緑の最も鮮やかなこの季節、山形渓遊会の例会に参加してきました。釣りというものは何でもそうですが、「一番乗り」がキーワードの様です。山形県内の林道は長い間、深い残雪に閉ざされていて、6月になってもまだ奥地へは踏み入ることのできない源流が沢山残されています。そんな中、幸いにも、今年まだ誰も足を踏み入れていない流れのなかに入渓することができ、思わぬ入れ食いを堪能させて頂きました。季節は今、正に釣り師にとって最高の季節です。 【6月3日(土)】 ダム湖でも「一番乗り」がキーワードでした。とにかく、最初にポイントに入った人に幸運の女神様が微笑んでくれます。その後、2回、3回と同じポイントに入るたびに釣果が目減りし、イワナ達が沢山そこに泳いでいるにも関わらず、最後は彼らから見向きもされなくなってしまいます。この現象は他の多くの釣りでも共通ですが、特に学習による「スレ」の起き易いイワナやヤマメの場合はなおさらの様です。最近になり電撃式の生息数を調査する機器が開発され、魚が沢山いるのに全く釣れない現象が、数多く確認されているそうです。 山形県内の林道は残雪が非常に多いため、5月の連休のころまではどこも車での通行はほとんど不能です。雪の極端に少ない年であれば連休のころから多くの林道が開通し始めますが、今年は雪が12月の早い時期に降ったため、固まっていてなかなか融けてくれません。こんな年はGWを過ぎたころから徐々に林道が開通し出し、今年まだ全く手付かずの釣り場が、順番に開放されて行くことになります。山形県内でも最も奥地の今回の釣り場は、6月2日(金)になってようやく林道が開通し、車での通行が可能になったばかりでした。つまりこの日は開通の翌日でした。 この日、渓遊会のメンバーは金曜夜から現地入りし、早朝から源流に入っていました。しかし、仕事の忙しい私は、いつもの通り翌日の現地入りです。この釣り場は巨大なダム湖も擁しているのですが、ダム湖の釣りにまだまだ未練のある私は、午後から当然の様にしてダム湖にフローターを浮かべ「一番乗り」の恩恵に預かろうとした訳です。このダム湖はまだ誰もルアーを投げていないハズ。絶対に大物が釣れるハズ・・・と意気込んでフローターを漕ぎ出したのですが・・・あれま、釣れるのはなぜか写真下の様な巨大なウグイばかり。
林道の開通が遅れる理由は、ほんの一部の谷筋などに残った残雪のデブリの存在です。デブリさえ無ければ、他は全く問題なく車が通れるのが普通でして、実はこのダム湖は既に雪代が終わりかけていて、水温が15℃を超えていました。5月の連休のころに林道が開通していれば釣りになったのでしょうが、6月以降の「一番乗り」では意味が無さそうでした。ま、巨大なウグイが次から次へと釣れるのは、それはそれで結構楽しめたのですが・・・フローターが強烈に生臭くなったのには参りました。
夕方になり渓遊会のメンバーと合流しましたが、源流部は予想通りの入れ食い状態で、34cmまでのイワナが数え切れないほど釣れたとのこと。そりゃそうでしょう、昨日開通したばかりの林道の一番奥の源流ですから、全くスレていないウブなイワナしかいない訳です。釣れて当たり前。でもま、いつもの様にイワナの塩焼きと骨酒に舌鼓を打たせて頂きましたので、文句は言えません。ゆるゆるとした焚き火にあたりながら、何回やってもなぜか飽きることのないキャンプの夜は更けていくのでした。
【6月4日(日)】 いつもそうなのですが、我が渓遊会の会長さんは、土曜日に早朝から体力を使い果たしてしまうためか、翌日の日曜はのんびりと寝ていてなかなか起き出してきません。私は早くから釣りに行きたいわけで、イライラしながら6時半ころ、会長さんを叩き起こしました。この日は日曜とあって、早朝から相当な数の車が既に我々のキャンプサイトの横を通り過ぎています。この時間になってまだ人の入っていない渓などもう有りそうもありません。しかし、幸いなことに、すぐ横の沢だけは、朝一番に車止めに入った山菜採りの夫婦の車がカモフラージュになっていて、まだ誰も釣り人は入っていない様子でした。これはラッキー!
