今年の気候は何だか変です。東北では5月に入っても肌寒い日が続き、ダム湖のイワナがまだ釣れ続けています。それでも確実に水温は上昇している様であり、そろそろ堰堤プールの釣りが開幕した様です。5月末ころから7月の梅雨明けまでの短い間ですが、堰堤の釣りを楽しむものにとって、1年で最もエキサイティングな季節がこれから始まります。今シーズンのダム湖では大物ラッシュが続いていましたが、こういった年は堰堤プールの釣りでも同様に期待できそうです。早速の大物が、今年も釣れています。 ![]() とにかく今年は季節の移り変わりが遅い様です。下の図は山形市の02年以降の平均気温との差を示したものですが、今年は1月以降、平年よりもかなり低い気温が非常に長い間続いていることが判ります。ちなみに下図は山形市の気温の変化ですが、これは東北全体でもほぼ同じ状態であることを示しています。この5ヶ月間は平均よりも概ね1.5℃ほど低く推移していて、これは5月であれば約8日の季節の遅れであることが判ります。ただ、こういった気候の後は、逆に猛烈に暑い気候に変化することが多いものです。今年の夏はまたまた猛暑になるのでしょうか。 ![]() そして、今年の豪雪のお陰で、いまだに残雪で行くてを阻まれている林道が存在するほどです。今年はあちこちで車が入れず頻繁に歩かされたのはこれまでのレポートの通りですが、お陰で随分と足が丈夫になった様な気がします。夏の源流釣りに向けての体力補強が自然に出来ているのは嬉しいのですが、それにしても疲れる年ですね。ただ幸いにも、土日にとても暖かくなる気候でもあり、これは私の様なサンデーアングラーにはとても嬉しいものです。大物に恵まれた理由は、単に残雪が多かっただけでもなさそうです。 ![]() 【5月22日(日)】
前日に仕事で動けなかった私は、この日、珍しく寝ずに翌朝の釣りに臨みました。しかし、せっかく朝一番に某ダム湖に入ったものの、なぜか釣れるのは写真上右の様なヒレがボロボロになった、どう見ても放流したてとしか思えない様な小さなニジマスばかり。大物も泳いでいるのでしょうが、警戒心の少ないニジマスが先に喰いついてしまうためか、イワナはさっぱり釣れてくれません。それにしても一体誰なんでしょうね、こんな「雑巾マス」(引きが弱くゾウキンを引っ掛けた様な感じがするため。福島の某氏が命名)を大量に放流したのは。折角の大物釣りもこれでは台無しです。
十分に昼寝をした後、夕方は仕方なくホームグランドの堰堤プールへ移動しました。どうせダム湖に見込みが無いのであれば、試しに堰堤を覗いてみるのも一手と言う訳です。今年の季節は流れがとても遅いのですが、それにしてもそろそろ堰堤の釣りがその季節を迎えているのではないかと感じていたからです。夕方4時頃にはフローターを漕ぎ出し、インレットまで釣りながらゆっくりと移動するのが常なのですが、この日はインレットの手前500mくらいまでは全く魚の反応が見られません。まだ堰堤に魚が十分に入っていないのか、或いは普段とは別のところに魚たちが集まっているのか、悩むところです。
雲を掴む様な気分の中、それでもインレットに近づくにつれ、やがて魚影が現れはじめました。どうやら、魚はまだ少ないものの雪代に流されて源流部からイワナたちが落ちてきてはいる様です。インレットから500mほど離れたところでまず28cmほどの小ぶりのイワナがヒット。続いてほぼ同じところで27cmもヒット。やはりまだ小物しか入っていないのか、と諦め始めていたころ、一度ミノーを投げて反応が無かった場所に念のためルアーを投げなおし、今度はゆっくりとした2段引きを試みてみると、いきなり写真下の42cmの丸々と太ったイワナがヒットしてきました。数こそ少ないものの、まずまずの魚影と大きさに、今年の堰堤プールの釣りも約束されたという安堵感に包まれ、この日は納竿としました。 ![]() ところで私がこの堰堤プールのルアーフィッシングにこだわるのは一体なぜなのでしょう。自分自身でも良く判ってはいなかったのですが、今回のこの大物を見るにつけ、その理由が判った様な気がします。今年、既にダム湖で40cmを超えるイワナ・アメマスを5尾ほど釣り上げていますが、なぜか堰堤で釣るイワナとは感動の大きさが違うのです。その理由は、上写真の42cmと、連休のダム湖の大物と、写真を良く見比べて頂ければ判るはずです。 ダム湖や本流での大物は、その一部を除いて概ね幼い顔をしており、しかも斑点がとても大きいのです。これは広大なダムや本流でワカサギやウグイなどを捕食して急速に大型化した証拠であり、40cmを超えてもその年齢は恐らく2〜3年でしょう。また、ダム湖や本流の魚たちはそのエリアの広さから、釣り人のプレッシャーにあまり晒されることもなく、安泰のうちに大型化してゆくと考えられます。(ダムでも少数ながら源流育ちのイワナは釣れます)
対して堰堤のイワナはどうでしょう。今回の堰堤プールも夏の渇水期になると水が干上がり、ただの川になってしまいます。そう、魚たちは毎年夏に全て源流部へと遡上してしまうのです。そして、そこには源流釣り師たちの何十・何百という竿が待ち構えており、そういった中を狡猾にかいくぐって生き残った、数少ない個体のみが大型化を許されるのです。しかも堰堤にはワカサギが放流されていないため、餌は小さな水棲昆虫などに限られ、40cmに成長するには普通4年以上はかかってしまいます。 つまり、同じ40cmでも堰堤のイワナの方が年齢が遥かに高く、かつ釣り人の罠を十分に学習していると言えるでしょう。そのため、斑点は赤く小さく、いかつい顔をしています。そして、そのイワナを釣り上げるのも、それ相応に難しいと言えるでしょう。堰堤プールの大物は、正真正銘の「大イワナ」なのです。感動の違いはこんなところに有ったのかも知れません。
