今年もまた、堰堤プールの釣りの最盛期がやって来た様です。東北の日本海側の各河川では、豊富な濁った雪代が、源流の大物たちを下流へと追いやり、この時期、最上流部にある堰堤プールに渓魚たちを集めてくれます。そして、5月中旬から7月中旬ころまでの2ヶ月ほどの間は、1年で最も堰堤プールのルアーフィッシングの楽しい時期となります。5月の中旬を過ぎたこの日、ホームグランドの4箇所ほどの堰堤プールの様子を確かめに出かけました。そして、そこには「帰って来た大イワナたち」の楽園がありました。 ![]() 【5月24日(土)】 前週までダム湖の釣りに明け暮れていた私は、そろそろ堰堤にイワナたちが戻ってきているのではないかと、内心、気がかりで仕方ありませんでした。しかし、今年は意外にも残雪が多く、私のホームグランドの堰堤プールへの林道も、1箇所だけ雪崩れた残雪のため通行止めのままでした。この日最初に訪れた堰堤も、そろそろいいだろうと思って出かけたものの、途中で残雪に阻まれ、やむなくフローターを担いでの1kmほどの汗だくの徒歩を強いられてしまいました。あたりの季節はもう、すっかり初夏の様相です。
しかし水温はこの時期、まだまだ低く、ネオプレンのウェーダーは必須です。下半身の厚着で汗だくで歩いた甲斐があってか、朝8時ころから釣り始めてすぐに、尺足らずの元気なイワナ君がWavy50Sアユにヒットしてくれ、まずは一安心です。ここはダム湖と変わらない全長1km以上もある広大な堰堤プールですが、そこは通いなれたものの強みです。ポイントは数箇所に限られており、短時間に魚の集まっている場所だけを狙い撃ちです。まだ時期が早いのか、下流部のポイントでは尺足らずばかりでしたが、インレットに到着するころまでには、すでに片手を超える釣果がありました。
インレットから200mほど手前に大きなワンドがあり、いつも大物が回遊しているのですが、ここでは35〜6cmのまずまずのサイズがヒットしたものの、なぜかすぐ足元でライン切れ。その少し上流の木の下からも35cm前後のイワナがヒットしてきましたが、今度はなぜか沖合いであっさりとバレてしまいました。どうもこの日はツイていません。尺足らずのイワナばかりでなんとなく欲求不満ですが、まぁ、それでも1年振りのホーム堰堤でプカプカやっていると、逃げたイワナ達が愛らしくも思えてくるものです。
そして程なくしてインレットに到着してしまった私は、フローターを少し下流に置き去りにして岸から流れ込みを釣ってみることにしました。この日は透明度が比較的高く、こういった日は餌の状態に合わせて煙幕理論には合わないポイントにも魚たちが散らばっていることがあるものです。インレットにも大物が入っている可能性が高く、浅いポイントのため、フローターでは返って場荒れさせてしまって釣れないからです。案の定、遠くから眺めてみるとゆうに40cmはあろうかと思われる魚が1尾、インレットの直下に遊弋しているのが見えました。こいつはなんとしても釣り上げなければなりません。 ![]() まずは慎重に遠くから、MMミノー58Sアユを遠投してみます。チラっとミノーを追い掛けたものの、大物はすぐに知らんぷりして元のポイントに戻ってしまいます。こともあろうに、手前でまたまた尺足らずのイワナがヒットしてしまい、ガックリです。仕方なくタバコを1本吸いながら場所を休ませ、今度はお馴染みのWavy50Sヤマメに取り替え、思いっきり強いトゥィッチングで誘ってみます。ミノーが左右に50cmほども大きくジグザグ運動をすると、見かねたその大物は、あっさりとそれを咥えてしまいました。44cmのその獲物は、まるで丸太の様に丸々と太った、ダム湖のそれとは明らかに異なる斑点の小さな源流育ちのイワナでした。
その後、フローターを置き去りにして、このインレットから源流部へと少しだけ釣り遡ってみることにしました。ここは以前は深くて流れが強く、フローターを近寄せることすら不可能でしたが、最近は砂で随分と埋まり、水量の少ない時だけですが、歩いてなんとか渓流へと移動できるようになっていたのです。インレットから暫くは7〜8寸のイワナがトレースしてくるのが確認できましたが、ポイントを10箇所ほど釣りあがると、やがて釣り人のものと思われる足跡が砂地に現れ始め、イワナの魚影は全く見られなくなってしまいました。この渓流では、すでに源流釣りの季節が始まっている様でした。
