このところ、山形県内も珍しく梅雨らしいお天気が続いています。この時期の堰堤プールでも、もちろん大物を狙う事は可能です。今年は爆釣のレポートばかりお伝えしている様な感じですが、雨季に入ったこの時期でも、相変わらずとても良く釣れ続けています。いまどきの堰堤プールの釣り方も含めて、ホームグラウンドでの単独釣行の模様をお伝えします。(下の写真は、寒河江ダム湖畔から残雪の月山と、手前に山形自動車道を望む) 私のホームグラウンドは、もちろん寒河江川です。朝日岳・月山に囲まれた雄大な自然と水量豊かな渓流群は、山形に転勤してきて丸10年になるこの私を、未だに虜にして止みません。ここには日本で最初に試みられたキャッチアンドリリースエリア「寒河江C&R区間」が有り、今では全国有数の釣りのメッカとなっています。しかしここにはもう一つの大きな魅力も存在していました。それは、巨大なイワナを育む、堰堤プール群でした。 6月に入って、東北も梅雨入りしました。もっとも東北の梅雨は西日本の様な強い雨は殆ど無く、しかも降っても週に2〜3日だけ。それでもやっかいなのは、標高の高いところに豊富にある残雪が溶け出すことです。この時期の朝日山系・月山・飯豊山系・奥羽山系の河川では、ほんの少しの雨でも結構強い濁りが出てしまいます。幸いにも今年は土日に晴れるパターンが続いており、それでも、雨季の釣りを楽しむことが出来ています。 この日入った堰堤は、私のホームグラウンド中でも最も良く出かける堰堤です。規模が非常に大きく、その分、人も多いのですが、釣り切られる事も無く安定した釣果が得られます。この日は2日前の小雨でプール全体に濁りが入ってしまい、幾つかのポイントを探ってみたものの、結局は濁りの残った部分では釣果は見られませんでした。こういった時、私が最後に探りに行くのは、バックウォーター部です。前日に雨が降っても、晴れれば数時間後には透明度の高い水がすぐに流れ込んできます。型は小さいものの、沢山のイワナが透明度の高いところに集まって、捕食活動をしています。
濁りが残っていても、バックウォーターからほんの少し下流にもポイントは有り得ます。深みがあればそこには上流からの冷たくて透明な水が下層部だけに流れ込んでいて、表面は濁っていても水面下は十分に明るく見通しが利くようなのです。そういった場所ではシンキングミノーや小さなスプーンで底付近をトレースすることで、結構な大物がヒットすることがあります。下の写真は、この日の一番の大物40cmですが、そんな釣り方で釣れました。バックウォーターから2〜300mほど下流の、一見濁ったワンドの中で、Wavy50Sを底付近でデッドスローにトレースすることで、ヒットしてくれました。 最近は「スカリ」と呼ばれる大きな網でできた魚篭をフローターに結んでおき、釣れたイワナのうち尺を越える様なサイズだけをその中に溜めておく様にしています。理由は、フローターに乗っている状態ではなかなか良い写真が撮れないからです。魚を溜めておいて、最後に写真撮影などをしてから一気にリリースしようという訳です。写真下左は、下流側から入りバックウォーター部まで釣り上がった時の尺上の釣果です。一番大きく見えるのが40cmですので、結構な大きさのイワナが幾つも釣れているのがお判り頂けるかと思います。 一旦バックウォーターで全てリリースしましたが、この後も下流側へ再び移動しながら、これと同じくらいの数が釣れています。ただ、こういった透明度の高い釣り場では、午前中の10時ころまでが勝負の様で、この日は11時以降は1尾も釣れなくなってしまいました。勿論、夕方のマズメ時にも釣れますが、午前中ほどではありません。薄い濁りが入っているポイントでは、1日中、ポツポツと釣れてくれる場合も有ります。6月に入って複数の堰堤に7回ほど釣行を重ねていますが、その間全部で59尾、尺上は17尾と、型はやや小さくなっているものの、釣れ具合が殆ど変わっていません。 それにしてもこの日は釣り人が沢山いました。堰堤のコンクリート壁の上は、本来どこも立入禁止の筈なんですが、上の写真の様に左右の壁の上にそれぞれ3人づつの餌釣り師が堰堤のプールに向ってウキを投げていました。しかし残念ながら、この時期の堰堤の壁付近は余り釣れません。冬季の渇水時にはプールの大きさが200〜300mと小さくなり、壁付近まで魚たちが近寄ってきますが、春になると水位が上がるにつれてプールがどんどんと大きくなり、それにつれて魚も上流側へ移動してしまう様なのです。6月に入ってからは堰堤壁から1km程度も離れた、むしろバックウォーターに近い所にある「煙幕理論」のポイントに魚たちは沢山集まっています。
写真下は、エンジン付ボートの釣り人と、岸からウキ釣りの釣り人たちです。岸からの釣り人には殆ど釣果が無かった様ですが、ボートの釣り人には40cm近い大物も含めてビクの中はイワナで一杯でした。食べごろの小さなものだけ持って帰ると言っていましたが、はて?何十尾ものイワナを、どうやって食べるのでしょう? 民宿で客に出しているなどと言う噂も耳にしますが、そのクチでしょうか。いずれにせよ、こういう乱獲は止めてもらいたいものです。尾数制限など方法は幾つか有り得ます。漁業組合さん、なんとかして下さいよ! こんな風に良く釣れているホームグランドの堰堤プールですが、残念ながらこの釣り場も来年の夏頃には姿を消してしまうそうです。小国漁協管内では既に実施されていますが、最上第二漁協管内でも、今年から大きな堰堤にスリットを入れる工事を始めています。堰堤の壁に縦に底までスリットを入れることで、プールを無くし、同時に水量の少ないときにはスリットが魚道代わりに成り得るというものです。既に大井沢川の堰堤など、予算が下りて工事の始まっているところもあります。この大きな堰堤も来年の夏にはプールが完全に無くなってしまう予定です。でもま、環境のためには堰堤のスリット化は大いに結構なお話であり、私は大賛成しています。
この日の午後は、7月中旬の「寒河江オフ」の下見のつもりで、寒河江C&Rにも立ち寄ってみました。大朝日岳には残雪がまだたっぷりあるせいか、あるいは雨季のためか、水量はまだまだ多く、フライフィッシングにはまだ少々辛い雰囲気でした。私も「朝日山の家」の少し上流の階段の付近を、例によってWavyなどで探ってみましたが、なんと15分ほどで25cm前後のイワナが3尾にヤマメが1尾と、相変わらずの釣れっぷりを見せてくれ、寒河江オフも安泰かなと、安心させられました。(2003年より、寒河江C&R区間では、ミノー・スプーンともに、シングルフック・バーブレスが義務付けられました。バーブレスであってもトリプルフックの使用は出来ませんのでご注意下さい。) 釣れたイワナのうちの1尾には、下写真の様に背ビレに黄色いタグが打ち込まれていて、漁業組合さんの人知れずの苦労が伺われました。こうやって渓魚を放流し、調査してくれている人達がおられるからこそ、渓流釣りも楽しめるのだと言うことを、我々釣り人全員がもっともっと自覚しなければならないのではないでしょうか。安易に乱獲を繰り返す無節操な釣り人が多い昨今ですが、昔ながらの「捕った者勝ち」の時代など、とうの昔に終わっているということに、早く気づいて頂きたいものです。 【今回使用のタックル】 Wellner8ftTroutRod、シマノBioMasterXT2000、呉羽シーガーエース1号(6lb)、Wavy5S鮎(AJ)、MM.Minnow48S、Athlete55S鮎、他 |