ミニオフレポート

帰って来た大イワナ(イワナ38cm・6月15日-7月7日)


先にレポートした通り、今年の山形県の堰堤プールはどこもサッパリ釣れませんでした。昨年の大渇水でことごとく堰堤プールが干上がってしまい、イワナ達が上流へ遡上してしまったのが原因です。しかし早期にはさっぱり魚影の見られなかった堰堤プールでも、5月の激しい雪代と6月の梅雨の豪雨によって、源流に生息していたイワナ達が下流へ流され、徐々にプールに集まり始めます。6月の中旬に入り、そんなイワナ達が各地の堰堤プールで釣れ始めました。今回は、6月末に行った神戸の黒瀬さんとのミニオフの様子と合わせてお伝えします。

注:場所の特定を防ぐため、風景画像の一部に大幅な修正を加えるか同イメージの別の写真を使用しています。



【6月16日(日) 堰堤#1】

4月から5月にかけて、今年の堰堤プールはさっぱりでした。ごく一部の堰堤プールを除き、昨夏の大渇水時にプールが干上がってしまい、多くの魚達が上流で釣られてしまったからではないかと考えています。しかし、渓魚たちは非常に用心深く、全てのイワナが釣り切られてしまった訳ではなさそうです。源流部に生息していたイワナ達が、少ないながらも春を迎えて大きく育ち、雪代に流されて下流部へと移動してくる様なのです。

この日出かけた堰堤も、5月の12日に試し釣りに行っています。その時は魚影すら全くなく、何も釣れないまま仕方なく別の渓流でお茶を濁したものです。まだこの時には誰にも釣れてはいなかったらしく、ポイントまでの斜面の小道には、大型の雑草がうっそうと生えたままでした。しかし6月の16日にたまたまこの堰堤に来てみると、その雑草が綺麗に踏み倒されていて、釣れ始めたらしい事の想像がつきました。


勇んでフローターを浮かべてみると、案の定、小さ目ながらもイワナのトレースがすぐに確認できました。2時間ほどポイントを探りましたが、上写真のイワナ33cmを筆頭に、尺上3尾、計6尾のまずまずの釣果となりました。そして7月6日には、友人がこの堰堤で40cmクラスのイワナを目撃しており、雪代や梅雨の豪雨とともに、確実に大型魚がプールに戻ってきていることが判ります。

【6月22日(土) 堰堤#2】


前週の堰堤に味を占め、翌週も別の堰堤プールにでかけてしまいました。この堰堤も5月1日と5月12日に試し釣りに出かけていました。しかし、山菜は幾らでも採れるものの、イワナの姿は皆無でした。12日の帰り道には、関東からやってきた餌釣り師がボートを浮かべていましたが、全く何も釣れておらず、フテ腐れて山菜を採っていたのが思い出されます。しかし、この堰堤でもこの日は34cmを頭に計5尾の、丸々と太ったイワナが連続ヒット。40cm前後のイワナを目の前でヒットさせたものの、惜しくもバラしてしまったと言う訳です。

【6月23日(日)午前 堰堤#3】

こうなって来ると、他の堰堤も調べてみないと気が済まなくなります。近くには5月18日に釣行に行った堰堤プールがまだありました。5月の時点ではここでも魚影は皆無で、下流の渓流でお茶を濁していたものです。しかし、この日は28cmのヤマメを筆頭に、ヤマメ3尾、イワナ1尾の釣果が見られ、ここでも魚影が僅かながらも復活していました。


【6月23日(日)午後 堰堤#4】

実はこの日、お昼ころから家族でサクランボ狩りに出かけていましたが、午前中の釣果が芳しくなかったため、隙を見て夕方もまたまた釣り場へと繰り出す羽目になってしまったものです。釣り場に到着したのはもう5時頃でしたが、水温は6℃しかなく、冷たい雨で条件は最悪でした。時間が遅く釣る時間が少なかったこともあり、この日は最大25cmの小ぶりのイワナが3尾ヒットしただけに終わってしまいました。この堰堤は、5月の連休に友人が残雪をかき分け苦労して釣りに来ていて、何の反応もなかったところです。しかし、この堰堤も5月後半から釣れ始め、6月初には別の友人が48cmの超大物を釣り上げています。


