前週にまずまずの大物を釣り上げていた私は、今シーズン最後の釣行となるこの4連休は、心にも余裕の状態でした。今年は仕事が忙しく、山形渓遊会の例会も満足にできなかった我々は、偶然ではありますが、最後の連休に再び源流釣行を企画していました。例年、納竿釣行はもう釣果などどうでも良く、寂しさばかりがつのります。のんびりと山歩きを楽しみながら、渓魚たち、そして紅葉の始まりかけた山々に、しばしのお別れを告げる旅となりました。 ![]() 【9月23日(木)】 9月末の週末ともなると、どこの渓流もそれはもう、釣り人で一杯になるのは間違いありません。山形渓遊会でも、最後のチャンスとばかりに、渡邉会長だけは気合十分でした。メンバーのうち3人が金曜に有給をむりやり取得し、思い切って4連休にしてしまいました。土日は人でごった返すだろうと予測して、4日のうちの初日になんとしても入渓したい我が会長さんは、仕事の終わった水曜の夜から現地入りし、23日(木)の夜明けとともに入山する企画を立ててきました。仕事がめちゃくちゃ忙しく、しかもシーズン最後でもう釣果などどうでも良かった私は・・・どうも気が乗りません。
案の定、22日水曜の仕事が終わったのはもう夜の9時。この時点でまだいわき市にいた私は、一度山形市の自宅まで戻って用意をし、現場に到着するのはどう考えても深夜の2時か3時になってしまいそうです。これでは寝不足で会長さんの早い足に付いて行くキツイ山歩きなど到底不可能です。加えて忙しくて山入りの準備もロクに揃ってはいません。予定通りに待ち合わせ場所に向かいましたが、はて?どうするか? 渡邉会長と佐谷名人の2人は夜の明けるAM5時にはごそごそと起き出して来ていた様ですが、私はと言えば、車の中で高イビキ。私だけは1日遅れで入山することに決め込んでしまいました。
今回の釣行場所は、重いザックを担いで5時間以上もの長い登山道を徒歩で向かわなければなりません。現地には山小屋があり、そこで2〜3泊しながらの、本格的な山釣りの旅でした。なんでも、私より1日早く入山した2人は、お昼ころには山小屋に到着し、付近の本流を散々釣りまくった後、2日目の早朝から数本ある沢と本流の魚止めの滝を目指した様です。上の6枚の写真は、いずれも渡邉会長の銀塩カメラで撮影したものをデジタル化したものですが、他とは少々画質の異なるのが判って頂けると思います。2人とも結構な釣果だった様子で、特に会長さんは、某魚止めの滝で40cmジャストの大物を仕留めることに成功していました。
【9月24日(金)】
私はと言えば、初日は車の中で10時ころまで爆睡でした。その後、一旦は山を降りて食料や燃料を買出ししたあと、再び同じ場所に戻り、翌日の山歩きに備えて21時ころには一人で寝てしまいました。よほど仕事で疲れていたのでしょうか、翌朝はそれでも起きたのはもう7時ころ。重いザックを担いで、のんびりと山道を歩き始めます。なにせ初めての道程でしたので迷ってしまう可能性もあり、地図と睨めっこでした。一人で歩く寂しい気持ちとは裏腹に、なぜか秋空は青く高く、ブナの森と付近の山々が妙に輝いていました。
今回の釣行の私の目的は、釣果よりもどちらかと言うと写真撮影でした。そのため、途中で写真を何十枚も撮影しながらあまりにものんびりと歩いたため、通常は5から5時間半の道程を、7時間も掛かってしまいました。山小屋に到着したのはもう午後の3時ころ。それになにやら急激に雲行きが怪しくなってきたこともあり、慌てて山小屋のすぐ下の本流に釣りに降りました。予想通りとは言え、山小屋直下の本流は、やはり相当な釣り人が入っている様です。最初にWavy50Sヤマメにヒットしてきた魚は、写真上中央の小さな小さなイワナ君でした。ただ魚影はそれなりに確認でき、やはりこれだけの山奥まで来る人は少ないようで、しっかりとイワナたちの楽園が残されている様子でした。 ![]() 結局、15時から17時ころまでの2時間だけの単独釣行でしたが、全部で12尾の釣果が見られ、納竿釣行としてはまずまず楽しめました。ただ、ご覧の様にイワナ達はどれも小さく、とても源流の大物は居そうもありません。最後の最後になって、付近が薄暗くなって来た頃、28cmの綺麗なイワナ君(写真下中央)がヒットしてくれ、この魚が今シーズンの最後の渓魚となってくれました。上の魚たちの写真はその時の釣果の一部ですが、源流特有の比較的細かな縦方向のパーマーク様の筋がどの魚にも共通して見られることがお判り頂けると思います。大物こそ釣れませんでしたが、源流育ちのイワナたちは実に綺麗で可愛く、まるで生娘の様に魅力的でした。
