トラウトルアーフィッシング - 北の大地の渓魚達(2)：オショロコマ他(10/3･4･7)

北海道遠征レポート

北の大地の渓魚達(2)：オショロコマ他(10/3･4･7)

本州では概ね禁漁期に入った１０月、北海道ではこの時期でも実に沢山の種類の渓魚たちがお相手をしてくれます。北海道では殆どの渓魚に禁漁期間が設定されておらず、一部の禁漁河川を除けば、年中釣りが楽しめるのも大きな魅力です。第２編では、アメマス（第１編）とイトウ（第３編）を除く幾つかの渓魚達を紹介します。愛らしさが売り物のオショロコマを除けば、いずれも北海道ならではの、ダイナミックかつ巨大な魚たちとの格闘の世界の様です。
（北海道での釣行には経験が浅く、以下の文中には誤解や思い違いが有る可能性があります。その場合にはどうぞご指摘下さい。）

注：場所の特定を防ぐため、風景画像の一部に大幅な修正を加えるか同イメージの別の写真を使用しています。

第１編ではのぼりアメマスを取り上げましたが、北海道ではこの時期、アメマス以外にも実に沢山の渓魚達がお相手をしてくれます。恐らくサケやカラフトマスなどといった、水産業としての価値の高い魚が優先されたせいか、アメマスなどの同価値の低い渓魚たちには、禁漁期間が殆ど設定されて来なかった様なのです。本州ではイワナやアメマスは産卵時期の１０月以降は保護のために禁漁となりますが、サケの産卵時期と一致してしまう北海道では、「サケの卵を喰う害魚」としてむしろ虐殺の対象とされて来た歴史がある様です。ところ変われば何とやら・・・なんとも、もったいないお話ですね。


	「ゆうあん」	ご主人の村上さん

さて、北海道でこの時期、狙うことの出来る渓魚は、アメマス・イワナ・イトウの他に、オショロコマ、ニジマス、海でのサケ、海でのカラフトマス、ヤマメがあります。これだけ多くの魚種を短い(?)休暇の間に効率よく釣り歩くには、どうしても現地の生の情報が必要になります。そこで今回の旅では、２ヶ所だけは現地の釣りに詳しい人の経営されている民宿にお世話になりました。道東近辺では弟子屈にある「ゲストハウスゆうあん」さん（写真上）に宿泊させて頂き、現地の実に沢山の渓流釣りに関する情報をお教え頂きました。ご主人の村上さん、本当にお世話になりありがとうございました。この場を借りてお礼いたします。

【黄金のイワナ】


	雄阿寒岳	雌阿寒岳

本当は阿寒湖で「黄金イワナ」なるものを釣ってみたかったのですが、ゆうあんのご主人いわく「今は一番釣れない時期、行ってもアカン」とのこと。それでもちょっぴり観光を兼ねて３日早朝に阿寒湖を訪れています。しかしこれは失敗でした。やはり現地の人の情報には従うべきですね。夜明けとともに到着して、ヒグマにビクビクしながら藪をこいで湖畔のインレットに辿り着いたは良いのですが、２投目で尺ちょうどくらいの（普通の）イワナがヒットしただけで、あとは全くと言って良いほど生きた魚の気配はありませんでした。阿寒湖と言えばその透明度の高さも有名であり、１尾釣れた瞬間に、付近の魚たちはみんな逃げてしまったのでしょうか。

阿寒湖の黄金イワナはあまりにも有名ですが、釣れるのは５月１日の解禁から６月一杯の２ヶ月だそうで、それ以外の時期はボートで深い所を狙うなどしない限り岸からはそう簡単には釣れない様です。私の訪れた１０月初は、ちょうど産卵の時期の様で、インレット付近の岸辺には、写真上中央の様に産卵を終えた尺～４０ｃｍくらいのイワナの死体がゴロゴロと転がっていて、カラスたちの格好の餌になっていました。私の釣ったイワナも、恐らく産卵の遅かった固体がまだ残っていたのでしょうか、地元の人には「良く釣れましたね！」と感心されるほどで、今の時期は普通には何も釣れない様です。


