当ホームページをご覧頂いている方の中には、少なからずハンドメイドミノービルダーがおられます。そんなビルダーの皆さんから、時折ではありますが、彼らの作品を試してみて欲しいと言うメイルが舞い込んできます。この5年間で頂いたミノーは5種類10個。7月の後半に、Buuさん・風玉さんとミニオフを行う傍ら、これらのミノーを堰堤プールと渓流の2つの釣り場で、試釣してみました。いずれの作品もそれぞれの作者の設計思想と思い入れが良く込められていて、小気味良い釣り味を楽しませてくれました。 ![]() 最初にミノーを贈って頂いたのは、今ではこの世界ではすっかり有名な「taki」さん(Taki's Handmade Lure)でした。2000年のことでしたが、当時、当サイトの掲示板にtakiさんが時折投稿されていて、何気なく私のかいた返信を見て、わざわざ私の希望のミノーを作って頂いたのです。そのミノーは写真下左のtaki_kplusミノーで、沈降速度毎秒1mという非常に重い堰堤プール用の特殊なミノーです。流石に超重量級のため、渓流で一度使った事があるのですが、わずか数投でロストしてしまったのを覚えています。ミノーは2個頂いたのですが、残り1個は大事にだいじに私のルアーBoxの中に保存してありました。
その後2002年になり、takiさんには有名なtakiミノー(写真上中央)も送って頂いています。これは流れの中でも安定して泳ぐなかなかの優れもので、渓流では時折、使わせて頂いてました。残念ながら、1本はシングルフックが岩に引っかかって折れたままですが、今回は残りの緑色のtakiミノーを試釣に加えました。更にその後は、神奈川県の「mitu」さんからもK++と名前入りのミノー(写真上右)を送って頂きました。これも堰堤プールでの釣りを考えたシンキングミノーでした。
昨年になり、今度は新潟の釣り仲間である「もっち」さん(もっちのミノー三昧)からもミノーを頂きました。もっちさんもダムや堰堤を良く釣っておられるかたで、堰堤・渓流ともに使えるかなり重いシンキングミノー(写真上右)でした。そして更に今年に入り、mituさんからはまた少しタイプの変わったミノーを送って頂きました。かなり扁平で楕円形の形状をした、堰堤でも渓流でも使えそうなシンキングミノー(写真上中央)でした。頂いたミノーはロストを考えるとなかなか使えないものなのですが、今回、これら5種類のシンキングミノーを、まとめて試釣してみました。まとめて試すことで、それぞれの特徴や違いが良く判りますし、一度にレポートできることでロストも気にすることが無くなると考えたからです。
試釣に使った釣り場は、ヤマメにもイワナにも試せることを考え、県内のヤマメで有名な某堰堤プールとその下流部の渓流(写真上)でした。残念ながらこの日は水温がかなり高くなっていて、多くの釣果がヤマメばかりになってしまいましたが、それでも結構な釣果に恵まれ、試釣としてはまずまずだったのではないかと考えています。山形にはまだまだこういった魚影の濃い釣り場が沢山残っており、ミノーやロッド・ラインなどのテストには最適の地の様です。なにせ、魚が居なければ、試釣になりませんから。
さて、試釣の結果ですが、渓流域・堰堤プールとも、一部を除いて十分な釣果が見られました。渓流域では20cm前後の小型のヤマメが主体でしたが、堰堤プールでは28cm前後(最大33cm)の大きめのヤマメが主体でした。いずれのミノーもそれぞれの特徴があり、その特徴に合わせた釣り方をこちらで判断して釣りましたが、概ね結果は良好であり、いずれのミノーも十分にフィールドで活躍してくれるだろうと感じることが出来ました。以下に、その時の私の個人的に受けた印象を書いてみたいと思います。
1.taki_kplusミノー 残念ながら非常に重いこのtaki_kplusミノーだけは、渓流域での試釣は行いませんでした。もともとこのミノーは止水の深いところでの使用を前提に作られていて、渓流で釣果を上げるには無理があるからです。一方で、堰堤プールでは他のどのミノーよりも遠投がきき、なおかつ底付近をリズミカルに素早くトレースできるため、大型のヤマメを狙うにはうってつけでした。ただ、リップが無いため棒引きでは反応がありませんでしたが、ジグの様にロッドワークで小刻みな動きを与えることで、普通にヤマメが喰い付いてきました。なお、スレではありますが、33cmの立派なヤマメをも掛けてしまったのは、底を素早くトレースできたことが要因ではなかったかと思われます。深くて透明度の高い堰堤やダム湖では、こういった重くて素早く沈むミノーは頼りになりそうです。
2.takiミノー このミノーは非常に強い流れの中でもきびきびとした良い動きを見せてくれ、渓流域では殆どの場面でなんら問題なく対応してくれそうです。実際、渓流域の試釣では淵・瀬ともになんの苦労もなくヤマメを引きずり出してくれました。スローシンキングタイプになっていて、中層を実に小気味良く泳いでくれ、強い流れの中でも飛び出すことなくトゥィッチに耐えてくれます。ただ、堰堤プールでの釣りでは、今回は残念ながら釣果を得られませんでした。これは軽いために飛距離が稼げず、近づき過ぎなければならなかったことと、スローシンキングのために深いプールの底をトレースできなかったことが原因の様です。もっともこのミノーは最初から渓流域での釣りに合わせた設計となっている様であり、堰堤での試釣には無理があった様です。逆に非常に強い流れの本流や支流では、これまでも良い結果を出していますし、素晴らしい味方となりそうです。
