今年は梅雨以降、本当に良く釣れています。メイルやメイリングリストに寄せられるレポートを見ても、東北各地で、ここ数年見られなかった様な釣れっぷりを見せています。前回のレポート(魚影復活の夏休み釣行)でその原因を3つほど提案しましたが、今回の釣行では「大水が源流のイワナを下流へ押し流した」としか考えられない様な結果となりました。入渓しやすく釣り人の絶えない渓流から飛び出したのは、45cmもある巨大なイワナでした。 グッタリ遊び疲れのお盆休みの翌週になって、とても面白い2つの情報が舞い込んで来ました。お盆休み中のほぼ同じ日に、たまたま同じ水系の源流と本流に入った2組の釣りのグループがあったのですが、その釣果があまりにも対象的だったのです。 1.餌釣り師N氏とその友人:某水系の車止めからその大支流を2時間ほど歩いてから釣り始めたが、サッパリ釣れず、なんと2人で20cm前後のイワナが2尾だけの釣果だった。7月中旬にも同じ場所に来て良く釣れていたため、柳の下のドジョウのつもりが、すっかりアテが外れてしまったとのこと。 2.フライマンD氏単独:上記と同じ車止めの下流部の本流に入った。この場所は車道からも入渓しやすく、常に釣り人が絶えない釣り場にも関わらず、2時間で60尾近いイワナの入れ食い状態に遭遇した。フライで釣っていたためか、型は7〜8寸が中心だったが、大物の魚影も見られたとのこと。 更にこの翌週になって、8月26/27日に上記のフライマンD氏と同じ本流の区間に入った別の人からも、電子メイルで非常に面白い情報が寄せられていました。 3.フライマン兼にわかルアーマンのK氏とその友人:多少濁った好条件にも恵まれ、27日の真昼間の午前11時ころ、本流でミノーを投げ、なんと45cmの大イワナを釣り上げてしまった。しかも、これよりもまだ大きなイワナを少し上流でもヒットさせたが、惜しくもバラしてしまった。他に尺以下のイワナを多数釣り上げており、釣り人の多い釣り場にも関わらず、魚影は非常に濃い状態だったとのこと。 いかがですか? これらの情報を、あなたはどの様に解釈されますか? そして、あなたならどうされますか? 私は前回のレポートで以下の3つの魚影復活の理由を提案しました。 1.景気回復とともに、釣り人が減少し、代わりに魚影が復活した 2.大量の雪代と7月以降の夕立が渓魚を下流へ押し流した(煙幕理論参照) 3.過去10年で最高の残雪が釣り人を渓流に入ることを拒んだ 源流部で魚影が消え、本流で大物がヒットした現象は、もう、2番目の理由以外には考えられないのではないでしょうか。漁業組合の放流による魚影復活も考えられますが、15cm〜45cm以上まで魚の大きさがバラバラな点は、放流だけによるものとはとても考えられません。 実を言うとこの水系も、梅雨以降にたび重なる夕立に見舞われ、何度となく鉄砲水が発生していたのでした。そして源流部に生息していた岩魚たちが、下流部へ押し流されて、本流の流れの太い場所に溜まっていたと考えられるのです。 鉄砲水を伴なう夕立は今夏、東北各地で発生しており、同様に大物の釣れそうな水系が、実は至る所に存在する筈なのです。今年は何でも無い様な釣り場で、超大物が沢山釣れているのではないかと推測しています。逆に源流釣り師にとっては、思った様な釣果に恵まれることの少なかったシーズンではなかったか、と推測しています。 そして、私もこの3つ目の情報を聞いた直後に、この本流の釣り場に出向きました。普通、渓流に入る場合はスピナーとクローズドフェイスリールの組み合わせを選ぶのですが、今回は最初から大物だけを狙うため、ルアーは5cm前後のミノーだけ、ロッドは普段より一回り大きいWellnerの8ftを選びました。 現場には早朝4時半に到着し、7時過ぎまで釣りました。大物は間違いなく泳いでいるのですが、いかんせん小物も数が非常に多く、大きなミノーでは小物がぞろぞろと追いかけてくるだけでなかなかヒットしてくれません。それでも20〜25cm程度のイワナがポツポツとはヒットしてきます。小さなスピナーで釣っていれば、恐らく倍以上は釣れたのではないかと思うのですが、ここはじっと我慢です。 実はこの日、超の付くほどの渇水状態で、透明度は非常に高く水量も少なくて本流を渡るのも楽々でした。雪代の残っている時期であれば、川幅一杯にゴーゴーと流れる水に圧倒され、近づくこともできないくらいです。この日は遡行の楽な分、イワナから釣り人が丸見えらしく、大物はなかなか口を使ってはくれません。 釣り始めて2時間半ほどたった7時ころ、流れの中に大きな岩が転がっているポイントに来た時でした。そして、その大岩の脇をWavy5S鮎で激しいトゥィッチングを加えながら誘った時でした。下の写真の45cmの立派なイワナがミノーを咥えてくれました。 イワナが45cmに育つには、最低3年はかかります。釣り人の絶えないアクセスの非常に良い渓流に、3年もの長い間、イワナが釣られずに何尾も残っているとはとても考えられません。夕立の鉄砲水がなければ、恐らく今でも人におびやかされる事も無く、のんびりと源流で暮らしていたであろう大イワナ。誰かにまた釣られてしまう可能性が高い事を知りつつも、優しくリリースしない訳には行きませんでした。 【今回使用のタックル】 Wellner 8ft TroutRod、シマノ BiomasterXT2000、シーガーエース1号(6lb)、Wavy5Sゴースト鮎、Luna47S鮎 |