今年の解禁は本当に暖かいです。東京では、観測史上最も早い桜の開花宣言が出されたそうですが、こちら山形でも、季節の全てが2週間ほど早く進んでいる様です。例年なら4月に入ってから咲く山間部の福寿草もすでに花盛り。林道の残雪も早々に融けてしまい、いつもならまだ入れないハズの奥地の堰堤へ、ポカポカの陽気に誘われて出かけてしまいました。イワナ達も例年より元気になるのが早いのか、そこでは思いもかけない大物が遊んでくれました。(写真は偶然見つけた福寿草の大群落) ![]() 下図はおなじみの山形市の気温の推移図です。平均気温との差をグラフ化したもので、平年(過去30年間の平均)と比べて暖かいのか寒いのかを見ています。12月末ころまでは寒冷で降雪も多かったものの、1月中旬ころから急激に温暖な状態になっているのが良く判ります。気になるのは、気温の推移が98年ととても良く似ていることです。実を言うと、98年は4月に濁流の様な強烈な雪代が流れ続け、その結果、堰堤プールでは大物ラッシュが見られたのです。 ![]() 今年は解禁の3月1日から既に雪代が流れ始めており、私の様な堰堤釣りをメインに楽しんでいる釣り人には、もう期待が膨らむばかりなのです。濁流の様な雪代は源流部のイワナ達を下流へ下流へと追いやり、結果的に大物を堰堤プールに溜めこんでくれるのです。昨年夏の猛暑で多くの堰堤プールが干上がってしまい、プール内のイワナ達は源流部へ遡上してしまったと考えられますが、この陽気は正に天の助け。イワナ達は今、逆に堰堤プールへ逆戻りしているはずなのです。
ところで、福寿草や菊咲一華の様に、雪解け直後のまだ植物が少ない時期に水分の多い柔らかい花を咲かせ、やがて付近が雑草に覆われる頃には跡形も無く消えてしまう植物たちを、スプリングエフェメラル(春植物)と呼ぶことをご存知でしたか? エフェメラルは「カゲロウ・短命な物」の意で、春のカゲロウの植物と言う意味です。残雪が消え、まだあたりがモノトーンの世界の中、一際鮮やかに咲き誇るスプリングエフェメラルたちは、正に春の使者なのです。 ![]() そんなスプリングエフェメラルたちも、今年は2週間も早く咲き始めています。まだまだ先だろうと油断して林道を走っていると、黄金色に輝く福寿草の大群落が目に飛び込んできました。うれしい誤算でした。上の図は曜日別の気温変化を調べたものですが、金・土曜に気温が上がり、サラリーマンには都合の良いパターンは変わっていない様です。でも、図を良くご覧下さい。気温全体が4℃ほど高い位置に推移していて、一番寒い月曜でも、はるかに平年気温よりも高いことが判ります。
ところで、この時期の林道は、ご覧の様に道路は除雪されていても、斜面のあちこちから次々と雪の塊がなだれ落ちてきて、すぐに道路が塞がってしまいます。そのため、5月の連休前くらいまでは多くの林道が通行止めになっています。しかし今年は雪解けが非常に早いため、海釣りで使うために数年前に購入した小型自転車を利用して、例年ならまだまだ入れない奥地の堰堤にトライすることにしました。登りは少々きついのですが、歩くよりは遥かに早く釣り場に到着します。車でも通れなくはないのですが、朝は通れても、日が昇って暖かくなると雪崩れて帰って来れなくなる可能性が高いのです。
ではそろそろ、本題の釣りのお話に移りましょう。この週は15日にかなり強い雨が降り、実を言うと16日(土曜)にも同じ釣り場に出かけたのですが、濁流のメコン川状態(写真上左)で竿も出さずに帰ってきました。翌17日(日曜)はご覧の様なとても良いお天気でしたが、雨の後の予想通りに水温は3℃ととても低く、釣り日和とは言えません。途中、掲示板でおなじみの天童市のハチロクさんにばったり出会い、びっくり。色々と状況などを伺いましたが、付近の餌釣り師たちも全く釣れていない様子でした。
水温は非常に低いのですが、気温は10℃を超える様な暖かい日のため、こういう日は午後になると濁った雪代が一気に入ってくるものです。通りがかった餌釣り師にも状況を聞きましたが、ハチロクさんの情報と同じく、全く釣れていません。しかし、こんな日は水温が急に上がり雪代の入る直前の午後2時前後の一瞬に、釣れるタイミングが来ることが多いものです。いくら水温が低くても、魚たちは食べなければ死んでしまいます。濁った水が上流から流れてくると、慌てて餌を追いかけ始めるのでしょうか。 ![]() 上の写真は、この日の午後2時頃、堰堤プールのバックウォーターに流れ込んできた雪代の様子を撮影したものです。判り易くするために彩度とコントラストを上げていますが、ご覧の様に上流(左上側)から強く濁った水が一気に流れ込んできているのが水面の色の違いから良く判ります。そしてこの写真は、手前のワンドに透明度の高い水が溜まっていて、正に煙幕理論のポイントを形成している事も同時に判ります。実を言うと、こういった雪代が流れ込んでくる一瞬に、大物をヒットさせた経験が過去に何度もあり、この日はこの一瞬に賭けるしか有りません。
実はこのワンドは、透明度の高い時には底が丸見えになる深さ1m足らずのところで、ちょうど水面の色の境目あたりまで、歩いて行ける様なポイントなのです。この時期は雪代で水量が多く、やや水位が上がることもあって底は見えませんが、浅いために水温が他よりも高くなるのかも知れません。水温が高ければ当然、水棲昆虫も多く、余計に魚たちが集まりやすいのかも知れません。そして、2時頃までスプリングエフェメラル達の写真を撮影し続け、雪代がドッと流れ込んできたころを見計らって、やおらロッドを出しました。 ![]() そして、7cmもあるKルアー緑に、まるで絵に描いた様にヒットしてきたのは、ご覧の丸々と太った精悍な顔つきのイワナ44.5cmでした。大物がワンドに入っていたため、他の魚たちは隅に追いやられてしまっていたのでしょうか、不思議なことに、後にも先にもこの一尾以外は全くアタリがありませんでした。ロッドを出して1時間も経たないうちに、すぐに濁流の様な雪代があたりを覆い尽くしてしまい、納竿せざるを得ませんでした。でも、大物と出会えた喜びで、もう何も言うことはありませんでした。(写真下右は、釣り上げた瞬間にイワナが吐き出した胃の内容物。5cmもあるクロカワ虫を捕食していた。)
さて、写真下のイワナ・ヤマメはこの21〜23日に釣り上げたものですが、やはり釣り人は少なく魚影は昨年以上に濃いものを感じます。まだ解禁して3週間しか経っていないにも関わらず、既に尺上の渓魚は12尾となっていて、これは記録を取りはじめた94年以来で最も多い尾数となっています。バブル崩壊以降、長い間続いた釣りブームはようやく完全に消滅し、いよいよ本当に釣りの好きな人のための年がやって来た様に思います。
【今回使用のタックル】 Wellner8ftTroutRod、シマノBioMasterXT2000、呉羽シーガーエース1号(6lb)、自作Kルアー5cm緑、同7cm緑、改造MM-Minnow48Sハヤ、他 |