北海道遠征レポート

北の大地の渓魚達(3):イトウ(10/8-10)


北海道釣行記の最終回は、イトウを取り上げます。われわれ本州の釣り師にとっては、イトウと言えば幻の魚。最近は管理釣り場で釣れる様になったとは言え、やはり北海道を代表する北海道ならではの魚であり、一度はネイティブなイトウを釣ってみたいと思うものです。なにせ仕事が忙しく、ほとんど事前情報の無いまま現地に到着した私でしたが、北海道の釣り師たちのやさしさに支えられ、なんとか型を見ることができました。心から北海道の釣りと自然を満喫させて頂きました。
(北海道での釣行には経験が浅く、以下の文中には誤解や思い違いが有る可能性があります。その場合にはどうぞご指摘下さい。)


注:場所の特定を防ぐため、風景画像の一部に大幅な修正を加えるか同イメージの別の写真を使用しています。


北海道のイトウのメッカと言えば、本州のルアー・フライマンでさえ、今ではもう誰もが知っているのではないかと思います。7日午後からは一気に北上し、夕方にはこの釣り場へと入りました。しかし道東では良いお天気でほとんど快晴だったにも関わらず、やはり北海道は広いですね、道北は朝から土砂降りの雨とのこと。北海道のオホーツク海側に流れる川の周辺は、釧路湿原に代表される様な「低層湿原」と呼ばれる泥炭層の湿原に覆われていて、一度大雨が降ると本州では考えられない様な長時間に渡って、黒褐色の強い濁りに見舞われる様です。これほど降るとさすがにもう釣りは無理かと、ガッカリしたものですが・・・


この日7日の夜はイトウ釣りでは大変有名な、写真上右の「笠井旅館」さんにお世話になりました。ご主人はイトウ釣りの名人であり、様々な情報をお教え頂きました。なにせ事前情報が何も無い状態で現地入りし、とにかくイトウを1尾釣りたいと言う私の希望に親切にお答え頂き、貴重なポイントまで教えて頂きました。ただ、お教え頂いたポイントは、全て現地の釣り人たちの大事にされている釣り場でもあり、ここでは細かな場所を伏せさせて頂きます。本レポート中の風景写真なども実際の釣り場とは異なりますので、そのおつもりでご覧下さい。笠井さん、色々とお世話になりありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。


翌8日朝は、予想通りに釣り場はどこも手の付けられない様な濁流でした。しかし地元の人たちはこんな条件下でも釣れそうな濁りの少ない釣り場を知っています。笠井さんから教えて頂いたそんなポイントをこの日は釣り歩くことにしました。しかし、どういった条件が重なったのかは判りませんが、8日は有名な本流の釣り場も含め、支流の釣り場も、ほとんど誰も釣れていなかった様子です。もともと泥炭層の湿原の中を流れる河川群のため、このあたりの川は普段でも透明度はそれほど高くならず黒褐色の独特の色(写真上左)をしています。

コウリンタンポポ

そのためか、この地のイトウは良く晴れた明るい日の方が良く釣れるとのことで、この日は厚い雲で非常に薄暗く、雨で急に水温が下がったことも手伝ってか、活性の低い日だった様です。午後からはやや晴れて少し明るくなったもののイトウの活性は上がってはくれず、結局、夕方に写真上右の40cmほどのウグイが1尾ヒットしただけでこの日は終わってしまいました。しなしなんですね、冷たい土砂降りの中での長時間の釣りは非常に疲れるものですが、パンツまでびしょぬれになりながら、何が楽しくてこんな釣りを続けているのでしょうか。自分でも良く判らなくなって来る日でした。


9日はうって変わって非常に明るい良く晴れた日になってくれました。しかし川の濁りはあまり変わらず、相変わらず黒褐色に強く濁っています。本流の有名釣り場にはこの日も数十人の釣り人がところ狭しと並んで竿林を作っていましたが、勝手の判らない私は、この日も前日に入った濁りの少ないポイントに狙いを絞り、釣り歩くことにしました。道北のこの付近は山が遠く、雨後とは言え、やはりゆったりとした流れの緩い川となっていて、しかもあちこちに河川の屈曲の結果できた半月形の沼がつながっています。そのためフローターを繰り出すのは容易で、一旦漕ぎ出すと、あとは誰に邪魔されることもなく釣りが楽しめるのは、ここ北海道も同じです。


オホーツク海から太陽が明るく輝きだした6時半ころ、待望の1尾がヒットしました。58cmとこの地においては小ぶりなイトウでしたが、私にとっては生まれて始めてのネイティブなイトウのヒットに気を良くし、その後も53cm・45cmの計3尾のイトウをヒットし、この日の午前中は終えました。ただ、この地でのイトウは大型が中心で、本流の有名釣り場では70cm代が普通に釣れ、1mを超えてようやく賞賛の対象になる様です。大喜びの私の釣り上げた獲物は、地元の人に言わせると「58cmなんてそんな子供を釣っちゃダメですよ!」とお叱りを受けてしまう程度のもの。なんともはや、我々本州の釣り師には、考えられない世界の様です。


小ぶりのイトウしか手にしていないため、私には未だに良く判らないことも多いのですが、今回釣れた3尾のイトウは、いずれも深さ1m前後の恐らく非常に暗い底ギリギリに張り付いていた様で、派手なスプーンやSSミノーの底ギリギリのトレースでヒットしています。恐らく色や形はあまり関係なく、派手に目立つルアーであれば何でも喰い付いてくる感じがしました。ただ、イトウの口は意外にも非常に固く、トレブルフックよりも刺さりの良いシングルフックのスプーンなどに部があるようで、実はSSミノーでもう一尾、恐らく50cm半ばの獲物をバラしています。


