北海道遠征レポート

北海道遠征釣行3・アメマス・ニジマス(8月17-19日)


北海道遠征レポートの最終回は、アメマスとニジマスを取り上げます。私がなぜ、思い切って北海道へ遠征を企てたかというと、全ては今回レポートするアメマスが目的でした。例年、お盆のころから河川への遡上を開始する大型のアメマスを、海岸線から、あるいは河口内で狙う釣りです。期待して出かけた北海道ですが、残念ながらお天気の神様が微笑んでくれることは無く、期待した超大物のヒットは最後まで見ることは出来ませんでした。しかし、道東の大物の気配はしっかりと感じることのできた釣行でもありました。

注:場所の特定を防ぐため、風景画像の一部に大幅な修正を加えるか同イメージの別の写真を使用しています。


【ニジマス: 8月18日11〜14時】

本題のアメマスの話題に入る前に、野生化したニジマス釣りのお話を少しだけしておきます。8月16日にも網走支庁のニジマスの渓を釣っていますが、お天気の神様にイケズされてしまい、魚影を確認することはできていません。しかし北海道には、先にレポートした野生化したブラウントラウトやニジマスの河川が多数存在し、生態系の破壊うんぬんの批判はあるものの、今では釣りの対象魚としてしっかりと根付いている様です。道東地方にもそんな河川が複数存在しており、アメマス釣りの合間の18日昼に、再度ニジマスを狙いました。

道東の小渓まずは尺足らずのニジがヒット東北の渓と変わらない風景

この日入った渓は、山形で言うとちょうど赤川と同程度の規模の河川ですが、源流部の渓相は東北のそれとそっくりの、なぜかとても心が落ち着く風景でした。前夜にかなりの雨が降っていて、残念ながら中流部以下は泥濁りで水量も半端ではありません。しかたなく海岸線から40km近くも入り込んだ源流部で釣ることになってしまいました。川の濁りと言うものは、案外、1本か2本の沢の濁りで下流部が支配されていることが多く、この河川も河口から35kmほどの地点にある沢を越えると、一気に透明度が上がりました。如何にも大型の渓魚が遊弋していそうな渓です。

36cmのニジマスは、大物の引きに匹敵

最初、甘くみてWellnerのロッドにフロロ2号のラインで釣っていましたが、これが失敗でした。上の写真の様な川幅10m深さ50cmほどの、何でも無い様なところで2尾目に掛けたニジマスらしき魚は、Dコンタクト50Sを軽々と一瞬のうちに引きちぎって逃走して行きました。慌てて車に戻りウエダのサクラマス用ロッドとPEライン+Dコン63改に取り替えましたが、あとが続きません。超大物らしき魚影はその1尾だけで、残念ながら他は35cm前後のニジマスばかり。最大は36cmでしたが、それでも引きは管釣りの同種とは全く違う強烈なもので、本当に野生化した魚はこんなにも馬力が違うものかと、改めて感心させられた日でした。

なぜか35cm前後ばかり野生美

地元の釣り人の情報では、大型のニジマスは東北とほぼ同じで、6月〜7月ころの水量の多い時期が最も可能性が高く、お盆のころは渇水して小型しか釣れないとのこと。雪代の豊富な時期には60cmもある超大物がフライやルアーで楽しめるそうで、そんな魚の引きはどんなに強いものかと想像すると、なんだかわくわくしてきますね。この日はたまたま前夜から雨模様で、濁りと水温が適度であったため、真昼間の12時ころにも関わらず、大型が少しだけお相手をしてくれた様です。ま、ほんとうに一瞬ではありましたが、大物の感触に触れられただけでも、感謝しておくべきかも知れません。

オオハンゴンソウツリガネニンジン

【イワナ: 8月17日夕方】

ご承知の通り、アメマスはイワナの降海型であり、イワナの生息を観察することがアメマスの生態を知る手がかりになるものと考え、昨年10月に訪れたと同じ河川に、イワナを釣りに出向いています。17日の夕方の2時間ほどでしたが、それは予想外の驚きの結果でした。昨年訪れた時には、ちょっとした淵には必ずと言ってよいほど大型のアメマスが群れていて、苦労して66cmのアメマスを釣り上げたものです。そのアメマスたちは今回まだ海からの遡上を開始しておらず、当然のことならが、河川内には全く見られませんでした。