【7月7日(日)午後 堰堤#5上流】

そして、一連の堰堤プールの調査も、7月に入り一段落しました。こうしてせっかく魚影の戻った堰堤プールですが、今年は残雪が非常に少なく、6月末には県内の殆どの大渓流で雪代が消失してしまいました。雪代のピークが過ぎてしまうと、多くの堰堤プールは渇水を始めます。梅雨で雨は時折降るものの、プールの水位は激しく上下し、魚達はすでに遡上を開始し始めている様なのです。


寒河江オフの終わった七夕の夕方、そんな水位の下がり始めた堰堤を釣りましたが、ここでは小さな魚影が見られるだけでサッパリでした。不思議に思って、フローターを上陸させ、バックウォーターからその上流部の渓流を釣りあがると、やはり居ました。37cmのどう見ても堰堤にいたとしか考えられない丸々と太った魚体のイワナが元気良くヒットしてくれたのです。しかしこんなイワナ達も渓流部ではあっけなく釣られてしまいます。梅雨も7月半ばには終了します。今年は残雪が異常に少なかったため、7月後半には殆どの堰堤で今年もプールが干上がってしまうことでしょう。

赤茶色のヒメシジミ蝶 シロバナニガナ(白花苦菜) 紫のヒメシジミ蝶

【6月29−30日 黒瀬さんとミニオフ】

こんな中、今年もはるばる神戸から黒瀬(kurochan)さんがやってきました。彼とはもう3年ほどの付き合いになりますが、なぜか彼が来ると2人ともとても良く釣れ、まるで釣りの女神様を連れて歩いている様で、私は大歓迎なのです。雪代が消失する寸前の6月末こそが堰堤プールの釣りの最後のチャンスであり、最も大物の期待できる時期です。そんな両日を、黒瀬さんとのミニオフで楽しみました。


【6月29日(土)午前 堰堤#6】

まず出かけたのは、写真の堰堤でした。ここは先に述べた5つの堰堤のうちの一つですが、ご覧の様に既に水位が下がり始めていました。小さな堰堤プールではあまり関係ありませんが、巨大なプールでは、バックウォーターに近いところ(500m程度内)に有る煙幕理論に従ったポイントに魚達が集められます。満水が続く限り、それより下流部には、魚たちはやって来ない様です。しかし、一旦水位が下がり始めると、バックウォーターの位置が水量に応じて毎日の様に変化します。その時、魚達は、一部はそのまま上流部へ上り始める様ですが、多くはバックウォーターの後退に合わせて移動する様なのです。


そのため、ここではバックウォーターまで行かず、少し手前のポイントからミノーで探り始めましたが、これが当たった様でした。バックウォーター部にも行きましたが、殆ど魚影は見られず、その手前500m付近に魚が集まっていました。一旦はこのあたりまで水位が下がったものの、前日の雨で少しだけ水位が回復し、この様な場所に魚が取り残されていた模様でした。そして、ここでは私に35cm、黒瀬さんにも同サイズのまずまずのイワナがヒットし、2人合計で十数尾の釣果を上げることができました。ミニオフの幸先はまずまずと言ったところです。


【6月29日(土)午後 堰堤#7】


本当は午後からの予定もあらかじめ決めていたのですが、このあたりが釣りの女神様の仕業の様です。なぜか黒瀬さんが、とある渓流に見るだけで良いから行ってみたいと言い出したのです。別の堰堤に入る予定を無理に曲げて、「少しだけ」という約束で入った堰堤は、昨年の同時期には餌釣り師達にすっかり釣り切られてしまって全く釣れなかった堰堤プールです。しかしどうでしょう。時間が無いので大慌てで釣り始めると、いきなり黒瀬さんのロッドが曲がりっぱなしになってしまいました。餌釣りの跡は見られるのですが、今年は釣り人も減り、まだ魚影がたっぷりと残っていた様でした。


