単独釣行レポート

盛期の堰堤プールの釣り(6月14-15日)


6月の半ばを迎えた今、「堰堤プールのルアーフィッシング」が最盛期を迎えています。雪代に洗われ流されてきた源流育ちの大物たちが今、堰堤上のプールに結集しています。釣りブームも下火になって久しい最近は、東北日本海側の最源流部の堰堤プールであれば、どこでも大物が狙える状況となっている様です。トップシーズンの6月半ばの土日に、そんな源流育ちの大物を求めて、ホームグラウンドの堰堤プール3ヶ所を再び巡ってきました。そしてそこには、思いもよらぬ獲物が待ち受けていました。

注:場所の特定を防ぐため、風景画像の一部に大幅な修正を加えるか同イメージの別の写真を使用しています。


【6月14日(土)午後】


土曜の朝は、前日の仕事疲れで寝坊してしまい、せっかくの最盛期の朝をフイにしてしまいました。しかも、前2週間は単身赴任先のいわき市で悶々とした土日を過ごしていたため、その分、この日の午後はいくぶん気合が入っていました。なにが何でも大物を釣り上げないと気が済みそうにない私は、確実に釣れる堰堤をまずは選び、勇んで出かけたのです。最初に入った堰堤は過去に40cmオーバーが何尾か出ている実績のあるプールです。釣りやすくしかもフローターがなければ釣りにならないため、私は好んでこの堰堤プールに立ち寄っています。


釣り始めたのは午後の4時ころでしたが、まずは普通に尺足らずのイワナが2尾連続ヒットしてくれました。そのうち大きなイワナも来るだろうと続けますが、しかし3尾目からは、なぜか25cm以下のヤマメばかりがヒットし始めます。どうやら、今年は漁協が大量にこの水系にヤマメを放流した様です。イワナも変わらずにいるのでしょうが、ヤマメが先に喰い付いてくるため、本命であるはずのイワナがちっとも釣れてくれません。最初の1時間で釣れたのは、尺足らずのイワナが2尾に、小さめのヤマメが4尾と、気合の入っていた割りには欲求不満が溜まります。


これはヤマメばかりかな、と諦め始めた午後5時ころでした。堰堤のブロックのすぐ脇のブッシュすれすれに「ザウルスSuperSinkingミノー5cm6.5gアユ」を投入しました。カウントダウンを5〜6秒も取り、恐らく2m以上は沈んだであろうころを見計らってやおらトゥィッチングを入れると、すかさずラインがグンと引き込まれます。反射的に合わせると、一瞬、ロッドがピタリと動きません。そしてほんの一呼吸おいた後でした。強烈な鋭い引きがロッドに伝わりラインが唸り始めました。超大物の感触です。しかし強い引きは最初の20秒ほどで、あっさりと目の前に現れたのは、なんと、41cmもある魚体の非常に綺麗なヤマメでした。


実のところ、この魚がヤマメかサクラマスかは判別が付いていません。パーマークが残ってはいますが、角度によっては銀化した様にも見えます。ただ、ウロコがしっかりしていて、サクラマスの様にボロボロと剥がれ落ちることはありませんでした。恐らく、つい最近まで源流部で大きく育ち、雪代に流されてこの堰堤に入った後、サクラマス化し始めていた固体ではないかと思われました。ちなみに、私のヤマメ(サクラマスでは無く)のこれまでの記録は39cmであり、この魚がヤマメだとすれば、自己記録を更新した事になります。

オオバミゾホオズキ ユキザサ タニウツギ

一通り写真を撮影した後、気が付くとあたりはもうすっかり薄暗くなっていて、堰堤プールのあちこちで盛んにライズが始まっていました。先ほどまで頻繁にルアーを投げていたにも関わらず、ごくたまにしかヒットはしませんでした。なのに縦横200m以上もありそうな巨大なプールのあちこちで、同時に数十個ものライズが頻繁に見られるのです。正にライズの嵐でした。こんなに沢山の魚たちがいたとは、全く驚きでした。しかし、こういった場合にも、ルアーでの独特の釣り方があるものです。いわゆる「ライズを取る」釣り方です。大物は狙えませんが、ここは数釣りをして楽しむことに決め込みました。


上の写真は18時ころから19時前までの1時間弱に釣れた渓魚たちです。1尾だけイワナが混じりましたが、殆どは20〜25cmのヤマメでした。普通、ライズしている魚は食欲が非常に旺盛で、必ずしも浮遊しているカゲロウだけしか食べないとは限りません。目の前に美味しそうな弱った小魚がいれば、カゲロウよりも遥かにカロリーの高いその餌を、食べないはずはないのです。そして、釣り方は簡単です。小さめのシンキングもしくはサスペンドミノーを用意し、いつでもキャストできる準備をしてライズを待ちます。


ミノーの届きそうな範囲にライズが起きたら、その1mほど向こうにすかさずミノーを投入し、軽くトゥィッチを入れてやると、いとも簡単にライズしていた魚がヒットしてくるものです。ただ、この「ライズを取る」釣り方は、決して大物は望めません。大物は大きな餌を食べます。もともとライズしている様な魚は、小さなカゲロウなどを食べている小魚なのです。フライフィッシングのイブニングライズで、大釣りをしたと言う話は良く聞きますが、尺を遥かに超える様な大物を釣り上げたと言う話を殆ど聞かないのは、こういった理由によります。