10ヶ月ぶりの道東の渓は、風景こそ変わらぬが・・・

しかし驚いたのはイワナの生息状況です。昨年10月に訪れた時は、大型のアメマスの群れの後方にびっしりと尺以下のイワナが張り付いていて、油断をするとすぐにイワナが釣れてしまうという困り者でした。しかし、今回の釣行では、風景こそ何も変わらないものの、アメマスだけではなく、イワナの姿もほとんど見られなかったのです。ミノーを投げまくってようやく釣れてきたのは、写真の様な20cm足らずのチビイワナだけで、しかも魚影は極端に薄く、3〜4つの淵を釣ってようやく1尾釣れる程度なのです。昨年10月の様子を知っていた私にとって、この状況はまるで狐につままれた如くでした。

小さなイワナが僅かに

ただ、この事実は地元の人には当たり前の様であり、同日昼に釧路の釣り道具店でイワナ釣りの話をしたところ、「今の時期はほとんど何も釣れませんよ」と言った声が返ってきていました。私がイワナだと思っていたのは、どうやらアメマスのオスであり、恐らくメスのアメマスと同時期に、あの尺以下のイワナ風のオスアメマスたちも、大挙して海から遡上してくるのではないかと考えられるのです。つまり、アメマスたちの100%近くが降海してしまい、産卵の時期を除けば魚影がほとんど無くなってしまう様なのです。このアメマスの渓は、道東の非常に寒冷な気候が作った、稀有な河川だったのです。

ガガイモ

【アメマス: 8月18日午前】

そして大型のメスアメマスですが、毎年8月に入ってからの大雨の後に河川への遡上を開始する様です。このあたりの河川は、海岸の細かな砂が海流で流され、河口付近が砂で塞がれて小さな湖ができています(下左図)。夏になると渇水で河川流量が減り、河川の水は全て砂浜に吸収され浸透により海に出る状態となり、河口が完全に塞がれてしまう(河口が無くなる)様になります。すると海と河川との往来が無くなり、アメマスたちは遡上できません。そのため、大雨の後に増水で河口が再び開かれた時に、一気に魚たちが遡上を開始することになります。それはアメマスだけではなく、時期をずらしてカラフトマスやシロザケも同様です。

河口の模式図道東の夏は昼なお暗い深い霧に包まれた河口

私は今回、ネットや雑誌でこの事実を知り、例年であれば8月初ころにアメマスのファーストランがあり、お盆のころにアメマス釣りの一大フィーバーが有るらしいことを突き止め、思い切って北海道に渡りました。しかし、今年は異常とも言える気候のためか、8月初から16日まで、例年に無い高気温で、まともな雨が降らなかったとのこと。全く運が悪いとしかいいようがありません。そして、この道東のアメマスの河川で、大雨で久しぶりに河口が開いたのがこの日18日の早朝だったと言う訳です。この日は今回の遠征の最後から2日目であり、ギリギリのタイミングでした。

40cmのアメマス

18日の早朝は5時に起き出して、かすかな期待を胸に河口に向かいました。薄暗い中、見れば河口にかなりの量の水が流れていて、どうやら2週間ぶりに河口が開かれた様です。それにしても釣り人は誰もいません。昨年までなら、5時には数十人の釣り人がずらりと砂浜の上に並んでいたはずなのですが、さて、河口が開いたばかりで釣りになるのか? 不安一杯で海岸へと続く砂の坂道を降りて行きました。しかし、そこに見えたのは、河口の入り口付近100mほどの間だけに次々と現れるライズリングでした。フックを太軸のものに変えたDコンタクト63S改を湖に投げ込むと、一投目で40cmジャストのアメマスがヒットしてきました。

河口付近にはライズリングが赤いスプーンに出たアメマス

しかし、この時点ではまだ河口のアメマスの釣り方が判っておらず、続いて2投・3投と投げましたが反応がありません。投げる場所とルアーの種類を複雑に変えて、なんとか4尾のアメマスを釣り上げましたが、午前中はこれでおしまい。たった今遡上を開始したばかりで魚影がまだまだ薄く、どうやらスレるのが非常に早い様なのです。途中、真っ赤なスプーンに変えた時に強烈なあたりがあり、カラフトマスがヒットしてきましたが、惜しくもバラシ。ただ、釣れたアメマスはどれも35〜40cmであり、また、トレースしてくる魚影にも大型は見られず、どうやらファーストランのアメマスは小型が中心の様です。