ここでは黒瀬さんの青緑のディープダイバーに大当たりがあり、一時は入れ食い状態になりました。結局、彼は最大38cm(写真下)を含む尺上ばかり2桁の釣果を、たった2時間ほどの間に釣り上げてしまうことになってしまいました。私も真似てディープダイバーを取り出したものの、尺上4尾、計5尾と、普通ならまずまず満足するはずの釣果にも関わらず、黒瀬さんには完敗の形。そして結局は当初の予定の堰堤には行く時間が無くなってしまい、下流部の渓流や堰堤を夕刻まで釣る羽目になってしまいました。


【6月30日(日)午前 堰堤#8】

翌日は黒瀬さんが神戸へ帰らないといけないため、午前中だけの釣りしかできません。時間が惜しいこともあり、今回は民宿をあきらめて、翌朝の釣り場まで移動してキャンプです。途中、行きなれたレストランでそそくさと夕食を取り、ビールをがぶ飲みして河原で寝てしまいました。翌朝4時ころに目が覚めると、おやおや、この釣り場も結構有名になった様子で、地元の釣り師がルアーロッドを抱えて次から次へとやってきます。


しかしフローターを持参のルアーマンは我々2人だけですので、焦る必要はありません。他の釣り人の邪魔にならない様に釣り始めると、朝4時半ころ、黒瀬さんの青緑のディープダイバーに37〜8cmの良型がヒット。しかし写真を撮影している間に大暴れしてフックが外れてナチュラルリリースになってしまいました。この調子でまだまだ釣れるかと楽観していたのですが、実はこの1尾がとても貴重なものになってしまいました。私にもその後31cmのイワナが釣れたことは釣れたのですが、岸から釣っていた地元の釣り師たち(恐らく8人くらい)には、見た限り誰にも釣果が無かった様なのです。長年、渓流釣りをやっていますが、こういう時のイワナの気持ちは、まだ理解できません。


【6月30日(日)午後 堰堤#9】


この日はお昼過ぎに黒瀬さんを空港まで送り、私はあとは一人で帰るだけです。当然、帰り道の途中には沢山の堰堤プールがありますので、昨日二人で行く予定にしていたポイントに行ってみる事にしました。到着時間は午後4時ころでしたが、透明度が非常に高く、夕方まで付近で写真を撮影したりして時合いを待つことにしました。付近の野草は、アザミやトリアシショウマ、ヒメジョオンなどの夏の花にすっかり衣替えしていて、ここでも1〜2週間も季節が早いことが伺えました。


結局、今回のミニオフの最後は、写真上の37.5cmのイワナで終わりましたが、2人で2日間に釣ったイワナは、尺上20尾以上、最大38cmと、やはり黒瀬さんがやってくるととても良く釣れてくれます。ただ、こうやって大イワナが戻ってきた堰堤プールも、7月に入りどんどん渇水し始めています。すでに幾つかの堰堤の水位は雨のたびに激しく上下を繰り返し、やがて全ての魚たちは源流部へと移動してしまうことでしょう。春は魚たちが下流へ下流へと移動しますが、これからは魚たちが上流へ上流へと回帰して行く季節に入ります。こうやって源流と下流の堰堤の間を魚たちが行き来しながら、季節は巡って行くのです。

ミズタビラコ(水田平子) ノハラアザミ(野原薊) トリアシショウマ(鳥足升麻)

【今回使用のタックル】 Wellner8ftTroutRod、シマノBioMasterXT2000、呉羽シーガーエース1号(6lb)、Kルアー5cm緑、7cm緑、Wavy50S緑、TredShad7S、改造MMminow48Sハヤ、RexDeep50、他