釣れたポイントは、イワナとほぼ同じ感覚で良い様で、小沢のインレットや葦の藪の中から魚たちは出てきてくれました。どこも濁りが強いため、細かなポイントを丹念に探ってゆかなければならないのはとても手間が掛かりますが、普段、堰堤で同じ様にしてイワナを釣っている私には、むしろ普通に釣って釣れた感じがしました。それから、もう一点感じたことですが、・・・イトウってウグイの引きにそっくりですね。1尾目の58cmがヒットした瞬間、「おいおい、またウグイかヨ!」と思ってしまいました。イトウの最大の魅力は「超大物」であることなのかも知れません。


余談ですが、ここでまたまたちょっとした失敗をしでかしています。湿原は写真上中央(=湿原の構造物が剥がれて横になって浮いている)のような、葦などの植物が低温で腐らずに泥炭化した2mほどの層の上に植物が生えている状態なのですが、ところどころに泥炭の密度の薄いところがあり、そこには「谷地眼(やちまなこ)」と呼ばれる穴があります。上から見るとただの水溜まりなのですが、内部は深さ2m程の壷状の落とし穴になっていて、よくエゾシカなどの動物がはまり込んで死んでいるそうです。私もうっかり足を踏み入れてしまい、死ぬ思いをしました。デジカメも2回目の水没で、今度も車のヒーターで乾かしましたが、液晶の一部が表示されなくなってしまいました。でもま、デジカメが半分死んでも、自分の命には代えられませんよね。


そして、午後からは件の本流の有名釣り場に繰り出しましたが、ここでショッキングな話を聞かされました。あんなに濁っているのに、早朝の2時間ほどだけで10本以上のイトウが釣れていたのです。その後もポツポツではありますが、満遍なくイトウは釣れ続けていたそうで、私の作戦が全くの失敗だったことを知らされました。なんでも、濁りはこのくらいが普通であり、それでも平気で釣れるのがイトウ釣りなのだそうで、本州のイワナ釣りとは感覚がだいぶ異なる様です。釣り場はご覧の様な海に突き出た防波堤とその周辺の海岸から始まり、上流部へ数kmの範囲のあちこちにポイントがある様です。

エゾタンポポ

この日は3連休の中日ということもあり、夕方も30人以上の釣り人がところ狭しとルアーやダブルハンドのフライを楽しんでいました。私も3時頃からマネをしてルアーを投げ始めましたが、こういった釣り場ではどうも勝手が判りません。対岸の防波堤の上や近くの海岸の浜では70cm以上もあるイトウが釣り上げられていて焦るばかりでしたが、残念ながら私のミノーにはイトウは喰い付いてくれませんでした。もっとも30人以上もいて日に釣れるイトウは十数尾とのことで、山形のサクラマスほどではないですが、2〜3人に1尾/日程度のかなり確立の低い釣りのようであり、初挑戦の釣り師にはそう簡単に釣りの神様は微笑んではくれない様です。

ただ、私にはちょっと気にかかることがありました。日に十数尾と言えども、春と秋の釣期の長さを考えると、少なくとも年間1000尾以上の大型魚が釣り上げられていることになり、いくらキャッチ&リリースが励行されているとはいえ、そのうちの20%前後が感染症などで死んでいるのではないかと言うことです。年間10cmしか成長しないと言われるイトウは決して生産力が高い魚とは思えません。現にイトウを釣った私が言うのもおこがましいのですが、その生産力を上回る数のイトウが釣り上げられ続けたなら、恐らく数年か十数年のうちに、何も釣れない「過去の釣り場」となってしまうのではないかと、私には強く危惧されました。本州で散々行われてきた失敗を、繰り返して欲しくはないものです。


さてこうやって今回の北海道釣行も終わりましたが、しかし北海道は大物の天国です。私の様な大物釣りを目指すものにとっては永遠に憧れの地ではあるのですが、そう簡単に遠くの地へは行くことができません。ただ一つ言えることは、大物であれば釣り上げるのが難しいとは限らないと言うことです。アメマスも海の鮭もイトウもニジマスも、確かに東北の渓魚とは比べ物にならない大型ばかりですが、釣り上げるのはむしろ東北の大イワナの方が難しいと、私には今でも思えてなりません。お金と時間の有り余るセレブな人種なら別ですが、その地に合ったその地ならではの釣りを極めてゆくのが、我々庶民の釣り師の、最大の楽しみ方ではないかと、帰りのフェリーの中でしみじみと思うのでした。


最後になりましたが、今回の釣行では、さまざまな釣り場で、あるいは旅館で、あるいは現地の温泉やキャンプ場で、実に沢山の地元の人たちから、貴重な釣り場や考え方・釣り方などの情報をお教え頂きました。「北海道はデッカイドウ」のキャッチコピーの通り、その大地も、川も、釣れる魚たちも、正しくデッカイのですが、そこに住む人たちの心の大きさにも感動させられる場面が多々あったことを、報告させて頂きます。お世話になった地元の皆さん、本当にありがとうございました。(北海道釣行記は、今回で終了です。長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。)

【今回使用のタックル】
ウエダTroutPluggingSpinGS902H、シマノAerlex3000C、PE30lb+ショックリーダー20lb、DensUltraSinking50S7gヤマメ、CoatacSpoon10/14g/赤金、Wavy65Sヤマメ/緑、D-contact50/63Sヤマメ/アユ/緑、WeightedRigge90Fワカサギ、WeightedSugarMinnow80SP、WeightedTargetMinnow80SP、他