渓流釣りフォーラムにて発表
スライド 「○○川釣行記」 2001年11月24日
2001年11月24日(土)に開催された
「やまがた渓流釣りフォーラム」
にて、山形渓遊会として○○川釣行記を発表させて頂きました。ご要望も有り、ホームページ上にもこの釣行記を掲載させて頂きます。本当はカラーの大画面でご覧頂きたいところですが、ホームページ上ではスライドの写真が小さく、迫力に欠けるのが少し残念です。また、発表当日は、より細かな内容を会話調で説明しましたが、全文を掲載するにはスペースが大きく成り過ぎるため、ここでは基本的な内容のみを掲載しています。ご了承下さい。
山形渓遊会
○○川釣行記
〜堰堤プールのイワナを求めて〜
2001年8月10日・9月1〜2日
山形渓遊会事務局長の片山です。今年の8月と9月に釣行した○○川の釣行記の発表をさせて頂きたい。副題は「堰堤プールのイワナを求めて」としました。
山形渓遊会
メンバー
釣行記の前に少しだけ山形渓遊会について紹介させて頂きたい。元々は某業界の釣り好きの集まりだが、現在は業界に限らず興味のある人なら誰でも参加して頂ける様にしている。現在7名ほどで活動。中央の渡辺会長は根っからの源流マンで、一人でザックを担いでどこへでも行くツワモノ。会長のもと、源流と里川の中間あたりで楽しんでいるグループである。メンバー達の釣りスタイルは様々だが、河原でキャンプしながらウマイ酒を呑みたいという一点だけは、みごとに意思統一されている。
釣行記をホームページにも掲載しています。
渓遊会とは直接関係ないが、片山個人で開設しているホームページ。この中に山形渓遊会の入会案内や多数の釣行記が掲載されているので、興味のある人はぜひ見て欲しい。HPはYahooなどでカタカナで「トラウトルアーフィッシング」と検索して頂ければ見つけられる。
○ ○ 川
○○川はS川の源流。寒河江川の一支流であり、上流部は××川と○○川に大きく分かれる。○○林道は短く、終点の車止めのすぐ下に巨大な堰堤プールがある。
堰堤プールのルアーフィッシング
5月初〜7月末ころまで
丸々と太った尺前後の渓魚が豊富に釣れる
この堰堤プールは、満水時には1kmを越える巨大なダム湖になる。私個人はこういった堰堤プールでのルアーフィッシングを楽しんでいる。5-7月にかけて○○川堰堤プールへ釣行。40cmオーバーも含めて、良く釣れていた。この釣りはHPのメインコンテンツになっている。
干上がった○○川堰堤プール
2001年は7月20日ころより渇水し始め、7月29日にはほぼ干上がった。
しかし、今年は梅雨明け(7月5日?)が早く、7月19日の夕立以後、雨は降らなくなった。7月末にはプールは完全に干上がり、数百尾〜千尾以上もの岩魚たちは源流部へ移動したと考えられる。堰堤脇に僅かに残ったプールは、水温20℃以上、ヘドロで透明度は殆ど無く、魚の生息は無理。実際にこういった状況下では全く釣れない。
○ ○ 川
干上がった堰堤プール内にいた数百尾のイワナ達は源流部へ移動したと考えられる。会長から「○○川で釣れている」との情報を得、堰堤にいたイワナ達が源流部で釣れているものと直感した。そのイワナ達が実際にどこでどの様な行動をしているかを確かめる目的も有って、源流部へ入渓することとなった。1回目の8月10日は、第一渡渉点からS滝まで(緑の矢印)の区間を釣り上がった。
8月10日 ○○辿道
8月10日早朝、林道をもくもくと歩く渓遊会メンバー。まだあたりは薄暗く、写真がざらついている。徒歩40分ほどで最初の入渓点に到達できる。
下流部の渓相は広く開放的
しかし、渓相とはうらはらに、魚影は殆ど無い。
入渓点に到着したころには明るくなり、開けた渓相は開放的で気分が良い。しかし渓相に反してしばらくの間は全く魚影が見られなかった。
初ヒットはルアー
入渓地点(第一渡渉点)より約1kmの地点
かなりの早足で1時間ほど遡行したころ、K++のミノーに初ヒットが有った。入渓点より1km程度の地点である。
初獲物は良く太った尺物