3.mitu_K++ミノー こちらは両サイドが平らな形状をしていて、反射率を高めることで集魚効果を得る設計になっている様です。やや軽めですが、光ミノーともっちミノーの中間程度の沈降速度になっていて、渓流でも堰堤プールでもどちらでも使えました。渓流域ではかなり強い流れの中でも安定していますが、トゥィッチにはあまり反応せず、やや直線的に泳ぐ様です。ただ、このミノーの面白いのは、沈めるときにサージャーの様にヒラヒラと反射光を放ちながら沈下してゆくことがあげられます。そのためか、堰堤プールではフォールの最中に何度かヤマメがヒットしてきました。渓流域では通常の釣り方で良く釣れましたが、堰堤プールではトゥィッチをかけずに引いては沈めるを繰り返すことで釣果があがりました。
4.もっちミノー まるで市販のミノーを思わせる綺麗な作りのこのミノーは、実際に渓流域・堰堤プールともに非常に良い結果を出してくれました。想像以上に重く設計されていて、Dコンタクトよりも更に良く飛び、尻尾から毎秒30cm程度で素早く沈むため、どちらかと言うと堰堤プールに向いた設計になっている様に思われます。実際、堰堤プールではこのミノーが5種類のミノーの中で最も釣果が上がっていて、そのカーキー色のカラーリングと合わせて、私の堰堤プールでの釣りにはほぼ理想的だと思われました。渓流域でも中層〜低層を狙うにはうってつけで、トゥィッチにも良く反応して綺麗にヒラを打つ様子は、いかにも魚たちを魅了してしまいそうです。このミノーはトゥィッチに良く反応する様に設計されている様で、強いトゥィッチを掛けるとミノーが回転してしまうほどです。トゥィッチに良く反応する様に設計すると回転などが避けられませんし、回転を防ぐとトゥィッチにあまり反応しなくなるという、相反する条件のどこを取るかは難しいところでしょう。
5.光ミノー50S(2005) このミノーは扁平で卵型をした実にユニークな形状を持っています。初めて見た時は「釣れるのかな?」と思ったものですが、実際に渓流域で使ってみると、20cmほどの小さなイワナ・ヤマメまで難なく誘い出してくれました。トゥィッチにはあまり反応せずやや直線的な動きでしたが、平たくてよく目立つためか、止めた時のヒラを打つ瞬間に魚が良く反応していました。スローシンキングタイプに属すると思われましたが、堰堤プールでは一度沈めてしまうと浮き上がってくることがあまり無く、底をゆっくりとトレースすることができ、プールの深みでも問題なく釣果を得られました。やや大きめで全体の重量があり、飛距離も十分です。試釣では、渓流域・堰堤プールともに、良い釣果を出してくれました。
7月の30・31日には、この試釣と同時に新潟のBuuさん・風玉さんとミニオフを行っています。お二人は、私がハンドメイドミノーを投げる傍らで普通の市販のミノー(主にDコン・トラウトチューンなど)を投げられていた訳ですが、なぜか30日の試釣では私の方が断然良く釣れていました。頻繁にミノーをチェンジし、釣り方もミノーに合わせて次々と変化させていたため、魚たちがそれぞれのミノーにスレる度合いが低かったのがその原因ではなかったかと想像しています。同じプールで同じミノーを投げ続けると、やはり魚のスレるのは避けがたく、試釣であることがたまたま良い釣果につながっていたと言うことの様です。この日は33cmの尺ヤマメ(スレですが)を筆頭に、尺ヤマメ2尾(風玉さんにも1尾)、全部で20尾ほどの釣果があり、どのミノーにも良く釣れてくれていました。
今回、5種のハンドメイドミノーを使わせて頂き感じたことは、それぞれの作者の釣りに対する思い入れが良く込められていて、個々の釣り方に応じた設計思想が見事に反映されていることです。形状や作り方はさまざまでしたが、どのミノーもしっかりと魚にアピールする様に作られていて、これだけの多数の釣果を見ることができたのは、正直、驚きでした。また、現在市販されている多くのミノーはきらびやかで如何にも釣れそうな雰囲気をかもし出していて、釣り人を釣るための仕掛けが沢山です。しかし、手作りのミノーにはそういったきらびやかさは薄いにせよ、釣果を上げるには必要かつ十分な作りであり、なにかミノーの原点を見た様な印象がして、とても爽やかな気分にさせて頂いたのは、今回の試釣で得た最大の釣果ではなかったかと思っています。
さて、東北の夏祭りもピークを過ぎ、奥山ではそろそろ秋の気配がしのびよる季節です。堰堤プールも渓流も今しばらくは大渇水ではありますが、お盆に入る頃には水量も回復し、9月末までのもうしばらくの釣りの季節を楽しめそうです。今年も残るはあと2ヶ月足らず。秋の大物に思いをはせながら、暑い夏を乗り切ることに致しましょう。 【今回使用のタックル】 Wellner8ftTroutRod、シマノSensiLiteMG2500、呉羽SeagerAce1号(6lb)、 taki_kplusミノー、takiミノー、mitu_K++ミノー、光ミノーRM50S(2005)、もっちミノー |