釣り始めはもう7時を回っていました。良いお天気で、すでに渓は非常に明るく、雪代の少し入った白っぽい濁りの沢は、最高の状態でした。歩いていてもすこぶる気分が良く、この時期の源流の楽しさを全て凝縮した様な日和です。6月ともなると魚たちのルアーへの反応は非常に良く、会長さんと佐谷名人の餌釣りの竿よりも、私のロッドが曲がる方が先でした。まずは私のミノーに25cmほどのイワナがヒット。続いて会長にも佐谷名人にも、次々とイワナがヒットし始めます。釣り人の足跡は見られず、どうやら前日も釣り人は入っていない様です。つまりこの渓は今年まだ誰も釣ってはいません。やはり「一番乗り」に限りますね。
ただ、妙な現象もありました。普通にイワナが飛び出して来るポイントがあるかと思うと、時折、全く魚影の感じられないポイントが現れます。どうやら、山菜採りの夫婦が先行していて、時々渓を渡ったりしているのでしょうか、渓畔近くで山菜の採取された場所は、やはり魚たちが人影を見てしまっていて釣れなくなるようです。しかし、しばらくして山菜採りの夫婦が帰ったのか、途中からは足跡も全くなくなり、入れ食い状態が始まりました。淵には必ずイワナがいて、ルアーを追いかけてきます。ただ、途中のザラ瀬には魚の気配がなく、まだまだイワナの定位するには雪代の流れは速過ぎる様でした。
しかし、快晴の素晴らしい青空の下、この時期の源流を歩くのは実に気持ちの良いものですね。5月はまだ水量が多過ぎて遡行困難な場合が多く、しかも水温が低すぎてルアーには反応が悪いものです。逆に6月も下旬ころになると、今度はアブや蚊など、様々な虫たちが遡行の邪魔をし始めますし、渓には釣り人が溢れていて、魚たちはスレて反応が鈍ってきます。そのため、6月の初めの頃の晴れた日の源流遡行がなんと言っても気持ちよく、暑くもなく寒くもなく、しかも釣りも楽しいものです。今回の遡行は、そんな全ての条件を満足したと言える釣行でした。
ただ、数が多く釣れる時と言うのは、大物はなかなか出てくれないものです。この日、途中で数え切れなくなる程の釣果が見られましたが、大半は25cm前後、最大は私のDコンタクト50Sアユに来た30cmでした。佐谷氏も28cm止まりであり、この点だけはちょっと残念でした。もっとも、大物ならダム湖や堰堤プールで比べ物にならない獲物を釣り上げている訳であり、源流の釣りでは大物に拘るつもりはありません。気分の良い遡行とブナの森や野草花を楽しめればそれで良し。まぁ、オマケで数が出たので、気分最高と言ったところでした。
この日、快晴でとても良い壁紙用写真が撮影できましたので、写真館の方もぜひお楽しみ下さい。さて、こうやって初夏の渓遊会も終えましたが、この時期は同時に堰堤プールの釣りの最盛期でもあります。6月が半年くらい続いてくれれば楽しいだろうなぁ・・・などと、馬鹿げたことを考えながら、帰路の林道を心地よい疲労のお土産を背負いながら下ってきました。
【今回使用のタックル】 KenCraft SuperTroutSpecial60LT(Telesco.PackRod)、シマノSensiLiteMG2500、呉羽シーガーエース1号(6lb)、Wavy50Sヤマメ、D-contact50Sアユ/ヤマメ/TS、他 |