ミノーの遠投で釣れた30cmちょうどの丸々と太ったイワナ。色は黄色っぽく、腹部には赤い斑点が見られない。堰堤プールで釣れるイワナ達と同じである。
やっと釣れはじめ
先の1尾を皮切りに、ポツポツとイワナが釣れ始めた。渡辺会長が餌釣りで28cmほどのイワナを釣り上げているところである。
Y沢出会い
しばらく進むと、やがて右岸からY沢が出会う。すぐ奥に滝があり、渡邉会長はフライで釣っているが、ここでは全く何も釣れなかった。
渡邉会長
会長は、またすぐに餌釣りの竿に持ち替え、33cmのこれも丸々と太ったイワナである。この日の最大級のイワナであった。
深山幽谷を釣る
しばらく行くと、如何にも大物が潜んでいそうな淵がある。佐谷名人が粘った。この淵は風景が素晴らしく、HPにパソコン用壁紙として掲載させて頂いている。
佐谷氏
佐谷名人。しかし釣れてきたのは25cmほどの小ぶりのイワナ。この1尾だけがいわゆる「居着き」イワナの特徴を示していた。黒っぽく赤い斑点も明瞭、細身で小さい。
S滝に近づくにつれ、魚影は豊富に・・・
遡行するにつれ、魚影はどんどん濃くなり、S滝に近づいたころは、一時入れ食い状態にまでなった。殆どのイワナが30cm前後で、丸々と太っていた。色は黄色く、赤い斑点は薄い、ややアメマス化した魚体である。
S滝を釣る
この日のハイライトはS滝である。ミノーを投げると赤い×印の所から尺前後のイワナがぞろぞろと出てきた。奥にミノーを投げ込むと40cmオーバー(42〜3cm?)がユラユラと追い掛けて来た。残念ながら大物は釣れなかったが、尺オーバーの無数の群泳を確認することができた。
丸々と太った黄色っぽい尺前後のイワナ
魚影はすこぶる豊富、40cmオーバーの魚影も確認。
なぜか、20cm以下の小物は釣れなかった・・・
堰堤プールのイワナ達ではなかったのか。
この日釣れたイワナ達の特徴は、堰堤プールで釣れるイワナの特徴をそのまま残していた。S滝下流部に見られた群泳は、紛れも無く干上がった堰堤のイワナ達だと確信できた。
○ ○ 川
あれだけの群泳を見てしまうと、S滝の更に上流がどの様になっているのか、確かめて見たくなるもの。会長と相談して3週間後の9月1日になり、再び上流を目指した。今回はゼンマイ道を最後まで歩きS滝のすぐ下流部(赤の矢印の区間)から入渓することにした。
9月1日 ブナのゼンマイ道
見事なブナの林のゼンマイ道を抜け、徒歩1時間半ほどでS滝の下流200mほどの地点に出ることができる。9月ともなるとアブも姿を消し、歩いていてもすこぶる気持ちが良い。
S滝、再び
期待して竿を出したものの、全く魚影すら無く、あっと言う間にS滝に到達してしまった。3週間前のあの魚影は一体どこへ行ってしまったのか。
S滝の尺イワナ
S滝では、ミノーで底付近をトレースすることにより、唯一この尺イワナが1尾だけ釣れた。やや細身だが、1ヶ月もすると堰堤イワナの特徴が無くなるのか。
滝上は再び開けた渓相に
S滝は右岸から簡単に高巻くことができる。滝上に出ると、再び開けた渓相になった。なぜか会長はテンカラを振っている。
釣れ始めたが小さい
渡邉会長のテンカラで釣れた一尾。滝上に出るとポツポツと釣れ始めたが、型は小さく、色は黒っぽい。居着きイワナの特徴を示していた。
瀬畑毛鉤に出たイワナ
余談だが、前週に瀬畑雄三氏と新潟の渓で意気投合していた会長は、その時に譲り受けた毛鉤を使ってみたくて仕方なかった様子。なお、新潟では瀬畑氏の目の前で、ミノーで49cmの丸太イワナを釣り上げたとのこと。いつの間にかルアーのテクニックを盗まれてしまっていたらしい。
この滝付近から魚影は濃くなった
しばらく行くと右からK沢が滝となって落ちている。この付近から魚影は濃くなってきた。ルアーを投げる会長。
数は出るが小さい
遡行するにつれて少しづつ数は出る様になってきたが、しかし、型は小さい。私のWavyに来た25cmほどのイワナ。
ここでも大物は出ない
