2003年の渓流釣りも無事に幕を開け、各地から様々な釣りの便りが届きはじめています。今回は、新潟市のBuuさんから、彼の自己記録更新となった超大物の便りをお届け致します。ニジマスではありますが、自然の河川でこのサイズが釣れることは滅多に無く、とても貴重な記録と言えます。完全に野生化した58cmのニジマスの迫力をお楽しみ下さい。(超大物や珍しい釣果につきましては「特別寄稿」として、当ホームページに随時掲載させて頂きます。) 奴は、深淵の底から姿を現わした。 計画変更、予定は未定… 先週(3月9日)は風と雨で断念。後ろ髪を引かれる思いで何度窓の外を見たことか…。 今日は朝からスカッと晴!、計画どおりにあのポイントへ。止水の岩魚狙いである。2日にも行ったのだが雪のため道が途中でいき止まり。もうそろそろ雪も溶け、岸辺までは行けるだろう。その後は根性で4キロの歩きだ!。 AM7:30到着。な〜んて行ったら前回とほぼ同じ所でストップ。だが、轍は上まで続いている。あれは4駆だな。私も4駆、行かれない事はない。「ガー」っと登って行ったら「轍がない!?」。突っ込んで、無念のスタック、亀である。なんとか脱出。さっさと山を降りてA川の別ポイントへ移動。 AM8:30、前回とはうって変わって減水している。ダム放水がまだなのだろう。風もなく、状況は悪くない。しかし、反応がない。ときおり3cm程のチビのライズが見られるが、あんなのが堂々と遊んでいられるのなら、大物はいないんじゃないのかな…。止めよ。他の川へ行こう。 途中、チームB「Yさん」の携帯へTel、B橋で合流することにした。C橋から川の状況をみると、水量・水質共に申し分なし。 AM9:30、先に着いていた「Yさん」は未だ支度をしていない。私はロッドをひっつかんでさっさと川へ…。堰堤落ち込みのブロック下に餌釣師が一人いたが、 構わず下流部でキャスト開始。日が陰るとまだ肌寒い。餌釣師もいつのまにか帰ってしまった。 餌釣師の居たポイントへ移動。ここじゃ上流を向いている魚から丸見えじゃないか。なんて言っているうち、ミノーをロスト。ひょうきんな顔がお気に入りの「ラパラCD−5、シルバー」だった。「Yさん」は私の下流部でフライを始めた。ここはあきまへん、「Yさん」の下流部へ移動。 堰堤落ち込みから20m 程下流、流れが弱まり、深い淵になっている所へ。 川幅も7m程で流れも弱いため3グラムの赤いスプーンをセット。 この時期、岩魚は底にいると信じてダウンクロスにキャスト。底まで沈め、ごく小さなアクションを加えながらリトリーブした。 奴は、深淵の底から姿を現わした。 2〜3投して気が付いた。このスプーンは小出のサトウオリジナルのアンサー、アップクロスで使うのが良いのだ。で、キャスト開始、スプーンが軽い為下流からの風でラインがはらむ。 2投目、1m程上流へキャスト。はらんだラインが突然まっすぐに!。瞬間的に合わせる!。 「げっ、根掛かりっ?」、ぐーっと下流に流れる、「げっ、流木?、最悪!おもいっきり合わせちゃった!」 と、ぐう〜んぐう〜んと頭をふっている。魚か?。銀色の塊が反転した。 「でっけー、やばい!」50cm以上はある。ロッドは5/6のエキストラライト、かなり不安だ。ラインは0.8のPE、めったに切れやしないだろう。 フックもオリジナルのシングルだが、スーパーカットのちぬ針、大丈夫だろう。問題は6LBリーダーの結束部だ、それと、浅いフッキングによるバラシ…。 すると、突然ジャンプ!。「ドッボーン」って言ったよ〜、2度目のジャンプ!。ラインがもつか?。 「でっかい、やばいよ〜」と「Yさん」が叫ぶ。 「わかってますがな…でも…」、テンションを掛けつつ、なんとか凌ぐ。走り出した!。ジーっとラインが出て行くがどうしようも出来ない、ロッドを支えるだけで目いっぱいだ。 下流から上流、上流から下流へと左右に走る、凄まじいパワーだ。 テンションを弱めたらおしまいだ。ラインを巻いては出され、巻いては出され…。多少は寄って来たかな?と思うとまた走られる。グリップは上向き、ロッドチップは下向き、曲がったロッドを支えている右手の握力がなくなって来た、こんなの初めてだ。 どのくらいの時間が過ぎたのだろうか?。