この日の午後からは、ほどない距離にあるもう一つの堰堤プール(写真下)へと移動しました。午前中にそこそこの大物を釣り上げてしまった私は、もう既に戦意を消失していて、のんびりとたった一人で竿を出せればそれで満足です。このプールはこれまであまり良い実績が無かったのですが、それでも構いません。このプールは最源流部の堰堤では無く、見逃されやすくて、殆ど人がやってこないのです。山菜採りも兼ねていて、ビールを呑みにフローターを浮かべた様なものでした。
お目当ての山菜は、タラの芽もコゴミも百合山葵も、すっかり伸び切っていてまるで収穫できませんでしたが、それでもイワナたちは元気にお相手をしてくれました。ここでもインレットから200mほど下流で尺1寸程度のまずまずのイワナがヒットしたものの、やはりラインの高切れで逃してしまいました。後ほど判ったのですが、なんと、ロッドのトップガイドが割れていて、どうやらラインに傷を作る原因となっていた様子。翌日も結構な大物をライン切れで逃しているのですが、やはりタックルの小まめな点検を怠ってはいけない様です。
そして透明度の高い堰堤プールでは、やはりインレット付近に魚たちが餌を求めて集まっている様でした。濁っていればこんなところでは何も釣れないはずなのですが、結構な流れの強い場所にも関わらず、25cm〜30cmの比較的小型のイワナが、底石や脇の藪の下から次々と飛び出してきます。結局、この日は朝から夕方まで6時間程度釣って全部で12尾の釣果と、久し振りの堰堤プールの釣りを満喫することができました。
【5月25日(日)】
翌朝は車でそのまま別の地域へ移動し、3番目の堰堤を目指しました。移動に時間が取られたため、到着はもうすっかり日の高くなった午前9時ころ。これでは何も釣れまいと半ば諦め気味でしたが、日の高くなった堰堤プールでは「底を狙え」のセオリーどおりに、出来るだけ重いシンキングミノーをチョイスし、底ギリギリを根掛かり覚悟でトレースします。しかし、本当に根掛かりの連発で、なんとミノーを3個もロストさせられてしまいました。それでもルアーを頻繁に取り替え粘っていると、最後に来たのは、写真下のWavy50Sレッドヘッド。この明るさで、なぜこんなミノーにヒットしてきたのか、未だに良く判りません。
結局この堰堤では、11時ころまで粘ったものの、尺足らずの同サイズのイワナが2尾だけ。しかし、喰いついてはくれなかったものの、結構な数のイワナのトレースが見られ、ここでも魚たちがしっかりと堰堤プールに戻って来ていることが判りました。今回、この堰堤での最大サイズと思われる35cm前後のイワナのヒットは、前日と同じく、ラインの高切れで惜しくもゲットできず。他に40cm近いイワナのトレースも見られましたが、結局は明るすぎて喰いつかなかったのでしょう、上記の2尾の釣果だけで午前中は終わってしまいました。
そしてこの日の午後も再び大きく移動して、4つ目の堰堤を狙いました。この堰堤も大河川の最終堰堤に当たり、例年、40cmオーバーが良く出ている釣り場です。ここは道路から近いため比較的釣り易いのが気に入っていて、毎年良く訪れます。しかし昨年あたりから頻繁に重機が入っていて、今年もインレットの形状が大幅に変わってしまっていました。昨年までのインレットは、ただの水溜りになっていて、水の流れが全く無く魚の気配もありません。そのためか、ここも透明度が非常に高かったにも関わらず、インレットでも全くのノーバイトでした。
ただこのプールでは、いつも煙幕理論に沿ったポイントが良く形成されていて、プールの最奥にあるそのポイントでは何尾かのイワナのトレースが見られました。しかし、夕方5時ころ、日が山陰に落ちると同時にピタリと反応が無くなってしまい、このポイントで釣り始めたのが遅かったこともあり、ここでは尺足らずの獲物が3尾だけに留まってしまいました。もう少し早い時間であれば、尺前後の数釣りが楽しめたハズなのですが、まぁ、これは次回の楽しみに取っておくことに致しましょう。
さて、今年も東北の豪雪地帯の堰堤プールには、源流で育った沢山のイワナたちが集結しています。雪代が消失し渇水の始まる7月初までのあと1ヶ月半ほどの間が、この釣りの最盛期となります。上記の他にも同様に釣れるであろう堰堤プールは県内だけでも20箇所以上もあり、当地のルアーマンたちは、それぞれお気に入りの堰堤プールにこの時期、向かいます。季節は初夏から盛夏へと移り行き、イワナたちも今、ぐんぐんと成長を続けています。 【今回使用のタックル】 Wellner8ftTroutRod、シマノBioMasterXT2000、呉羽シーガーエース1号(6lb)、MM-Minow58Sアユ、Wavy50Sヤマメ・レッドヘッド、RexSuperSinkigアユ・ハヤ、TideRise70Sアユ、他 |