そして、なによりも嬉しかったのは、やはり手付かずの源流の美しさでした。写真が目的の私は、たった2時間の釣りの合間にも、実に沢山の渓流の風景をカメラに納めることができました。水はあくまでもクリアで青く、紅葉の始まりかけた山々の輝きは、ここに到達するまでの全ての苦労を忘れさせてくれます。やがて訪れるであろう純白の季節がこれらの風景を封印し、それが次に解き放たれるであろう季節に再びこの地を訪れてみたいという、強い願望に襲われるのでした。
すっかり暗くなってしまったころ山小屋に戻った私は、ようやく渓遊会のメンバーと合流することができました。夜はこれまた楽しい小屋での宴会が待っています。この山小屋は作りがしっかりしており、内部も20人ほど収容できそうな広い作りで、水場もすぐ近くにあり、非常に快適でした。食料さえあれば、これなら何日でも泊り込みで釣りや山歩きを楽しめそうです。私が戻ったころには会長と佐谷名人がこの日の釣果をしっかり調理して待っていてくれました。まずは貴重なビールで乾杯すると、山歩きで疲れた体にアルコールがじっくりと染みわたって行きます。
さて、上写真の料理の数々を見て、ギョっとされた方がおられるかもしれません。実は会長と佐谷名人の2人は、40cmの大物を含む数尾のイワナを某沢の魚止めの滝上部に放流しようとしたらしいのです。しかし、高巻きの途中でアクシデント(水漏れ?)に見舞われ、滝上に到着した時にはイワナたちは残念ながら絶命していたとのこと。仕方なくそのイワナを小屋まで持ち帰り、ありがたくご馳走になることにさせてもらった、と言うことでした。でもま、予期せぬご馳走が嬉しく無いと言えばウソになります。私も便乗してありがたくご相伴に預かりました。んー、それにしても疲れた体にあの骨酒のうまかったこと!
しかし山小屋の宴会もいいものですね。当日は3組8人の登山客がいましたが、皆さんが持ち込んだ食材を、少しづつではありますが他の人たちにお裾分けし合い、皆でなごやかに宴会が進行して行きます。我々もイワナ汁や骨酒を皆さんに振る舞い、随分と感謝された様です。おかげで実に沢山の種類の食べ物とお酒をご馳走になることができ、気が付くと山小屋の食事とは思えないほどの豪華版の食事についつい満腹になってしまい、21時過ぎには強烈な眠気に襲われ寝袋にもぐりこんでいました。
【9月25日(土)】 明けて土曜朝は雨模様でした。翌日も休みのため、本当はもう1日のんびりと釣りを楽しみたかったのですが、夜半に何度か強い雨音で目が覚めたのを思い出しました。小屋下の本流は、昨日とは打って変わって轟々と茶色い水の流れるもの凄い状態になってしまっていました。これでは遡行もままならず、釣りどころではありません。皆で相談した結果、やむなく下山することに・・・。幸いにも下山途中で雨は止み、帰り道は楽勝でしたが、それにしても残念です。某魚止めの滝にはまだ40cmオーバーのイワナが遊弋していたとのこと、後ろ髪を引かれる思いとはこのことでした。
帰り道は荷物も軽く5時間ジャストで駐車場まで帰りつくことができました。行きは7時間、帰りに5時間の、往復12時間もの歩きを要した訳ですが、肝心の釣りはたった2時間だけ。それでも他の釣りには見られない不思議な充実感に包まれ、今年最後の釣行を満足のうちに終えることができました。また始まった半年あまりの長い禁漁の季節ですが、今シーズンの様々な山や峪の思い出を酒の肴に、のんびりと巡る季節をたのしみに待つことに致しましょう。 【今回使用のタックル】 KenCraft SuperTroutSpecial60LT(Telesco.PackRod)、シマノSensiLiteMG2500、呉羽シーガーエース1号(6lb)、Wavy50S/65S/ヤマメ、D-contact50Sヤマメ、他 |