クラブ釣行レポート

山形渓遊会・源流行秋(9月17-19日)


山形渓遊会の秋の源流釣行に行ってきました。今回は3時間弱の山越えのルートで源流部へ入り、2泊3日の工程で望みましたが、いやはや、苦労と釣果は必ずしも比例してはくれないことを思い知らされました。しかしブナ林の中の天然の寝床と、どこまでも清い源流部の流れは、それだけで人を幸せにしてくれる様です。暑くも無く寒くも無く嫌な虫もいない最高の条件のなか、思う存分の東北の大自然を満喫してきました。

注:場所の特定を防ぐため、風景画像の一部に大幅な修正を加えるか同イメージの別の写真を使用しています。


このところなかなか足並みの揃わない山形渓遊会ですが、今回もちょっとしたことで佐谷名人とすれ違いがあり、結局、渡辺会長・S氏と私の3人だけの釣行となってしまいました。良く考えてみれば、今年は一度も全員揃うことなくシーズンを終わってしまったことになり、少し残念でなりません。実を言うと佐谷名人は、別の某待ち合わせ場所で皆の到着を待っていたらしいのですが、うーん、名人の参加が最後まで確定せず、直前になって入渓場所を変更してしまったため、連絡が取れずにすれ違いが発生してしまった様です。Oh!なんたることか!


さて、今回入った源流ですが、いつもはせいぜい1泊2日のお手軽コースのはずが、なぜか待ち合わせ場所に到着すると2泊3日に化けていました。1泊分しか用意をしていなかった私としてはちょっとした晴天の霹靂(晴れた日に雷が鳴ること)な訳です。食料も着替えなども1泊分しか無い訳で、それでもなんとかなるさと仕方なく出発すると、今度は3時間の山越えが待っていました。50歳を超えた私にはとてもじゃないですが、体力の限界を超えています。ヒーヒー言いながら到着した源流はそれはそれは美しい渓ではありました。


会長とS氏はこの源流にこれまで数回の経験があり、話ではいつも入れ食い状態で、入渓点からポイントごとに型の良いイワナが釣れ続け、テン場までの40分ほどの距離でその日の夜の塩焼き分はすぐに確保できるとか・・・苦労に比例して魚影も濃いだろうと期待して入渓点から早速ルアーを投げますが・・・しかし、今回も会長の言葉に裏切られてしまいました。テン場までポイントというポイントを全てルアーで探りましたが、釣れたのは写真上の会長の釣った20cmほどのおチビちゃんが1尾だけ。


あっと言う間にテン場に到着してしまった我々は、そそくさとテントを貼り、重い荷物を投げ出して上流部を目指す準備をします。テン場付近のブナ林は素晴らしく、炭焼き小屋のあったらしいその場所は、うまい具合にブナの木漏れ日が高原の強い日差しをさえぎってくれています。すぐ横にはどこまでもクリアな源流の流れが心地良く、重機で整地したかの様な真っ平でフカフカの十数畳ほどのスペースと合わせ、まるで大自然の中に突然ポッカリと出現したオアシスの様です。


時間は既にお昼を回っていて、軽く昼食を食べたあとは二手に分かれて更に源流部を目指しました。会長は一人で少し下流部に流れ込む支流に、私とS氏はテン場の前の流れをそのまま源流部へと釣り上がることにしました。流れは源流部らしい緩いコルジュと淵・瀬が連続していて、遡行はそれほど難しいことはありません。ルアーでも十分に釣りになる様な適度な淵が次々と現れ、歩いているだけで気分は最高でした。・・・と、すこぶる気分の良い渓相とは裏腹に、しかし釣れません。S氏はテンカラで望みましたが、透明度があまりにも高く、近づきすぎなければならない釣りでは歯が立たない様でした。


私も最初は近づき過ぎていてサッパリでしたが、途中からはDコンなどの重いミノーを20m以上も遠投することで、なんとか釣果を見ることができました。それにしても哀しかったです。20数mも先へミノーを投入しても、魚のトレースの見られるのは3つの淵に1尾程度の極端な魚影の薄さなのです。それも殆どが20cm前後のおチビちゃんばかり。メゲました。一方の会長さんは、最初のゴルジュ帯を少しだけ釣って、すぐにテン場に戻ってきていた様です。塩焼きにちょうど良いサイズのイワナを2尾、キープしていました。


山越えですっかり疲れてしまった私ですが、夜になると俄然元気が出てしまうのは一体なぜなんでしょう。疲れた体にはアルコールとなぜか蕎麦が良く合います。3人はこれまでも何度も呑み交わしているはずなんですが、お決まりの釣り談義で楽しい時間が過ぎて行きます。しかしなんですねぇ、別に釣れようが釣れまいがそんな事はお構い無しに、この宴会こそが楽しみで源流に来ている様なものですね。この日はお天気も良く、テントには入らずに地べたにマットを敷き、寝袋に防虫ネットだけで青空天上で寝てしまいました。ブナと星空と渓流のせせらぎ・・・それだけで人は十分に幸せになれる様です。