摩周湖

魚の気配も無い上に熊の恐怖もあって、この釣り場は２時間程度でサッサと引き上げました。仕方なく空いた時間は観光に当てましたが、うーん、北海道に１０日も居て、観光らしい観光はこの日の午前中だけでした。北海道というと、ウニやらカニやらを食べながら贅沢三昧をして来たのでは？とお考えでしょうが、観光は写真の阿寒湖と摩周湖くらい、民宿は２箇所だけで他は車中泊、食事は大半がコンビニのおにぎりか弁当、起床５時・就寝２１時、１日平均２００ｋｍ超の移動の連続・・・と、まことに体力勝負の我慢大会の様な旅行であり、普通の人から見れば、全くのアホですね。観光地の写真は以後出てきませんので、あしからず。

【オショロコマ】

この日３日の午後と翌４日の午後は、今回の釣行のメインターゲットの一つであるオショロコマを狙いました。オショロコマは別名ドリーバーデン（赤い水玉模様の少女）もしくはブルトラウト（大型になるとブルドッグの様に獰猛）とも言い、北米などに同種の大型魚が存在しますが、国内では北海道の知床半島とその周辺および道内の高山の一部のみで釣れる小型のイワナの一種です。みかけはイワナとそっくりですが、赤い綺麗な斑点が鮮やかで愛らしく、性格もイワナほどは警戒心が強くなく簡単に釣れる魚です。オショロコマは本州の釣り人にはあまりなじみの無い魚ですが、イワナ釣り師の私としては、どうしても釣っておきたいターゲットなのです。

実は２０年ほど前にも家族旅行で北海道を訪れた際、少しだけこのオショロコマを釣った経験があり、今回も期待して出かけました。２０年前の当地ではオショロコマなど釣る人は殆どおらず、釧路支庁のとある河川にでかけた私は、始めての渓流にも関わらず、尺前後を含むオショロコマの大漁でした。ちょっとした淵には無数の魚影が見え、一つのポイントで５～１０尾も釣れてしまうほどの状況だったものです。なにせ彼らは警戒心の薄い魚で、ルアーを投げると２度・３度と同じ魚が追いかけてきて、遂には釣られてしまうという滑稽さも手伝って、なんとも愛くるしい魚として私の記憶に残っていました。

知床半島　羅臼岳
しかし、今回訪れた渓流では、少々ガッカリさせられました。あれだけウジャウジャいたオショロコマの姿が殆ど見えません。１０月と言う季節的な要因もありますが、あまりにも魚影の薄いのには驚かされました。渓流には新しい堰堤が沢山できていたり、河川改修の跡が随所に見られたりして、産卵の道を極端に狭められてしまったのが原因の様に私には見えました。また、以前は見られなかったヤマメがかなりの源流部にも放流されていて、住みかを奪われてしまっていることも影響している様です。北海道ではイワナ属よりもサケやマス・ヤマメの方が水産業としての価値が高いのでしょう、生態系を無視した放流は、本州のみならずここ北海道でも普通に見られる様です。

そして非常に残念ですが、オショロコマも今では幻の魚になりつつある様なのです。結局、３日午後と４日午後の２回にわたって釣れたオショロコマは、最大でも２３ｃｍ、殆どは１７・８ｃｍほどの、釣り上げるのが可愛そうなくらいのおチビちゃんばかりで、地元の人の言う「尺オショロはイトウを釣るより難しい」の言葉の意味がこの時ようやく判りました。この次に北海道を訪れるときまで、彼らが生き残ってくれているのかと心配しながら、寂しい思いで釣り場をあとにしました。

【サケ】

地元で「アキアジ」と呼ばれるこの魚は、水産価値の高い魚として道内では最も大事にされている魚であることは既にご存知の通りです。道東から道北にかけてのオホーツク海に流れ込む河川の河口付近には、必ずと言ってよいほどサケの孵化場が見られます。河川内ではサケは周年禁漁ですが、多くの川で９月以降に河口付近の海釣りでこのサケが狙える様です。（註：海釣りについても付近の河川ごとに遊漁規則がかなり異なりますので、釣る前に良く調査する必要があります。河口付近の海岸線左右数百ｍを周年禁漁にしている河川も多くあります）

写真上左は知床半島のとある小河川の河口付近の写真ですが、黒い斑点に見えるのが全てサケもしくはカラフトマスで、正に産卵の真っ最中の固体も沢山見えます。知床付近で狙えるのは、９月初～末はカラフトマス（ピンクサーモン、マスではなくサケの一種）、９月中旬～１０月末はシロザケ（いわゆるサケ、チャムサーモン）と、２魚種が時期を少しずらして遡上・産卵を繰り返して行くため、かなり長い間に渡って釣りを楽しめる様です。私は５日の早朝にシロザケ釣りに挑戦しましたが、ここでも非常にガッカリする出来事が有り、最終的には私はサケ釣りを止めてしまう羽目になりました。