さて、翌週の土日にも堰堤の釣りに出かけています。土曜は前週入ったのと同じ堰堤プールですが、前日に結構な雨が降ったためか、インレットから下流500mほどは水温6℃と非常に冷たく、しかも2m下の湖底が丸見えの非常に透明度の高い状態でした。そのため、これまで良く釣れていたインレット付近では、魚たちは脇に隠れてじっとしているのでしょうか、100mほど下流のところで40cm弱のイワナがゆらゆらとルアーを追いかけてきたのを確認したのみでした。早朝のベストタイムに釣れたのはプールの中ほどの適度に濁った比較的暖かい水のところで出てくれた28cmが1尾だけという寂しい結果でした。
やはり時期的にまだ少々早いのか、こういった水温の低い状況では、ダム湖と同様に、魚たちは得てしてずっと下流部の水温の高く安定したところに集まっているものです。この日は前日の雨でダムサイト付近にまだ強い濁りが残っていたことを思い出し、思い切ってプールの下流部へ移動しました。ただ、プール脇の煙幕理論に沿ったところを攻めてみましたが、もう午前10時を回っていて相当明るいためか、一向に魚たちは飛び出してきてはくれません。 万策尽きた私は、ふとプールの底を狙ってみることを思いつきます。濁りで薄暗い湖底であればひょっとしてまだ釣れるかもしれないと思ったからです。濁りの強いところを選らんでミノーを底まで沈め、チョンチョンと底を跳ねる様にルアーを操作してみました。ところがこれが大当たりし、38cm、37cm、34cm、33cm、32cmのどれも太った見事なイワナが次々とヒットしてきました。何事も諦めずに粘り強くやることが、成功の要因の様です。 ![]() ところで、最近はダム湖や堰堤プールの釣りばかりをやる様になり、使っているミノーも年とともに重くて良く飛ぶものが中心になりつつあります。実際に市販されているミノーも同様で、以前は3gもあれば重い部類に入ったWavy50Sなどは、今ではすっかり軽い部類に入ってしまっているのは皆さんもご存知の通りです。ただ、私には最近の重いシンキングミノーでもまだ軽過ぎ、写真下の様に腹部に鉛の板を貼り付けて6〜7gに調整したものを良く使う様になっています。この方法は山形県のサクラマスの大家であるsakuramasu氏から教えてもらった方法です。 ただし、重い方が良いからと言ってミノー自体を大きくする訳にはいきません。過去の調査でイワナの場合、その体長の1/10(ヤマメは1/8)の長さのルアーが最も良く釣れる(つまり、50cmのイワナは5cmの餌を最も食べやすい)ことが判っています。大きくすると喰いが落ちる可能性が高いのです。加えて、深いところを狙う機会が増えたため、飛距離とともに沈降速度が重要になってきています。大きいルアーは水抵抗も高く、この点でも困ります。
その結果、写真上の様に5cm前後のミノーに鉛板をたっぷりと貼り付けて重くしたものを幾つも持ち歩く様になりました。今回の堰堤プールでは、この重いミノーが底を釣るのに大変役立ったと言う訳です。ただ、これらのミノーは決して動きが良くはありません。むしろ、普通のミノーの様な綺麗なウォブリングは殆ど期待できません。そのため、ロッドワークにより喰わせる要素が高くなってしまい、慣れないと根がかりばかりでサッパリ釣れないと言った結果になり易いですので、ご注意下さい。あくまで、きめ細かなロッドワークでミノーを泳がせなければ釣りになりません。
【5月29日(日)午後】 翌日の午後には、再び新潟のBuuさん・風玉さんと、また別の堰堤プールに繰り出しています。2人は今度はシーカヤックを繰り出し、相当な気合の入れ様です。なんでも、Buuさんは某ダム湖で午前中に47cmの大イワナを仕留めてきたらしく、そのノリでこの堰堤プールに挑んできたようです。しかしながら釣りの神様はとても気まぐれの様で、この日の夕方は16時から18時半まで粘りましたが、3人とも小さなアタリがあるものの、釣果はゼロでした。過去の記録を見ても、5月末ころのこの堰堤の釣果はとても気まぐれで、大釣りとノーバイトを繰り返しています。
この堰堤プールではヤマメが良く釣れるのですが、どうやらヤマメにとってはまだ水温が相当低いらしく、イワナの様にはいかないことと、昨年までの経験で、こういった日は真昼間の太陽の明るい時間帯にライズが良く発生しており、魚はいても夕刻の寒い時間帯にはルアーに反応しなかったのではないかと推測されました。この様に、5月末はまだまだ堰堤プールの釣りには微妙な時期の様ですが、しかしながら、6月ともなると気温も急上昇し始め、やがてどの堰堤プールでも素晴らしい釣果が見られる様に変化するはずです。短い堰堤プールの釣りの季節を、今年も逃さず楽しんでみたいものですね。 【今回使用のタックル】 Wellner8ftTroutRod、シマノSensiLiteMG2500、呉羽SeagerAce1号(6lb)、WeightedQuickMinnow6gワカサギ、WeightedPanish50SP5gワカサギ、TroutTune55S6g赤銀、WeightedRigge56SS6gワカサギ、D-contact50/63Sヤマメ/アユ/赤銀、他 |