更に行くと、如何にも大物の潜んでいそうな淵がある。期待したがここでも大物は出ず、会長のルアーロッドには、小さなイワナが2尾釣れただけだった。
渡邉会長
この日の最大
H沢の付近で釣れたこの日の最大は33cm。真っ黒にサビていて、尻尾はオレンジ色、赤い斑点が綺麗で堰堤プールのイワナの特徴は無い。間違い無く居着きイワナである。
上流へ行くほど、型は小さく・・・
時間が無くO沢出会いで納竿した。数はまずまず出たものの、上流へ行くほど型は小さくなり、イワナ止滝以外は大物は望めそうも無かった。写真を良く見比べて欲しいのだが、釣れたイワナはいずれも居着き岩魚の特徴を示すものばかり。堰堤プールのイワナらしきものは左下の1尾だけだった。
O沢の滝
この日のハイライトはO沢のF1。大物を期待して会長がルアーを投げるが、ここでは何も釣れなかった。
O沢出会い
S滝からO沢までの間に数箇所の
真新しいキャンプ跡
を発見。お盆休みを中心に相当な釣り人が・・・
O沢出会い上にある小さな淵。私がルアーを投げると、20cmほどのイワナが3尾、追いかけてきた。この淵を最後に納竿したが、S滝からO沢までのほんの2kmほどの間に、6箇所ほどの真新しいキャンプ跡を目撃していた。お盆休みを中心に相当な数の釣り人が入渓し、堰堤プールのイワナ達はことごとく釣り切られていたのだった。
2001年の○○川での出来事
最後に、2001年の○○川での出来事をまとめてみた。実を言うと6月に某有名渓流釣り雑誌に、○○川の源流釣行記が掲載されていたのである。釣り人たちは急激に増え、彼らの釣欲は1本の渓流のイワナ達を根絶やしにしかねないほどの恐ろしさを秘めていたのである。
1.
堰堤プール
には、5〜7月かけて数回釣行。
豊富な魚影
。
2.6月初、有名渓流
釣り雑誌
に、
源流釣行記
が掲載された。
3.
6月末ころ
から源流部への釣り人が増加し、7月中旬まで、林道にて
沢山の
ザックを担いだ
釣り人
を目撃。
4.7月20日頃より渇水し、
7月末
には堰堤
プールは干上がった
。
5.8月10日、S滝下流部にて多数の尺前後の
魚影を確認
。40cmクラスも確認。
堰堤プールのイワナ
の特徴。
6.9月1日、S滝の
魚影は薄い
。多数の
キャンプ跡
発見。S滝上流部で数は多いが
小型中心
。上流ほど小型化。
7.9月2日、
堰堤プール
にはイワナの
魚影はごく僅か
。
8.奥へ行くより
下流部の方が良く釣れる
との事(瀬畑雄三氏)。
そして今、思うこと
下流部の堰堤プールやダムがイワナを温存してくれていたのではないか。そして干上がった堰堤プールの上流は瞬く間に釣り切られ、もう暫らくは何も釣れない。源流部においてもC&Rは必須であり、乱獲を禁止しなければいけない。そして雑誌への実名入りの釣行記掲載はもう止めるべきである。
(今回「○○川」の実名を出した理由は、既に釣り切られたであろう事、又、この堰堤は来年にもスリット化されプールが無くなる事から、今回に限り実名を出しても差し支え無いと判断したもの。)
1.
堰堤プールがイワナを温存
し、時おり遡上する事によって釣り人達を楽しませてくれていたのではないか。
下流部の堰堤プールやダム湖の存在が釣果に大きな影響を与えている可能性。
2.堰堤が干上がったことで、膨大な数のイワナたちは源流部へと移動し、ごく短期間にほぼ釣り切られた。
キャッチ&リリース
の推進と、
乱獲の禁止
。
3.雑誌への釣行記の掲載がダメージを更に大きくした。河川の
実名入りの釣行記掲載は止める
べき。
(釣り切られ、来年は釣れない。○○堰堤は来年、スリット化の予定。)
ご清聴ありがとうございました。
最後のスライドになったが、先ほどからこのイワナ君がじっとこちらを見つめていたことに気付いておられただろうか? 実は今回のこの釣行記は、このイワナ君からの、釣り人の皆さんに対するメッセージでも有ったのではないだろうか。どうかこの可愛いイワナ君を、皆さんの手で守ってあげて頂きたいと切にお願いし、釣行記を終えたいと思う。ご清聴ありがとうございました。