94年に、渓流での釣果をデータベースに入力し、どういった条件下で最も渓流魚が良く釣れるかについて分析を試みました。本来ならば各種データと釣果との回帰分析をやるべき所ですが、データ数が少なく、また記録方法が段階的で回帰分析に向かないため、単に度数分布を求め、環境と釣果にどの様な関係があるかだけを見たものです。あまり科学的とは言えませんが、釣りをされる上で少しでも参考になれば幸いです。
なお、これらのデータはPcVanフィッシングネットワーク(FN)の掲示板「ルアー・フライボード」に94年10月8日に掲載したものと同内容です。
調査期間:94年3月1日〜9月30日
調査対象:スピナー(主にブレットン5g)によるルアー釣り
対 象 魚:岩魚、ヤマメ、虹鱒
使用機器:dBASEV+、ロータス123、PC9801
使用釣具:ベイトロッドUL5.5ft、スピンキャストリール、フロロカーボン1号
調査項目:下記データシート(例)の通り
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釣人:K++(PcVanId:FISHING3/QYG96943)
日時:94年 9月25日(日)、10時 0分〜15時 0分
釣場:福島県大熊町、熊川水系、○○川
天候:雨/雲、目測風速約 5m、気温20℃、前日よりの気温変化:上昇
水況:水温13℃、水量約40cm増水、透明度約 2m
仕掛:ベイトロッドUL5.5ft、スピンキャストリール、ライン1号シーガーエース
釣果:岩魚31.0、21.0cm:計 2尾、ヤマメ25.5、24.5、21.0cm:計 3尾
20cm以下:ヤマメ2尾、15cm以下:ヤマメ2尾
メモ:今シーズン60回目、今年最後の釣行は尺岩魚
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【1.背景】
魚のサイズ(cm)は、釣れた瞬間の全長を基本としていますが、死後硬直後のものも一部ではありますが、含まれています。天候は、釣りを開始してから終わるまでの間で、最も時間の長かった天候を記録しています。天候は気象庁の定義(全天に占める雲の面積割合)によります。風速(m/秒)は、目測であり、かなりいいかげんです。参考程度です。
水量(cm)は、渓の流心部にある岩などに見られる平水線と、その時の水位との差を記録したものです。平水線は季節などによって変化します。濁り(m)は、ブレットン金5gのルアーを竿先に垂らし、水中に沈めた場合に見えなくなる深さを記録したものです。実際には、大抵の場合、目測です。水温(℃)は釣り始めの水温、気温はラジオ報道等によるその日の最高気温です。前日からの気温の変化もラジオ報道等の最高気温の変化を元にしています。
【2.釣果総数(期間:94年3月1日〜9月30日、釣行回数60回)】
サイズ 岩魚 ヤマメ 虹鱒 ウグイ 合計
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15cm以下 5 尾 78 0 0 83 尾
15-20cm 24 76 1 1 102
20-25cm 30 41 2 5 78
25-30cm 10 9 2 1 22
30-35cm 4 2(31.0) 2(31.0) 1(31.0) 9
35-40cm 2 0 0 0 2
40cm以上 1(40.0) 0 0 0 1
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合計 76 206 7 8 297
里川での釣行が多く、どうしてもヤマメが多くなります。上記データからヤマメが釣れ易いとは判断できません。むしろヤマメでは15cm程度の小さなものを数多く放流し、ヤマメより成長の早い岩魚では20cm程度のものが多く放流されていると考えられます。
又、ヤマメでは5gのブレットン等を使って15cm以下の物でも釣れるが、岩魚では20cm以上でないと、ルアーでは釣りにくいと考えられます。この事から、ヤマメを狙う場合には、より大きなルアー、例えば小型ミノーなどを使用しても良いが、岩魚狙いでは、小さ目のルアーが適当と考えられます。
【3.渓魚(イワナ、ヤマメ、ニジマス)のサイズと尾数の度数分布】
サイズ 度数
(cm)
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0 -15 83
15 -20 117
20 -22.5 35
22.5-25 28
25 -27.5 11
27.5-30 8
30 -32.5 2
32.5-35 2
35 -37.5 2
40 - 1
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合計 289(尾)
3種の渓魚のサイズの度数分布は左表の通り。サイズが大きくなるにしたがって、級数的に釣り辛くなる事が良くわかります。サイズ20〜40cmにおいては、度数NはサイズLとの間に以下の関係が成り立ちます。
N=6000/(10^(L/10))
つまり、サイズが10cm増す毎に釣れる確率はほぼ1/10になります。これは一定期間に20cm100尾を釣り上げるのと、40cm1尾を釣り上げるのが、同じ確率になる事を意味します。
この結果は先に発表した「釣魚サイズと一回の釣行で釣れる尾数」についての内容と奇しくも一致しています。
【4.各種パラメータと尾数の度数分布】
天候 風速 水量 濁り 水温 気温 気温の
(m/sec) (cm) (m) (℃) (℃) 変化
------- ------- ------- ------- ------- ------- ------
快 17 0 143 -50 8 0 3 6 3 上 69
晴 96 2 17 -40 1 29 6 10 6 無 103
雲 115 4 91 -30 29 2 88 9 55 9 18 下 108
雨 61 6 19 -20 71 3 33 12 88 12 13
8 -10 19 4 15 71 15 20
10 19 0 16 5 50 18 30 18 23
10 53 6 21 27 21 75
20 62 7 24 2 24 45
30 18 8 43 27 27 56
40 11 9 30 30 33
50 2 10 46 33 33 6
------- ------- ------- ------- ------- ------- ------
289(尾) 289 289 289 289 289 280
単純にどういう状況時に何尾釣れたかを表しています。これは40cm岩魚も10cmヤマメも同列に扱っています。数釣り師には参考になるデータかもしれません。
【5.各種パラメータと評価点数の度数分布】
サイズが異なる魚を含む釣果を出来るだけ正確に評価するため、点数化してみました。サイズと尾数の度数分布に、N=a/10^(L/10))の関係が成り立つ事を利用し、次の式を作りました。
P=10^(L/10)/100
つまり、40cm=100点、30cm=10点、20cm=1点となります。4項の尾数を評価点数に置き換えた度数分布が以下の表です。
天候 風速 水量 濁り 水温 気温 気温の
(m/sec) (cm) (m) (℃) (℃) 変化
------- ------- ------- ------- ------- ------- ------
快 27 0 412 -50 6 1 107 3 13 6 16 上 231
晴 148 2 146 -40 0 2 200 6 113 9 60 無 133
雲 336 4 51 -30 24 3 130 9 91 12 9 下 257
雨 122 10 25 -20 45 5 52 12 156 15 33 不 12
-10 22 8 52 15 199 18 206
0 38 10 92 18 50 21 104
10 246 21 4 24 155
20 189 27 4
30 28 30 45
40 28
50 1
------- ------- ------- ------- ------- ------- ------
633(点) 633 627 633 626 633 633
この度数分布表は、「大物を狙う為の情報」として役に立つかも知れません。この結果から、次の状態が最も大物狙いに適していると考えられます。気温の変化は3月〜9月という幅広い期間を対象にしたため、釣果との関係が出せませんでした。(気温の変化は水温の変化をもたらしますが、魚の適水温に近づく方向に水温が変化した時に活性が高くなると考えられます)
天候:雲、風:無し、増水:10〜20cm、透明度:2m程度、
水温:15℃前後、気温:20℃前後