ヤマブキショウマ ダイモンジソウ アズマシロガネソウ

翌朝も二手に分かれて源流を目指すことにしていました。前日はS氏と私がテン場前の峪を遡上しましたが、この日は会長とS氏が同じ峪を魚止めまで遡行し、私は少し下流に入っている支流を一人で遡行することにしました。入り口からいきなり手強いゴルジュ帯に阻まれましたが、ヘツリでなんとか切り抜けます。しばらくゴルジュ帯が続きますがその中には意外にもイワナは姿を見せてくれません。500mも進むとやがてなだらかな淵と瀬の連続するポイントが現れ、ようやく魚が釣れはじめました。


重いミノーの大遠投でかろうじて釣れ上がってくるイワナたちは、どれも源流特有の黄色みを帯びた腹に、10本前後の縦縞模様のパーマークを見せてくれ、型こそ小さいもののまるで宝石の様です。ただやはりこちらの支流でも魚影は同様に薄く、7時間あまりも遡行したにも関わらず、釣れたイワナの数は14尾だけ。最大は28cmほどと、会長の言う「入れ食い」とは程遠い結果でした。しかしそれにしても不思議です。実はこのレポートを書いている直前の9月の最終週に某源流で偶然出会った水戸のテンカラ師から、ある情報を聞いていました。


彼は8月のお盆の初日に我々と全く同じルートでこの源流に入っていました。少なくともその時は、会長の言う通り、入渓点から「入れ食い」だった様です。ポイントごとにテンカラに魚が出て実に楽しかったとのこと。産卵のために9月に入るとイワナ達は魚止め目指して遡上するのは判りますが、それにしても、たった1ヶ月でこれほどまでに魚影が消えてしまうものなのでしょうか。イワナの棲む範囲は全長10kmにも及ぶ峪ですが、仮に一つのポイントに10尾、ポイントが50mごとに1箇所としても全体で2000尾ほどのイワナが1本の峪に生息していたことになります。3連休でも入渓者は我々の他に2名の合計5名であり、恐らく週に平均10名にも満たなかったでしょう。


1ヶ月で多めにみて仮に40名の入渓者があったとしても、一人が2尾のイワナをキープし食べたところで80尾であり、この程度なら峪全体のイワナに与える影響は無視できる範囲です。仮に一人10尾としてもまだ400尾であり、驚くほどの魚影の低下にはなりません。しかし、1ヶ月で殆ど魚影は消えてしまっています。これはもう、何者かが乱獲をし尽くしたとしか考えられません。最近、あちこちの峪で毒流しといった方法で数百尾単位の乱獲をするヤカラが居ると聞きます。この峪も、そんな悪意の人たちによって踏みにじられてしまったのでしょうか。


上下の写真6枚は、分かれて別の沢に入った渡辺会長の撮影した写真ですが、会長とS氏は途中の極端に薄い魚影をあきらめ、一気に魚止め滝を目指したようです。途中ではやはり釣果は殆どみられなかったものの、魚止め滝の手前からようやくまともな釣果を得られたらしく、とりあえずは34cmの良型をゲットした様です。しかし、彼の過去の数回のこの峪の釣行の中では最低の釣果だったらしく、渋い顔をしてテン場に戻っていました。魚止め滝でさえ魚影が薄いのは、産卵による遡上で中流部の魚影が薄くなっただけとは考えられず、やはり何らかの悪意を感じざるを得ないのでした。


キャッチ&リリースの叫ばれている現在、未だに大量の渓魚を持ち帰る人たちがいます。その様な行為は今では非常に恥ずかしい行為でしか無くなっているにも関わらず、その事に全く気付いていない人たちが少なからずいます。皆が節度のある釣りを心がけていさえすれば、源流も渓流も、渓魚の絶えることなど有り得ない十分な再生産能力を備えているものです。乱獲と釣り人の集中こそが、現在の渓流釣り事情を悪化させているのではないか・・・そんなことを思いながら、二夜目のブナ林のテン場の夜は過ぎて行くのでした。さて、今シーズンもいよいよあと数日で幕を閉じようとしています。来年はどんなシーズンになるのか、じっくりと見つめて行きたいと思っています。


【今回使用のタックル】
KenCraft SuperTroutSpecial60LT(Telesco.PackRod)、シマノSensiLiteMG2500、呉羽シーガーエース1号(6lb)、Wavy50S/65S/ヤマメ、D-contact50Sヤマメ、他