月並みなセリフだが本当にそう思った。ようやく寄って来た、ヤツもバテたか…?。 D川のモビーディックに敬礼 動きがかなり鈍くなってきたようだ。しかし、人の姿を見たのか、またラインを出されてしまう。 何度かのやり取りのすえ、ようやく浅場まで寄せることが出来た。さて、ネットである。尺以下の小物用なので、入りきりません。右手にロッド、左手にネット。どうしようかと、しばしボーゼン。 ネットを持ったまま、左手でラインを掴み、そのまま岸へズリ上げた。 計測してみると、自己最高記録である58cmの立派な虹鱒。尾鰭がちょっぴり欠けているのと、尾の付け根に鱗のはがれた傷が少々。 しかしながら、ここまで大きくなるには、どんな修羅場を潜り抜けてきたのか…。 堂々とした姿に敬意を払い、撮影を済ませてリリース。 昼下がりの静寂を破ったものは…!? LOW TENTION のだらけた午後 まさに怪物と呼べるほどの「D川のモビーディック」との戦いを終え、ポイントを休ませる為にも、ティーブレークをとる事にした。 その後、チームB の「Tちゃん」「J君」が合流。ティータイムを終え、さて、キャスト開始。が、しかし、どうも、テンションが上がらない。大物を釣り上げた満足感か?、握力の弱った右手のせいか…?。 「上流へ移動しよう!」。大物の実績のあるA橋下のトロ場へ。「Tちゃん」とおしゃべりしながらの、気合の入らないキャストはすぐに飽きが来てしまう。1時間程でまたまた移動。二人揃うと、まるで集中力のない釣りになるのだ。それはそれで、楽しい釣行なのだけれども…。 ポイントが変ってもまるでやる気なし。「帰ろか?」となり、下流部のポイント2箇所の様子を見て帰りましょと決定。 堰堤下では反応なし、ゆるい流れを見ながら「ここは、夏場ならいいのかもね〜」なんて、で、最終ポイントへ。あいかわらず、テンションが上がらず「おしゃべりフィッシング」。 『ここじゃ良い思いした事ないんだよねー』 「放流時のちび山女魚ばっかしだもなー」 『去年の最終日はウグイだったよねー』 「あの日はウグイばっかだったもなー」 『早くなんか釣ってよ、寒いよー』 「魚なんかいねーよー…。」 油断大敵!。備えあれば…。 「ん?、なんじゃこりゃ…???」「わちゃっ!来たっ!」 そうです、ぺちゃくちゃおしゃべりしながらも、私は、しっかり遠投し、淵の深場の底狙いをしていたのです。 そして、午後になり、西日が当たる淵では金ベースの地味な色がよかろうと、飛びの良い「スミス製ヘブン5グラム‐15GPF」チョイス。 で、狙ったポイントは勢いよく水が出ている発電所の放水口の5m程下流、放水は岩盤の上をながれている。その流心脇の対岸は深い淵になっており、流れが淀んでいる。以前も尺クラスの虹鱒が何度かヒットしたポイントである。 そこへアップクロスぎみに数キャスト。くすんだ金色っぽい垂木のような物が淵の底から浮かんで来た。 とたんに、強いテンション!。放水に乗って凄いスピードで下流に流される!。足場は水面から1.5mほど高くなっており、上からの見下ろしで、映画をみているような錯覚に陥る。 『うわわわっ、ヤバイよ、』こいつもでかい!。ラインが出て行く、1m下のコンクリートの足場に飛び降りる!。正面から下流部は流れが強く早い!。ハンドルを回してもリールが逆転する。 なんとか寄せられた。 「あれっ、ウグイかよっ?」体色が金色っぽい。「なに言ってんの!虹色のラインが入ってんじゃん」 寄っては来たが、流れが強く、手元までなかなかこない。ネットにも収まる大きさではない。 またまた、ネットを持ったまま左手でラインをたぐり、足場の上へズリあげる。48cm、ブナ色がかったブラウントラウトのような虹鱒だ。傷ひとつない、でかい鰭ピン。 写真に納め、リリース。今日はGREATな1日であった。 <2003年3月16日 : Buu> 【使用タックル】 ロッド/ ダイワ シルバークリーク 536TXULFX−V、リール/ダイワ エンブレムXC−1500、ライン/ ゴーセンアーチPEソルトウォーターゲーム12LB(0.8号)、ルアー/サトウオリジナル アンサースプーン3g K−10(シルバーベース)、スミス ヘブン5g 15GPF |