】 翌日は疲れ果てていて、午後からの遅い出陣となってしまいました。この日は前日の堰堤の下を再度狙うつもりで同じエリアに出向きましたが、ここで思いがけない人と再会できました。天童市のまさるさんとは、3年前の寒河江オフでお会いしたっきりの超お久しぶり。車を道路脇に止めて降り口を探していたところ、突然、車が止まって声を掛けられました。しかし嬉しいものですね、こんな風に古くからの顔見知りの人から快く声をかけて頂くと、HPをやっていて本当に良かったものだと、改めて思います。
そこで相談し、二人で午後の釣りを楽しむことにしましたが、まずは、当初の目的の堰堤下を釣ります。ここでは予想通りに30cmジャストのイワナとおチビちゃんが数尾ヒット。その後は、堰堤の少し上流部を二人で釣り上がることにしました。この上にも更に古い堰堤があり、その下なら釣れるかもしれないと思っていた訳ですが、ここで意外な魚影に出会いました。型こそ小さいものの、ちょっとした淵にミノーを投入すると、ぞろぞろと数尾のイワナが追いかけてくるのです。こんなに魚影の沢山残っている渓は久しぶりで、二人で時間を忘れて釣りまくってしまいました。
しかし、場所によってなぜこんなに魚影の濃さに差が出るのかが不思議です。確かに、7月ころまでは、どこの源流も魚影が豊富でした。8月以降は暖かい日が9月初まで続き、渇水と高水温が例年より長く続いたと考えられますが、それが遡上を早めたのかも知れません。或いは、魚は居ても渇水・高水温で魚たちが動かない状態になっていて、中・下流部では、ちょっとした水温や濁りの変化で、極端に釣れたり釣れなかったりしていただけなのかも知れません。 一方で、景気回復のせいか、釣り人の数は激減している様に見えます。今年はどこへ行っても他の釣り人と出くわす機会が明らかに減りました。どうも魚たちは我々の思う以上に豊富に残っているのでは無いか?、そんな風に思えてなりません。こんな都合の良いお話はただの希望的観測ではないのか、とのそしりを受けてしまいそうですが、来年春以降にその魚影のナゾは、はっきりしてくれるのかも知れません。
ただ、飯豊山系、特に置賜地方の渓では特殊な事情が伺えます。7月後半に起きた集中豪雨の影響は、山間部では想像以上に大きく、付近の渓はどこも土砂で埋まってしまっています。川虫の数が極端に少なくなっていて魚影が保てなくなっているのに加え、土砂で歩き易くなり釣り人が安易に奥まで入れることで簡単に釣り切られてしまったのではないかと思われます。一度土砂で埋まってしまった渓は、そう簡単には元には戻りません。恐らく来年一杯は置賜地方の渓が回復することは無いのではないかと思われました。
【9月30日】 さて、いよいよ今シーズンも最後の日になってしまいました。この日は渓遊会の渡辺会長と、置賜地方の某源流へと足を伸ばしています。しかし、ここもハズレでした。この源流でも7月の大雨で大量の土砂が流出したらしく、以前に訪れた時に見られた沢山の淵がことごとく砂礫で埋まっていました。お陰で非常に歩きやすく、以前なら6〜7時間もかかった距離をあっさり3時間ほどでクリアしてしまい、あっと言う間に魚止め滝の下部まで到着してしまいました。そして、魚止めのすぐ近くまで、やはり魚影のほとんどない状況でした。
ただ、シーズンの最後はいつもそうですが、もう釣果などどうでも良く、ただただ景色と渓の香り・秋の空気を楽しむだけです。ほとんど期待もせず歩き続けるばかりでしたが、しかし釣りの神様も味なマネをしてくれるものですね。この日はたった2尾しか釣れなかったのですが、幸いにも最後の最後に、写真上の源流育ちの特徴を強く持った非常に綺麗なイワナ君32cmがヒットしてくれ、シーズンの最後を飾ってくれました。渓流師にとって、また長いながい禁漁期間が始まりましたが、こんなイワナ君の姿を脳裏に焼き付けて、また来る陽春の季節を待つことに致しましょう。 【今回使用のタックル】 9月18・30日:KenCraft SuperTroutSpecial60LT(Telesco.PackRod)、シマノSensiLiteMG2500 他の釣行日:Wellner8ftTroutRod、シマノSensiLiteMG2500 呉羽SeagerAce1号(6lb)、D-contact50Sヤマメ/TS、DensMinnow50S改、Wavy50Sヤマメ/アユ、他 |