2003年の渓流釣りが、無事に解禁を迎えました。例年、解禁当初は「堰堤プールのルアーフィッシング」で楽しんでいます。今年の解禁日は土曜と重なったため、例年よりも人出も多く予想外に手こずらされましたが、それでもしっかりとシーズンの始まりを楽しんでくることができました。寒河江地区の解禁日の様子と、この時期の寒河江C&R区間でのルアーフィッシングの楽しみ方なども含め、解禁のレポートをお届けします。(写真下は、ヤマメルアー4cm赤にヒットしたイワナ38cm) 解禁日は毎年、幾つかの同じ堰堤を釣って回ることにしているため、同じ一つの堰堤を同じアングルで5年前から撮影し続けています。昨年の解禁レポートでもお届けしましたが、今回も残雪の様子をこの写真を使ってご覧頂きましょう。昨年はそれほど残雪は多くはなかったのですが、今年は昨年より更に少なく、2・3年前と比べると半分以下になっていました。ただ、多い少ないとは言っても、それほど極端に差のあるものではなく、一度河原に下りると場所を選ばないと這い上がれないほどの残雪ですので、注意をお願いします。 同じ堰堤での残雪量の比較。左から1999年、2000年、2001年、2002年、2003年 今年の山形県の渓流釣り解禁日3月1日は、何年ぶりかで土曜と重なりました。この日はまずまずの天候で、気温もそれほど低くもなく、釣りにはまずまずの日和でした。この時期は水温が低いため、どうせ朝早くからは釣れないだろうと、いつもの様にのんびりと自宅を出発したのですが、しかし、最近は週休2日制が当たり前のせいか、現場に到着した10時ころには、なんとまぁ、残雪の上は足跡だらけ。こんな解禁日は久し振り。やはり皆さん考えておられることは同じ様でした。
いつもの堰堤プールで早速ロッドを出しましたが、すぐにご覧のような餌釣りのおじさんが脇からニョキっと竿を出す始末(写真下左)。おまけになにやら頭上からは人の話し声が聞こえます。あとで判ったのですが、地元のプロの動物写真家(写真下中央)が、無線で仲間と話しながらバードウォッチングをしていたのでした。もちろん堰堤付近には既に釣り人の足跡が幾つも有り、ルアーを投げども、さっぱり反応がありません。それでも数投目に小さなイワナのトレースが見られ、魚たちは今年も健在なことが判ったため、少し時間をずらしてから釣り直すことにしました。どうせ釣れないだろうと別の堰堤にのんびり移動。2つ目の堰堤の下のプールで、ようやく今年の初物の小さなイワナ(写真下右)をヒットさせることができました。 サイズは25cm程度と小ぶりですが、残雪の上で元気に跳ねるイワナ君の姿を見ていると、今年も無事に解禁を向かえ、そしてしっかりとここには春が近づいてきているのだという実感が湧いてくるのでした。その後、一通りあちこちを散策し写真撮影などをし、やや日の傾き始めたもう午後2時近くでした。最初に訪れた堰堤に再び舞い戻り、今度は人気のない堰堤プールに再挑戦です。さきほどは緑のKルアーやナチュラルカラーのミノーを散々投げ続けていたため、思い切って全く毛色の違うルアーをチョイスすることにしました。 この時期には滅多に使わない、赤色のヤマメルアー4cmをタックルボックスから取り出し、少し離れたところから遠投します。この選択が効を奏したのか、ゆっくりとゆっくりと底付近をトゥィッチングさせると、2投目で竿先にツンという軽いアタリ。即座に合わせると、やがて写真上の見事なイワナが足元に跳ねるのが見えてきました。残雪の上で写真を撮影していると、なにやら上の方からもカメラのシャッターを切る様な音が聞こえてきます。仰ぎ見ると、さきほどのバードウォッチャーが、私の方にカメラらしきものを向けていて、しっかりと釣り上げる瞬間を見られてしまった様です。なんともはや、休日と解禁日が重なると、色んなことが起きるものです。 その後は気持ちがもう十分に満たされてしまったため、堰堤の釣りは切り上げて、いつもおなじみの寒河江C&R区間でのんびりと楽しむことにしました。それにこの時期は3時を過ぎるともうほとんど堰堤では釣れなくなってしまいます。C&Rのニジマス君相手なら、夕刻までたっぷりと楽しむことができるからです。しかしどうでしょう、いつもの朝日山の家の前(写真下左)に着いてみると、想像以上の人だかりに驚かされてしまいました。ここでも土曜解禁と言うことで、遠方からのフライフィッシャーが金曜から泊り込みで集まって来ている様でした。
