本流のルアーフィッシング
初版1993年10月20日


《本流のルアーフィッシング》

東北地方では年間を通じて水温が低く、意外な下流域にも大型の岩魚やヤマメが生息しています。数は非常に少なく、又、釣り上げるのも難しいですが、渓流では考えられない様な大物が狙って釣れるのです。海から遡上型のサクラマスやアメマスも狙えますが、ここでは河川に居着いている大型の主に岩魚の釣り方について説明します。

1.なぜ本流に大物が生息するか

魚は大型化すればするほど大量の餌を必要とする事から、成長するにつれて、餌の少ない源流部から餌の多い下流部に下ってくるものと考えられます。ダムや堰堤などの移動を妨げるものがなく、その流域が生息可能な水温であれば、大型魚は河口付近まで下ってくるものと考えています。したがって下流域の水温が20度以上になる中部地方以西の河川では、この釣りは出来ません。

2.釣り場

釣り場となる河川の基本条件は「1年を通じて常に大量の水が流れている事」です。魚は大量の餌を求めて下流へと下ってくるため、餌の少ない河川には止まる事ができないと考えられるからです。流れる水の幅が10m以上もあり、水深の有る大きな淵が存在する河川が理想的です。逆に、上流で取水していたり、ダムで水が極端に増えたり減ったりする様な河川では、あまり大物は期待できません。又、全体が護岸され、砂で埋まっていて浅くなっている様な河川もこの釣りには不向きです。

(1) 年間を通じて常に大量の水が流れている、ゴウゴウと流れている
(2) 水温が年間を通じて20℃以下
(3) 川幅は十数m〜数十m
(4) 2m程度以上の水深のある場所が適度に存在する
(5) 下流にダムや大堰堤が存在する


この様な河川は意外と少なく釣り場は限られますが、釣り人は殆どいませんので魚は残っています。こういった本流域は川幅が広く、餌釣りやフライ・テンカラではポイントが遠すぎて釣りにならない事と、ハヤ(ウグイ)が多くなり実質的に餌釣りが出来なくなる事などが理由で、ルアー以外に釣る手だては殆ど有りません。

釣り場は必然的に中流〜下流域となります。源流部でも上記の条件を満たす河川はありますが、ごく一部に限られます。むしろ国道沿いなどの人通りの多い所こそが良い釣り場となり得ます。山形県内で本流の釣りが可能な河川は、赤川、最上小国川、寒河江川、八久和川、飯豊白川、荒川などがあります。

3.釣期

遡上型のトラウトでは、産卵前に河川を通過するものを狙うため釣期が限られています。これに対し、居着きの岩魚やヤマメでは、解禁当初から、雪代が収まり濁りが取れてくる頃までの長い期間が釣期となります。秋雨などで適度に増水し、濁りが入った状況でも、この釣りが可能になります。ただし、雪代の勢力が強過ぎる5月頃は、逆に釣りになりません。又、雪代が出始める4月初までと、雪代の出ている時期とでは、釣り方やポイントも異なってきます。

真夏の渇水期にも釣りは可能ですが、夜釣りのみとなります。但し、渓流の夜釣りは殆どの場所で禁止されており、お勧めできません。また9月後半になると、大型の魚は産卵のため上流へ移動し、小さな沢や堰堤の下に入ってしまい、この釣りは出来なくなります。

4.釣れる日、時合い

他の釣りとほぼ同じで、3月頃の水温の非常に冷たい時は、水温の上昇する昼間〜午後に時合いが来ます。平均水温が次第に上昇するにつれて、朝夕の適水温の時間帯へと時合いが変化して行きます。真夏の渇水期は、日の出前1時間程度と夕暮れ後2時間程度が時合いとなります。

5.アプローチ

重いルアーを遠投するため、濁りの入っている時はそれ程アプローチを気にする必要は有りませんが、透明度の高い時は非常に気を使わなければなりません。大型魚の目は意外に鋭く、数百mも先から人影を判断できる様です。渓流のルアーフィッシング 4-3節を参照され、中型の魚を相手にする時以上にアプローチには気を配ってください。

6.ポイント

中流下流域では護岸されていたり川幅が非常に広かったりしていて、ポイントは普通の渓流釣り場とはかなり異なります。堰堤直下や落ち込みよりもむしろ、トロ瀬やテトラの脇など、隠れる場所があり、緩やかな水流がある場所に魚たちは居着いている様です。

・急流部でない
・水深1〜2m程度
・堰堤直下よりも堰堤下流部のヒラキ
・テトラの下流部(沈みテトラが有る)、茂みの下、大岩の下流 水面下の障害物を探す
・ブッツケの淵の直下(エグレ)
・大支流同士の合流点・ワンドの中で砂地の浅い場所


7.タックル、ルアー

ルアーはシンキングタイプ5cm〜7cm程度の、比較的大型のミノーをメインに、渓流用より大き目のスプーン等も使用します。シンキングタイプを使う理由は、フローティングやサスペンドタイプよりも遥かに良く飛ぶ事と、深いポイントを探らなければ釣りにならない事です。大型の魚は警戒心が非常に強く、空中の鳥などから身を守るため、水面付近には滅多に現れません。

・シンキングタイプ、5〜7cm、ヤマメやハヤのスタイルのもの
・動きが機敏で左右の振れが大きいもの
・場合によっては、ディープダイバー
・10g前後の黒っぽい細身のスプーン


ロッドとリールは重いルアーの遠投を繰り返す事を考え、湖で使用するものよりもう一回り大きいものを使用します。ラインも強い流れと大型の魚を想定して、渓流用よりやや太くします。

・8〜9フィート長、ミディアム又はミディアムライト、ファーストテーパロッド
あるいは、サクラマス専用ロッド
・2000番〜3000番程度のスピニング
・1.5号〜2号(9〜12ポンド)フロロカーボンライン、又はPE2号+リーダー2号の組み合わせ


8.釣り方

基本はルアーを深く沈めて真横〜逆引きを繰り返す事です。本流域では水流が緩く見えていても、普通の渓流と比べかなり強く流れています。しかも通常、渓流よりもかなり濁っており、魚からルアーが十分に見える距離にルアーを近づけなければなりません。そのため、水面下の障害物の脇を通過する様にゆっくりとルアーをトレースする必要があります。透明度が高い場合はこの限りではありません。

透明度がそれほど高くない場合(2m以内程度)には、緩いカーブ状のぶつかりのある場所などでは、カーブ外側の上流側から下流へミノーなどを投げ入れ、十分に沈む速度で流し釣りの要領で釣ると効果的です。

渓流の様に遠くから魚が突進してくる事は希で、何回かルアーが通過した後に、思い出した様に食いつく場合が多いものです。その為、渓流では数回投げてアタックしてこなければポイントを移動しますが、本流では渓流の投げる回数の3〜4倍の回数を目安に投げ続けます。また、本流のポイントは非常に広くて離れているため、頻繁に移動を繰り返すのは余り得策ではありません。

ゆっくりとリーリングする必要性から、上流側からやや下流に向けて逆引きする事が多くなります。この時、濁りが適度に有り深いポイントを探らなければならない場合は、竿先を水中に突き刺して、できるだけルアーの軌道を深くします。シンキングタイプを多用するため根掛かりの可能性が高くなりますが、ルアーのロストを恐れていては釣れません。透明度が高い場合は、竿先を水中に沈める事は勿論、流れに近づき過ぎる事もできるだけ控えて下さい。