ミヤマガラシ ノウゴウイチゴの果実 ホウチャクソウ

【6月15日(日)午前】

土曜に大物釣りと数釣りを同時にやってのけた私は、翌日曜は既に余裕の表情でした。もう6月半ばともなれば、夜明け前の薄暗い時間帯から釣り始めることも多いのですが、なぜかのんびりと7時ころからの釣り始めです。2つ目のこの堰堤も私の大好きなポイントで、私自身はそれほどの大物の記録もないのですが、友人が40cmオーバーの束釣りを経験していたりする実績のある釣り場です。このプールの水温はいつも非常に冷たいため、朝っぱらからビールをプールの水に浸けて冷やしながらの極楽フィッシングでした。


7時頃、到着と同時にまずは2投目で33cmのまずまずのイワナ(写真上右)が釣れてくれ、これはイケるかなと喜んだのですが、残念ながらあとが続きません。投げども投げども、何の反応も無くなってしまいました。まだ1尾しか釣っていないのに、既に時合いは終わってしまったのかとガッカリしましたが、ま、釣果はそれほど気にもなりません。のんびりと付近の野草の花の写真を撮影しながら、余裕の時間を過ごします。1時間以上も過ぎたころでしょうか、日が差して暖かくなってきたため、ダメ元で再度ルアーを投げると今度は尺足らずのイワナが2尾、連続してヒットしてきました。


どうやら早朝は水温が低すぎて、活性が低かった様子。釣れたのは太陽が差し込んだ一瞬だったため、次に太陽が顔を覗かせるまで、更に付近の野草花を探索していると、やおら2人の釣り人が釣り場にやってきました。せっかく釣り場を落ち着かせているのにこれはまずいなぁ、と思い、写真撮影もそこそこに2人の目の前でSuperSinking5cmアユを流れ込み付近に遠投すると、ユラユラとミノーを追いかけてきた魚が、ほんの足元でミノーをパクリとやってくれました。


釣れた瞬間は小さく思えたそのイワナは、なんと38cm。2人の釣り人が目をパチクリさせながら驚いているのが遠目で判ります。こりゃまずいなぁ・・・まぁ大物が居ることがバレてしまったのは仕方有りません。お二人ともフライマンで普段はサクラマスなどをダブルハンドロッドで狙っているとのこと。釣り方をお教えして、仲良く釣る事にしました。しかしやはりフライでは深層を狙うのは難しいらしく、お二人には残念ながらヒットは無かった様子。一方の私はもう一尾の34cmを追加して、11時ころ、早々と退散しました。お二人は夕方まで頑張るとのこと、その後、釣果の方は如何だったのでしょうか。

ミヤマキンポウゲ サンカヨウの果実 オトギリソウ

【6月15日(日)午後】

午後からは、今度は大きく移動して3つ目の堰堤に入りました。前日から結構な釣果をみていた私はもうすっかり釣りそのものはどうでも良くなっており、移動の途中にあれこれ寄り道をしてばかり。お陰で現場に到着したのは、既に薄暗くなった夕方の5時近くでした。この釣り場も過去に40cmオーバーを何尾か釣り上げている実績十分の堰堤プールですが、玉にキズはとても釣り人が多いことでした。この日も何人かの釣り人が来ているだろうと半ば諦め気味で釣り場に到着すると、なぜか誰もいません。


早速、インレットから手始めにミノーを投げ続けますが、全く反応がありません。徐々に下流部に向かって釣り進むと、インレットから100mほど入ったところで15cmほどのチビイワナが2尾。これじゃ釣り人が誰もいない訳です。しかし大物はどこかに間違いなく泳いでいるハズ。ライズがあれば大よその居場所が判明するのですが、この日はライズ無し。しかしそういえば、この堰堤は水位が頻繁に上下することを思い出しました。

プールの水位が下がるとインレットの移動にあわせてイワナ達も下流側へと移動するのですが、次に水位が上がっても、透明度が低いまま、或いは活性が低いままであれば、イワナ達はその場を動かず付近に留まっている様なのです。透明度が高く、活性が上がらないと、イワナ達は餌を求めて大きくは移動しないからです。そのため、水位が一番下がった時のインレット付近に魚たちが集められたままとなり、水位の上がった現在のインレットでは何も釣れないのではないのかと考えられました。


そこで、水位が最も下がった時にインレットになる辺りまで一気に移動し、底を狙ってみることにしました。そして、この推測が見事に的中し、狙った通りに34cmと31cmのイワナをゲット。他にも2回のアタリがありましたが、大きなスプーンでの底狙いのためかバラシてしまいました。ちなみにこのスプーンは、某量販店で1個280円で買った超安物。こんなルアーでも十分に釣れるものですね。もう少し早くこの釣り場に到着していれば、大物の可能性も十分にあったのではないかと思われましたが、残念ながら19時を過ぎた時点でタイムアウトとなってしまいました。

ミツバツチグリ ミズタビラコ コナスビ

さて、この様にして最盛期の堰堤プールは、今、正に釣れ盛っています。この状況は梅雨が明け渇水が始まるころまでは続きます。しかも、今後の梅雨による豪雨の発生は、魚たちを堰堤プールへと追いやり、更に大物の可能性を高めてくれることでしょう。山形の梅雨明けの平年値は7月23日。あと1ヶ月と少しの間ですが、まだまだ堰堤プールのルアーフィッシングは楽しめそうですね。

【今回使用のタックル】

Wellner8ftTroutRod、シマノBioMasterXT2000、呉羽シーガーエース1.2号(8lb)、ZaurusSuperSinkingMinnow50アユ/ハヤ、Wavy50Sヤマメ、MM-Minnow48Sアユ/ワカサギ、KenCraftSkagitSpoon8g緑/銀、他