ところで、この時期の寒河江C&Rでニジマスを釣るのは、意外にも難しいものがあります。普通にミノーやスプーンを引いてきても、魚の姿が見えているのに、なかなか口を使ってくれないのです。水温が非常に低いため魚の動きがとても鈍く、早く泳ぐルアーを追いかけてまで口にする元気がないのでしょうか。でも、ご安心下さい。この時期ならではのC&Rでの釣り方があるのです。この方法を公開するとC&R区間に通い詰めているフライマンからクレームが来てしまいそうで少し心配なのですが、絶対にフライマンの邪魔をしないと言う約束で、公開することに致しましょう。 さて、この釣り方はそれ自体は非常に簡単なのですが、釣れるには有る程度の条件が必要です。まず第一に、フライマンが下流にいない事、これが一番大事です。流し釣りの一種ですので、下流部をクロスする様にラインを出す釣り人がいると、お祭り必須なのです。第二の条件は、ある程度の濁りが入っていることが必要なことです。透明度が非常に高い状況下では、何も釣れません。3月初はまだ透明度が高いため、夕方の3時以降でないと難しいかもしれません。しかし3月の下旬ともなると適度に雪代が入り始めるため、真昼間でも簡単に釣れる様になります。 釣り方自体は非常に単純です。まず、ナチュラルカラーの4〜5cm程度のシンキングミノーを用意します。私はこの日、MMミノー48S鮎を使用しました。C&R区間では魚を傷めないように必ず腹部のフックを取り外して下さい(写真下右)。また、トリプルフックのカエシは、ペンチなどで全て潰してバーブレスにして下さい。 (【注】 現在、寒河江C&R区間内でのトリプルフックの使用は禁止されています。ミノーについても、バーブレス・シングルフックに取り替えた上で釣りをお楽しみ下さい。[2003年5月1日] ) ニジマスは、大きなプールの流れ込みの、波が消えかけるあたりに沢山集まっています。朝日山の家の前であれば、ちょうど水路の水が落ちている付近です。伝承館前であれば、広いプールの中央に大きな石が転がっている辺りからその下流部20m程度の範囲になります。そしてそのポイントの上流20〜30mに立ち込み、魚の真上にミノーを着水させて下さい。そしてここからが肝心なのですが、決してリールを巻いてはいけません。そのままじっと30秒以上は待つのです。トゥィッチングもしてはいけません。ただただじっとアタリが出るのを棒立ちで待つだけなのです。 ミノーは中層をゆらゆらと勝手にウォブリングしながら泳いでいますが、近くにいるニジマスがゆっくりと近づいてきて、やがて我慢できずにパクリと咥えます。ミノーを激しく動かすと、低温で動きの鈍いニジマスにはなかなか喰い付く事ができないのかも知れません。4月以降に水温が上がってくると、逆にトゥィッチングを入れゆっくりと引いてこないと、喰い付かなくなってくる様です。さらにこの方法は、水温が有る程度高くなるとまるで釣れなくなってしまいます。
それから、上流に立ち込むには流れがきつくて大変な場合が多いものです。その時は、ミノーのアイをほんの少し沖側へ曲げてやることで、ルアーを真っ直ぐ下流方向ではなく、少し沖側を泳ぐ様に調節することが可能です。アイは心持ちほんの少し曲げるだけでOKです。目に見えるほど曲げ過ぎると、水中でくるくると回りだし、全く釣りになりません。この操作は慣れるまでは難しいかもしれません。初めての人は曲げ過ぎてミノーを台無ししてしまう恐れがありますので、十分注意して下さい。そして、必ず足元のゆるい流れの部分でミノーの泳ぎを確かめてから釣りを開始することです。 さて、今年もこうやって無事、解禁を迎えることができました。ご覧の様にこの時期の山々は深い残雪に覆われ、まだまだ春は遠い様にも見えます。しかし、渓畔のそこかしこには、確実に春の足音が近づいている様です。釣り場の斜面をゆっくり登っているとき、ふと目の前の土手に目をやると、半ば膨らんだ柳の芽や、先端に小さな小さな芽を付けたタラの木が、残雪の下からたくましく伸びているのが見つかりました。真冬の深い雪の中でも、彼らはじっと耐えながら来る春の準備をしていたのです。春はもうすぐそこまで来ています。
【今回使用のタックル】 Wellner8ftTroutRod、シマノBioMasterXT2000、呉羽シーガーエース1号(6lb)、ヤマメルアー4cm赤、Kルアー5cm緑、MMminow48Sハヤ改、他 |