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'98山形・21世紀の渓流釣りフォーラム



「釣れない」「魚がいない」と言われ続けている昨今の釣り場環境を何とかしようと、マスメディアと漁業・行政の関係者が立ち上がり、話会いの場を作りました。放流事業、ゴミ問題、釣り人のマナーなど、解決しなければならない問題は山積しています。フォーラムに参加しましたので、その大まかな内容を報告します。なお、以下のレポートは個人的な感想を述べているものであり、決して当フォーラムの総意ではありません。ご了承下さい。




明日の渓流釣りを語ろう、
'98山形・21世紀の渓流釣りフォーラム


●日時:2月14日(土) 13時30分〜16時30分(tel:0236・35・3100) 終了しました
●会場:山形県山形市「ビッグウイング」大会議室
●主催:山形県内水面漁業組合連合会
●協賛:山形県
●問い合わせ先:山形県内水面漁業組合連合会(tel:0236・41・2407)
●メインテーマ:「山形の渓流釣り場をより良くするために、釣り人は何ができるのか」
●プログラム:
  13:30 基調講演

   「釣り人の視点からの渓流釣り場管理」リリカルアングラーズクラブ会長      松田 洋一

        釣り人が呼びかけ、寒河江川大井沢地区にC&R区間を設定するまでの
        経緯とその後の同地区の状況の報告、今後の予定などを紹介。
        注目のC&R区間の状況は「釣り人のマナーによって助けられてはいる
        が、魚は確実に増え、持ち帰る人は殆ど見られなかった」とのこと。

「漁協の視点からの渓流釣り場管理」 月光川養漁業協同組合書記 時田 一紀 月光川でも3.5kmのC&R区間を設けている。その経緯と状況の報告、 今後の予定などを紹介。C&R区間を設けた事で釣り人が減るのではな いか、と心配されていたが、実際には増加したとの報告が印象に残った。 14:10 VTR 「ニジマスたちのサンクチュアリ」 トラウトフォーラム(西山徹)制作。奈良県で数十年前に放流された虹鱒が 永年禁漁に指定された事で、現在も自然繁殖を続けている事実をレポート。 「釣る」ことが如何に魚の繁殖を妨げているかの良い例として紹介。 14:25 パネルディスカッション パネラー:西山 徹(トラウトフォーラム)、時田 一紀(月光川養魚協)、 吉川 栄一(日本渓流釣り連盟)、高橋 安則(最上川第二漁協)、 山田 彰一(山形県農林水産部)、松田 洋一(リリカルアングラーズクラブ)、 コーディネーター:若杉 隆(釣り人社編集長)
吉川氏より、渓を4つの区間に分け管理する方法を提案。具体的な可能性 を漁協、行政の立場も含めて探った。4つの区間とは、 1.最上流部を種の保存の観点からも完全な保存区間とする。 2.その下流を完全なC&R区間とする。 3.その下流を稚魚放流(出来ればネイティブの)による区間とする。 4.最下流部を成魚放流の区間とする。つまり釣り堀状態の渓とする。 (上記の4区分は間違っているかも知れません。良く聞いていません) 他に、釣り人のマナー、自然環境の問題などが討議されたが、具体的な 方向などは示されなかった。マナーの点では、西山氏の「徹底した罰則を しない国では成功していない」との意見が印象的だった。 15:55 一般参加者の討論 瀬畑雄三氏を含め、3名からの意見が述べられた。 (2月22日:誤って深瀬信夫氏と掲載していました事をお詫びします) 16:05 総括



以下の文はフォーラムに参加して思った私の全く個人的な意見です。

1.上流から下流まで、様々な価値観と利害関係を持つ多数の団体が複雑に関与している日本の河川の現状を考えると、各方面の関係者同士がその利害関係・価値観の溝を埋め合う場所として、この様なフォーラムを開催する事自体は非常に有意義な事で有ると思います。

2.しかしながら、2回のフォーラムで出された幾つかの提案は、C&R区間の設定など具体化したものは有るものの、いずれも余りにも力不足な感を否めません。

3.渓流での全ての問題は、ややもすると「釣り人のモラル」にその主因を見出しがちですが、「釣れる川が無いから人が殺到する」「監視をされていないから密猟をする」のであり「ごみ箱がないから仕方なく不法投棄する」といった環境を忘れてはならないのではないでしょうか。もちろん環境を整えても違法行為を行う釣り人はいますが、そういった人達には、別途、法的な罰則を与えなければならないでしょう。

4.現状の渓流が抱えている根本的な問題点は何かを考えると、それはやはり「全てにおいて野放し過ぎる」事ではないでしょうか。数値管理された放流により釣れる渓流を作り、密猟と不法投棄/環境破壊の監視を強化し、釣り場にはゴミ箱を設置しなければ、釣り人は「釣れない」と嘆きながら、渓流をゴミだらけにし続ける事でしょう。

5.しかし、環境を整えるには、例えば、たった一個のゴミ箱を置くだけでも、常に人・物・金が必要です。その人・物・金をどこからどの様に調達するかについて、具体的な突っ込んだ討論がなされる事を期待していましたが、残念ながらその様な話は2回のフォーラムでは全く見当たりませんでした。

6.人・物・金を調達する手段、それは将来的には、あるいは最終的には「受益者負担」しか無いのではないかと思えます。日本の渓流釣りは安過ぎる事を認識すべきだと思います。否、殆どの人は「タダ」で釣りを楽しんでいるのです。数倍の入漁料を払っても、それが確実にユーザーに還元されている渓流があれば人は集まります。如何にして「野放し」を阻止するかを考え、そのためには、そろそろ釣り人自身が痛みを受けなければならない時期が来ているのでは無いか、と感じました。