北海道の某釣り具店では、ルアーでもサケは釣れる・・・と聞いていたのですが、実際に現場に行ってみると、写真上の様なウキルアーと呼ばれる仕掛けが殆どで、ルアーだけで釣っている人は皆無でした。長さ１０ｃｍもある大きな発泡ウキの下１ｍ程度のところに、写真のタコベイトまたはルアー付タコベイトをセットした仕掛けです。私がガッカリしたのは、この巨大な鉤にサンマや赤く染めたイカを付けていることです。つまりウキルアーと言うのは、紛いも無く餌釣りです。この仕掛けがサケの集まっている付近にところ狭しと投げ込まれていて、他の釣りでもそうですが、餌が一杯あればルアーの反応は非常に悪くなります。つまり、こういう状況ではルアーでは殆ど釣れません。

加えて、彼らの中には単なる引っ掛け鉤を投げてはサケを取る密漁者(?)もいました。サケは産卵の準備で河口付近の非常に狭い範囲に水面が黒くなるほど固まって泳いでいて、掛け鉤を投げ込めば何の苦労もなくサケが掛かります。更にガッカリしたことがもう一つありました。彼らの殆どは、十数匹も釣った（掛けた）サケからイクラだけを取り出し、魚は海に放り投げて行くのです。腹を割かれたサケの死体が、海岸線には何十尾も転がっていました。

彼らは釣り師ではなく、ただの漁師、いや、略奪者でした。期待して出かけたサケ釣りですが、見ているほどに腹が立ってきて、結局、私はサケが釣れないまま、釣り場をあとにしました。なお、今回出かけた釣り場では上記の通りの凄惨な状況でしたが、道北や道東の人の少ない釣り場では、ルアーやフライでの釣りも十分可能な様です。逆に釣り人の多い知床周辺や網走周辺では、場所取りの騒動や駐車場問題などがあとを絶たず、我々ルアー・フライマンはお呼びでは無い様です。


ムシトリナデシコ	マンテマ	源流部では紅葉が・・

【ニジマス】

道北への移動の途中、少しだけですが、ニジマスを狙いました。もともと北海道にはニジマスは存在していなかった魚ですが、長年の放流で居ついてしまい自己生産を果たしえた彼らは、今では北海道を代表する立派な野生の渓魚となっている様です。東北でも５０ｃｍ近い野生化したニジマスがときおり釣れますが、北海道にはニジマスの河川が各地に広がっていて、大型ニジマスは比較的ポピュラーな釣りの対象魚となっています。私は７日の午前中のみ道北のニジマスで有名な某河川に立ち寄り、野生のニジマスを狙ってみました。

網走から宗谷にかけては山が海岸線から遠く、どの河川も北海道らしいチョークストリームのゆったりした風景が広がっています。下流部はサケの産卵の関係で禁漁となっている場所が多いため、私は河口から３０ｋｍ以上も入った源流に近いところで釣りました。付近は既に秋を通り越して冬支度に入っている様で、１０月初にも関わらず付近は早くも紅葉が始まっています。目に飛び込んでくる美しい風景に気を取られたのか・・・実はここでちょっとした失敗を仕出かしてしまいました。

非常に滑りやすいナメ底の渓流に入ったのが運のつき・・・滑って転倒してしまい、頭からウェーダーの中まで完全に水の中に。そう、デジカメが使えなくなってしまったのです。幸いにもデジカメは電源が入っておらず、すぐに電池を抜き取り、車のヒーターで数時間乾燥することで復活しましたが、この日の写真はそれまでに撮影した風景写真しか残っていません。紅葉の綺麗な源流部で、尺を少し超えるこれまた非常に綺麗なニジマスが１尾だけ釣れましたが、その魚は日ごろ管理釣り場で釣っているヒレが丸い魚とは全く別種とも思える、パワーの溢れる野生の生命体でした。

北海道釣行記は、「北の大地の渓魚達、第３編、イトウ」に続きます。

【今回使用のタックル】
オショロコマ・イワナ：　Wellner8ftTroutRod＋シマノSensiLiteMG2500＋呉羽SeagerAce1.5号(9lb)、
ニジマス・サケ：　ウエダTroutPluggingSpinGS902H＋シマノAERLEX3000C＋PE30lb＋ショックリーダー20lb、
Wavy65S/50S/ヤマメ/緑、D-contact63S/50S/ヤマメ/アユ/緑、他