【8月18日夕方】

平均サイズは35〜40cm

この日は午前9時ころにアメマス釣りを切り上げ、昼間は冒頭のニジマス釣りに切り替えています。そして午後4時ころ、再び件の河口に舞い戻り、アメマスを狙いました。この時はさすがに地元の人が聞きつけたのか、数人の釣り人が姿を見せていました。しかし前日からの雨のため河口付近の濁りはかなり強くなっていて水量も多く、写真上の朝と同サイズのアメマスが2尾と、外洋側で写真下のカラフトマスが1尾釣れただけでした。ただ、アメマスの分布は早朝とは大きく違っていて、河口から上流へ1km程度の範囲まで広がっており、スレが早くても次々と場所を変えてゆけば結構な数が狙える釣りではないかと考えられました。

真っ赤なスプーンにヒットしたカラフトマス52cm

さて、今釣行2尾目のカラフトマスですが、写真上の様にウロコが極端に剥げ落ち、リリースはしたものの、はたして生き残ってくれたのか、心配がありました。やはり、産卵を迎えた鮭科の魚を釣ることには、C&R自体に無理がある様です。もっとも、鮭科の魚たちは産卵後には確実に死を迎える訳であり、また、漁協による孵化活動も行われていることから、地元の人たちは迷わず持ち帰っている様です。一方のアメマスの場合は、産卵後もまた海に戻り何度も産卵を繰り返す性質らしく、産卵直前でも通常のイワナと変わらない良好なコンディションでした。C&Rにより再生産を促す必要がありそうです。


【8月19日】

翌朝も朝5時に起き出し、アメマスを狙おうとしましたが、お天気の神様も今回は本当に意地悪でした。せっかく雨を降らせてくれたのは良いのですが、物には限度と言うものがあるでしょう、一変して今度は大洪水でした。なんでも北海道では数年に1度有るか無いかの洪水であり、19日の朝、日勝峠や237号線など、道内の幾つかの幹線道路が土砂崩れで寸断され、苫小牧への帰り道に数時間の遠回りを強いられてしまう有様でした。もちろん、本レポートの道東の河川も、非常に厳しい泥濁りと水量で釣りどころではなく、早朝に河原に立ってはみたものの、何もせずに帰路につかざるをえませんでした。

アメマスの渓も濁流に濁流の河口に一羽の鶴各地の道路は寸断された

その後のネット上などの情報によれば、翌週から件の河口で60cmを超える大型も含めた、相当数のアメマス・カラフトマスが釣れている様です。今回、渓魚達の正に遡上開始の瞬間をつぶさに観察することができたことには素直に感謝しなければなりませんが、しかし、それにしても残念です。例年通りであるならば、数十尾の大型アメマスとの格闘の世界に浸ることができていたのかもしれないと思うと、非常に心残りでなりません。あと数日早く雨が降ってくれていれば・・・

エゾタンポポオオハンゴンソウの原野

さて、今回で北海道遠征レポートはおしまいですが、今回の釣行でも、さまざまな釣り場で、旅館で、キャンプ場で、沢山の地元の人たちから貴重な釣りの情報や釣り場の情報をご教授頂きました。北海道の釣り人たちは本当に心が広くオープンで、外来の客にも親切でした。自家用車での一人旅の釣行は今回で2回目ですが、とても懐の広い北海道の人・大地・自然の魅力に、私自身、ますます捕り付かれつつある様に思います。お世話になった地元の皆さんに、心より感謝申し上げます。

(北海道遠征レポートは、今回で終了です。長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。)

【今回使用のタックル】
アメマス・カラフトマス・ニジマス:ウエダTroutPluggingSpinGS902H+シマノAERLEX3000C+PE30lb+ショックリーダー20lb、D-contact63S改/TS/ヤマメ、チヌーク17g赤/銀、他
イワナ・ニジマス:Wellner8ftTroutRod+シマノSensiLiteMG2500+呉羽SeagerAce2号(10lb)、D-contact50S/ヤマメ/TS、Wavy50S/ヤマメ/アユ、他